著者
山内 知子 小出 あつみ 山本 淳子 大羽 和子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.260-264, 2010 (Released:2014-10-03)
参考文献数
12
被引用文献数
2

本研究の目的は,学生の箸の持ち方の実態を把握し,受けた指導や食事マナーに対する意識との関連を明らかにすることである。写真撮影法により,87名の女子学生の箸の持ち方を分類した。伝統群は60.9%,その他非伝統群は39.1%あり,多くの女子学生が伝統的な持ち方を身につけていないことがわかった。非伝統群の箸の持ち方は6種類に分類できた。伝統群は幼児期から長期にわたり父母の指導を受けており,伝統的な箸の持ち方が習慣化した。一方,非伝統群は指導を受けた時期が遅く,指導期間も短期間であった。幼児期までに伝統的な箸の持ち方を継続的に教育する必要性が示唆された。伝統群は非伝統群より箸の正しい持ち方や家族揃って食事をすることの大切さに関して有意に(p<0.05)意識が高かった。両群ともに伝統的な箸の持ち方を次世代に継承したいと考えていた。
著者
間宮 貴代子 小出 あつみ 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.58-64, 2016 (Released:2016-03-01)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本研究では愛知県の雑煮を構成する食材について検討した。愛知県の雑煮の食材構成では,東日本で多く使用された角餅に,醤油とかつおだしの清まし仕立てが多かったが,これは味噌仕立を嫌った武家社会の歴史的影響である。具は古くからの形式が現在も維持され,縁起担ぎから,尾張地域在来の餅菜が使用され,かまぼこ・なるとを加え,かつお削り節を添えていた。しかし,尾張地域と三河地域には相違点がみられた。和風風味調味料の使用が,女性の労働力率が高い三河地域で有意に多かった。また,三河地域の雑煮の具は,収穫量が多い白菜,豆腐・油揚げ(大豆),人参を使用する地産地消の傾向が伺え,尾張地域より多彩な具であった。
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子 山澤 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2019年度大会(一社)日本調理科学
巻号頁・発行日
pp.86, 2019 (Released:2019-08-26)

【目的】セロリは18世紀中頃からサラダとして食されるようになった。現在は生食だけでなく,シチューなどの香味野菜や炒め物のアクセントとして幅広く利用されている。しかし,セロリは一般的に好まれない傾向がある。本研究では,セロリについて,生および加熱調理法別の嗜好性を明らかにし,好まれるセロリの調理法について検討した。【方法】セロリは中央部分を5mm幅に切って試料とした。試料は生と茹で・蒸し・焼き・揚げの各方法で火が通るまで加熱した。官能評価は,N女子大学生27名(平均年齢21.6歳)をパネルとして,5点尺度で色,香り,硬さ,味,歯触り,総合の6項目について分析型官能評価を採点法で,嗜好型官能評価を順位法で行った。データの統計処理は多重比較検定のTukey法とNewell & MacFarlaneで行い,統計的有意水準を5%で示した。さらに官能評価の結果に基づき,好まれるセロリ料理4品を提案した。【結果および考察】官能評価の採点法では,生と比較して茹で加熱は有意に色が薄かった。4種類の方法で加熱したセロリは生より有意に軟らかく,味が薄く,歯触りがないと評価された。香りと総合に有意差はなかった。嗜好型分析評価の順位法では,生と比較して茹で加熱の色と硬さが有意に好まれ,茹でと揚げ加熱の味が有意に好まれた。香り,歯触りおよび総合に有意差はなかった。したがって,セロリの色と味を薄くし,歯触りを弱く,硬さを軟らかくする茹で加熱法が,セロリの生および4種類の加熱法において最も好まれることが示された。この結果に基づき,セロリと豆のリボリッタ・鶏手羽元とセロリのトマト煮・夏野菜の冷やし茶わん蒸し・セロリのかき揚げを好まれるセロリ料理として提案した。
著者
小出 あつみ 間宮 貴代子 山内 知子 阪野 朋子 松本 貴志子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.66, 2014

