著者
清水 俊一 石井 正和 根来 孝治 根来 孝治
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

Transient receptor potential melastatin 2(TRPM2)は、酸化ストレスにより活性化される非選択的陽イオンチャネルであり、好中球や心筋細胞に発現が認められている。本研究は、酸化ストレスや炎症反応が関わっている心臓の虚血再灌流障害にTRPM2が関与しているかどうか検討した。野生型(WT)およびTRPM2欠損(KO)マウスの左冠動脈を結紮・開放することにより心臓の虚血再灌流モデルを作製した。その結果、虚血再灌流による心筋壊死はWTマウスと比較してKOマウスでは抑制されていた。一方、虚血のみによる心筋壊死はWTマウスとKOマウスで差が認められなかった。また、虚血再潅流による心機能低下もKOマウスで抑制された。さらに、再灌流領域における好中球の浸潤が、KOマウスで抑制されていた。次に、摘出心臓の虚血再灌流障害モデルを作製し、多形核白血球(PMNs)の導入を行ったところ、KOマウス由来のPMNsを導入しても心筋壊死は軽度であったが、WTマウス由来のPMNsを導入すると著しい心筋壊死の促進が認められた。そこで、WTマウス由来のPMNsにH_2O_2とleukotriene B_4(LTB_4)を添加したところ、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇が認められ、この上昇は好中球の血管内皮細胞への粘着に関わっていた。以上の結果から、TRPM2は心臓の虚血再灌流障害の進展に関与していることが明らかとなった。この機構には、再灌流時に好中球のTRPM2が活性化され、その結果、好中球の血管内皮細胞への粘着亢進による心臓への遊走が関与していると思われる。
著者
白壁 彦夫 碓井 芳樹 根来 孝 大橋 泰之 梁 承茂 韓 東植 松川 正明 小林 茂雄 丸山 俊秀
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.15-25, 1986-01-25

要旨 うまく二重造影すると,潰瘍性病変を変形でとらえるので,変形学が登場した.全体の変形は,胃,大腸など,それぞれに,また,局所の変形は全腸管に普遍的に使うことを,まず,述べた.そして,変形を使って検査,読影,診断するコツを全腸で比較した.更に,比較診断学の展開を虚血症候群について,X線所見の分析と総合の手法で行い,比較診断学の効果を述べた.二重造影法も,機能と二重造影のアベックの動きがある.
著者
佐治 文隆 中室 嘉郎 小川 誠 若尾 豊一 根来 孝夫 都竹 理
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科学会雑誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.p227-235, 1976-03

胎児ならびに胎盤には父親由来の移植抗原(paternal histocompatibility antigen)が存在することからこれらは母体にとつては同種移植片ということが出来る.それにもかかわらず胎児は拒絶されることなく妊娠が維持されるように思われる.この問題について我々はマウスを用いて実験的に解明することを試みた.すなわちC3H/Heマウスに発生したmyelomaはC3H/Heの移植抗原を多量に含んでいることに着目し,このmyelomaをC57BL/6Jメスマウスに移植することによつて強力かつ効果的に免疫した後C3H/Heオスマウスと交尾させた.そして妊娠,分娩,流早産率を調べると共に妊娠の進行状態を観察し,流早産発症の時期を検討した.更に妊娠によつて母体の免疫能がどの程度変化するか測定を行ない,以下の結果を得た. (1) paternal histocompatibility antigenで前以つて強力に免疫されたメスマウスでは胎仔の一部が流早産を起したが残りの胎仔はまつたく正常の妊娠経過をとつた. (2) 流早産は着床以後の段階で起つた. (3) paternal histocompatibility antigenに対する母体の免疫能は妊娠中多少の低下を示した. (4) 妊娠中の母体免疫能の低下の原因について母体血清が大きく関与しており,母体血清の影響を中心とする母体免疫能の低下が妊娠維持に重要であることが判明した. (5) しかしpaternal antigenに対して強力に免疫された同一母体において流早産を起した胎仔もあれば,まつたく正常の妊娠経過をたどつた胎仔もあることから母体免疫能の低下のみならず個々の胎盤のimmunologic barrierとしての働きが妊娠維持に大きく貢献しているものと思われる.
著者
根来 孝治 中野 泰子 清水 俊一
出版者
帝京平成大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015

申請者らは、これまでに制御性T細胞(Tregs)の主制御遺伝子であるFOXP3のsplicing variants発現量が喘息患者で対照に比べ変化していることを報告した。一方、T細胞受容体刺激によるTregsのカルシウム不応答性を利用し、Tregsの機能解析も行ってきた。喘息患者では、Tregsの機能異常を認め、そのため炎症の慢性化をきたしていることが推測されたため、FOXP3 variants発現量の変化がその機能異常と相関するかどうかを検討した。各variantsのHalo-tag constructsを作製し、細胞に最適なトランスフェクション条件を選定した。さらに、特徴的なターゲット遺伝子群の発現量をreal-time PCRにより解析し、カルシウム応答性についても検討した。抑制機能の一端を担うと考えられているcAMPの産生量を測定したところ、全長FOXP3(FL)とexson2欠損体(delta2)では、delta2の方が高産生量を示していた。Tregsの機能と相関があるカルシウム応答性に関しては、FLとdelta2との間に差異は認められなかった。Exson2が欠損していてもFOXP3の機能に問題は生じていないと考えられたが、Th17細胞の主制御遺伝子であるRORgtの発現量が亢進していた。喘息患者(成人)においてdelta2/FL比が高くなることより、TregsからTh17へのシフトがvariantsの発現量によりコントロールされているかもしれないことが示唆された。