著者
松原 正樹 深山 覚 奥村 健太 寺村 佳子 大村 英史 橋田 光代 北原 鉄朗
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1_101-1_118, 2013-01-25 (Released:2013-03-05)

本論文では創作過程の視点に基づいて自動音楽生成に関するサーベイを行う.Shneidermanの創作過程の枠組みによれば,創作過程はCollect, Relate, Create, Donateの4つのフェーズからなる.計算機システム,ユーザ,システム設計者の3者全体を1つのトータルシステムと捉えると,創作においてそれぞれの要素が4つのフェーズをどう分担するか考えることができる.我々は既存の自動作曲・自動編曲・演奏表情付けシステムに対してこの観点から分析を行った.分類結果より各システムにおける4つのフェーズの共通項や差異を比較することができるようになり,音楽生成研究の進むべき方向性を示すことができた.
著者
松原 正樹 諏訪 正樹 斎藤 博昭
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.281-295, 2012 (Released:2012-09-26)
参考文献数
50
被引用文献数
2

This paper describes an interactive learning-aid system for analytical comprehension of music by highlighting orchestral score in colors, and classifies and evaluates the learning process on the system. An orchestral music is composed to integrate many instrumental parts, and musicians have to be proficient in reading the score analytically in order to understand its multifaceted structure. However, many people often face difficulty in comprehending its musical structure: Some intermediate performers can read and perform their own part, but cannot understand the role of each part in the assembled whole. In order to solve this problem, our conventional paper proposes an interactive supportive system called ScoreIlluminator that enables musicians (and non-musicians) to easily represent how he or she recognizes an orchestral music, e.g. the differentiation of melody parts from the others, and the similarity across instrumental parts. ScoreIlluminator clusters the parts from an orchestral score according to their roles in the whole, and displays the clusters on the score by assigning a color to each cluster. The users can manipulate the clustering parameters with the user interface of the system. The system employs two major design concepts. One is ``colored notation'' and the other is ``directability''. The ``colored notation'' visualizes the roles and the relations between parts, which are estimated by the system. The estimation is based on the similarity metric of four musical features: rhythmic activity, sonic richness, melodic activity and consonance activity. Using these metrics, clustering phase is conducted using an unsupervised learning algorithm (k-means algorithm). Our system provides the ``directability'' with an interactive interface in which subjects can freely manipulate parameter settings and see the change in score-highliting in real-time. In this process, users learn the role of parts and the relationship between parts and explore multifaceted interpretations of the music. To verify the effectiveness of the system, we conducted a user-experience experiment with four intermediate musicians. The musicians showed various kinds of progress in interpreting the score. With the episodes from the experiment, we discuss how the system encouraged subject's analytic skill in orchestral-score reading and music listening.
著者
内出 崇彦 森本 洋太 松原 正樹
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2016年大会
巻号頁・発行日
2016-03-10