<b>目的</b> 愛知県岡崎市名産の八丁味噌は赤褐色で発酵臭があり,濃厚なうま味と渋みを持つ個性的な味噌である.本研究は八丁味噌を使用した新たな菓子とパンの商品開発を試み,その特性と嗜好性について検討した. <b>方法</b> 味噌は無添加豆味噌を使用した.菓子とパンは洋菓子類,和菓子類およびパン類に分類して,栄養価と原価を求めた.官能評価はパネリスト16人を対象に8項目ついて「八丁味噌の特性を生かせているか」を5点尺度の評点法で評価した.嗜好評価として好きな順番に1位~3位までを選んだ.データはTukey法による多重比較検定を行い,統計的有意水準を5%で示した.<b>結果</b> 官能評価の結果から,加熱しない味噌は酸味が強く,塩辛く感じることが示され,味噌を入れた生地では味噌の味と香りが減少した.調製時に砂糖との味のバランスに配慮する必要性を認めた.評点法(総合)と嗜好評価の上位5位の中に共通して芋プリン味噌カラメルかけ・味噌ダックワーズ・味噌シフォンケーキ・味噌鬼まんじゅうが入ったので,これらの菓子は味噌の特性を活かした好まれる菓子だと考えられた.以上の結果から,総体的に八丁味噌の使用は洋菓子類で評価が高く,薄力小麦粉,乳製品,砂糖,卵を使用することで味噌の塩辛さをまろやかにして八丁味噌の特性を活かした好まれる菓子となることが示され,今後の商品開発に向けて有用な資料を得た.<u></u>
著者
山内 知子 山田 忠樹 MONIRUL ISLAM MOHAMMOD 岡田 暁宜 高橋 龍尚 竹島 伸生
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.513-523, 2003-10-01
被引用文献数
3 4

The purpose of this study was to determine the effects of well-rounded exercise program (WREP) on cardiorespiratory fitness, muscular strength, flexibility, body composition, and serum lipid concentration in a group of older outpatients. WREP was composed of programmed aerobic/anaerobic accommodating circuit exercise (PACE) and flexibility exercises Twenty-two volunteers (69.6±3.2yr) were used as subjects All participants engaged in a supervised exercise program (50min/day and 3 days/week) for 12 weeks After 12 weeks of training, there was a significant increase in V0_2 corresponding to lactate threshold (13.4%) but peak VO_2 did not change. There were significant increases for knee extension (17.1%) and flexion (12.3%), chest pull (10.9%), low back flexion (26.6%), and shoulder press (14.6%) after training. Side stepping agility (13%), trunk flexion (129%) and trunk extension (19%) were also significantly improved. There were significant decreases in percent of body fat (-8.3%), total cholesterol (-7.1%) and low-density hpoprotein cholesterol (-9.7%) Blood pressure also decreased in SBP (-1OmmHg) and DBP (-5mmHg) The decline in SBP was significant in thirteen hypertensive patients (-14mmHg) compared to non-hypertensive patients (-5mmHg) These results indicate that WREP elicits significant improvement of overall fitness in older outpatients (Jpn J Phys Fitness Sports Med 2003, 52 : 513~524)
著者
新谷 寿美子 堀 裕子 山内 知子 山崎 清子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.271-276, 1975-07-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

