著者
坂本 圭 辻野 博之 中野 英之 浦川 昇吾 山中 吾郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.175-188, 2018-09-15 (Released:2018-09-05)
参考文献数
15

著者らの海洋大循環モデル「気象研究所共用海洋モデル(MRI.COM)」は,開発が始まってから20 年近くが経過し,気象研究所と気象庁の様々な部門で利用されるようになるとともに,ソースコードの大規模化・複雑化が進んだ。このような状況の下でも,バグの混入や意図しない影響を抑えながらモデルを効率的に開発するため,現代的なソフトウェア開発で用いられるツールと手法を取り入れ,開発管理体制を一新した。まず,ソースコードの開発履歴(バージョン)を管理する「Git(ギット)」を導入した。このツールにより,複数の開発者が複数の課題に同時に取り組む並行開発が可能になった。また,プロジェクト管理システム「Redmine(レッドマイン)」を導入し,開発状況を開発者全員で共有した。このシステムによってデータベースに逐一記録された開発過程が,他の開発者や次世代の開発者にとって財産となることが期待される。これらのツールを用い,さらに開発手順を明確にすることで,開発チーム内の情報共有と相互チェックを日常的に行う開発体制に移行することが可能となったことは,コード品質の向上に大きく寄与している。現在,気象庁では,MRI.COMだけでなく,気象研究所と気象庁で開発しているほぼ全てのモデルをGit(またはSVN)とRedmineで一元的に管理するシステムを構築しており,モデルの開発管理及び共有化が大きく前進している。
著者
小渕 千絵 原島 恒夫 田中 慶太 坂本 圭 小林 優子
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.29-36, 2020-02-29

標準化された聴覚検査では,静寂下での単音節や単語の聴取検査が多く,雑音下での検査など聴取に負荷のかかる検査は少なく,日常生活での聞き取りの困難度を検査によって明らかにはしにくい.そこで本研究では,聴覚障害児者や聴覚情報処理障害が疑われる児者の抱える聞き取り困難を評価する臨床的な検査として,雑音下の単語聴取検査や両耳での分離聴検査,交互聴検査などの 7 つの聴覚情報処理検査を作成し,学齢児 60 名の適用について検討した.この結果,今回作成した検査については,就学後の学齢児で実施できない児はおらず,適用可能であった.検査ごとに比較すると,早口音声聴取検査および雑音下の単語聴取検査においてのみ,学年間で統計的に有意な差がみられたが,それ以外の検査では学年間差はなく,学齢児では同程度の得点を示した.今後は,幼児や成人例への適用,および聞き取り困難を抱える方への応用についても検討していく必要性が考えられた.
著者
中村 克行 趙 卉菁 柴崎 亮介 坂本 圭司 大鋸 朋生 鈴川 尚毅
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.1143-1152, 2005-07-01
被引用文献数
22

本論文では, 複数のレーザレンジスキャナを用いた歩行者トラッキングの方法, 及び駅での検証実験について述べる.提案手法は, ネットワークを利用して複数のレーザスキャナを同期させ, 得られた足断面のレンジデータから歩行者トラッキングを行う.トラッキングアルゴリズムは次の機能で構成される: レンジデータのクラスタリングによる足候補の検出, 足候補のグルーピングによる歩行者候補の検出, 歩行者候補の動きベクトル検出, 歩行モデルに基づく拡張カルマンフィルタによる既存軌跡の延長処理.提案手法を東京都内の駅構内コンコースに適用した結果, 最大で約150人を同時にトラッキングすることができた.トラッキング精度は, 通勤ラッシュ時において8割を超えた.広範囲における高密度の群集計測への応用が期待される.
著者
吉田 博宣 坂本 圭児
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.78-83, 1987-03-31
被引用文献数
2 2

