著者
板倉 陽一郎 寺田 麻佑
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2015-DPS-164, no.1, pp.1-7, 2015-09-03

長年,個人情報保護法はクラウド・コンピューティングの利用が個人情報の取扱いの委託に該当するかという問題について目を背けてきたが,マイナンバー法の本格施行,改正個人情報保護法における越境移転制限・記録義務の導入により正面からの議論が必要となってきた.本稿ではこれまでの議論・学説を整理するとともに,可能な限り諸外国での議論についても触れる.
著者
板倉 陽一郎
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.99-111, 2015

<p>パーソナルデータの利活用に関する制度見直しは, 内閣官房IT総合戦略本部に設置された「パーソナルデータに関する検討会」において検討が進められ, 平成25年12月には「パーソナルデータの利活用に関する制度見直し方針」が, 平成26年6月には「パーソナルデータの制度改正大綱」が, それぞれIT総合戦略本部決定され, これを元に個人情報保護法の改正案が作成されるものと思われた。しかしながら, 平成26年12月の検討会で公表された「個人情報の保護に関する法律の一部を改正する法律案(仮称)の骨子(案)」は, 「大綱」からかけ離れた内容を含んでいる。具体的には, ①「個人情報」の定義については, 「大綱」が保護対象の見直しについては「機動的に行うことができるよう措置する」とされたものの, 政令事項となり, 更に議論しなければならない。②匿名加工情報(仮称)については, 「民間の自主規制ルール」に関する規律がほぼ無内容となった上で, 自主規制ルールではなく個人情報保護委員会規則での規律は非現実的である。③利用目的制限の緩和は, 本人の感知しないまま利用目的の変更を認めるものであり, OECDプライバシーガイドライン違反のおそれがある他, 経済界からも, 消費者の信頼を得られず, 導入できないとの声が上がっている。④外国にある第三者への提供の制限については, 一般的な第三国への移転概念と異なる日本独自の概念を創り出しており, 混乱のもとである他, 移転可能な第三国をホワイトリスト方式にすることとしており, 外交上の困難を招来するものである。</p>
著者
板倉 陽一郎
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2014-EIP-63, no.3, pp.1-6, 2014-02-14

第 185 回国会において成立した 「消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律」 は,集団的消費者被害についてこれを回復するための特別の手続を定めるものである.集団的消費者被害については,インターネットを通じてこれが引き起こされることも数多く存在し,同法のインターネット上の事案への適用について,問題となる点を考察しておくことは,今後の同法の運用にも関連し,重要である.本稿では,同法の概観と,インターネット上の事案への適用について考察する.
著者
板倉 陽一郎
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2013-EIP-60, no.12, pp.1-6, 2013-05-09

ストリートビュー事件高裁判決(福岡高判平成24年7月13日判例集未登載(平成23年(ネ)第439号))高裁判決は,原審である地裁判決に続き,Googleストリートビューにおける屋外の洗濯物撮影にかかる損害賠償義務を否定したが,プライバシー侵害の主張のみならず,個人情報保護法違反についての主張,プライバシー配慮義務違反についての主張に判断を下しており,我が国個人情報保護制度への示唆を含むものである。本稿では,上記高裁判決についての分析を加えると共に,今後の個人情報保護制度をめぐる議論への有益な示唆を指摘するものである。
著者
間形 文彦 藤村 明子 亀石 久美子 加藤 俊介 板倉 陽一郎
雑誌
研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:21888906)
巻号頁・発行日
vol.2019-DPS-180, no.3, pp.1-8, 2019-09-12

「パーソナルデータは新しい石油」 といわれ,その利活用がユーザや社会に利便性と新たな価値を提供している.その一方で,本人の意思に反する利活用をした事業者が法的制裁を受け,社会的な批判を浴びる事例も後を絶たない.事業者は個人情報の利用目的を特定し,通知又は公表若しくは同意を得てその目的の範囲内で取扱うことはもちろん,その目的と取扱いをユーザにより分かりやすく説明する責任がますます求められる傾向にある.同じユーザに対して複数のサービスを展開する事業者の場合,サービスごとに個人情報の利用目的を次々と定めることが多い.その場合,業務と利用目的の対応関係は複雑となりがちで,複数サービスの提供を受けるユーザは自分の個人情報が何の目的で利用されるのか把握するのは容易でない.他方,事業者にとっても複数の業務において利用目的を逸脱せずに個人情報を扱えるか正しく判断することは困難となる.そこで,数多くの外延を列挙して定義する従来の利用目的の特定方法に代わり,ユーザの意思決定に重要な契約履行上の必要性と利用行為の方向性の 2 つの軸による内包的枠組みを用いて利用目的を分類する方法を提案し,その枠組みを適用した事例を紹介する.
著者
板倉 陽一郎
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告デジタルドキュメント(DD) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.128, pp.9-14, 2006-11-30
参考文献数
10

昨今,ブログやSNSが「炎上」したとの報道が後を断たない。「炎上」状態にあっては,民事・刑事的に名誉毀損にすら該当する批判的書き込みが溢れ返り,情報発信源は①閉鎖,②意見欄停止,③放置,などの対応を余儀なくされる。しかしながら,民事・刑事的な対応は稀である。本稿は,炎上状態の背景には「意図せぬ公人化」現象があると考える。「公人」概念を扱った裁判例の分析により,「公人」概念は幅を持ち,私人が「公人性」を備えることで名誉毀損からの保護が減弱するとの帰結が得られる。そして,「意図した公人化」と異なり,「意図せぬ公人化」においては保護減弱が不当であることを明らかにし,対応策として「公人」概念の不適用と名誉毀損罪の非親告罪化を提案する。These days, there is much news that blogs and SNS profiles are "burned". On "burned" blogs and SNS profiles, many libelous comments are posted, owners of them are forced 1)closing, 2)stopping space of comments, or 3)giving up. However, they scarcely institute civil action, or accuse them. In this paper, "Unintended being public figure" is supposed as a background of "burning". From Cases about "public figure", we can find that a concept of "public figure" has width, and to be "public figure", private figure lost protection from libels gradually. In the case of "Unintended being public figure", to lost protection is injustice, a concept of "public figure" must not be applied, and libel should not require accusation.