ゼラチン・アガーゼリーについて, 寒天とゼラチンの濃度を各4水準とし, 二元配置法によって実験した. その結果, 次の点が明らかになった.1) 凝固温度はゼラチン濃度 1~3% までは寒天の凝固温度に近く, 寒天濃度の増加とともに高くなる. ゼラチン濃度が 4% になると, 寒天濃度 0.3% ではゼラチンの凝固温度に近くなり, 0.5~0.9% では寒天の凝固温度より低下した.2) 融解温度はゼラチン濃度 1~3% までは寒天の融解温度に近く, 寒天濃度の増加とともに高くなるが, ゼラチン濃度が 4% になると低下する.3) 透過率はゼラチンまたは寒天のみのゼリーの透過率より減少する. 各ゼラチン濃度で寒天濃度の増加とともに低下するが, ゼラチン濃度が 3~4% になると寒天濃度間の透過率の差はきわめて少なくなる.4) ゼリー強度は寒天とゼラチンの濃度の増加とともに大きくなり, 凹みの大きさは寒天濃度の低いほど, ゼラチン濃度の高いほど大きくなる. 軟かさは寒天とゼラチン濃度の増加とともに小さくなるが, 寒天濃度 0.7~0.9%ではゼラチン濃度間の差はほとんどみられない.5) たわみ率は寒天とゼラチン濃度の増加に伴い小さくなる.6) 離漿率はゼラチン濃度の増加に伴い減少するが, ゼラチン濃度 3~4% では寒天濃度間にほとんど差がない.7) 食味の評価が普通以上で, 120 分たっても変形しないゼリーは, ゼラチン 1% に寒天 0.7~0.9%, ゼラチン 2% に寒天 0.5~0.7%, ゼラチン 3% に寒天 0.5%をそれぞれ混合したものである. またゼラチン 1% に寒天 0.5%, ゼラチン 3% に寒天 0.3%, ゼラチン4%に寒天 0.3% のゼリーは形は保っているが変形しやすい状態である.
著者
小出 あつみ 山内 知子 横濱 道成 大羽 和子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集 59回大会(2007年)
巻号頁・発行日
pp.67, 2007 (Released:2008-02-26)

【目的】走鳥類のエミュー卵(E)は、(株)東京農大バイオインダストリーの企画により、どら焼きの皮に使用されているが、食材としての利用はまだ少ない。本研究ではEの起泡性と熱凝固性を中心に調理特性を明らかにし、スポンジケーキへの応用を試みた。【方法】色差は色差計で測定した。卵白と全卵を10分間電動ハンドミキサーで撹拌する間の泡の比重と離水量を経時的に測定した。卵黄と卵白の熱凝固性を55℃~100℃間の5℃間隔でクリープメーターを用いて測定した。鶏卵(K)とE(卵黄/卵白:K割合)でスポンジケーキを調製(卵液150g・砂糖90g・薄力粉90g,焼成温度E:180℃,K:170℃)し,物性の測定と官能検査を行った。【結果】Eの全卵重量はKの9.8倍、濃厚卵白:5.4倍、水溶性卵白:4.7倍、卵黄:18.7倍であった。卵白/卵黄はE卵:1/2.1、K卵:1/0.5と,卵黄割合はEでKの4.2倍であった。卵白及び全卵の泡の比重から,卵白はEで、全卵はKで泡立ちがよかった。泡の安定性はKよりEで高かった。卵黄と卵白の色差L*、a*、b*値はEでKより有意(*p<0.05)に低かった。熱凝固した卵黄と卵白の固さは、KよりEで有意(*p<0.05)に低く、ガム性ではE で有意(*p<0.05)に低く、卵白の凝集性では両者に差はなかったが、卵黄の低温加熱でEの凝集性はKより有意(*p<0.01)に低く、高温加熱でKより有意(*p<0.05)に高かった。Eで調製したスポンジケーキの固さは有意(*p<0.01)にKより高かった。官能検査の味・香り・色・総合ではKで調製したものより有意(*p<0.01)に好まれなかった。
著者
西堀 すき江 小濱 絵美 加藤 治美 伊藤 正江 筒井 和美 野田 雅子 五道 紗世 廣瀬 朋香 羽根 千佳 小出 あつみ 山内 知子 間宮 貴代子 松本 貴志子 森山 三千江 山本 淳子 近藤 みゆき 石井 貴子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.32, 2021