前年に引続き、ニレ科樹林の残存形態を調査した。今回は、京都市街のより広い範囲でニレ科樹林(木)の分布と樹木の形状を調査し、さらに、その中で調査区を設けて残存形態と土地利用との関係について調べた。その結果、ニレ科樹林(木)の残存は社寺境内や旧屋敷跡等の歴史的な土地に多く、その樹木景観は歴史的土地利用景観の1つの象徴であることが確認された。また、残存過程について、いくつかの類型か考察された。
著者
吉田 博宣 坂本 圭児 河合 健
出版者
社団法人日本造園学会
雑誌
造園雑誌 (ISSN:03877248)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.228-233, 1988-03-31
被引用文献数
1 3

京都市街地に孤立木として残存するニレ科の大径木について,所有者と周辺住民にアンケート調査を行い,その意識を調べた。所有者では社寺と民家などその立場の違いで,また,住民では残存木からの距離の違いで意識が異なることが判明した。所有者と住民では残存木に対する判定構造に違いがあるが,ともに「迷惑さ」と「歴史性」または「評価性」という相反する意識の均衡のうえで残存が維持されていることが考察された。
著者
坂本 圭司 赤崎 弘平
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.548, pp.185-192, 2001-10-30 (Released:2017-02-04)
被引用文献数
4 2

The first building height limitation in Chicago was enacted in 1893. This paper is to review the process in enacting the limitation, from its drafts to the enacted limitation, and Chicago's own social context that enabled lawmakers to enact such a limit. Specifically, this paper is to focus on: 1) what urban problems were arising from the boom of "skyscrapers," 2) who took part in a series of discussion in conjunction with building height controls, for what intentions they agitated the matter, and whose intentions were brought into the enacted limitation, 3) what influence the limitation caused to the city and whether the lawmakers' intentions were realized.
著者
坂本 圭 辻野 博之 中野 英之 浦川 昇吾 山中 吾郎
出版者
日本海洋学会
雑誌
海の研究 (ISSN:09168362)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.175-188, 2018

<p>著者らの海洋大循環モデル「気象研究所共用海洋モデル(MRI.COM)」は,開発が始まってから20 年近くが経過し,気象研究所と気象庁の様々な部門で利用されるようになるとともに,ソースコードの大規模化・複雑化が進んだ。このような状況の下でも,バグの混入や意図しない影響を抑えながらモデルを効率的に開発するため,現代的なソフトウェア開発で用いられるツールと手法を取り入れ,開発管理体制を一新した。まず,ソースコードの開発履歴(バージョン)を管理する「Git(ギット)」を導入した。このツールにより,複数の開発者が複数の課題に同時に取り組む並行開発が可能になった。また,プロジェクト管理システム「Redmine(レッドマイン)」を導入し,開発状況を開発者全員で共有した。このシステムによってデータベースに逐一記録された開発過程が,他の開発者や次世代の開発者にとって財産となることが期待される。これらのツールを用い,さらに開発手順を明確にすることで,開発チーム内の情報共有と相互チェックを日常的に行う開発体制に移行することが可能となったことは,コード品質の向上に大きく寄与している。現在,気象庁では,MRI.COMだけでなく,気象研究所と気象庁で開発しているほぼ全てのモデルをGit(またはSVN)とRedmineで一元的に管理するシステムを構築しており,モデルの開発管理及び共有化が大きく前進している。</p>
著者
田辺 新一 中野 淳太 森井 健志 宇留野 恵 後藤 悠 坂本 圭司
出版者
公益社団法人 空気調和・衛生工学会
雑誌
空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成17年 (ISSN:18803806)
巻号頁・発行日
pp.901-904, 2005-07-25 (Released:2017-08-31)

Field survey on thermal environment and questionnaire survey were conducted over three seasons at three train stations, and thermal comfort was quantitatively evaluated. Moreover, usage patterns and passengers' attitude towards the station environment were investigated in order to comprehensively identify the thermal environment required for train stations. Environmental control of the entire station by air-conditioning would not be energy efficient due to its open structure, and task-ambient air-conditioning strategy is proposed.
著者
坂本 圭 小渕 千絵 城間 将江 松田 帆 関 恵美子 荒木 隆一郎 池園 哲郎
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.92-98, 2014

