著者
圓尾 知之 中江 文 前田 倫 高橋−成田 香代子 Morris Shayn 横江 勝 松崎 大河 柴田 政彦 齋藤 洋一
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.43-53, 2013-03-10 (Released:2013-04-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1 12

Background: The revised version of Short-Form McGill Pain Questionnaire (SF-MPQ-2) has been developed as a tool for measuring both neuropathic and non-neuropathic pain which can be used in studies of epidemiology, pathophysiologic mechanisms, and treatment response. SF-MPQ-2 was expanded and revised from the Short-Form McGill Pain Questionnaire (SF-MPQ-1) pain descriptors by adding symptoms relevant to neuropathic pain and by modifying the response format to a 0 - 10 numerical rating scale. In this study, we translated the SF-MPQ-2 into Japanese. The aim of this study was the validation of a Japanese version of the SF-MPQ-2 in patients with neuropathic pain. Materials and Methods: A total of 110 chronic pain patients from Osaka University Hospital and Nishinomiya Municipal Central Hospital were enrolled in this study, with 87 (47 males, 40 females) patients completing the study. Enrolled patients completed the SF-MPQ-2 which had been translated into Japanese. To evaluate the validity of the SF-MPQ-2 questionnaire, an exploratory factor analysis was performed. For assessment of reliability, we used internal consistency reliability coefficients (Cronbach's alpha coefficient) and the test-retest method test (Intraclass Correlation Coefficient; ICC) for the SF-MPQ-2 total and subscale scores. Validity was evaluated by examining the associations between the SF-MPQ-2 total and subscale scores and other measures. Results: The internal consistency (Cronbach's alpha coefficient; continuous pain; α=0.883, intermittent pain; α=0.856, predominantly neuropathic pain; α=0.905, affective descriptors; α=0.863, total score; α=0.906) and reproducibility coefficient (ICC; continuous pain; ρ=0.793, intermittent pain; ρ=0.750, predominantly neuropathic pain; ρ=0.819, affective descriptors; ρ=0.760, total score; ρ=0.830) were high. There were significant correlations between SF-MPQ-2 and other functional assessments. Conclusion: Our findings showed excellent reliability and validity for the Japanese version of the SF-MPQ-2 in pain patients, and the results of both exploratory and confirmatory factor analyses provided support for four readily interpretable subscales (continuous pain, intermittent pain, pre-dominantly neuropathic pain, and affective descriptors). These results provide a basis for use of the SF-MPQ-2 in future clinical research, including clinical trials of treatments for neuropathic and non-neuropathic pain conditions.
著者
植松 弘進 安田 哲行 田渕 優希子 真下 節 下村 伊一郎 柴田 政彦
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.102-106, 2013 (Released:2013-07-06)
参考文献数
13
被引用文献数
1

オピオイド長期投与中,内分泌機能低下症をきたした症例を経験した.症例は51歳男性で交通外傷による末梢神経障害を伴う左下肢複合性局所疼痛症候群の診断にて,受傷1年後より加療中であった.当初行われた投薬・神経ブロック等により痛みはコントロールでき,職場復帰していた.残存する痛みに対し受傷3年後より塩酸モルヒネによる内服加療を開始し痛みは軽減されたが,同時期より性欲低下の自覚症状が出現した.受傷7年後にはフェンタニル貼付剤へと変更し痛みのコントロールはさらに良好となったが,変更後数カ月で急激な体重減少(合計-24㎏)をきたし,変更後半年で強い全身倦怠感と食欲不振も出現し就労不可能となった.内分泌機能異常を疑い行ったホルモン負荷試験等の結果より,オピオイドによる続発性副腎機能低下症および中枢性性腺機能低下症と診断された.痛みのためにオピオイドを完全に中止できなかったため,トラマドール内服へと変更しホルモン補充療法を行った.ホルモン補充療法開始後は全身倦怠感等の自覚症状は改善した.このエピソードをきっかけに抑うつ状態となり職場復帰は果たせていないものの約9カ月で体重も回復した.
著者
住谷 昌彦 柴田 政彦 眞下 節 山田 芳嗣 厚生労働省CRPS研究班
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.420-429, 2010 (Released:2010-09-15)
参考文献数
16
被引用文献数
3

