著者
森山 三千江
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.19, 2017 (Released:2017-08-31)

目的:クローン病は近年、その患者数が急増している炎症性腸疾患である。その原因は遺伝的要因、環境要因などのうち生活習慣、中でも日本の食生活の欧米化が大きく影響を与えると言われているが、現時点では原因不明の難病とされている。発症年齢は10歳代後半から20歳代に多く、男女別では2:1で男性に多い。クローン病の治療法として栄養療法から最終手段としては手術であるが、この病気は食事に対する免疫反応という説が有力であるため、特に重要なのは栄養療法だと考えられている。クローン病患者が食事療法や絶食時に精神的に辛い思いをすることが多いため、患者の食生活が精神面にどのように影響するのかを関係性を追跡し、より精神的が良好に過ごせる方法を模索することを目的とした。方法:クローン病患者28名を対象とし、手術歴に加えて質問項目として現在の症状、身体的要素、家庭生活及び社会生活の要素、精神的背景、家族及び交友関係、などの36項目について5段階評価で回答を得た。結果及び考察:回答者は男性17名、女性11名で14歳から54歳であった。食事制限として脂質の少ないもの、肉、ファストフード、食物繊維など消化の悪いものを避ける、外食をしないなどの回答が得られた。また辛いと感じることで腹痛、吐き気、下血や入退院の繰り返し、学校で何も食べられない、職場での理解が得られないことなどが挙げられた。さらに、鬱やパニック障害などで通院している者もおり、病気に対する不安を訴えるものが半数以上であった。こうした患者に対して家族や職場など周囲の理解が大きな支えが重要であり、さらには若年層の発症を抑えるような食生活を探求していくことも大きな課題と考えられる。
著者
大羽 和子 渡邉 章子 開元 裕美 戸本 綾子 森山 三千江
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.10, pp.499-504, 2011-10-15 (Released:2011-11-30)
参考文献数
17
被引用文献数
5

(1) 15種類の新鮮野菜のビタミンC (VCと略)量を,正確に分析定量できるHPLCポストカラム誘導体法で測定した.その結果,総VC量に占めるアスコルビン酸(AsAと略)の割合を平均すると92.8%であった. (2)野菜(15種)の調理直後の総VCの残存率は茹で調理品より,炒め·揚げ調理品の方が高かったが,酸化型VC (DHA)の割合も後者で高かった.24時間冷蔵後のAsA残存率の平均値は茹で調理品の方が高い傾向にあった.したがって,調理野菜からVCを効率よく摂るためには,調理直後に食する場合は炒め調理法が,時間をおいて食する場合は煮(茹で)調理法が好ましいといえる. (3)市販惣菜(8品)の総VC量は調理直後の値の半分以下であり,AsA量は約1/4と著しく少なかった.
著者
西堀 すき江 小濱 絵美 加藤 治美 伊藤 正江 筒井 和美 野田 雅子 五道 紗世 廣瀬 朋香 羽根 千佳 小出 あつみ 山内 知子 間宮 貴代子 松本 貴志子 森山 三千江 山本 淳子 近藤 みゆき 石井 貴子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】愛知県は温暖な気候で、多くの河川が走り、濃尾平野、岡崎平野、豊川平野が広がり、肥沃な農地に恵まれている。また、伊勢湾に面し、漁業や海運業が発達している。山には良質な檜や杉が育ち、豊かな土地柄である。この地は長く政治の中心であった京に近く、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康など天下統一を目指した戦国武将が生まれた土地である。江戸時代には、名古屋(尾張)に御三家筆頭で東海に君臨した尾張徳川家の居城があり、岡崎(三河)は徳川家康誕生の地で、東海道の要衝として繁栄した。また、県内を横切る東海道沿いには、参勤交代の大名や旅人が利用する宿場が9か所あり、それぞれの名物や土産物が作られ、商業が盛んであった。このような地の利と長年の風習が、今の「派手好き」「倹約家」などの県民性を生み出した。日常的には質素倹約を旨とし、堅実家で余計なものにお金を使わず、貯金をする傾向があるが、婚礼などの行事には、思いっきりお金をかけて嫁入り支度をし、派手な宴を開く習わしがあった。</p><p>【方法】県内を7地区に分け、聞き書き調査を平成24〜25年に、料理撮影を平成27〜28年に行った。聞き書き調査対象者は各地区に長年暮らし,その地域の家庭料理を伝承している人とした。料理作成は各地区で郷土の家庭料理の保存活動を行っている団体・個人等に協力をお願いした。</p><p>【結果】今回は、一世一代の派手な婚礼などに伴う行事食ではなく、質素ながら、地元でとれる豊かな食材を生かした、季節や人生の節目を祝うハレの日の行事食について収録した。</p>
著者
西堀 すき江 小濱 絵美 加藤 治美 伊藤 正江 筒井 和美 野田 雅子 亥子 紗世 廣瀬 朋香 羽根 千佳 小出 あつみ 山内 知子 間宮 貴代子 松本 貴志子 森山 三千江 山本 淳子 近藤 みゆき 石井 貴子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】昭和50年代までは『尾張の嫁入りは派手』といわれ,花嫁道具一式を積んだトラックに紅白幕をかけて嫁ぎ先へ運んだり,菓子撒きをしたり,豪華な料理や引き出物を用意した。このような,一世一代の行事は派手に祝うが,通常は倹約をし質素な生活をするのがこの地方の特徴であった。</p><p>【方法】愛知県を(1)名古屋市,(2)尾張水郷(海部),(3)尾張稲沢(尾張北部),(4)愛知海岸(知多,西三河・東三河の海岸,渥美),(5)西三河・安城,(6)東三河・豊橋,(7)愛知山間・奥三河の7地区に分け,聞き書き調査と料理の撮影を行った。聞き書き調査は,平成24・25年,料理の撮影は平成27年に行った。聞き書きは,各地区に長年暮らし,その地域の家庭料理を伝承されている方を調査対象者とした。撮影に当たっての料理作成は,聞き書き対象者や各地区で伝統的家庭料理の保存活動を行っている団体・個人などに依頼した。先の調査を収録した『日本の食生活全集23 聞き書 愛知食事』を参考にした。</p><p>【結果および考察】名古屋を含む尾張地区では稲作や野菜栽培が盛んで,副菜も地場でとれた野菜を生で食す以外に乾燥させたり,漬物にしたりして利用した。また,名古屋コーチンに代表される養鶏が盛んで,なんぞ事の時に鶏肉(かしわ)や卵が食された。海岸地区は伝統野菜の蕗をはじめ種々の野菜が栽培され,小魚や海藻の佃煮も多く利用されていた。三河の安城地域は,不毛の台地安祥(あんじょう)ヶ原と言われていたが,明治用水建設後は日本のデンマークと称されるようになり,農作物が豊富に栽培された。大豆・落花生も畦に作られていた。愛知山間部では山菜やきのこ,川魚などで佃煮を作り常備菜としていた。へぼなどの昆虫食も利用していた。</p>
著者
森山 三千江 大羽 和子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.38, 2004 (Released:2005-04-02)