要旨: 人工内耳装用者 (以下CI装用者) の語音聴取における発話速度の影響と, 聴取能を補うための休止区間挿入の効果について検討した。対象は健聴者10名, CI装用者13名であり, 通常の発話速度 (以下, 基準文) を1倍速とし, これに対して2段階に倍速にした音声 (1.5倍速, 2.0倍速, 以下倍速文) の聴取成績を分析した。また, 各倍速音声に休止区間を文節, ランダムの2種の方法で挿入しその効果を実験的に検討した。この結果, 両対象者共に発話速度が速くなるにつれて有意に正答率の減少がみられた。特にCI装用者で顕著であり, 2.0倍速ではほとんどのCI装用者が聴取困難となった。また, 休止区間挿入の効果は, CI装用者で1.5倍速文においてのみ有効であった。倍速音声聴取が困難であるCI装用者であっても休止区間挿入により処理時間が確保され聴取能改善につながるため, 会話時においては意味的に区切って発話することの重要性が示唆された。
著者
米谷 文雄 堀之内 宏久 坂本 圭
出版者
南江堂
巻号頁・発行日
pp.477-481, 2020-04-25

「気胸・血胸・血気胸」は,呼吸器外科専門医でなくても当直の現場でよく遭遇する疾患である.外科系を希望する研修医,外科専門医をめざす専修医,外科系当直医向けに,基礎知識,観察点,診断の工夫,取り急ぎ治療を行うべきことや注意点を述べる.
著者
坂本 圭 小渕 千絵 城間 将江 松田 帆 関 恵美子 荒木 隆一郎 池園 哲郎
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.92-98, 2014-02-28 (Released:2014-11-06)
参考文献数
14

要旨: 人工内耳装用者 (以下CI装用者) の語音聴取における発話速度の影響と, 聴取能を補うための休止区間挿入の効果について検討した。対象は健聴者10名, CI装用者13名であり, 通常の発話速度 (以下, 基準文) を1倍速とし, これに対して2段階に倍速にした音声 (1.5倍速, 2.0倍速, 以下倍速文) の聴取成績を分析した。また, 各倍速音声に休止区間を文節, ランダムの2種の方法で挿入しその効果を実験的に検討した。この結果, 両対象者共に発話速度が速くなるにつれて有意に正答率の減少がみられた。特にCI装用者で顕著であり, 2.0倍速ではほとんどのCI装用者が聴取困難となった。また, 休止区間挿入の効果は, CI装用者で1.5倍速文においてのみ有効であった。倍速音声聴取が困難であるCI装用者であっても休止区間挿入により処理時間が確保され聴取能改善につながるため, 会話時においては意味的に区切って発話することの重要性が示唆された。
著者
坂本 圭 福元 哲也 平井 奉博 橋本 伸朗 前田 智 中馬 東彦 松下 任彦 酒本 高志
出版者
西日本整形・災害外科学会
雑誌
整形外科と災害外科 (ISSN:00371033)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.161-164, 2018-03-25 (Released:2018-05-21)
参考文献数
10

壊死性筋膜炎は進行すると死亡に至る重篤な感染症であり,死亡率は32.2%と高く,早期の治療が必要である4).壊死性筋膜炎の診断で緊急に切断術を施行した3症例を経験したので報告する.
著者
岩崎 寛 吉川 賢 坂本 圭児 千葉 喬三
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.186-191, 1999-05-31
被引用文献数
4 3

マツ材線虫病の病徴の進展に影響を及ぼす要因として土壌水分をとりあげ, 異なる土壌水分下で生育させたアカマツのポット苗を用いて線虫接種試験を行い, 土壌含水率による枯死過程の違いを夜明け前の水ポテンシャル, 葉緑素量(SPAD値), 光合成速度, 蒸散速度から検討した。その結果, 土壌含水率の低い環境で生育した苗では, マツ材線虫病の進展がはやく, 光合成速度, 蒸散速度や葉の水ポテンシャルといった生理特性の変化もはやかった。また, 光合成活性を表す指標とSPAD値との関係を見ると, 接種後2週目では葉緑素の破壊が起こっていないが, すでに光合成活性が低下していたことが示唆された。また接種後2週目には蒸散速度も低下していたことから, この光合成活性の低下は, マツ材線虫病の進展に伴う樹体内の水分欠乏による気孔閉鎖が原因であると考えられた。
著者
サロインソン ファビオラ ベイビ 坂本 圭児 廣部 宗 三木 直子 吉川 賢
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.65-70, 2007-08-31

