著者
脇坂 しおり 松本 雄大 永井 元 村 絵美 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.19-25, 2011 (Released:2011-05-27)
参考文献数
30
被引用文献数
6 2

胃電図は, 腹部表面から皮膚電極を用いて胃筋電活動を記録する方法である。本研究では, 摂取する水の温度と量が朝の胃運動に及ぼす影響を検討するため, 胃疾患を有さない27名の女性を無作為に3群に割り付け, 15ºC, 250 mLの冷水 (Cold250) と65ºCの同量の湯 (Hot250), 65ºCのカップ1杯 (150 mL) の湯 (Hot150) をそれぞれの群に負荷した。前夜から絶食した被験者に, 午前9時に試験サンプルを負荷し, 飲水前20分間, および飲水後35分間の胃電図を測定した。得られた胃の電気信号を解析し, 1分間に約3回発生する胃運動正常波の出現頻度と, 胃運動の強さの指標として正常波をパワースペクトル解析して得られた正常波パワーを飲水前後の増加比で評価した。飲水負荷後の正常波出現頻度は, Hot250では一過性に増加, Cold250では一過性に減少し, 経時変化のパターンには有意な差が認められた (p=0.001) 。Hot150負荷後の正常波出現頻度においてもHot250と同様の変化が認められた。正常波パワー増加比は, 水の温度, 量にかかわらず飲水後に同程度の増大が認められた。以上より, 65ºCで150 mL以上の湯は飲水後の胃運動正常波の出現頻度を増加させること, および胃運動正常波の強さは本研究で用いた水の温度と量にかかわらず一過性に増大することが示唆された。
著者
数野 千恵子 織田 佐知子 江端 恵加 松本 雄大 樋口 直樹
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.21, pp.2097, 2009

<BR>【目的】近年、多種類のミネラルウォーターが市販されているが、その硬度は軟水から硬水まで様々である。これらミネラルウォーターは飲料水の他に、お茶やコーヒー等の嗜好品や調理にも幅広く使用されている。そこで、煎茶とほうじ茶について硬度の異なるミネラルウォーターで調製したお茶が味覚に与える影響を官能検査と、カテキン類、メチルキサンチン類およびアミノ酸類含有量から比較検討した。<BR>【方法】1)試料および試料水:市販の煎茶および焙じ茶について、高純度水製造装置で調製したRO水(硬度:0)の他に硬度:30、58、94、307、700、1468の市販製品を用いて調査した。2)抽出方法:煎茶は80℃に熱した水に茶葉を入れ、篩でろ過した。ほうじ茶は沸騰水に茶葉を入れ、篩でろ過した。3)官能検査:各試料水でお茶を入れ、おいしいと感じた順位を調査した。また、各々のお茶についての香り、色、渋み、甘み、うまみ、飲み易さも併せて調査した。4)カテキン類及びメチルキサンチン類の測定:HPLCにより分析した。5)遊離アミノ酸類の測定:アミノ酸分析システムを用いた。<BR>【結果】煎茶では、カテキン類およびメチルキサンチン類は比較的硬度の低い製品が多く抽出された。テアニンは硬度の差より製品による差の方が大きかった。ほうじ茶は煎茶に比較してカテキン類やアミノ酸の含有量が少ないために、味にほとんど関与していないと思われる。官能検査結果より、煎茶、ほうじ茶ともに、硬度が30~100程度の水で抽出したものが好まれた。煎茶やほうじ茶は硬度が30~100程度のいわゆる軟水を使用したほうがおいしいという結果が得られた。
著者
村上 恵 吉良 ひとみ 乾 恵理 松本 雄大
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成22年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2010 (Released:2010-08-27)

【目的】水の硬度は地域によって異なり、調理特性に何らかの影響を与えると考えられている。天ぷらではカラッとした軽いテクスチャーの衣が望まれるため、衣の調製は冷水(15℃)を用いて小麦粉をさっくりと混ぜ合わすことでグルテン形成を抑制する必要がある。そこで本研究では天ぷら衣の調製に使用する水に着目した。天ぷら衣の調製に軟水と硬水を用いて衣を揚げ、官能評価および衣の破断強度を測定し、食感に及ぼす影響について検討した。【方法】天ぷら衣として薄力粉60gに15℃の水90mlを加え15回撹拌したバッターを用いた。水は硬度20の軟水と硬度1468の硬水を使用した。この種を鍋に約3gずつ20個投入し、170℃で4分間揚げた。水を加えた直後(放置時間0分)の衣と15分放置した衣を調製し、揚げ上がり10分後の衣4種類を試料とした。これらの衣について、20歳代の大学職員および学生を被験者として7段階評点法、順位法による官能評価を行った。【結果】官能評価の結果、硬水を使用すると放置時間0分、15分共に食感、味、総合評価の評点が軟水を用いた時よりも有意に高く、サクサクした衣に仕上がる事が明らかとなった。順位法より4種類の試料は硬水0分、硬水15分、軟水0分、軟水15分の順で有意に好まれた。また、総合評価とにおい、食感、味の間の評価に正の相関がみられた。破断強度を測定すると、硬水で調整した衣は、軟水よりも破断応力、破断歪率とも低い値を示し、もろく軽い食感であることを示した。従って、衣調製時に硬水を用いると、食感や味が良い衣に仕上がると考えられた。
著者
織田 佐知子 数野 千恵子 松本 雄大
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成22年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.76, 2010 (Released:2010-08-27)

