著者
野村 竜也
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.73-86, 2000-07-15 (Released:2010-06-04)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本稿は, オートポイエーシス理論とその数理的記述モデルを紹介し, オートポイエーシスの数理的記述が社会心理学においてもたらす含意を検討することを目的とした。最初に, オートポイエーシス理論を概観し, その特徴を明らかにした上で, 社会心理学の隣接分野での展開について記述した。次に, オートポイエーシス理論の難解さの原因について, 外部観察主義者の定義を含めてこの視点から検討し, 現時点での数理的記述モデルについて外部観察主義的視点から紹介を行ない, その問題点について検討した。最後に, 現在の社会心理学分野の状況におけるオートポイエーシスの数理的記述の持つ含意について検討した。
著者
野村 竜也
出版者
数理社会学会
雑誌
理論と方法 (ISSN:09131442)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.211-226, 2002-10-31 (Released:2009-02-10)
参考文献数
31

本稿では、二重拘束が思弁的概念定義に留まっていることを省察し、改めて社会心理学的・社会学的モデルの観点から再構築することにより、その源であるサイバネティクスに立ち返って曖昧性を低減したシステムモデルを提供し、家族システム論において新たな含意を得ることを目的とする。そのために、二重拘束を関係システムにおけるポジティブ・ネガティブのフィードバックの安定状態として捉える長谷のアプローチ、およびHochschildの感情規則論を基に二重拘束を感情のギャップとして捉える山田の示唆を、社会心理学の三者関係における認知的斉合性の理論を用いて形式的に表現する。
著者
鈴木 公啓 野村 竜也
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.706-711, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
23

本研究は,職種毎の対人コミュニケーション場面におけるジェンダーロボット選好について明らかにすることを目的としておこなった.また,ジェンダー選好において,性役割平等志向性が関連しているかについても検討をおこなった.成人男女1000名を対象に検討をおこなった.その結果,人間,アンドロイド型ロボット,そして機械型ロボットのいずれにおいても,そしてどの職種であっても,コミュニケーション相手として性別がどちらでもかまわないとする者が多いことが示された.ロボットを日常生活に導入する際には必ずしも性別を付与しないで良いことが示唆される.また,ロボットの側を特定のジェンダーに設定してもそれはステレオタイプの再生産とならない可能性が考えられた.
著者
野村 竜也 古川 浩二郎 福田 倫史 平田 雄一郎 恩塚 龍士 田山 栄基 森田 茂樹
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.35-38, 2022

<p>急性大動脈解離に対するオープンステントグラフト(以下OSG)を併用した全弓部置換術後の脊髄障害は重篤な術後合併症の1つであり,わが国の多施設研究でその発生率は3.5%と報告されている.脊髄障害の原因には多くの要因があると考えられるが,その1つとして肋間動脈閉塞の関与が考えられる.症例は71歳女性.Stanford A型急性大動脈解離に対し弓部大動脈置換+OSG挿入術を施行した.術後より対麻痺を認め,脳脊髄液ドレナージ等を行ったが,改善を認めなかった.術前の造影CTで確認できた肋間動脈10対のうち7対が偽腔起始であり,術後に6対の肋間動脈が閉塞した.術前の造影CTで肋間動脈の多くが偽腔起始であり,かつリエントリー所見に乏しい症例においてOSGを使用した場合,術後偽腔閉塞に伴い肋間動脈が閉塞し,脊髄虚血のリスクが増大し得ると考えられる.</p>
著者
斉藤 祐成 野村 竜也
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)
巻号頁・発行日
vol.2012-HCI-146, no.14, pp.1-5, 2012-01-12

mixi や Facebook, Twitter などの SNS 使用者の性格特性にどのような共通点や関係性が存在するかについて明らかにするために,大学生を対象とした質問紙調査を行った.第 1 回調査においては,SNS の使用と外向性との間に関連性が見出された.本稿では,さらに第 2 回調査の結果として,社会への信頼感や友人関係との関連性について報告する.
著者
野村 竜也 三浦 雅展
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.439-446, 2011-03-30 (Released:2016-08-07)
参考文献数
9