地震波形記録は地震学における基本的なデータである。地震学者は通常、地震波形を画面や紙に描いて可視化して、そこから情報を読み取る。しかし、ほかの方法もある。地震波形を音に変換するという可聴化である。これは近年よく行われるようになってきたが、主に非専門家へのアウトリーチが目的である。われわれは、地震波の音を研究目的で利用することを試みている。一般に、時系列データを音に変換する方法には2つある。ひとつは時系列データをそのまま音響信号に見立てて再生するaudificationであり、もうひとつは瞬時周波数や振幅といったデータの特徴に応じて音を割り当てるというsonificationである。われわれは地震波形のaudificationとsonificationの手法を開発して、どのような情報が地震波可聴化音から聞き取れるかを検討した。初めに2011年東北地方太平洋沖地震を題材とした。防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET)と強震基盤観測網(KiK-net)の地表観測点のうち116点を適当に選んで使用した。一般に、地震波記録は聴きとるには周波数が低すぎるため、audificationの場合は再生速度を上げて、周波数を可聴域に移さなければならない。116観測点の地震波形のaudificationを10倍速の再生速度で行い、それらを重ね合わせた。可聴化音は聴きとることができるが、まだ低い。可聴化音からは日本全国に地震波形が広がる様子が感じ取れる。地震波の特徴をより明らかにするために、零交差率と振幅に応じて音を割り当てるsonification手法を設計した。10倍速で再生するものとしたため、可聴化音の全長は40秒ほど聴き取りやすい長さとなった。さらに、アウトリーチ活動で利用することも考慮して、怖くない雰囲気になるように音を選んだ。全116観測点からのデータは時間同期を考量した上で、同時に再生する。Sonificationによって得られた音は、やはり全国的な地震波伝播を感じさせるものである。初めは大きく高い音であるのに対し、徐々に小さく低い音に移行していく。これは、地震波の幾何減衰や非弾性減衰の効果を反映している。可聴化音の23秒ごろ(発震時の230秒後に相当する)に、全国的な地震波伝播とは明らかに異なった高い音が聴こえた。地域ごとに可聴化を行ってこの原因を追究した結果、岐阜県飛騨地域からのものであることがわかった。この地域で動的に誘発された地震[例えば、Uchide, SSA, 2011; Miyazawa, GRL, 2011; 大見ほか, 地震, 2012]と時刻も一致する。Audificationとsonificationによって、周波数や振幅の違いや変化を多くの観測点について同時に観測することが容易になった。本研究は、巨大地震から長距離を走ってきた地震波より高い周波数の地震波を放射する動的誘発地震を検出する方法として優れていると考えられる。謝辞: 本研究では、防災科学技術研究所の強震観測網(K-NET)と強震基盤観測網(KiK-net)の地震波形記録を使用しました。
著者
松原 正樹 岡本 紘幸 佐野 智久 鈴木宏哉 延澤 志保 斎藤 博昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.127, pp.1-6, 2008-12-12
被引用文献数
1

本稿では,オーケストラスコアの自動色付け手法 Score Illuminator について述べる.オーケストラなど大編成用に作曲された楽曲のスコアは,パート数の多さから,一覧性に欠けるという問題点を持つ.本稿では,スコアの可読性の向上を目的として,パート間のクラスタリングを行い,色付けすることでこれを明示する手法を提案する.本稿の手法では,リズム,響き,メロディ,和声を考慮した 4 つの特徴量を用いてパート間の距離を定義し,k-means アルゴリズムを利用してクラスタリングを行う.本稿では,実際の譜面の色付けを行う実験により,提案手法によってパート間の役割の区別を自動的に行うことが可能であることを示した.Orchestra scores have many parts together and score reading skill should be required to understand such orchestra scores. Musicians often put colors on the scores for score reading. In this paper we propose a method to illuminate orchestra scores with colors automatically according to the similarity between parts. Our method introduces four feature values, concerning the rhythm, sonic richness, melody and harmony respectively. The part clustering phase is built on k-means algorism using these four feature values. Our empirical result showed that our method succeeded in illuminating scores automatically for readability improvement.
著者
平田 圭二 東条 敏 浜中 雅俊 松原 正樹
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.20, pp.1-8, 2014-08-18

本発表では,現在我々が進めている計算論的音楽理論に関するプロジェクトについて述べる.我々が提案する計算機の存在を前提とした音楽の意味論とその意味論に基づいて構築された音楽に対する代数的な計算体系について,ゴール,設計思想を議論し,これまでの研究成果を紹介し,今後の課題や展望を述べる.
著者
松方翔吾 寺澤洋子 松原正樹 北原鉄朗
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013-MUS-99, no.39, pp.1-5, 2013-05-04