目的 スプラウトは年中安定して入手できる野菜でビタミンやミネラル、食物繊維の良い供給源である。ブロッコリーなど新種のスプラウト中のビタミンC(VC)量およびラジカル捕捉活性が従来のスプラウトより高いことをすでに報告した。ポリフェノール含量などの機能性成分量を測定するとともに、近年、リスクファクターとして注目される硝酸量も測定して、様々な角度から、スプラウト類が健康増進によいかどうかを検討することを目的とした。方法 市販および生産農園から直送されたスプラウトを用い、細かく刻んでメタリン酸やリン酸バッファーとともに完全に磨砕し、冷却遠心分離後、上清を試料液とした。試料液を希釈、フィルター濾過した後、イオン交換カラムを用いHPLCで分離し、ビタミンCや硝酸イオンを検出し、検量線より含量を測定した。結果および考察 貝割れ大根のVC量が緑豆もやしの約5倍であったのに対し、硝酸量は緑豆もやしの約60倍と著しく高い値であった。クレソンやレッドキャベツの硝酸量は貝割れ大根の含有量より多く、そばスプラウトの硝酸量の2倍以上であった。豆苗ではVC量が他の新種のスプラウトと同様に高かったが、硝酸量は著しく低かった。VC量では殆ど差は見られなかったブロッコリースプラウト類のうちスーパースプラウトの硝酸量が多かった。また、生産農園によってスプラウトの硝酸量が異なったので、栽培する際の肥料の違いにより硝酸量に影響があると考えられた。ブロッコリースプラウトは抗癌作用も報告されており、VC量、ラジカル捕捉活性も新種のスプラウトの方が従来のスプラウトより高いことから、施肥方法によって硝酸量を低く押さえると、健康増進に良い食品となることが示唆された。
著者
西堀 すき江 小出 あつみ 山内 知子 間宮 貴代子 松本 貴志子 森山 三千江 山本 淳子 近藤 みゆき 石井 貴子 小濱 絵美 加藤 治美 伊藤 正江 筒井 和美 野田 雅子 亥子 紗世 菱田 朋香 熊谷 千佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】愛知県は尾張地方と三河地方に分かれる。また、名古屋は江戸時代より経済活動が盛んで、昭和の初期には既に人口100万人を擁した大都市で、商業や工業が発展していた。周辺の農村地帯は、豊かな生産性の高い土地で、農村特有の食文化を形成していた。一方、海岸地区では海辺に自生する植物で、奥三河の山里では木の葉でもちを包んだりし、身近な自然からの恵を利用した食文化を形成していた。<br />【方法】愛知県を①名古屋市,②尾張水郷(海部),③尾張稲沢(尾張北部),④愛知海岸(知多,西三河・東三河の海岸,渥美),⑤西三河・安城,⑥東三河・豊橋,⑦愛知山間・奥三河の7地区に分け,聞き書き調査,並びに料理の撮影を行った。聞き書き調査は,平成24・25年,撮影は平成27年に行った。聞き書きは,各地区に長年暮らし,その地域の家庭料理を伝承されている方を調査対象者とした。撮影に当たっての料理作成は,聞き書き対象者が高齢であるため,各地区の伝統的家庭料理の保存活動を行っている団体・個人などに作成依頼を行った。先の調査を収録した『日本の食生活全集(23) 聞き書 愛知食事』を参考にした。<br />【結果】茶の湯の盛んな名古屋地区は、有名な和菓子屋が数軒有り、来客時のお茶菓子や、通常のおやつは店で購入することが多かった。名古屋の和菓子として名高いういろうも購入していた。農村地帯では、稲作や年中行事に関わるおやつが多かった。奥三河地区では、貴重な米を使った五平もちはご馳走であった。また、雪深く、正月は花が咲かないことから作るもち花や、身近なほう葉を使ったほう葉もちと山間部の特徴が見られた。また、米が貴重で、もちを搗く時は、普段は必ず大豆、きび、あわ、よもぎなどを混ぜて搗いた。
著者
丹羽 悠輝 森山 三千江 大羽 和子
出版者
The Japan Society of Cookery Science
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.257-265, 2007