【目的】近年、硬度の異なる多種類のミネラルウォーターが市販されており、飲料水の他にも、紅茶等の嗜好品や調理に幅広く使用されている。そこで、硬度の異なるミネラルウォーターで抽出した紅茶の味が味覚に与える影響を官能検査、カテキン類及びメチルキサンチン類、アミノ酸類含有量、水色、香気成分を測定し比較検討した。【方法】1)試料茶葉及び試料水:市販の紅茶葉について硬度:30、50、92、315及び1468の市販製品に加え、高純度水生成装置で調製した硬度:0のRO水を用いて調査した。2)抽出方法:茶葉2.5gに沸騰させた試料水150mLを加え蓋をして2分間静置・抽出後、20および70メッシュの篩を重ねてろ過し、10秒間静置したものを紅茶とした。3)官能検査:各試料水でお茶を入れ、香り、色、渋み、苦み、うま味、風味、飲みやすさ、総合的な美味しさを調査した。4)カテキン類及びメチルキンサンチン類、アミノ酸類含有量:HPLC及びアミノ酸全自動分析計を用いた。5)水色:測色計を用いた。6)香気成分:GC/MSを用いてSPME法により分析した。【結果】官能検査:硬度60以下の軟水で抽出したものが、香り、風味、うま味、飲みやすさの点で好まれた。硬度が高いものは、色、味、苦み、渋みが強く、好まれない傾向がみられた。カテキン類及びメチルキサンチン類:EGC、EGCG、ECの含有量は硬度が高くなるにつれ、減少する傾向がみられた。アミノ酸類含有量:テアニンが最も多く抽出されたが、大きな差はみられなかった。水色:硬度が高いものほど色が濃くなる傾向がみられた。香気成分:硬度の低いものが多い傾向がみられた。以上より、紅茶には溶出成分や水そのものの味が関与し、硬度60以下の軟水で抽出したものが好まれるという結果が得られた。
著者
松本 雄大
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.131-145, 2022 (Released:2023-04-22)
参考文献数
18

The purpose of this study is to discussthe implementation and importanceabout the multinomial logit model of Bayesian Age-Period-Cohort analysis. Since the design matrix of three factorsdoes not become full rankdue to the identification problem derived fromlinear dependency between age, period and cohort, few studies have useda complex model. In contrast, this paper presents the practical multinomial logit model withefficient sampling by reparameterizationabout the constraints of assuming a random walk for each effect. Furthermore, we compared the estimates ofthe logit model andthe multidimensional modelabout political issuesthat should be considered from multiple perspectives. Using repeated cross-sectional survey in Japanfrom 1973 to 2013, the multinomial logit model was shown to be effectivebecause it was able to obtain a trendthat were not captured in the logit model.
著者
松本 雄大
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.99-112, 2019 (Released:2020-06-25)
参考文献数
25

本稿の目的は,ベイズ統計モデリングによってAPC分析の既存モデルを体系的に整理することである.年齢・時代・コーホートには線形従属の関係があり,識別問題を解消するための制約条件が必須となるが,その分析枠組みは現状においてまとめられていない.そこで本稿では,パラメータの縮小化に着目し,正規分布を事前分布として仮定することで各モデルが表現できることを示す.Intrinsic Estimatorと同等なリッジ回帰モデルは,デザイン行列のランク落ちを純粋に数理的な現象として捉え,すべてのパラメータの2乗ノルムを最小化することで「あらゆる特殊解の平均」に相当する推定値を得る方法である.ベイズ型コウホートモデルとして知られるランダムウォークモデルは,パラメータの1次階差の重み付け2乗和を最小化する制約であり,時系列構造を想定した付加条件というAPCの識別問題を考慮した克服方法となる.他にも等値制約モデルとランダム効果モデルを紹介し,シミュレーションによって各モデルの推定値と,その結果が得られる数理的なメカニズムを検討した.