本研究では,社会において「ものづくり」にどのようなイメージが付与されているかについて,成人を対象とした自由記述回答形式のオンライン調査により探索を行った.また,同時に「ものづくり」に対する意識を尺度を用いて測定し,自由記述から抽出された「ものづくり」に対するイメージとの関連について分析を行った.結果として,「ものづくり」に対するイメージカテゴリとして「専門技術」「業種・分野・組織」「商品・製品」の産業に関連するもの,「伝統」「精神・文化」の産業に直接関連しないものが抽出された.また,非産業的イメージを抱く回答者が全体の半数近く存在すること,「ものづくり」イメージカテゴリの分布が年代によって異なること,「ものづくり」に対する意識は全体として肯定的でありながら,非産業関連のイメージを抱く回答者群は産業関連のイメージを抱く回答者群と比べて,個人や生活と関連した「ものづくり」に対してより肯定的であることが示唆された.
著者
野村 竜也 山田 幸恵 鈴木 公啓 神田 崇行
出版者
龍谷大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

対人不安・評価懸念の高い人間がどのような状況で人よりもロボットを好むかについて、心理実験による検証を試みた。本研究の最終目標である人間カウンセラーへの誘導を考慮し、個人の悩み等の自己開示を要求する実験を設定、人相手・ロボット相手による条件間での様々な指標による比較を行った。結果として、対人不安の高い人ほど人前よりもロボットの前で話すほうが緊張が低下する傾向にあることが確認された。これと並行して、ロボットが人よりも好まれる業務場面についての大規模サンプルによる社会調査を行い、対人不安の高い人は多くの場面で人よりもロボットとの対話を望む傾向が確認された。
著者
岡田 崇之 野村 竜也
出版者
情報処理学会
雑誌
研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2010, no.4, pp.1-6, 2010-01-15

本研究では,インターネットの利用状況と学習意欲との関係の探索を目的として 「学芸大式学習意欲検査」 を元に質問紙を開発し,インターネット上での調査を実施した.本稿では,日常生活で必需品となっている携帯電話とパソコンでのメール,mixi などの SNS,Blog やプロフの書き込み等のインターネット上での各種ツールの利用頻度と学習意欲との関連性について報告する.In order to investigate relationships between Internet use and learning motivation, the research developed a questionnaire based on "Gakugeidai Academic Motivation Inventory", and then conducted a social survey via the Internet by using this questionnaire. The paper reports the results of the survey, focusing on the use frequency of various tools on the Internet such as emails with both mobile telephones and the PC, which have been the necessities in everyday life, SNS such as mixi, Blog and Prof, and their relevance with learning motivation.
著者
高木 英至 野村 竜也 杉浦 淳吉 林 直保子 佐藤 敬三 阿部 年晴
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究課題の成果は大別して次の4つのカテゴリーに分けることが出来る。第1は、本研究課題で用いた手法、特に計算機シミュレーションの社会科学における位置づけに関する、方法論的ないし哲学的な位置づけである。従来の例を整理しながら、計算機シミュレーションは数理モデルほど厳密ではないものの、柔軟で適用範囲の多い方法であること、特に進化型のシミュレーションに可能性が大きいことを見出した。第2は単純推論型の計算機シミュレーションの結果である。この部類の成果は主に、エージェント世界でのエージェントの分化を扱った。野村は、ハイダー流のPOXシステムのメカニズムを仮定したとき、一定の確率で2極分化した集団構造を得ることを、解析ならびにシミュレーションによる分析で見出している。高木は、限界質量モデルを距離を定義した空間に展開することで、より一般的なモデルを提起している。そのモデルから、エージェント間の影響力の範囲が近隣に限定されるとき、エージェントのクラスタ化や極性化が生じることを見出した。第3は進化型の計算機シミュレーションの成果である。エージェントの戦略が進化するという前提での計算結果を検討し、社会的交換ではエージェントの同類づきあいによって一定の「文化」が生じ得ること、さらに協力のために信頼に基づく協力支持のメカニズム、安心請負人による協力支持のメカニズムが生じ得ることを見出した。第4はゲーミング/シミュレーションの手法に基づく成果である。林らは、人間被験者を用いたシミュレーションにより、地域通貨という公共財が普及するための条件を、ある条件のもとで特定している。杉浦はCross Roadというゲーミングを被験者に行わせることを通して、集団レヴェルの特性が出現する過程の記述に成功した。