本研究は,トランペット演奏時の口唇周囲の筋活動を解析することを目的とする.口唇周囲の筋肉は口の形(アンブシュア)を一定に保つために深く関わっており,アンブシュアを保つことはトランペットを上手に演奏するために必要とされている.従来研究では,音の高さや強さ,楽器習熟度の観点からトランペット演奏時の口唇周囲の筋活動を解析していたが,プレイヤーの演奏可能な音域や他楽器の演奏経験を考慮していなかった.そこで我々は,それらの問題を解決するために,口唇周囲の筋活動(上唇の口輪筋,下唇の口輪筋,口角下制筋,口角挙筋)を表面筋電図を用いて解析した.その結果,次のことが分かった.(1)低い音より高い音を演奏中の方が筋活動が活発になるが,その度合いは演奏者の演奏可能な音域によって変化する.(2)初心者は上唇より下唇の筋活動の方が活発であり,熟達者はその違いはない.そして,トランペットと同様に唇を震わせて演奏する金管楽器の奏者は,初心者と同じような筋活動を示す.
著者
松原 正樹 狩野 直哉 寺澤 洋子 平賀 瑠美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1331-1340, 2016-05-15

日常生活のなかで,音楽を長時間積極的に楽しむ聴覚障害者は多い.彼らの音楽スキルが向上することで,より自信を持って音楽を深く楽しめるようになり,ひいては社会生活の改善につながる.また,音楽を通じて,複雑に重畳された音の選択的な聴取のスキルが向上し,環境音や日常生活の混合音の選択的な音聴取能力が向上することも期待される.本研究では,聴覚障害者の音聴取能力向上トレーニングを目的としたタッピングゲームの開発を行い,音楽聴取時に視覚手がかりの有無によってリズム認知能力の短期的学習効果があることを検証した.実験では,聴力レベル76dB以上の聴覚障害者6名を対象に視覚手がかりの有無やボーカルの有無,難易度を条件としたタッピング課題を行い,タッピング課題の成績をもとにリズム認知能力の短期的学習効果を確かめた.その結果,視覚手がかりがある条件のみ短期的学習効果が統計的に有意に現われた.また,実験参加者へのアンケートやインタビューでは視覚手がかりのあるトレーニングが有益であるという評価を得た.客観的評価および主観的評価の両方で,このシステムが音楽聴取能力の向上に寄与することが示唆された.
著者
松方翔吾 寺澤洋子 松原正樹 北原鉄朗
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.39, pp.1-5, 2013-05-04

本研究は,トランペット演奏時の口唇周囲の筋活動を解析することを目的とする.口唇周囲の筋肉は口の形(アンブシュア)を一定に保つために深く関わっており,アンブシュアを保つことはトランペットを上手に演奏するために必要とされている.従来研究では,音の高さや強さ,楽器習熟度の観点からトランペット演奏時の口唇周囲の筋活動を解析していたが,プレイヤーの演奏可能な音域や他楽器の演奏経験を考慮していなかった.そこで我々は,それらの問題を解決するために,口唇周囲の筋活動(上唇の口輪筋,下唇の口輪筋,口角下制筋,口角挙筋)を表面筋電図を用いて解析した.その結果,次のことが分かった.(1)低い音より高い音を演奏中の方が筋活動が活発になるが,その度合いは演奏者の演奏可能な音域によって変化する.(2)初心者は上唇より下唇の筋活動の方が活発であり,熟達者はその違いはない.そして,トランペットと同様に唇を震わせて演奏する金管楽器の奏者は,初心者と同じような筋活動を示す.In this paper, we investigated the relationship between the muscle activities around the lips and the sounds of playing the trumpet. While one is playing the trumpet, it is important but also difficult to keep an embouchure. Previous studies have investigated the difference between muscle activities for register and proficiency, but these studies have not considered the player's playable register and the influence of experience playing other instruments. Thus, in this study we aimed to solve these problems by examining the surface electromyograms (EMGs) around the lips: the orbicularis oris superioris, orbicularis oris inferioris, depressor anguli oris, and levator anguli oris. As a result, we found that (1) muscle activity is greater in the high register than the low register, but muscle activities in the high register are not significantly greater than those in the low register for the wide range of the playable register in the fixed register (FR); and (2) a novice trumpeter has greater muscle activity in the upper lip than in the lower lip, while an expert shows no difference. The muscle activity is the same as for the novice player when a non-trumpet brass player plays the trumpet.
著者
松原 正樹 岡本 紘幸 佐野 智久 鈴木宏哉 延澤 志保 斎藤 博昭
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2937-2948, 2009-12-15