<p>【目的】愛知県は温暖な気候で、多くの河川が走り、濃尾平野、岡崎平野、豊川平野が広がり、肥沃な農地に恵まれている。また、伊勢湾に面し、漁業や海運業が発達している。山には良質な檜や杉が育ち、豊かな土地柄である。この地は長く政治の中心であった京に近く、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康など天下統一を目指した戦国武将が生まれた土地である。江戸時代には、名古屋(尾張)に御三家筆頭で東海に君臨した尾張徳川家の居城があり、岡崎(三河)は徳川家康誕生の地で、東海道の要衝として繁栄した。また、県内を横切る東海道沿いには、参勤交代の大名や旅人が利用する宿場が9か所あり、それぞれの名物や土産物が作られ、商業が盛んであった。このような地の利と長年の風習が、今の「派手好き」「倹約家」などの県民性を生み出した。日常的には質素倹約を旨とし、堅実家で余計なものにお金を使わず、貯金をする傾向があるが、婚礼などの行事には、思いっきりお金をかけて嫁入り支度をし、派手な宴を開く習わしがあった。</p><p>【方法】県内を7地区に分け、聞き書き調査を平成24〜25年に、料理撮影を平成27〜28年に行った。聞き書き調査対象者は各地区に長年暮らし,その地域の家庭料理を伝承している人とした。料理作成は各地区で郷土の家庭料理の保存活動を行っている団体・個人等に協力をお願いした。</p><p>【結果】今回は、一世一代の派手な婚礼などに伴う行事食ではなく、質素ながら、地元でとれる豊かな食材を生かした、季節や人生の節目を祝うハレの日の行事食について収録した。</p>
著者
西堀 すき江 小濱 絵美 加藤 治美 伊藤 正江 筒井 和美 野田 雅子 亥子 紗世 廣瀬 朋香 羽根 千佳 小出 あつみ 山内 知子 間宮 貴代子 松本 貴志子 森山 三千江 山本 淳子 近藤 みゆき 石井 貴子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.31, 2019

<p>【目的】昭和50年代までは『尾張の嫁入りは派手』といわれ,花嫁道具一式を積んだトラックに紅白幕をかけて嫁ぎ先へ運んだり,菓子撒きをしたり,豪華な料理や引き出物を用意した。このような,一世一代の行事は派手に祝うが,通常は倹約をし質素な生活をするのがこの地方の特徴であった。</p><p>【方法】愛知県を(1)名古屋市,(2)尾張水郷(海部),(3)尾張稲沢(尾張北部),(4)愛知海岸(知多,西三河・東三河の海岸,渥美),(5)西三河・安城,(6)東三河・豊橋,(7)愛知山間・奥三河の7地区に分け,聞き書き調査と料理の撮影を行った。聞き書き調査は,平成24・25年,料理の撮影は平成27年に行った。聞き書きは,各地区に長年暮らし,その地域の家庭料理を伝承されている方を調査対象者とした。撮影に当たっての料理作成は,聞き書き対象者や各地区で伝統的家庭料理の保存活動を行っている団体・個人などに依頼した。先の調査を収録した『日本の食生活全集23 聞き書 愛知食事』を参考にした。</p><p>【結果および考察】名古屋を含む尾張地区では稲作や野菜栽培が盛んで,副菜も地場でとれた野菜を生で食す以外に乾燥させたり,漬物にしたりして利用した。また,名古屋コーチンに代表される養鶏が盛んで,なんぞ事の時に鶏肉(かしわ)や卵が食された。海岸地区は伝統野菜の蕗をはじめ種々の野菜が栽培され,小魚や海藻の佃煮も多く利用されていた。三河の安城地域は,不毛の台地安祥(あんじょう)ヶ原と言われていたが,明治用水建設後は日本のデンマークと称されるようになり,農作物が豊富に栽培された。大豆・落花生も畦に作られていた。愛知山間部では山菜やきのこ,川魚などで佃煮を作り常備菜としていた。へぼなどの昆虫食も利用していた。</p>
著者
阪野 朋子 小出 あつみ 間宮 貴代子 松本 貴志子 成田 公子 山本 淳子 山内 知子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.146-153, 2015

