著者
谷口 圭祐 松本 英樹
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.554-561, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
19

目的:初期波形PEAの院外心停止(OHCA)について後方視的に検討し,初回アドレナリン(薬剤)投与との関連要因を検討する。方法:2010年1月〜2021年9月の間に生じたOHCA 591例中初期波形PEAの153例を対象に,薬剤投与の有無で群間比較,多変量解析を行った。データは連結不可能匿名化して抽出し,分析にはRを使用した。遠軽厚生病院倫理委員会の承認を受け実施した。結果:高度な気道確保は全体の84.3%に施行され,静脈路確保率は32.7%であった。薬剤投与群は有意に自己心拍再開(ROSC)率が高く(p<0.01),ロジスティック回帰分析では薬剤投与(OR 3.5,95%CI 1.3-9.0)が有意なROSCとの関連を示した。 結論:初期波形PEAのOHCAに対する病院前薬剤投与はROSC率を高めるため,救急隊は確実に静脈路確保を完了させ早期薬剤投与を重視した現場活動を行うべきである。
著者
谷口 圭祐 松本 英樹
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.26, no.5, pp.585-591, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
14

緒言:早期アドレナリン投与は, 院外心停止(以下OHCA)の良好な転帰と関連することが先行研究により明らかにされている。目的:ショック非適応リズムのOHCA症例について後方視的に検討し,病院前アドレナリン投与時間との関連要因を推論する。方法:2013年6月〜2021年11月に管内で生じたOHCA 387例中,ショック非適応リズムで病院前アドレナリン投与83例を対象に統計解析した。データは救急情報システムから連結不可能匿名化し抽出,解析にはRを使用した。結果:重回帰分析にて,心停止原因が心原性の場合有意に初回アドレナリン投与時間が短縮した(β=−4.60,95%CI −7.64- −1.56)。考察:心原性OHCAでは有意に初回アドレナリン投与時間が短縮した。窒息や外傷などによる非心原性OHCAで早期のアドレナリン投与も重視する場合,救急活動の効率化が必要不可欠である。
著者
谷口 圭祐 松本 英樹 金木 健太郎 津野 佑太
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.339-345, 2021-06-30 (Released:2021-06-30)
参考文献数
19

目的:救急救命士の気管挿管病院実習にて患者の個人要因を調査し,直視型喉頭鏡を使用した場合での気管挿管困難予測因子について推論する。方法:麻酔導入時に患者の個人属性,上顎中切歯突出や義歯の有無,小顎,頸椎可動性,3-3-2の法則について確認し,気管挿管施行時に声門視認性(Modified Cormac-Lehane System;MCLS)を記録した。結果:MCLSを目的変数とした重回帰分析では,小顎(β=0.59;p<0.001),頸椎可動性(β=0.19;p<0.001)が有意な正のβを示し,性別が有意な負のβ(β=−0.34;p<0.001)を示した。結論:患者の性別,小顎,頸椎可動性は救急救命士による直視型喉頭鏡下の気管挿管困難との関連が示唆された。簡便な評価法として救急現場における気管挿管困難の予測に活用できる可能性が高い。
著者
松本 英樹 掛端 健士 兵頭 武史 花田 憲正 辻 陽子 稲船 清英 村中 早苗 星野 佐登志
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.595-599, 2003

日本の犬ぞり犬において, 現場に即した運動処方を作成するために各種の検討を行った. その結果, 運動処方作成にあたっては, 年齢等による運動能力の近似した群分けの必要性が示唆された.また1回の運動負荷で乳酸閾値, 酸塩基平衡を基に個体別の運動処方を作成できる可能性が示唆され, 過剰な運動負荷を防止するために2回目の運動負荷も有用であると思われた.PRESCRIPTIONDIET<SUB>&reg;</SUB> a/d (a/d) を通常食に追加投与すると, a/d投与前と比較して投与後は, 運動負荷後のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ (AST) の増加もなくなり, 血中の重炭酸塩および静脈血二酸化炭素分圧の回復も早いことが認められた.しかし, a/d投与後では運動負荷に関係なくナトリウム, クロライドの上昇を伴う血漿浸透圧の上昇が認められたことから, 塩分過剰投与などが危惧され, さらに十分な水分補給の必要性が示唆された.
著者
臼井 英治 松本 英樹 松村 隆
出版者
公益社団法人 精密工学会
雑誌
精密工学会誌 (ISSN:09120289)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.1968-1973, 2000-12-05 (Released:2009-04-10)
参考文献数
12

