著者
木野 佳音 阿部 彩子 大石 龍太 齋藤 冬樹 吉森 正和
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

大気中二酸化炭素濃度の増加に伴う地球温暖化が特に極域で大きく現れることは極域気温増幅としてよく知られており、南半球高緯度においては、気候モデルを用いた研究によって温暖化要因の分析がされている (Lu and Cai, 2009)。また、南極氷床コアを用いた最新の研究では、地球の軌道要素である地軸の傾きや離心率の周期変動と現地気温の変動について、詳細な位相関係の議論が行われている (Uemura et al., 2018)。そこで、本研究では気候モデルMIROCを用いて、地球軌道要素が変化したときの南半球高緯度温暖化がどのようになるか大気中二酸化炭素濃度増加の場合と比較を行い、気候フィードバックの違いを調べた。大気大循環モデルに海洋混合層モデルを結合したMIROC(Hasumi and Emori, 2004)を用いて、地軸の傾きを過去にあり得る最大値とした実験、離心率を過去にあり得る最大値でかつ近日点に冬至がくるとした実験を行い、南半球高緯度の気候変化を解析した。さらに、地表面での放射収支解析 (Lu and Cai, 2009) を行った。結果として、南極氷床が存在する南極大陸上の温暖化は、地球軌道要素が変化する場合、日射が雲に遮られない晴天域の短波放射の変化によって主に決められていた。このことは、長波放射による強い加熱が温暖化をもたらす大気中二酸化炭素濃度増加の場合と対照的だった。また、南大洋上の温暖化の定性的な季節性は、放射強制力にかかわらず共通していて、夏にほとんど温暖化がみられず、秋から冬にかけて強い温暖化がみられた。放射収支解析から、この季節性をもたらす要因は、北半球高緯度の場合と共通しており、夏に海洋に吸収されたエネルギーが 冬に大気へ放出されることであるとわかった。また、定量的には、秋から冬の温暖化の強度が異なった。これには、特に春から初夏にかけての放射強制力の違いが海氷融解に与える影響が、重要であることがわかった。今後は、大気循環や降水分布の解析も行っていく。また、海洋大循環も考慮したモデルの結果も解析する予定である。
著者
奥本 真史 要田 裕子 北村 智樹 近森 正和 中西 紀男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.548-554, 2011-11-30 (Released:2012-02-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1

生体内には多種類の金属がさまざまな濃度で存在して,生命機能の維持に重要な役割を担っている。とくに微量元素の生化学的および栄養学的な機能,欠乏症,過剰症などに関する学際的な研究発展とともに微量元素の重要性が広く注目されるようになった。よって栄養指標として体内の微量元素が欠乏しているかどうかを考慮することは栄養療法上重要であり,長期栄養管理において微量元素欠乏症が生じる危険性は以前より知られている。 今回微量元素欠乏症が疑われた患者を経験した。セレン欠乏症の症例については,院内製剤でセレン注射液を作成し高カロリー輸液へ混注し施行すること,また褥瘡を有する亜鉛欠乏症の症例には,亜鉛含有胃潰瘍治療剤ポラプレジンクを使用することにより血清微量元素濃度も改善し,2症例とも良好な経過がみられた。 しかし治療薬の使用法や検査方法などには注意を要する。今回微量元素欠乏症に対する検査や治療の問題点について考察したので報告する。
著者
近藤 浩史 與五澤 守 成瀬 道紀 森 正和
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1P2J1302, 2019 (Released:2019-06-01)

従来,経済動向を把握するために政府や中央銀行が発表する統計が使用されてきた.これらの統計は,調査時期と結果の公表時期にずれが発生するため,速やかに経済動向を把握するためには,統計を補完でき,かつ速報性のある新しい指標が必要となってきている.本研究では,金融機関が作成した膨大なテキストデータを分析することで,景気センチメントの定量化を試みた.その結果,テキストデータから計測した景気センチメントは,日銀短観と高い相関を示すことが分かった.また,事前に予測できないイベントが発生した場合の景況感について,速報性がある可能性を示唆した.
著者
山崎 進 森 正和 上野 嘉大 高瀬 英希
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.15, 2019-01-30

ElixirではFlowというMapReduceの並列ライブラリが普及している.Flowを用いると簡潔な表現でマルチコアCPUの並列性を活用できる.我々はFlowによるプログラム記述がGPGPUにも容易に適用できるという着想を得て,OpenCLによるプロトタイプを実装した.現行のGPUで採用されるSIMDでは,単純な構造で均質で大量にあるデータを同じような命令列で処理する場合に効果を発揮する.一方,Flowでは,そのようなリストに対し一連の命令列で処理する.そこで,このような命令列と,リストを配列化したデータをGPUに転送・実行することで高速化を図る手法,Hastegaを提案する.そこで,ロジスティック写像を用いたベンチマークプログラムを開発し,期待される性能向上を評価した.Mac ProとGCEで評価した.言語はElixir,Hastega,Rust,Pythonで比較した.その結果,次の3つの結果が得られた:(1) HastegaはElixir単体のコードと比べて4.43~8.23倍高速になった(2) HastegaはRustと比べて,1.48~1.54倍程度遅くなっただけである(3) HastegaはPythonのコードと比べて,3.67倍高速である.今後,本研究で得た知見を元にLLVMを用いてコード生成器を含む処理系を開発する予定である.
著者
田村 恵理 谷口 義典 西山 充 矢田部 智昭 井上 紘輔 荒川 悠 森 正和 池添 隆之 寺田 典生 藤本 新平
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.105, no.6, pp.1041-1050, 2016-06-10 (Released:2017-06-10)
参考文献数
10

65歳,女性.高血圧,肥満症で加療中であったが,全身倦怠感,尿閉のため当院受診した.両側水腎症を認め,腎後性腎不全に対し経皮的腎瘻造設術を施行したが,腎障害改善なく,原因不明の遷延性乳酸アシドーシス,無症候性低血糖も認められた.持続的血液濾過透析を施行下に腹部造影CT検査を施行し,腹壁皮下結節および腹直筋の不整肥厚などを確認した.皮下結節およびリンパ節の生検にて形質芽球性リンパ腫と診断した.化学療法を開始し,乳酸アシドーシスや低血糖は速やかに改善した.悪性腫瘍,特に血液系腫瘍ではWarburg効果がみられることがあり,原因不明の乳酸アシドーシスでは,原因として悪性腫瘍の可能性を念頭に精査する必要がある.
著者
森 正和 野口 隆之
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.289-297, 2007-07-01 (Released:2008-10-24)
参考文献数
23
被引用文献数
1

経皮的気管切開や輪状甲状膜切開のキットは集中治療の領域で広く普及している。簡便ではあるが, 方法として未完成な部分もあり, 手技上注意すべき点も多い。経皮的気管切開における大きな問題点の一つは, 既存の気管チューブの位置についてである。すなわち, 内視鏡による手技確認と気管内スペースの確保のために気管チューブを抜いてくると, 気道確保と換気の維持を保証できなくなるというジレンマがあることである。もう一つの大きな問題点は, 気管切開チューブの挿入時の抵抗であり, イントロデューサと気管切開チューブ先端の成形に工夫の余地があると思われる。Griggs法では鉗子操作の巧拙が気管切開チューブの挿入の難易と合併症の有無, 程度に影響する。気管切開に比し手技的に容易と思われる輪状甲状膜切開のキットにも注意すべき点がある。セルジンガー法によるキットでは気管切開と同様, イントロデューサとカニューレとの段差のため, 挿入時の抵抗が比較的大きい。