本研究では,東海三県に居住する人々を対象に,子・母・祖母の三世代別に通過儀礼の認知と喫食状況を調べ,東海地方の特徴と伝承に影響する要因について検討した。<br> 認知率では,経験の有無が値に影響し,子世代の百日祝いと初誕生および結納と婚礼の認知率が母と祖母世代より有意(<i>p</i><0.05)に低かった。経験率では,経験時の経済的・社会的状況の厳しさと,儀礼の意義の希薄化が経験率を減少させた。しかし,母と祖母世代の長寿に見るように高齢者が同居する条件は経験率を向上させた。また,儀礼における地域活動や人々の意識の高さが認知率と経験率を向上させた。東海三県の特徴として製造量の多い外郎と漁獲量の多いアサリが儀礼食に利用されていた。
著者
西堀 すき江 小出 あつみ 山内 知子 間宮 貴代子 松本 貴志子 森山 三千江 山本 淳子 近藤 みゆき 石井 貴子 小濱 絵美 加藤 治美 伊藤 正江 筒井 和美 野田 雅子 亥子 紗世 菱田 朋香 熊谷 千佳
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.29, 2017

【目的】愛知県は尾張地方と三河地方に分かれる。また、名古屋は江戸時代より経済活動が盛んで、昭和の初期には既に人口100万人を擁した大都市で、商業や工業が発展していた。周辺の農村地帯は、豊かな生産性の高い土地で、農村特有の食文化を形成していた。一方、海岸地区では海辺に自生する植物で、奥三河の山里では木の葉でもちを包んだりし、身近な自然からの恵を利用した食文化を形成していた。<br />【方法】愛知県を①名古屋市,②尾張水郷(海部),③尾張稲沢(尾張北部),④愛知海岸(知多,西三河・東三河の海岸,渥美),⑤西三河・安城,⑥東三河・豊橋,⑦愛知山間・奥三河の7地区に分け,聞き書き調査,並びに料理の撮影を行った。聞き書き調査は,平成24・25年,撮影は平成27年に行った。聞き書きは,各地区に長年暮らし,その地域の家庭料理を伝承されている方を調査対象者とした。撮影に当たっての料理作成は,聞き書き対象者が高齢であるため,各地区の伝統的家庭料理の保存活動を行っている団体・個人などに作成依頼を行った。先の調査を収録した『日本の食生活全集(23) 聞き書 愛知食事』を参考にした。<br />【結果】茶の湯の盛んな名古屋地区は、有名な和菓子屋が数軒有り、来客時のお茶菓子や、通常のおやつは店で購入することが多かった。名古屋の和菓子として名高いういろうも購入していた。農村地帯では、稲作や年中行事に関わるおやつが多かった。奥三河地区では、貴重な米を使った五平もちはご馳走であった。また、雪深く、正月は花が咲かないことから作るもち花や、身近なほう葉を使ったほう葉もちと山間部の特徴が見られた。また、米が貴重で、もちを搗く時は、普段は必ず大豆、きび、あわ、よもぎなどを混ぜて搗いた。
著者
間宮 貴代子 小出 あつみ 阪野 朋子 松本 貴志子 山内 知子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.58-64, 2016

本研究では愛知県の雑煮を構成する食材について検討した。愛知県の雑煮の食材構成では,東日本で多く使用された角餅に,醤油とかつおだしの清まし仕立てが多かったが,これは味噌仕立を嫌った武家社会の歴史的影響である。具は古くからの形式が現在も維持され,縁起担ぎから,尾張地域在来の餅菜が使用され,かまぼこ・なるとを加え,かつお削り節を添えていた。しかし,尾張地域と三河地域には相違点がみられた。和風風味調味料の使用が,女性の労働力率が高い三河地域で有意に多かった。また,三河地域の雑煮の具は,収穫量が多い白菜,豆腐・油揚げ(大豆),人参を使用する地産地消の傾向が伺え,尾張地域より多彩な具であった。
著者
小出 あつみ 山内 知子 武藤 亜有 大羽 和子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.18, pp.92, 2006