複合性局所疼痛症候群(CRPS)は激しい痛みに加え,早期から廃用障害を引き起こすことがある.1994年に国際疼痛学会(IASP)からCRPSの判定指標が提唱され広く利用されるに至ったが,その曖昧さから感度は高いが特異度がきわめて低いという問題点が指摘された.米国ではこの問題を解消しようと特異度を効率的に上げる研究がなされ,新たな判定指標が提唱された.そこで厚生労働省CRPS研究班が組織され,米国の研究にならい本邦独自のCRPS判定指標作成を行った.本稿では,a)本邦のCRPS患者の評価と判定指標の作成と,b)CRPS type 1とtype 2という分類の必要性の2点について概説する.
著者
田渕 優希子 安田 哲行 北村 哲宏 大月 道夫 金藤 秀明 井上 隆弥 中江 文 松田 陽一 植松 弘進 真下 節 下村 伊一郎 柴田 政彦
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.17-23, 2013 (Released:2013-03-22)
参考文献数
38

近年,非がん性慢性痛に対するオピオイド処方の選択肢が広がったことにより,オピオイドによる内分泌機能異常発症に留意する必要性がある.内分泌機能異常としては性腺機能低下症が最も多いが,副腎機能低下症や成人GH(成長ホルモン)分泌不全症の報告例も散見される.これらの内分泌機能異常は単に患者のQOLを低下させるのみならず,さまざまな代謝異常,臓器障害を呈し,時に生命の危機にかかわる病態へと進展することもある.現時点で,これらの内分泌機能異常がどのような患者に惹起されやすいかは明らかではなく,また内分泌異常の診断も必ずしも容易ではない.しかし,これらの内分泌機能異常はオピオイドの減量,中止,あるいは非オピオイド系鎮痛薬への変更,ホルモン補充療法により改善可能な病態であることから,オピオイド投与中の患者において決して見逃してはならない副作用の一つと考えられる.オピオイドによる内分泌機能異常について基礎医学的および臨床医学的見地から解説する.
著者
柴田 政彦 寒 重之 大迫 正一 三木 健司 栁澤 琢史 助永 憲比古 恒遠 剛示 新田 一仁 岩下 成人 福井 聖 黒崎 弘倫 中野 直樹 若泉 謙太 上嶋 江利 本山 泰士 高雄 由美子 溝渕 知司
出版者
日本疼痛学会
雑誌
PAIN RESEARCH (ISSN:09158588)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.189-196, 2016-11-26 (Released:2017-01-27)
参考文献数
37

The review was performed to investigate the functional brain alterations in patients with various kinds of chronic pain including fibromyalgia, chronic low back pain, migraine and the other chronic pain conditions. In these patients functional connectivity was different not only in the sensory–motor system but also in the affective and reward system. New technology have allowed us to identify and understand the neural mechanisms contributing to chronic pain, which provides us novel targets for future research and treatment.
著者
木村 慎二 細井 昌子 松原 貴子 柴田 政彦 水野 泰行 西原 真理 村上 孝徳 大鶴 直史
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.206-214, 2018-03-16 (Released:2018-04-20)
参考文献数
29
被引用文献数
2

2011年のNakamuraらの調査では,日本人の慢性疼痛の有症率は約15%で,その患者数は増加傾向である.慢性疼痛は急性痛と異なり,通常の薬物療法が効きにくい例があり,日本整形外科学会の2012年腰痛診療ガイドラインでは,運動療法,小冊子を用いた患者教育,さらには認知行動療法がGrade Aとして強く推奨されている.認知行動療法は,ある出来事に対する認知(考え方)と行動を変えることで,問題への効果的な対処の仕方を習得させる心理教育を踏まえた治療法である.慢性疼痛患者の生活および生きがいを獲得することを目的に,筆者は認知行動療法理論に基づき,「いきいきリハビリノート」を用いた運動促進法を開発し,普及に努めている.
著者
柴田 政彦 渡邉 嘉之 寒 重之 西上 智彦 植松 弘進 宮内 哲 壬生 彰 大迫 正一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

