著者
村尾 敏 岡 翼 長町 展江 本多 完次 荒川 裕佳子 森 由弘 厚井 文一
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.65-70, 2010 (Released:2013-02-28)
参考文献数
9

目的:日本人のLDL-コレステロール/HDL-コレステロール(L/H)比の分布と動脈硬化危険因子との関連を検討する.方法:対象は2004年に当院人間ドックを受診した3,717名.これらから,検討1):糖尿病・高血圧・高脂血症の治療を受けていていないもの,検討2):body mass index(BMI),血圧,種々の代謝因子がすべて2008年人間ドック学会ガイドラインの基準内のもの,検討3):検討1対象者のなかでLDL-コレステロールが139mg/dL以下であるもの,を抽出しL/H比と他の動脈硬化危険因子を検討.結果:L/H比は検討1,検討2,検討3でそれぞれ2.24±0.88,1.46±0.42,1.90±0.67でありすべての群で性差(男性が高値)を認めた.検討2対象者のL/H比の90パーセンタイル値は2.02(男性2.25,女性1.77)であった.LDL値が比較的低値の集団(検討2,3)ではL/H比はLDL値よりHDL値に大きな影響を受けていた.LDL値が139mg/dL以下であってもL/H比が高値のものは低値のものより高感度CRP値が高値であった.結論:BMI,血圧,種々の代謝因子がすべて人間ドック学会ガイドライン基準内にある者のL/H比の90パーセンタイル値は2.02であった.LDL値が低値でもL/H比高値のものはL/H比低値のものより動脈硬化の危険因子が高度である可能性がある.
著者
片岡 弘明 北山 奈緒美 石川 淳 宮崎 慎二郎 荒川 裕佳子 森 由弘
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.89-93, 2012-06-30 (Released:2016-04-25)
参考文献数
8

閉塞型睡眠時無呼吸症候群患者の外来での運動継続率が糖尿病患者,肥満患者と比較し低値であった.そこで,運動の実施状況や継続ができない理由,運動指導の改善点などを明確にすることを目的にアンケート調査を実施した.その結果,運動する時間・意欲がないと回答した者が多かった.運動の効果や方法を科学的根拠に基づいて指導するだけでなく,どのようにして患者の行動を適切な方向に導くかといった行動変容アプローチも必要である.
著者
塩田 雄太郎 森 由弘 青山 重男 原田 淳一 瀬崎 達雄 長田 高寿 高橋 清 木村 郁郎
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.289-293, 1988-03-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
15

消化器並びに呼吸器症状を呈する19歳白人の膵嚢胞性線維症の1症例を報告する. 患者は生来健康であったが, 19歳より咳嗽, 喀痰, 下痢を繰返すようになった. なお患者の兄はすでに膵嚢胞性線維症と診断されている. 胸部X線写真ではびまん性の小結節状陰影があり, 両側肺野に気管支の走向に一致した線状陰影が認められた. 肺機能検査では軽度の閉塞性換気障害が認められた. 膵外分泌機能の低下があり, 腹部のCTでは膵の萎縮が認められた. 汗のナトリウム, クロールは高値を示した. また成人の膵嚢胞性線維症に多い合併症とされる鼻ポリープ, 耐糖能の低下も認められた. 本邦では本症の報告は少なく, また成人になって症状が出現するのは稀とされているが, 本症例においては全体に症状が軽いためにこのような経過をとった可能性が考えられた.
著者
森 由弘 井上 亜希子 粟井 一哉 荒川 裕佳子 厚井 文一
出版者
一般社団法人 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会
雑誌
日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 (ISSN:18817319)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.24-30, 2010-06-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
9

間質性肺炎の終末期には合併症や呼吸困難への対応,人工呼吸器装着の可否など多くの問題点を抱えている.最近,NPPVを急性呼吸不全時に挿管までの橋渡しとして一時的に使用したり,終末期呼吸不全に対してNPPVを限度として,慎重な観察下での導入は許容範囲とされつつある.また,終末期の呼吸困難の緩和にモルヒネの有効性が注目されている.今後,終末期医療の決定に関するガイドラインに示された「医療・ケアチーム」による治療方針の決定が望まれる.
著者
岡崎 真由美 粟井 一哉 森 規子 吉田 雅春 本田 淳一 森 由弘
出版者
Japanese Society for Infection Prevention and Control
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.52-57, 2008-03-25
被引用文献数
1

近年,栄養状態が疾患の治療効果に大きな影響を及ぼすことが分かり,栄養療法の重要性が再認識されてきた.一方感染対策においても,抗菌薬の耐性化や本邦における急速な高齢化の影響もあって,宿主の免疫力とも大きな相関のある栄養療法の重要性は年々高まっている.<br>   当院は,病床数179床の市中急性期病院であるが,2001年1月に栄養サポートチーム(NST)が,そして翌月に院内感染対策チーム(ICT)が相次いで発足した.NSTは栄養療法の適正化を進め,従来の中心静脈栄養(TPN)主体の栄養療法から,経腸・経口栄養を基本とした栄養療法へと劇的な変化をもたらした.またICTは環境感染対策,各種サーベイランスの開始や抗菌薬の適正使用などに精力を注いできた.<br>   両チーム発足後の推移を追ったところ,TPNは2000年度とその後の6年間を比較し7,917本から平均3,874本と46.1%の大幅な減少を認め,対照的に経腸栄養患者数は大きく増加していた.抗菌薬使用量についてはPK/PD理論に基づき一人当たりに使用するバイアル量は増加傾向であるにもかかわらず,2000年度とその後の6年間を比べると29,177本から平均25,718本と11.8%の減少を認めた.<br>   NSTとICTのコラボレーションは,抗菌薬の使用量の減少効果および医療費の抑制効果を生みだし,耐性菌の抑制などの感染対策としても有益である可能性が示唆された.<br>