- 著者
-
中村 高康
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.94, pp.45-64, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
- 参考文献数
- 45
本稿の目的は,ポストモダン論とは一線を画し,現代を近代社会の延長線上にあるものとして考える「後期近代の理論」が近年注目されてきたことを受け,その理論が教育社会学において持つ意味と可能性を検討することにある。特に,本稿ではギデンズのハイ・モダニティ論を,単なる現代社会論としてではなく,理論としての発展可能性の観点から考察を加える。 具体的には,①現代社会論と社会学理論の区別を明確にした場合,ギデンズの一連の著作をヒントに,両者をリンクさせる視点が重要であること,②そうはいえどもギデンズ社会学の限界も十分踏まえておく必要があること,③ギデンズの理論的著作においては,他の多くの理論社会学者と異なり,教育についてあまり言及がないが,そのことはむしろ教育社会学にとっては理論の更新可能性をもたらしていること,④これまでは十分に活用されていないが,ハイ・モダニティ論に内在されている空間論的視点が発展可能性を秘めていること,の4つの視点を提起した。