身体部位(手)のメンタルローテーション課題を用いた心理物理学的実験では,上肢CRPS患者8名と健康成人40名のデータを取得した。両群の正答率および反応時間を比較した結果,健常者に比べCRPS患者で有意な正答率の低下と反応時間の遅延を認めた。健康成人のデータについては,これまで検討されてこなかった回転角度の増加に対する反応時間の変化にばらつきがあることに着目して統計学的解析を行った結果,4つのグループに分類することができ,「手の左右判別課題時には自身の手を動かす運動イメージを行っている」とする先行研究の結論とは異なる回答方略をとるものが存在することを明らかにした。
著者
西上 智彦 柴田 政彦
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.591-595, 2016-08-18 (Released:2016-09-16)
参考文献数
26
被引用文献数
1

痛覚の伝達経路には末梢から中枢へ向かう上行路だけでなく,下行性に痛みを抑制あるいは増強させる下行路もある.本稿では上行路(皮膚,脊髄,体性感覚野および扁桃体)と下行路(state dependent control)に分けて概説し,さらに,それぞれの経路に働きかけるリハビリテーションの臨床応用について言及する.
著者
藤田 信子 仙波 恵美子 行岡 正雄 寒 重之 柴田 政彦 高井 範子 堀 竜次 池田 耕二 高橋 紀代
出版者
大阪行岡医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究の目的は、線維筋痛症患者を対象とした短期集中型運動プログラムが、身体、認知、心理に与える影響を調査するとともに、脳内ネットワークの変化との関連性を検証することにある。平成31年3月までに合計13名の患者の運動療法、評価、計測を終了し、分析を行っている。2018年の第23回日本ペインリハビリテーション学会学術学会では、2演題を報告した。発表では高齢FM患者に対する短期集中型運動プログラムが疼痛、抑うつ、QOLの改善につながり、背外側前頭前野(DLPFC)の血流量の質的、量的な脳活動変化を伴ったこと、理学療法士が患者の不安傾向を踏まえ、運動内容を漸増的に行っていたことや規則正しい生活を守らせたことが運動療法の導入と継続につながったことを報告した。慢性痛改善に対する運動療法の効果(EIH)については、慢性痛患者の広範な脳領域の機能障害の発生機序と運動介入効果の機序を解明していくことが重要である。今年度、慢性痛における脳内ネットワークとEIHの機序について、第40回日本疼痛学会(仙波)、Nep Academy、17th World Congress on Pain(仙波)、第11回痛み研究会(仙波)で講演を行った。また、EIHに関する総説を大阪行岡医療大学紀要(仙波)、ペインクリニック(仙波)、Clinical Neuroscience(仙波)、日本臨床(藤田、仙波)、モダンフィジシャン(仙波)で執筆した。本研究のMRI画像の分析結果については、本研究の研究者間で情報共有のために研修会を開き、「線筋痛症に対する運動療法の効果のrs-fMRIによる検討」(寒)で運動プログラム介入前後の機能的結合について健康成人との比較、また患者の運動プログラム介入前後の比較でみられた頭頂葉や側頭葉の機能的結合の変化などが報告された。
著者
山田 恵子 若泉 謙太 深井 恭佑 磯 博康 祖父江 友孝 柴田 政彦 松平 浩
出版者
公益社団法人 日本産業衛生学会
雑誌
産業衛生学雑誌 (ISSN:13410725)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.125-134, 2017-09-20 (Released:2017-10-05)
参考文献数
29
被引用文献数
4

