著者
庭山 和貴 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.598-609, 2016
被引用文献数
11

本研究の目的は, 教師の授業中の言語賞賛回数が自己記録手続きによって増えるか検討し, さらにこれが児童らの授業参加行動を促進するか検証することであった。本研究は公立小学校の通常学級において行い, 対象者は担任教師3名とその学級の児童計85名(1年生2学級, 3年生1学級)であった。介入効果の指標として, 授業中に教師が児童を言語賞賛した回数と児童らの授業参加行動を記録した。介入効果を検証するために多層ベースラインデザインを用いて, 介入開始時期を対象者間でずらし, 介入を開始した対象者と介入を開始していない対象者を比較した。ベースライン期では, 介入は実施せず行動観察のみ行った。介入期では, 教師が授業中に自身の言語賞賛回数を自己記録する手続きを1日1授業行った。また訓練者が, 教師に対して週1~2回, 言語賞賛回数が増えていることを賞賛した。介入の結果, 3名の教師の言語賞賛回数が増え, 各学級の平均授業参加率も上昇した。フォローアップにおいても, 教師の言語賞賛回数と学級の平均授業参加率は維持されていた。今後は, 授業参加率が低い水準に留まった数名の児童に対する小集団・個別支援を検討していく必要があると考えられる。
著者
大対 香奈子 大竹 恵子 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.135-151, 2007-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
99
被引用文献数
3 3 6

不登校やいじめなど, 子どもの学校不適応問題が深刻化し続けている中, 子どもの学校不適応に関する研究や不適応改善のための取り組みが盛んに実施されている。しかし, 学校適応の定義が一貫していないために, 学校適応の測定に用いる指標や介入の効果検証の仕方は研究間で様々である。特に現在注目を集めているのは不適応の予防であり, 効果的な予防介入を実施するためには, 子どもの学校適応の正確かつ妥当なアセスメントが必要になる。本論文では, 先行研究の展望により学校適応の概念をまとめ, 学校適応アセスメントの理論的基盤となる三水準モデルを提唱した。このモデルでは, 水準1として感情や認知を含めた子どもの行動的機能, 水準2として子どもの行動が学校環境の中でどのように強化され形成されるのかという環境の効果に注目した学業的・社会的機能, 水準3として個人の行動と環境との相互作用の結果として生じる子どもの学校適応感という3つの水準から子どもの学校適応状態を把握する。また, これまでに実施されている予防介入の限界と課題から, より効果的な予防介入に必要なアセスメントについて三水準モデルをもとに検討する。
著者
野田 航 松見 淳子
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.13-25, 2010-01-30

研究の目的本研究では、児童の漢字の読みスキルの保持・耐久性・応用に及ぼす流暢性指導の効果を検討した。研究計画個体内実験計画を用いた。場面公立小学校の特別支援学級の教室内において行われた。対象児公立小学校の特別支援学級に在籍する5年生の男児1名が参加した。介入まず、対象児は100%正しく漢字を読むことができるようになるまで、離散試行手続きによる漢字の読みの指導を受けた。その後、半分の漢字については流暢性指導、もう半分の漢字については正確性指導による指導を受けた。流暢性指導では、速く正確に漢字が読めるように30秒タイムトライアルによる指導を行った。正確性指導では離散試行手続きによる指導を行った。正確性指導における試行数はヨークト手続きによって統制した。行動の指標正しく読めた漢字の数と間違った漢字の数を指標とした。結果流暢性指導を行った漢字は、正確性指導を行った漢字よりも、漢字単語の読みを短文内の漢字の読みに応用できるようになっていた。結論流暢性指導によって、漢字の読みの応用を促進することができた。
著者
馬場 ちはる 佐藤 美幸 松見 淳子
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.26-42, 2013

通常保育場面ならびに通常学級には多様な行動を示す幼児・児童・生徒が在籍しており、支援ニーズのあることが明らかにされている。その対応策として、問題行動の低減と望ましい行動の増大における効果が報告されている機能的アセスメントに基づく支援が挙げられる。本研究の目的は、通常学級における機能的アセスメント研究のレビューを行い、それらの研究が1)通常学級で求められている多様な参加者、幅広い標的行動、統合場面、先行事象への着目、教師による支援実施に到達しているか否かを明らかにすること、および2)支援の効果を検討することであった。そのために、1982-2010年に出版された国内外の通常学級における機能的アセスメント研究39本を対象に、「出版年」、「参加者属性」、「標的行動」、「場面」、「アセスメント」、「支援」および「評価」の各項目に関して分類・分析を行った。その結果、参加者の有する診断は多様であり、統合場面でのアセスメントや支援の実施、先行事象の考慮、および教師による支援の実施がなされていたことが明らかとなった。支援では、妨害/攻撃行動を対象にその有効性が確認された一方で、新たな研究の方向性として静かで目立だないが授業参加では問題となる多様な行動(例えば、手遊びなど)への応用が考えられた。今後、望ましい行動の促進を目指した実践も含め、機能的アセスメントのさらなる応用と普及が期待される。