<BR><B>目的:</B>最近、食肉中に存在する抗疲労ジペプチド、アンセリン(Ans)・カルノシン(Car)に抗酸化作用があることと、牛肉・豚肉に比べ鶏肉中に多く含まれることが報告された。本研究は、鶏肉中のAas・Carを有効に活かす貯蔵と加熱調理操作を探ることを目的に実施した。<BR><B>方法:</B>試料は屠殺後32時間以内のブロイラー(B肉)、三河赤鶏(M肉)、名古屋コーチン(K肉)の生肉、貯蔵肉、加熱調理肉を用いた。Ans・Carの含有量比較は、部位別、種類別、貯蔵方法別、加熱調理操作別に行った。加熱は電子レンジ、真空調理、スチーム、フライ、ロースト、ボイルで行った。試料肉を5%スルホサルチル酸溶液で抽出し、Ans・Car含有量を ODS C18カラムHPLC法で測定した。ラジカル捕捉活性は試料肉を80%エタノールで抽出し、DPPH法で測定した。<BR><B> 結果:</B>ジペプチドのAns・Car含有量は生肉、貯蔵肉、加熱肉で、もも肉より胸肉で有意に多かった。これらの含有量比率(生の胸肉⁄もも肉)は、Ansで3.28倍、Carで2.84倍が最大であった。鶏種類別では、Ans・Carともに有意にB肉に多く、K肉で少なかった。胸生肉比較で、AnsではB肉中にK肉の1.16倍、Carで2.15倍と多かった。塊生肉を冷凍貯蔵してもAnc・Car量は変化しなかったが、ミンチ肉にして冷凍貯蔵すると有意に増加した。増加量はB胸肉よりK胸肉で多く、Ancは1.43倍、Carは2.3倍に増加した。加熱調理操作によりAns・Car量は全般に減少したが、B胸肉の真空調理、ボイル(茹で汁含む)で、K胸肉のスチーム、フライでAns量は変化しなかった。
著者
間宮 貴代子 阪野 朋子 松本 貴志子 小出 あつみ 山内 知子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】愛知県は中京圏の中心である名古屋市を含む尾張と、八丁味噌で知られる三河の2地域に大別できる。どちらの地域も長年にわたり独特で豊かな食文化を育くんできた。本研究では両地域における雑煮に関する摂取状況調査を実施して比較検討した。【方法】調査の対象はN女子大学の学生401名(21歳)である。方法は質問数15問の自記式質問紙を使用して留め置き法で行い、配布3週間後に回収した。期間はH23年12月31日~H24年1月3日で、回収率は92%であった。得られたデータはエクセルで集計してχ⊃2;検定を行い、統計的有意水準を5%で示した。【結果】雑煮の摂取頻度では、「元旦に食べる」に地域差はなかったが、二日目と三日目では、尾張地域(OA)が三河地域(MA)より多く食べていた。元旦の具ではOAは餅菜と小松菜、蒲鉾と鳴門、鰹節、青菜類の順で多く、MAは白菜、蒲鉾と鳴門、餅菜と小松菜、鶏肉の順で多かった。この内、餅菜と小松菜、白菜、人参、鶏肉、豆腐と油揚げの摂取経験の地域間に有意差を認めた。正月二日および三日の具は元旦より具の種類が減る傾向を示した。だしの種類のOAでは鰹節だしが多く、MAでは鰹節だしと同程度にだしの素が使われており、だしの素の使用頻度に有意差を認めた。味付けは両地域ともにすましの味付けが約90%であったが、MAでは味噌味の割合がOAより高かった。餅では角餅が両地域で80%摂取されており、加熱法では共に「煮る」が最も多かったが、OAでは「焼く」と「焼いた後煮る」の両方を用いる割合が高かった。以上の結果から、尾張と三河地域の雑煮の摂取経験、味付け、餅の形に地域差を認めなかったが、具とだしの種類で有意な地域差を認めた。
著者
山内 知子 阪野 朋子 小出 あつみ 間宮 貴代子 松本 貴志子 勝崎 裕隆 今井 邦雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.15, 2014 (Released:2014-08-29)