目的:就労環境における慢性痛の実態,及び慢性痛が仕事に影響する重症例でのリスク因子を明らかにする.対象と方法:大手製造業A社の首都圏にある1事業所,上記とは別の大手製造業B社の関西圏にある1事業所,及び大手小売業C社の関西圏にある16店舗,計3社18施設の被雇用者を対象に,「からだの痛みに関する調査研究アンケート」を施行した.A社B社では参加者の同意を得たうえでアンケートデータと企業健診の問診データを突合し,基本集計を行うと共に,対象者の生活習慣や心理社会的因子と慢性痛有症との関連について,性年齢調整ロジスティック回帰分析を用いて分析した.結果:調査対象2,544名のうち1,914名(男性1,224,女性690名)から有効回答が得られた(有効回答率75.2%).3か月以上持続する慢性痛を有するものは全解析対象者の42.7%であり,仕事に影響する慢性痛を有するものは全解析対象者の11.3%であった.痛みのない群と比較して,仕事に影響する慢性痛群は,肥満,喫煙習慣,不眠症,ワーカホリック度の高さ,上司・同僚からの支援の乏しさ,仕事の満足度の低さ,仕事の要求度の高さ,仕事のコントロール度の低さ,心理的ストレスの高さ,抑うつ状態と有意に関連があった.考察と結論:就労環境における慢性痛とそのリスク因子の実態が一部明らかとなった.産業衛生分野において健康関連リスク因子として重要視されてきた,肥満,喫煙,不眠症,職場環境,心理的ストレス,抑うつは職場の慢性痛対策をおこなう上でも重要であることが示唆された.
著者
岩倉 健夫 大城 宜哲 宮内 哲 時本 康紘 福永 智栄 柴田 政彦 柳田 敏雄 真下 節
出版者
Japan Society of Pain Clinicians
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.46-50, 2003

右中足骨骨折後3週間のギプス固定により右足背部に allodynia を示した患者1名を対象として, allodynia 発現時の患側および健側への非侵害刺激, allodynia 消失後の患側への非侵害刺激に対する脳賦活領域を functional MRIを用いて比較検討した. 健側への刺激では第一次体性感覚野と頭頂連合野が, allodynia 消失後の患側への非侵害刺激では第一, 第二次体性感覚野が反応したのに対し, allodynia 発現時の患側への非侵害刺激では第一, 第二次体性感覚野, 島, 頭頂連合野, 前頭前野内側部, 前帯状回, 補足運動野など広い領域で信号の増強がみられた. allodynia は, 神経損傷後や組織障害後にみられる徴候の一つであるが, その痛覚認知機能はまだ明らかではない. 本症例でみられた腫脹, 皮膚温の上昇, allodynia などのCRPS type Iの症状は自然治癒したが, 初期にはCRPS type Iの症状がそろっており, 本症例でみられた allodynia はCRPS type Iと病態は共通している. 本研究によりCRPS type Iにみられた allodynia の痛覚認知機能を知るうえでの重要な知見が得られた.
著者
吉本 陽二 長野 聖 井上 悟 柴田 政彦
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0906-C0906, 2004

【はじめに】<BR> 我々、理学療法士は疼痛の軽減を治療の目的として運動療法、物理療法を施行する。しかし、疼痛を主症状とした症例に対して疼痛軽減のみを目標に理学療法を行った場合に治療が難渋する場合が多くある。<BR> そこで今回、我々は、ペインクリニック外来を受診した患者に対してアンケートを行い、日常生活の動作能力や心理面に対する疼痛の影響について調査した。これらの結果より、疼痛を主症状とした症例に対する理学療法の目標について検討を行った。<BR>【対象】<BR> 大阪府・兵庫県の9施設のペインクリニック外来を受診し、筋骨格系疾患の診断を受けた606名を対象とした。対象者は男性284名、女性322名であり、平均年齢は56.2 ± 16.4 歳であった。<BR>【調査の方法と内容】<BR> 調査は、ペインクリニック外来初診日に以下の内容について調査を行った。疼痛の程度の評価としてvisual analog scale (VAS )と疼痛発症頻度の調査を行った。日常生活動作の障害の有無は、Pain Disability Assessment Scaleにて行い、抑うつ、不安はHospital Anxiety and Depression Scaleにて行った。<BR>【統計学的解析】<BR> VASは平均値よりも高値であった群と低値であった群の2群に分け、疼痛頻度は3群に分け、能力障害、抑うつ、不安は「ある」「なし」の2群に分けた。それらの群の関連性について年齢、性別にて調整し、多重ロジテック回帰分析を用いて統計学的解析行った。<BR>【結果】<BR> VAS と日常生活動作の能力障害の間には、関連性は認められなかった。また、疼痛頻度と能力障害の間にも有意な関連性は認められなかった。疼痛頻度と抑うつ、不安の間には有意な関連性が認められなかったが、VAS と抑うつ(オッズ比2.25、95%CI:1.25-4.07)、不安(オッズ比2.12、95%CI:1.17-4.14)の間には、有意な関連性が認められた。また、能力障害と抑うつ(オッズ比3.54、95%CI:1.95-6.41)、不安(オッズ比7.06、95%CI:3.21-15.51)の間には、有意な関連性が認められた。<BR>【考察】<BR> 今回の調査によるVAS および疼痛発生頻度と能力障害の有無に関連性が無かった結果の解釈は、VAS と抑うつ、不安と関連性がある結果からも疼痛軽減を目的とした理学療法を否定するものではない。疼痛症例の能力障害は、疼痛の程度や発生頻度に影響を受けるのではなく、活動の必要性や本人の意欲によって左右される症例像を示すものと考えられる。二次的障害の予防や能力障害と抑うつ、不安に有意な関連性があることからも疼痛症例に対する理学療法は、疼痛に対するアプローチのみを行うのではなく、早期に能力障害改善のアプローチを行うことが重要であることが示唆された。
著者
林 行雄 上林 卓彦 柴田 政彦 真下 節 駒村 和雄 畔 政和
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

