著者
小林 美恵子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.106-123, 2019-12-31 (Released:2019-12-31)
参考文献数
19

女性文末助詞「わ」「かしら」不使用など、日本語の中性化がいわれているが、作家性が反映するTVドラマや映画では、自然談話よりも女性・男性形式の使用が残っているという。しかしこれらの分野でも、現実の影響を受けた作家性の変化や、観客に受容されるリアリティから、通時的にみれば中性化は進んでいる。映画『何者』の文末形式や、丁寧体の使用、若者ことばなども中性化してきている。一方、一部の男性文末助詞や「すげー」「ねー」などの音変化、人の呼び方などについては、男女差があいかわらず残っているが、それらは自然談話の状況とほぼ一致し、実際の話しことばを反映しているといえる。
著者
小林 美恵子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.21-38, 2021-12-31 (Released:2021-12-31)
参考文献数
11

映画『何者』などで男子大学生どうしの親密さを表すものとして、中性化しないいわば「男性特有」の話し方(形式)が存在する。このような話し方が自然談話ではどのように現れるかを『談話資料・日常生活のことば』において検討した。その結果、全体では1/5程度の男性話者がこのような話し方をしていること、特に20代と60・70代にめだつことがわかった。その理由は対話の相手との関係(親しさなど)によると考えられる。また、特に高年代では使用のバリエーションや現れ方が多様で、映画に現れる高年代の男性のことばや話し方とは必ずしも同じようではないということもわかった。
著者
山本 愛 林 美恵子 飯田 智子 多田 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.75, 2006 (Released:2006-11-06)

<はじめに>術後の患者は、術前からの絶飲食、手術中の挿管による口腔内の乾燥、副交感神経遮断薬使用による分泌物抑制、また術後の発熱などによる不感蒸泄など、さまざまな要因で口渇が生じやすい。従来、当病棟では口渇時は水による含嗽をすすめている。しかし、術後口渇を訴える患者は多い現状にある。そこで今回、唾液の分泌作用・清涼作用のあるレモン酢に注目し、口渇への効果があるか検討した。<研究方法> 目的:口渇に対するレモン酢の効果を知る。 期間:平成17年12月1日から平成18年2月28日。 対象:全身麻酔下で消化器開腹手術を受けた、術後2から3日目の絶飲食期間の患者11名。 方法:1.患者11名に対し、レモン酢を40倍に希釈したレモン酢水(以下40倍レモン水)・50倍に希釈したレモン酢水(以下50倍レモン水)・水道水の3種類での含嗽を実施。実施後は、患者が口渇緩和になると感じた含嗽を行う。希釈倍数は、無作為に選出した看護師に2種類のレモン水含嗽を行い、40倍をすっぱいと感じ50倍をすっぱいと感じなかった結果から決定した。 2.含嗽後、アンケートに沿って聞き取り調査を行う。<結果>口渇は10名が感じ、口渇のなかった1名はレモン水含嗽を行うことで口渇だったことが分かったと答えている。2種類のレモン水含嗽で3名が口渇は残ると答え、「早く飲みたい」という意見が強かった。全員が50倍レモン水での含嗽を続けていた。水道水は、「味がなくすっきりしない」「口の中がすぐに乾燥する」、50倍レモン水は口腔内の潤いを感じたと全員が答えていた。50倍レモン水は、味覚において不快に感じた人はおらず、「すっきりする」「さっぱりして気持ちが良い」と全員が答えた。しかし、40倍レモン水はレモン特有の酸味が強くなり後味が悪くなると3名が答えた。また2名の患者が氷を入れて含嗽を行っており「すっきりする」「生き返ったようにな」との言葉が聞かれた。<考察>50倍レモン水で全員が口腔内の潤いを感じたことは、レモン酢に含まれるクエン酸や酢酸の唾液分泌効果によるものと考える。一時的とはいえ口渇への緩和につながったのではないか。今回、絶飲食を強いられた患者にとって飲めないというストレスが生じている。レモン水含嗽を行っても口渇が生じたことは「飲みたい」という意識が高まっているからだと考える。術後苦痛が強いなか、患者の言葉からも、口渇という苦痛を緩和させることができ、同時にストレスも緩和できたと考える。今回、すっぱいと感じる40倍レモン水で不快を感じたことから、レモン特有の酸味を強くすることは、術後の患者に刺激を与え不快を生じ逆効果とわかった。術後回復過程をたどる患者に、絶飲食中に爽快感を得る50倍レモン水含嗽は有効であった。また、氷を入れて含嗽を行っていることから、口渇緩和と温度の関係も調べていけたのではないか。<まとめ>1.50倍レモン酢水は、一時的な口渇緩和での効果がみられ、口渇という苦痛の緩和にもつながる。2.術後の患者には、40倍レモン酢水の強い酸味で不快を与える。
著者
小林 美恵子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.3-20, 2020-12-31 (Released:2020-12-31)
参考文献数
16

映画『何者』などにみられた若い女性のことばの中性化の傾向が、自然談話ではどのように現れているのかを比較検討した。その結果、若い世代のことばの中性化は『何者』ほど極端ではないものの同様に進んでいること、高年代では女性形式、中性形式、男性形式にまたがる多様な形式を使用する話者がいることが分かった。高年代の多様化については、「女性語」話者の高齢化、役割語としての「おばあさん」語の影響などが考えられる。
著者
小林 美恵子
出版者
現代日本語研究会
雑誌
ことば (ISSN:03894878)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.29-45, 2017-12-31 (Released:2018-01-12)
参考文献数
3

日本国憲法口語訳の「話しことば」文体について分析・記述する。口語訳には、「国民」を「俺」とし、「お前」の呼びかけを用いること、文末に「命令」「禁止」「依頼」「許可」「勧誘」など訴え型の述語形式が使われ、「よ」「ね」「な」「ぜ」などの終助詞が多用されていることなど、憲法原文にはない特徴が見られる。これらは、20代男性の訳者(話者)の立場から、同年代以下の親しい友人などを相手として想定した「話しことば」文体で書かれていることによる。それは憲法に対する親しみを喚起しているが、同時に口語訳されることによる解釈の制約や限界もある。
著者
土井 幸輝 小田原 利江 林 美恵子 藤本 浩志
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
福祉工学シンポ
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.201-204, 2003
被引用文献数
2

点字は, 視覚障害者にとって自らが読み書き出来る唯一の文字として一般に知られているが, 近年, スクリーン印刷による紫外線硬化樹脂インク点字(以下UV点字と記す)サインが, 共用品として急激に普及している。しかし, 製作者ごとにUV点字パターン(点間隔・高さなど)が大きく異なるため, 触読しにくいことが指摘されている。そのため, 現在, UV点字に関する日本工業規格化が検討されている。そこで, 本研究では, 触読しやすいUV点字パターンを明らかにすることを目的とし, ヒトの指先の皮膚感覚レベルで, 点字の点間隔・高さの違いがどの程度識別容易性に影響を与えるのかを調べた。実験には, 点字触読における経験要素を排除するため, 晴眼者に参加してもらい, さまざまな点間隔・高さの6文字(1点欠け)について, 同定課題を行った。これより, 識別しやすいUV点字パターンの有用な基礎データが得られた。