著者
平賀 瑠美 五十嵐 滋 松浦 陽平
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.38, no.11, pp.2391-2397, 1997-11-15
参考文献数
22
被引用文献数
11

計算機による音楽的に表情豊かな演奏を自動生成するための支援環境として,演奏視覚化統合システムを設計,開発した.これは,演奏データ生成を目的とした音楽エディタと見なすこともできる.演奏の解析と生成,および視覚化においては,演奏表情に影響を与える楽曲構造を基本に考えた.演奏の生成に関する音楽エディタとしては,シーケンス・ソフトが広く普及しているが,そこでは楽曲の解釈や音楽的な表情をつけるための道具は不足している.また,楽曲の構造を考慮した演奏データ生成方式は多く存在するが,解釈から生成に至るまでを演奏データの視覚化によりサポートした環境はない.このシステムを用いて演奏解析を行うと,楽曲構造を採り入れたことにより,解析に一貫性と客観性を与えること,また視覚化したことにより,解析判断に確信を与え,演奏表情の定量化を可能にするという利点をあげることができる.演奏の生成においては,対話的に演奏の編集をする際に楽曲構造に基づいた音楽性を与えるためのツールや,演奏の変更において音楽性を保持する機能により,演奏データを扱うユーザの負担の軽減を試みた.システムの評価は,音楽的な演奏生成に役立つかという点を中心に行い,音楽エディタに特化した機能については評価を得たが,ユーザビリティにおいて,いくつかの改善点を指摘された.An integrated musical performance visualization system has been designed and implemented in order to analyze and synthesize musically expressive performance data.The analysis and systhesis are based on music structure,which is a group of consecutive notes who has some meanings on music interpretation.In the area of musical performance generation,many researches adopt the concept of music structure in some sense.Although sequencer is a widely pervaded software for generating musical performance,it is not the most suitable software for music rendition especially for classical music,because it does not pay much attention to music interpretation or the generating process a score to its performance.The performance analysis on our system can be given uniformity and objectivity in terms of music structure,in addition to confirmative and quantitative description by performance visualization.The system allows users to edit performance data interactively.Here some tools based on music structure and some limitation functions are provided in order to prevent the edit of data from destroying musically plausible performance,or even positively to give data musically impressive or artistic expression.The edited data are performed during the display of a visualized figure.The system is evaluated on the basis whether it is usable to generate musical performance data.It has received so far good evaluation for special functions as a music editor,while some problems on usability have been pointed out.
著者
宮崎 麗子 藤代一成 平賀瑠美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.739-742, 2004-03-15
参考文献数
6
被引用文献数
2

MIDI楽曲の編集に使われるシーケンスソフトでは,各エディットウィンドウが独立した状態でしか表示されないため,注目したいパラメータや再生・編集位置を切り替える場合にユーザに負担がかかる.さらに,各ウィンドウは注目部分だけしか表示できないため,楽曲を大局的にとらえることが難しい.そこで本論文では,これらの問題を解決するために,ユーザの認知地図を壊さずに,アニメーション効果によって楽曲の表現レベルをシームレスに切り替えることのできる,3次元MIDIデータ可視化システムcomp-i(Comprehensible MIDI Player-Interactive)を提案する.So-called sequence software systems, which are commonly used to edit MIDI-encoded music, possess two kinds of problems due to interactions with MIDI data through multiple independent windows. In this paper, we address the problems by prototyping a system, called ``comp-i (Comprehensible MIDI Player - Interactive)'', which provides a novel type of 3D virtual space, where the users are allowed to interactively explore the global structures and local features embedded in a time-series of multichannel asynchronous events of MIDI datasets while keeping their cognitive maps.
著者
平賀 瑠美 川島 光郎
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.103(2001-MUS-042), pp.75-80, 2001-10-26

聴覚障害を持つ大学生にコンピュータミュージックの授業を行って4年が経過した。聴覚障害者に敢えてコンピュータミュージックを教えることは、たとえそれが音楽の授業ではなくてもどのような意味があるかという常なる自省を抱えながらの4年間であった。これまでの経験から、授業の組み立て方についての反省と今後の展望、聴覚障害者にとって音楽とは何か、視覚情報は音楽の理解の補助になるか、コンピュータミュージックは福音になるか、また、健聴者と視覚障害者は音楽を通じてどのような関係をもつことができるかについての考察を述べる。今後、コンピュータミュージックが福祉においてどのような貢献が可能となるかについてについても述べる。
著者
小池 宏幸 平賀 瑠美 五十嵐 滋 水谷 哲也 塩 雅之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.68, pp.49-54, 1999-08-07
参考文献数
11
被引用文献数
1

本研究は、当研究室において進められている音楽情報研究プロジェクト"PSYCHE"の一環であり、アゴーギクに関する演奏ルールを楽曲に適用することによりクラシック音楽の芸術的演奏を自動生成することを目的とする。本稿では、ルールを楽曲に適用する際に必要なパラメータ値を自動決定するシステムについて述べる。また、人間の演奏からパラメータ値を計算する手法を3つ提案する。そして、ある楽曲の演奏から計算、決定したパラメータ値を他の楽曲に適用し、人間の演奏と比較することでそれぞれの手法についての考察を行った。This study belongs to a computer music project PSYCHE and our purpose is generating artistic performance of classical music automatically by applying agogic rules to a musical piece. We describe about an automatic decision system of parameter values for agogic rules where three techniques of calculating parameter values from a performance by a human player are proposed. We also give consideration to each technique by comparing performances by human and a generated one by applying rules to a musical piece using parameter values that are decided from the performance by human.
著者
平賀 瑠美 片寄 晴弘 小池 宏幸 鈴木 泰山 野池 賢二 星芝 貴行
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.49, pp.67-70, 2000-05-31
被引用文献数
2