(1)ラット脳死モデルの確立Pratschkeらの方法(Transplantation 67:343-8,1999)に基づいて、脳死導入時の循環動態の安定と脳死導入後に長期(ほぼ3-4時間)に循環動態が維持できるモデルを確立した。(2)脳死における揮発性麻酔薬の心筋感作作用現在臨床で広く用いられているイソフルレンおよびセボフルレンはハロセンに比べると心筋感作作用は弱かったが、麻酔薬を投与しない脳死ラットに比べて心筋感作作用を増強した。この事は脳死患者でのこれらの使用は不整脈の危険性が潜在的にある。(3)脳死後の心機能保護に関する研究脳死後、心臓を致死的な不整脈から守るため循環抑制が少なく、抗不整脈作用を有する薬剤のスクリーニングをハロセン-エピネフリン不整脈モデルを用いて行い、ミトコンドリアATP感受性Kチャンネル開口薬であるニコランジルがこの目的に一番かなう薬剤と考えられた。(4)周術期中枢神経による循環制御周術期不整脈のモデルであるハロセン-エピネフリン不整脈を用いて不整脈発生における中枢神経の役割を検討した。イミダゾリン受容体1が不整脈の発生を抑制することを見いだした。(5)心臓移植周術期における内因性体液調整因子の変化心臓移植手術および重症心不全に対する左心補助人工心臓植え込み術を対象にしてアドレノメデュリンに着目し、その周術期変化を調べ、人工心肺離脱後に著明な上昇を認め、心臓移植術の方がその上昇はより著明であった。人工心肺時間はほぼ同じであるが、心停止時間が心臓移植術でより長い点に着目し、本結果はアドレノメデュリンが心筋障害と関連が深い事を示唆するものであると考えている。(6)心臓移植術の麻酔管理のモニタリングの研究心臓移植術の麻酔管理では右心機能のモニターを有するスワンガンツCCO/CEDVサーモダイリューションカテーテル^<【○!R】>の有用性を示した。
著者
真下 節 柴田 政彦 井上 隆弥 阪上 学 中江 文 松田 陽一 住谷 昌彦 喜多 伸一
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

神経障害性疼痛モデルマウスでは疼痛出現後しばらくしてうつなどの情動異常が発症するが、うつ行動の発現にはα2Aアドレノ受容体が深く関与していることを明らかにした。さらに、モルヒネ耐性マウスではデクスメデトミジンの鎮痛効果が増強し、後根神経節のα2A、α2Cアドレノ受容体mRNAの発現増加がみられた。また、神経障害性疼痛モデルラットでは、セロトニン2C受容体のRNA編集が起こり、受容体作動薬の疼痛軽減効果が増強された