さつまいものビタミンC(VC)量及び1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカル捕捉活性は調理直後に減少したが,通常調理品より真空調理品のほうが残存率が高かった。ポリフェノール量では差は見られなかった。VC及びDPPHラジカル捕捉活性は,さつまいもに砂糖を加えると有意に減少が抑制され,大根及び里芋に醤油を加えると減少が促進された。さつまいものDPPHラジカル捕捉活性は主にアスコルビン酸量と相関関係にあり,大根及び里芋は主にポリフェノール量と相関関係にあった。さつまいも及び里芋の官能評価では真空調理品が好まれたが,大根ではテクスチャーが真空調理品より通常調理品のほうが好まれた。
著者
山本 淳子 森山 三千江
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成30年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.40, 2018 (Released:2018-08-30)

【目的】日本近海の砂地に生息する貝であるツメタガイは、アサリの繁殖時期と同じで、潮干狩りの際に見かけるがアサリの天敵である。アサリは愛知の地産であるが年々漁獲量が減っており、その原因の一つとされている。ツメタガイは、独特の粘りと臭い、硬い肉質が嫌厭される。そこで、ツメタガイの調理法を開発し、嗜好性が高く多く食べるようになれば、アサリの漁獲量増加の貢献となる。本研究では、ツメタガイの利用を進める基礎データを得ることを目的とし、加熱方法の検討を行った。【方法】ツメタガイは、愛知県水産試験場(蒲郡)の提供品を用いた。加熱方法は、水・酒・茶を用いてゆでる・蒸す・圧力鍋・レンジ・真空調理の5つを比較検討した。測定項目の、破断応力・テクスチャー測定は、クリープメーター(山電)を、組織構造観察は、走査電子顕微鏡(日立S-4200 SEM)を、色調は、色差計(日本電色)を用いた。官能評価は、評価項目「色」、「香り」、「食感」、「味」、「総合」について嗜好型官能検査を5点評点法で行った。【結果】加熱方法により、食感は大きく異なった。破断応力は、真空調理加熱の硬さが低く、柔らかくなることが分かった。電子顕微鏡観察では、真空調理の組織構造のみ、他の変化と異なり、組織の破壊における亀裂がなく平滑であった。色調は、水では色が暗く、茶ではあくが付き、明度が下がったが、酒を用いると明度が最も高いものとなった。官能評価において、水でゆでたものが硬く、においも強く好まれないものとなった。評価の高かった加熱方法は、レンジ加熱と真空調理であり、茶・酒を用いることで嗜好性は上がった。特に酒は、見た目、硬さにおいて嗜好評価が高かった。以上のことから、酒を用いてレンジ加熱、真空調理が適していた。