日本における自動演奏生成システム研究の成果を一堂に集め、システムの生成物である演奏のデモンストレーションを行う。これらは、大学の理工学系の研究室で独立に研究が進められてきており、演奏生成のモデル、手法は勿論、生成対象となる楽曲、入力情報の種類や形式、出力情報の種類は全て異なる。デモンストレーションに先立つパネル討論では、デモの各参加グループから一人がパネリストとなり、これまでに進めてきた内容から、演奏生成研究において感じた困難なことや、それに基づいた今後のための提案を発表する。今回のデモンストレーションとパネル討論は演奏生成システムを集める世界初の試みであり、今後のより円滑な情報交換と研究の発展を目指す。Researchers who have been working on performance rendering systems gather together to show their demonstration and exchange opinions for a further evolution of the reseach at a panel discussion. All the systems have been independently developed at engineering/science laboratories in universities. For the mutual understanding and sharing common issues in the research of performance rendering, representatives from each group discuss and present proposals toward the research in the next step. The special demonstration of performance rendering is the world premiere.
著者
松原 正樹 狩野 直哉 寺澤 洋子 平賀 瑠美
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1331-1340, 2016-05-15

日常生活のなかで,音楽を長時間積極的に楽しむ聴覚障害者は多い.彼らの音楽スキルが向上することで,より自信を持って音楽を深く楽しめるようになり,ひいては社会生活の改善につながる.また,音楽を通じて,複雑に重畳された音の選択的な聴取のスキルが向上し,環境音や日常生活の混合音の選択的な音聴取能力が向上することも期待される.本研究では,聴覚障害者の音聴取能力向上トレーニングを目的としたタッピングゲームの開発を行い,音楽聴取時に視覚手がかりの有無によってリズム認知能力の短期的学習効果があることを検証した.実験では,聴力レベル76dB以上の聴覚障害者6名を対象に視覚手がかりの有無やボーカルの有無,難易度を条件としたタッピング課題を行い,タッピング課題の成績をもとにリズム認知能力の短期的学習効果を確かめた.その結果,視覚手がかりがある条件のみ短期的学習効果が統計的に有意に現われた.また,実験参加者へのアンケートやインタビューでは視覚手がかりのあるトレーニングが有益であるという評価を得た.客観的評価および主観的評価の両方で,このシステムが音楽聴取能力の向上に寄与することが示唆された.
著者
平賀 瑠美 大島 千佳 西本 一志
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.48, pp.33-38, 2003-05-16
参考文献数
10
被引用文献数
1

演奏生成システムの評価方法の確立を目指すワークショップ ``Rencon'' (Performance Rendering Contest) が2002 年より始まった.演奏生成システムは楽譜や人間の演奏を参考に,生成すべき楽曲の楽譜情報やその構造についての情報を入力として,表情のある演奏を生成するソフトウェアシステムである.一般に演奏は主観により判断されてきたため,演奏生成システムの評価をその出力から行うことは困難である一方,論文のみでシステムを評価することは技術面での優秀さしか知ることができない.また,演奏生成システムの研究には情報科学のみならず,音楽学,心理学,認知科学といった幅広い分野の研究者の共同作業が必要となる.そこで,Rencon は,演奏生成システムの評価の確立とともに,多くの関連分野の研究者が意見を交換し合う場としての意味も持ち得る.本稿では,2002年のRenconに主催者,発表者,参加者として関わった3名がそれぞれの立場および異なる研究背景から2002年のRencon から得た教訓,感想,提案について述べる.``Rencon'' (Performance Rendering Contest) has started from 2002 as a workshop to establish evaluation methods for performance rendering systems. Expressive performance is rendered by a software system with the data of musical scores and corresponding performances and their musical structures as well, as input. Performance has been considered to include subjective matters so that it is not possible to evaluate such a system only from technical papers. Rencon also has the meaning as a forum for researchers of various areas --computer science, musicology, psychology, and perception-- to meet and discuss on their interests in musical performance. In this paper, three authors, who participated two Rencons in 2002 as a steering member, a paper speaker and music entrant, and a participant, describe each of their opinions from different relationships with Rencon and research backgrounds.
著者
狩野直哉 松原正樹 寺澤洋子 平賀瑠美
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.4, pp.1-7, 2014-08-18

聴覚障害者にとって,日常生活における複雑な音情景の中から,必要な音を選択して認識し理解することは困難である.そういった音聴取能力を向上させることは聴覚障害者の手助けになり,QOL の向上につながる.我々は,聴覚障害者の音聴取能力向上トレーニングを目的としたタッピングゲームの開発を行った.タッピングゲームは,聴覚トレーニングに音楽とゲームの要素を取り入れたものであり,音聴取能力向上効果のみならず,聴覚障害者が意欲的に継続できることを意図している.タッピングゲームは二度,聴覚障害学生にプレイしてもらい,ディスカッションを行った.本稿では,タッピングゲームの開発とディスカッションの様子について報告する.