放棄され拡大しつつあるハチク(Phyllostachys nigra var. henonis)林を対象として,竹林の林内,落葉広葉樹林と接し拡大しつつある竹林の林縁,およびその中間部分に区分し,稈の空間分布を比較検討した。空間分布解析のために, L関数を用い,距離にともなうL関数の変化を検討した。同じコホートの稈で,タケノコから当年生稈,当年生稈から5年生の古い稈へと生育段階が進む過程で,空間分布の変化を検討したところ,竹林の林内では,タケノコと当年生稈で集中分布, 5年生稈ではランダム分布し,林縁や中間部分では,タケノコの段階から5年生の稈まで常にランダム分布を示した。したがって,竹林の林内では,タケノコが稈となって以降に密度依存的な枯死が生じ,拡大しつつある部分では,タケノコの段階からランダムに分布して密度依存的な枯死を避けているものと考えられた。
著者
"坂本 圭"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.471-484, 2006

"わが国の医療費は,1961年に実施された「国民皆保険」により,高度経済成長と比例して増加してきた.このことが,わが国の医療サービス,医療技術を発展させ,すべての国民が安心して生活できる環境を作り上げる要因のひとつになったと言える.しかし,その一方で国民医療費は,単に,少子高齢化だけでなく,医療保険制度自体が内包する制度的問題点により,高度経済成長終焉後も増加の一途をたどってきた.その間,幾度となく制度改革はなされたものの,医療費増加に対する十分な効果は今のところ得られていない.その背景には,「供給サイドの改革」が不十分であることがあると考える. そこで,本稿では,医療費抑制策を精力的に行った5カ国(ドイツ,フランス,イギリス,スウェーデン,アメリカ)の事例を取り上げ,「需要サイドの改革」「供給サイドの改革」について吟味し,日本の医療費抑制策と比較分析を行った.分析の結果,以下の内容が明らかになった. (1)諸外国では,「供給サイドの改革」を行うことにより,一定の医療費抑制効果が見られた. (2)わが国では,ほとんど「供給サイドの改革」が行われていない結果,効果的な医療費抑制に繋がらなかった."
著者
サロインソン ファビオラ ベイビ 坂本 圭児 三木 直子 吉川 賢
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.15-20, 2006-08-31
参考文献数
15
被引用文献数
1 9

拡大しつつあるハチク林の動態を明らかにするため,落葉広葉樹二次林に隣接するハチク林で稈のセンサス調査を12年間継続した。落葉広葉樹二次林と接する部分では,稈の葉群が林冠木の樹冠より高い場合や樹冠と接する場合があり,ハチク林の拡大を可能としていると考えられる。ハチク林では,落葉広葉樹二次林へ稈を侵入させることによって,林分の稈密度と地上部バイオマスが増加し,最前線の稈の位置は落葉広葉樹二次林の方向へ12年間で7m距離を伸ばした。侵入している稈のサイズは,竹林内部の稈のサイズと異なっていなかった。一方,ハチク林拡大の過程で,ハチクによる被圧のため下層木の枯死が著しかった。
著者
坂本 圭司 赤崎 弘平
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.66, no.548, pp.185-192, 2001
被引用文献数
2 2

The first building height limitation in Chicago was enacted in 1893. This paper is to review the process in enacting the limitation, from its drafts to the enacted limitation, and Chicago's own social context that enabled lawmakers to enact such a limit. Specifically, this paper is to focus on: 1) what urban problems were arising from the boom of "skyscrapers," 2) who took part in a series of discussion in conjunction with building height controls, for what intentions they agitated the matter, and whose intentions were brought into the enacted limitation, 3) what influence the limitation caused to the city and whether the lawmakers' intentions were realized.