オーケストラなど大編成用に作曲された楽曲のスコア(総譜)は,パート数の多さから判読性に欠け,異なるパート間の関連性を把握するには音楽構造を理解する必要があり,楽譜(パート譜)を読むことができてもスコアを読むことができない演奏者が多いという問題点がある.そこで本稿では,異なるパートの似た役割を持つフレーズをクラスタリングし,各クラスタに異なる色を割り当てて楽譜上に着色する手法と,音楽を再生しながら色付け楽譜を見ることで異なるパート間の関連性を把握しやすくするインタフェースを提案する.提案手法では,合奏において重視すべき,リズム,響き,メロディ,和声を考慮した4つの特徴量を用いてパート間の距離を定義し,k-meansアルゴリズムを利用してクラスタリングを行うことで色付け楽譜の生成を実現している.また提案するインタフェースにおいて,ユーザは操作の繰返しにより,スコアリーディングを熟達させることができ,楽曲の構造について考えて聴くようになった.実験結果より異なるパート間の関連性を把握する色付け楽譜の生成が可能であることを示し,スコアリーディング支援を実現できることを示した.
著者
狩野直哉 松原正樹 寺澤洋子 平賀瑠美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.4, pp.1-7, 2014-08-18

聴覚障害者にとって,日常生活における複雑な音情景の中から,必要な音を選択して認識し理解することは困難である.そういった音聴取能力を向上させることは聴覚障害者の手助けになり,QOL の向上につながる.我々は,聴覚障害者の音聴取能力向上トレーニングを目的としたタッピングゲームの開発を行った.タッピングゲームは,聴覚トレーニングに音楽とゲームの要素を取り入れたものであり,音聴取能力向上効果のみならず,聴覚障害者が意欲的に継続できることを意図している.タッピングゲームは二度,聴覚障害学生にプレイしてもらい,ディスカッションを行った.本稿では,タッピングゲームの開発とディスカッションの様子について報告する.
著者
松原 正樹 遠山 紀子 斎藤 博昭
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.19, pp.79-84, 2006-02-23
参考文献数
10
被引用文献数
3

本稿では,近年国内において多様化するピアノ学習者のうち,ピアノ初級者を対象にした独習支援システムを提案する.従来の独習支援システムは,一回毎の演奏について評価を行い,ユーザは間違えた箇所を認識し,演奏の評価を得ることができた.しかし,初級者は,間違えた箇所を認識することが出来ても,なぜ間違えたのか,今後どのように練習してよいか,といった練習方針を自分自身で判断するのは困難であり,初心者はなかなか技術の上達を見込めないという問題点があった.そこで本提案システムでは,個人の演奏履歴の分析と,目標楽曲に適した練習用楽曲の提示により,学習者に適切な練習を示唆することを目指す.楽曲の特徴量を楽曲中における鍵盤間距離の等しい音列の出現頻度とし,演奏履歴との類似度を計算することによって練習用楽曲を提示する.目標楽曲集をブルグミュラー「25 の練習曲」,練習用楽曲集をバイエル「ピアノ教則本」としてシステムを実装し,実験を行った結果,一部の目標楽曲に対して人間のピアノ教授者と同等の示唆を示した.We present a computer-assisted leaning system for piano novice. The system calculates the distance between keys, estimates the performance and suggests adequate etudes. Using "Twenty-Five Easy and Progressive Studies for Pianoforte" by Burgmuller, as target music, and "Piano Textbook" by Beyer, as etudes, the system suggests appropriate etudes just like piano tutors.