【目的】愛知の地元野菜であるアシタバに着目し,生活習慣病予防を目指した機能性パンの開発を試みた。試料のアシタバの構成成分の分析と粉末アシタバ置換量が製パンの機能性亢進に与える効果について,製パン中のポリフェノール量及び抗酸化活性の変化を明らかにした。【方法】】アシタバは,2012年11月に稲沢市の栽培農家から購入し,凍結乾燥(-80℃)し粉末(250μm)にした。強力粉重量400gの内、1%(4g)、3%(12g)、5%(20g)をアシタバ乾燥粉末で置換してパンを作成し、試料とした。対照としてアシタバ無置換パンを作成した。パンの材料配合は置換したアシタバ以外は、使用したホームベーカリーに示される方法で焼成した。アシタバ成分の構造はLC-MSとNMRで分析し,ポリフェノール量はFolin Denis法,抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性測定法を用いて測定した。データは多重比較法によりTukey-Kramer法で解析し,統計的有意水準は1%とした。【結果】成分分析の結果,今回実験に使用したアシタバの主要成分の一つがChlorogenic acidであることを明らかにでき, Quercetin やkaempferol の配糖体が含まれていることも示唆できた。アシタバ置換パンにおいて,ポリフェノール量・DPPHラジカル捕捉活性能は対照パンと比較して,両者ともにアシタバの置換量増加に伴い有意(p<0.01)に増加する傾向を認めた。日常的に食するパンの強力粉の一部をアシタバに置換することにより、効率的に機能性成分を摂取できる可能性が示唆された。今後,より生理活性の高まるアシタバを用いた調理・加工法について検討していきたい。
著者
小出 あつみ 山内 知子 山本 淳子 松本 貴志子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.48-55, 2012-02-05
被引用文献数
1

本研究では,高齢者が咀嚼しにくいと考えられる8種類の食材を試料として,切り込みにおける機器測定値,官能評価および咀嚼回数の関連から,高齢者における切り込みの有効性を検討した。切り込みによって煮にんじん以外の7試料(リンゴ,キュウ,煮ダイコン,煮コンニャク,カマボコ,イカ,タコ)は有意に軟らかくなった。咀嚼回数では切り込みによって全て試料の咀嚼回数が有意(p<0.05)に減少した。特にイカとタコの減少率が高かった。切り込みをした食材は高齢者に好まれなかったが,煮コンニャクとイカでは違和感は少なかった。したがって,イカヘの切り込みが,高齢者に違和感を与えず,食材の硬さと咀嚼回数を減少させる有効な調理操作であることが示された。
著者
小出 あつみ 山内 知子 大羽 和子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.397-404, 2007-12-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

本研究は,貯蔵及び加熱調理後のアンセリン(Ans)とカルノシン(Car)の含有量およびDPPHラジカル捕捉活性の変化を,ブロイラー(B)・三河赤鶏(M)・名古屋コーチン(K)肉を用いて明らかにした。屠鳥後32時間以内の肉に含まれるAnsとCar量は鶏の種類,部位,飼育状態によって異なった。塊状の胸生肉を7日間冷凍貯蔵(-80℃)してもAnsとCar量は変化しなかったが,ミンチ状の肉を冷凍貯蔵し解凍するとAnsとCarの合計量が有意に増加した。BとK胸ミンチ肉を加熱調理した場合,Ans+Car量は真空調理と茹で加熱(茹で汁を含む)後で減少しなかったが,電子レンジ,蒸し,焼きおよび揚げ加熱後で減少した。DPPHラジカル捕捉活性は,B肉の真空調理,蒸し,茹で,揚げ加熱後では減少しなかったが,電子レンジ加熱で有意に減少し,焼き加熱で有意に増加した。K肉はB肉の変化とほぼ類似した傾向であった。