著者
柴田 政彦 寒 重之 大迫 正一 三木 健司 栁澤 琢史 助永 憲比古 恒遠 剛示 新田 一仁 岩下 成人 福井 聖 黒崎 弘倫 中野 直樹 若泉 謙太 上嶋 江利 本山 泰士 高雄 由美子 溝渕 知司
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.189-196, 2016-11-26 (Released:2017-01-27)
参考文献数
37

The review was performed to investigate the functional brain alterations in patients with various kinds of chronic pain including fibromyalgia, chronic low back pain, migraine and the other chronic pain conditions. In these patients functional connectivity was different not only in the sensory–motor system but also in the affective and reward system. New technology have allowed us to identify and understand the neural mechanisms contributing to chronic pain, which provides us novel targets for future research and treatment.
著者
西本 伸志 福間 良平 栁澤 琢史 貴島 晴彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.12, pp.896-903, 2018 (Released:2018-12-25)
参考文献数
19

近年の機能的磁気共鳴画像法 (fMRI) 技術の進展および機械学習技術の高度化に従い, 日常的な知覚・認知に関わる脳機能・脳内情報の定量的な解明が進んでいる. このような研究は, 全脳を対象とした包括的脳機能マップに基づく術前・術中の情報提供や, 侵襲脳計測・刺激技術を介した高度なブレイン・マシン・インターフェースなど, 先進的な技術の数理基盤となる可能性がある. 本稿ではこれら最近の脳情報の解明に関する現状と展望について紹介する.
著者
栁澤 琢史
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.35-41, 2021-04-30 (Released:2021-06-18)
参考文献数
27

Phantom limb pain is an intractable pain for which no effective treatment has been establish­ed. The pain has been attributed to abnormal plastic changes in the sensory motor cortex corresponding to the deafferented body part. Some feedback therapy such as mirror therapy have been applied to modify the abnormal cortical changes, although it is not been unveiled how to change the corresponding sensory motor cortex to reduce pain.We have applied neural decoding to magnetoencephalography (MEG) to extract motor information of the upper limb, and realized a Brain–Computer Interface (BCI) that allows patients to operate a prosthetic hand as if they were moving a phantom limb. In addition, we have demonstrated that neurofeedback (NF) training to control the BCI induced plastic changes in the patient’s sensorimotor cortex and changes in the pain. Actually, the training to attenuate the motor representation of the phantom limb reduced the pain.In addition, we evaluated the efficacy of the NF training by a blinded crossover trial of training with three consecutive days. Twelve patients were trained to control the phantom limb images, that were controlled through BCI. After three days NF trainings, the pain assessed with the Visual Analogue Scale (VAS) was significantly reduced for five days. Furthermore, the pain reduction was associated with the attenuation of the motor representation of phantom limb. These results suggest that the residual motor representations of phantom limb cause the phantom limb pain.We have demonstrated that the NF training elucidates the pathogenesis of chronic pain and develops a new treatment.
著者
栁澤 琢史 畑 真弘 福間 良平 石井 良平 吉山 顕次 原田 達也 池田 学 貴島 晴彦
出版者
日本脳神経外科認知症学会
雑誌
日本脳神経外科認知症学会誌 (ISSN:24360937)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-6, 2021-02-26 (Released:2021-03-04)
参考文献数
23

認知症は世界的に増加傾向にあり、特に発展途上国での増加が目立つ。そこで、非侵襲的で安価な検査手法が望まれる。近年の深層学習の発展により、安静時脳波・脳磁図に深層学習を適用することで、旧来の脳波特徴に機械学習を用いた場合よりも高い精度で、安静時脳波・脳磁図を識別できるようになった。しかし、深層学習を医療応用する際には幾つかの注意点が挙げられる。本稿では我々が進めている認知症脳波の深層学習による識別を例にとり、安静時脳波・脳磁図を深層学習で識別する医療応用について概説する。
著者
栁澤 琢史
雑誌
第43回日本神経科学大会
巻号頁・発行日
2020-06-15

脳情報の解読と制御は神経科学の発展に伴って現実的な技術となり、様々な医療応用が期待されている。脳波や脳磁図、fMRI、NIRSなど様々な脳信号に対して機械学習を適用することで、知覚認知内容や運動状態などを推定できる(脳情報解読、Neural Decoding)。また、Neural decodingの結果に基づいてロボットやコンピュータを脳信号から制御できる(Brain-Computer Interface, BCI)。我々は、人の頭蓋内に電極を留置して脳波を計測する皮質脳波に対してNeural decodingを適用し、ロボットハンドを制御するBCIを開発した。特に筋萎縮性側索硬化症(ALS)により重度の運動機能障害がある患者に対して、感覚運動野へ頭蓋内電極を留置しBCIの有効性を評価する臨床研究を行い、重度麻痺があってもBCIにより意思伝達できることを示した。しかし、ALS患者では進行性に運動野活動が減弱するため、運動情報に基づくBCIには限界がある。そこで、後頭葉や側頭葉などALS患者でも比較的、機能が保たれる領域から皮質脳波を計測することで、意思伝達を実現するBCIを目指している。多様な意味内容の動画を視聴している際の皮質脳波を計測し、動画の意味内容を、word2vecを用いてベクトル化し、これを皮質脳波から推定し、視覚的意味内容推定に基づくBCIを開発した。 BCIは、neural decodingを介して、脳と機械がインタラクションする技術でもある。脳がBCIを介してどの程度の情報を操作できるか、また、BCIの操作に習熟することで、脳にどのような変化が誘導されるのかは、BCIの可能性を知り安全性を高める上で重要な神経科学的問題でもある。我々は脳磁図を用いた非侵襲型BCIを開発し、様々なBCI操作に習熟することによる脳活動及び神経症状の変化を探索した。特に感覚運動野の皮質活動に基づいたBCIによりロボットハンドを制御し、これを上肢に幻肢痛がある患者に適用したところ、BCI使用後には、患者の感覚運動野に可塑的変化が誘導され、幻肢痛も制御されることを明らかにした。同様の方法は視覚認知機能の修飾などにも効果が期待される。 異常な脳活動状態に起因する精神神経疾患に対して、Neural decodingを用いた活動状態の解読と、neurofeedbackによる活動修飾は、新たな治療オプションになると期待される。脳情報の解読と制御を神経科学的に理解し、精神神経疾患の新しい診断·治療につなげる我々の取り組みを紹介する。 .