The paper presents a structure model with single degree of freedom which may represent the non-linear characteristics of actual machine tool structure. By using an experimental set-up for orthogonal turning which utilizes the proposed structure model, it is shown that the non-linear variations of vibration parameters m, k, c with applied load can be measured with a special impulsive excitation technigic during the actual turning. Th obtained variations are proved to be quite similar to those obtained for usual turning lathe. Computer simulations of chatter on-set process are then carried out with taking both the variable m, k, c obtained and the non-linearity of cutting process reported in the previous papers into account. The predicted stability thresholds of chatter vibration through the simulation are in good quantitative agreement with the experimental results which include the well-known non-linear phenomena such as high feed and high speed stabilities of chatter and the finite amplitude chatter vibration.
著者
松本 英樹 北井 隆平 成田 憲彦
出版者
福井大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

正常マウス(Jcl:ICR マウス、5 週齡、雄)に炭素線(135 MeV/u、25 keV/μm)を 0.01~2.0 Gy 全身照射し、小腸および精巣でのアポトーシス誘導について精査した。その結果、小腸および精巣共にそれぞれの幹細胞および前駆細胞が分布する部位に特異的にアポトーシスが誘導されていた。また 0.05 Gy 以下の照射においても、小腸では非照射の対照マウスと比較して有意にアポトーシスの誘導が検出され、アポトーシス細胞の出現頻度は線量依存的に増加した。さらに特異的にアポトーシスが誘導されていた細胞を免疫組織化学染色により解析した結果、小腸および精巣いずれにおいてもアポトーシスが誘導されていた細胞は幹細胞およびその前駆細胞であることが明らかとなった。以上の結果から、炭素線の低線量被ばくにより正常組織の組織幹細胞および生殖幹細胞に特異的にアポトーシスが誘導されることが明らかとなった。
著者
中尾 周 清水 美希 松本 英樹 千村 収一 小林 正行 町田 登
出版者
獣医循環器研究会
雑誌
動物の循環器 = Advances in animal cardiology (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-10, 2007-06-01
被引用文献数
1

犬における心房細動(AF)の発生にかかる形態学的基盤について明らかにする目的で,生前にAFを示した犬5例の心臓について,心房筋および洞結節を中心に組織学的検索を実施した。症例1は雑種,10歳,僧帽弁および三尖弁閉鎖不全症例であり,AFは死亡前の4カ月間持続した。症例2はマルチーズ,14歳,僧帽弁および三尖弁閉鎖不全症例であり,AFは死亡前の10日間認められた。 症例3はゴールデン・レトリーバー,雌,2歳,右室二腔症および三尖弁異形成を有しており,AFは死亡時まで6カ月間持続した。症例4はゴールデン・レトリーバー,5歳,孤立性AFであり,交通事故により死亡するまで4週間持続した。症例5はゴールデン・レトリーバー,10歳,孤立性AFであり,心不全により死亡するまで36カ月間持続した。肉眼的に,症例1および2では左心房の重度拡張ならびに右心房の中等度拡張,症例3では右心房の重度拡張がみられたが,症例4および5の心房に著変は認められなかった。心房の組織学的変化は,顕著な変化が認められなかった症例4を除く4例に見いだされた。心房病変はいずれの例においても間質性心筋線維化に総括されるものであり,種々の程度に心筋線維の伸長・萎縮・脱落を伴っていた。間質性線維化の程度(ごく軽微±~重度+++)は,症例1:左心房(+++)/右心房(++),症例2:左心房(+++)/右心房(++),症例3:左心房(±)/右心房(+++),症例5:左心房(+)/右心房(+)であった。なお,全例において洞結節に著変は認められなかった。以上の検索結果から,小型~中型犬では心房の拡張がAFの発生要因になるが,心房が一定以上の容積を有している大型犬の場合は心房に器質的変化がなくてもAFは発生しうること;AF症例の心房にみられる間質性心筋線維化はAFの結果として生ずるものではないこと;AFの発生に洞結節の器質的変化は必須要件ではないことなどが示された。