- 著者
-
岡村 仁
松川 寛二
- 出版者
- 広島大学
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2005
本研究は,主任研究者らが開発した速度フィードバック療法システが認知症高齢者の認知機能障害改善に有効かどうかを無作為化比較試験により検証すること,およびマルチチャンネル近赤外光酸素モニターを応用して,上記認知機能障害改善システムの有効性を脳科学・生理学的に明らかにすることを目的とした。得られた結果は以下の通りである。(1)認知機能障害改善システムの有効性に関する臨床的検討適格基準を満たした認知症高齢者90名を,介入群45名,対照群45名に無作為に割付け,対照群には標準的な自転車エルゴメーター駆動,介入群には速度フィードバック療法を行った。介入前,介入終了直後,介入終了1ヵ月後のMini-Mental State Examination(MMSE),N式老年者用日常生活動作評価尺度(N-ADL),認知症高齢者QOLスケール(QOL-D)の各評価尺度得点における両群問の差を検討するため,各評価尺度の得点の変化量を従属変数とした二元配置分散分析を行った結果,MMSE, N-ADL, QOL-Dの各評価尺度得点の変化において両群間に有意な差が認められ,本研究で作成した速度フィードバック療法システムの有効性が示唆された。(2)高次脳機能評価システムの開発健常成人8名に対して,エルゴメーター運動の前後にストループテストを行い,その際の前頭葉脳酸素代謝動態を測定した。測定にあたっては,近赤外線分光装置を用い,脳神経活動に付随した局所酸素代謝を示すと考えられる酸化型ヘモグロビン濃度(Oxy-Hb),還元型ヘモグロビン濃度(Deoxy-Hb),総ヘモグロビン濃度(Total-Hb)を計測した。2組の光グローブは,ストループテスト中に機能するといわれる頭頂葉部位に照射させるよう前額部左右の眉上に装着し,リアルタイムで同時測定を行った。その結果,40%強度の運動中にOxy-Hbの有意な増加が認められ,その増加は持続した。ストループテスト所要時間は40%強度の運動後に短縮し誤答数は運動前後で変わらなかったことから,40%強度の動的運動により認知機能が向上すること,その認知機能の向上と前頭葉脳酸素動態は関連することが示唆された。