著者
柚木 朋也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 36 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.361-362, 2012-08-27 (Released:2018-05-16)

この研究の目的は,身近な素材である凍結防止剤から再結晶により結晶を生成し,その結晶の利用について検討することである.凍結防止剤からは,容易に,安価に,美しい結晶を生成することができた.その結晶は,塩化カルシウム6水和物(CaCl_2・6H_2O)であり,自然に産するものは南極石と名付けられている.そして,それを利用した結晶生成実験では,結晶の成長の様子を容易に観察することができるなど,教材として効果的に活用できる可能性があることが明らかになった.
著者
柚木 朋也 伊藤 雄一 浜田 康司
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.155-168, 2016-11-18 (Released:2016-12-03)
参考文献数
29
被引用文献数
2 2

この研究の目的は, 中学校においてS霧箱を使用することにより放射線の飛跡を容易に観察できることを実証することである。霧箱を使用する実践については, 様々な霧箱で多くの実践が行われてきた。しかし, これまでの霧箱での実験では, ドライアイスや液体窒素が必要であった。そのため, ドライアイスの入手が難しい学校では, 霧箱の実験は難しかった。そこで, S霧箱を使用することにした。S霧箱は, ドライアイスなどの代わりに融雪剤(MgCl2∙6H2O)などの化学的な寒剤を使用する高性能の霧箱であり, 生徒が作ることも可能である。また, 線源は採取したホコリを使用した。北海道教育大学の部屋で集めたホコリは, 主にウラン系列の222Rnやその娘核種であることが明らかになった。また, 採取後1時間以内であれば十分に線源として使用可能であることも明らかになった。本研究では, S霧箱を実際に中学校で製作し, ホコリの放射線の飛跡を観察した。その結果, 身近にある材料だけで, 放射線の飛跡を観察することができた。そして, それまで観察が比較的困難であったβ線の飛跡を生徒が容易に観察できることが明らかになった。また, 授業前と授業後で生徒の放射線に対する認識の変容が見られた。これらのことから, ドライアイスが無くても, S霧箱と寒剤を使用した授業が中学生にとって有効であることが明らかになった。
著者
柚木 朋也 津田 将史
出版者
日本物理教育学会
雑誌
物理教育 (ISSN:03856992)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.184-187, 2012-09-03 (Released:2017-02-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究は,霧箱の冷却において,従前のドライアイスの代わりに寒剤を使用する方法について論じたものである。ドライアイスを利用した霧箱では,ドライアイスの保存が難しく,地方においては入手が難しいという問題点がある。そこで,本研究では,霧箱の冷却に塩化カルシウム6水和物(CaCl_2・6H_2O)を寒剤として利用することを試みた。その結果,寒剤を用いた霧箱においても放射線の飛跡が観察できることが明らかになった。
著者
柚木 朋也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.332-339, 2012-12-10 (Released:2017-06-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1

The purpose of this study is to develop a teaching material on crystallization and to examine the utilization of the crystal in order to arouse pupils' and students' interest in crystals and learn about it effectively. We made a highly-pure crystal from antifreezing agent, which is a familiar material. It consists of CaCl_2・6H_2O, the same ingredient as Antarcticite. Using the crystal, we examined ways of utilizing it for an experiment showing how the mineral crystal is formed. This teaching material has the following characteristics: a. A familiar material is used. b. A highly-pure and beautiful crystal can easily and cheaply be made. c. A crystal equal to a naturally occurring mineral can artificially be made. d. The melting point of CaCl_2・6H_2O is 29.6℃, making it possible to safely study the crystallization and melting of the crystal. e. By using CaCl_2・6H_2O, aspects of crystal growth and the experiment on the formation of the mineral crystal can be observed easily. In summary, we found that the experiment of crystallization treating the antifreezing agent can be utilized safely and effectively as a teaching material.
著者
脇島 修 猿田 茂 藤岡 達也 江坂 高志 山本 勝博 永尾 好輝 角谷 知彦 脇島 修 柚木 朋也
出版者
大阪府教育センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

PHS回線を利用した情報通信ネットワークを構築し、大阪府教育センターと研究協力員の小学校において、物理領域(1校)、化学領域(3校)、生物領域(2校)の遠隔実験授業を実践した。通信用のソフトウェアとしてはMicrosoft社のNetMeetingを使用している、画像等はデジタルビデオカメラで、音声はマイクでパソコンに取り込まれ、PHSで学校に配信される。通信速度が最大64kbsであるため、フレーム数は1秒間に1ないし2コマである。電波状態が良好な場合でも、速い現象には追随できない。動画は予め、ファイルで転送しておく。配信された画像やファイルはクラス全員が見やすいようにプロジェクターで拡大した。授業内容については、物理領域においては、「電流のはたらき」による発熱に焦点をあてた。発熱と発光に関連して、液体窒素中で炭素芯に電流を流し、発光させ、電球への仕組みへと発展させた。化学分野については「ものの溶け方」の項目の中で溶液からの巨大結晶づくりに関連するものであった。生物分野ではモンシロチョウの卵から成虫になる過程や昆虫の体のつくりを学習させた。特に、昆虫の食べ物や食べ方に焦点をあて、電子顕微鏡を用いた昆虫の口のつくりの観察を含めて小学校3年で2校実践した。授業実施後の児童へのアンケート調査によれば、今後も今回のような遠隔授業を受けたいと答えたものが96.7%あった。また、授業の内容がよくわかった及びだいたいわかったと答えたものの割合も81.5%あり、今回の授業の内容が発展的であることを考えあわせると、この遠隔授業により、児童の興味関心が引き出され、理解を進めたといえる。
著者
柚木 朋也
出版者
岸和田市立旭小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2010

研究目的:本研究では、創造性に関わる研究の一つとして、創造性育成と大きくかかわる推論であるパースのアブダクションを明確にしようと試みた。そして、アブダクションに関わる理科教材の開発と指導についての分析を行うことで、論理的な思考の育成方法の開発を試みた。研究方法:創造性の育成については様々な見解があり、多くのアプローチがなされている。本研究では、創造性は推論あるいは論理的思考と強く結び付いていることを踏まえ、論理的思考の育成、特にアブダクションの解明とその活用に重点を置いた。具体的には、アブダクションの概念を明確にした上で、創造性を育成するための理科教材の開発について検討した。また、様々な授業、研修、地域における科学教室において使用した「振り子時計」、「映像を利用した天体」、「メッキの実験」などについて分析し、検討した。成果:アブダクションの基礎は、演繹にあり、探究の過程の中で他の推論とかかわり合いながら深められることが明確になった。そのため、論理的思考を高めるためには、それぞれの場面でどのような推論がなされるかを分析することが重要であると考えられる。実際に、「水撃ポンプ」や「フロッピーディスクケースを利用した燃料電池」などに関して分析を試みた結果、アブダクションの関与が明確になった。さらに、教材を使用した種々の実践を検討し、どのような思考の流れがなされるかの分析を行った結果、思考の流れを制御することで探究の過程をより効果的に行わせることが明らかになり、論理的思考や創造性を育成する視点を明確にすることができた。