著者
横山 泰子
出版者
法政大学国際日本学研究所
雑誌
国際日本学 = INTERNATIONAL JAPANESE STUDIES (ISSN:18838596)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.3-25, 2022-02-10

This paper examines Terada Torahikoʼs unique perspective toward the Ginza area in Tokyo through a close reading of his texts. Terada Torahiko(寺田寅彦1878-1935) was one of the renowned Japanese physicists whom he called himself Ginbura-an-Shujin (Master of Ginza walker). His enthusiasm toward Ginza led him to stroll around the area for his entire lifetime. Ginza was the best place for Japanese modernists to encounter Western civilization at that time. Analyzing Teradaʼs text shows how one Japanese intellectual who had a great longing for Western civilization was attracted to the place.During his youth, Terada had his first Western food at a restaurant in Ginza and soon became a coffee lover. After returning from study abroad in Europe, he constantly enjoyed shopping around the Ginza area and purchasing imported goods, such as records, musical instruments, picture books, and so on. The coffee shops were also his favorite place in Ginza, and he even wrote an essay entitled Introduction to Coffee Philosophy(『珈琲哲学 序説』).One reason he often visited Ginza was that a cup of coffee always helped him refresh his mind and obtain some inspiration for works.In his essay Ginza Alps(『銀座アルプス』),Terada referred to mob psychology and suggested that many people visiting Ginza are feeling a sense of emptiness in their lives. Terada also had a similar sentiment and shared his sense of emptiness and loneliness in letters sent to his close friends. Nevertheless, by visiting Ginza, he could somewhat fill in the empty hole in his heart, even just a brief moment.In 1923, the Great Kanto earthquake occurred, and Ginza was also devastated by fire. As a physicist, Terada energetically researched earthquake-stricken areas. In Ginza Alps, Terada emphasized the significance of disaster prevention and suggested building a monument in Ginza to remember the earthquake. He also warned of fires on high-rise buildings and wrote measures to escape from a fire. As a Ginza lover physicist, he earnestly examined the ways to maintain the town for the future.
著者
横山 泰子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.43-55, 2012-03-30

江戸時代に日本で作られた手品の解説本の中には、手品のみならずまじないの情報が掲載されている。こうした記事は手品史の観点からはあまり注目されないが、奇術と呪術が渾然一体となっていた当時の人々の感覚を知るうえで面白い研究対象といえる。本論では、中国の『神仙戯術』の翻訳からはじまる近世日本の手品本を概観し、その中に記されたまじないを取り上げた。初期の『神仙戯術』や『続神仙戯術』は、手品をはじめ、呪術や生活術などを集めている。もともと中国でも、種や仕掛けを用いて不思議な現象を見せる娯楽としての手品と、まじない等の情報が混在していた。日本の手品観は、中国の手品観の影響を受けていると思われる。また、中国の呪術と似たものが日本の本にも見られるので、文献を通じて中国のまじないが日本人の日常生活の中に浸透していったと考えられる。ただし、まじないの方法には日中で異動がある。外国の呪術は、日本の生活環境にあうよう、改変されて伝えられたのだろう。本来まじないは口頭で秘密裏に伝えられるものだったと考えられるが、江戸時代においては生活上の実用的な知識として本に記されて流布した。奇しくも、まじない本や手品本、占い本等のいわゆる「秘術」を公開する文献は、十七世紀後期に刊行されはじめる。この時期を日本における秘術公開時代の幕開けと考えてみたい。手品本のまじないは、先行の呪術系の書物に類似するものが見られる。専門書の中のまじないの情報が、手品本の中に流入していったものと思う。手品本に記されたまじないには、呪歌を伴うものや、書記行為を伴うものがある。近世日本では、十七世紀から民衆の識字率が向上したが、そうした社会的背景が、手品本の存在や字を書くまじないのあり方と関係している。行為者の能力や資質にあわせて、様々なまじないができるようになっているところに、江戸時代のまじない文化の大衆性を感じる。
著者
横山 泰子
出版者
岩波書店
雑誌
文学 (ISSN:03894029)
巻号頁・発行日
vol.16, no.6, pp.45-64, 2015-11
著者
横山 泰子
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.174, pp.43-55, 2012-03

江戸時代に日本で作られた手品の解説本の中には、手品のみならずまじないの情報が掲載されている。こうした記事は手品史の観点からはあまり注目されないが、奇術と呪術が渾然一体となっていた当時の人々の感覚を知るうえで面白い研究対象といえる。本論では、中国の『神仙戯術』の翻訳からはじまる近世日本の手品本を概観し、その中に記されたまじないを取り上げた。初期の『神仙戯術』や『続神仙戯術』は、手品をはじめ、呪術や生活術などを集めている。もともと中国でも、種や仕掛けを用いて不思議な現象を見せる娯楽としての手品と、まじない等の情報が混在していた。日本の手品観は、中国の手品観の影響を受けていると思われる。また、中国の呪術と似たものが日本の本にも見られるので、文献を通じて中国のまじないが日本人の日常生活の中に浸透していったと考えられる。ただし、まじないの方法には日中で異動がある。外国の呪術は、日本の生活環境にあうよう、改変されて伝えられたのだろう。本来まじないは口頭で秘密裏に伝えられるものだったと考えられるが、江戸時代においては生活上の実用的な知識として本に記されて流布した。奇しくも、まじない本や手品本、占い本等のいわゆる「秘術」を公開する文献は、十七世紀後期に刊行されはじめる。この時期を日本における秘術公開時代の幕開けと考えてみたい。手品本のまじないは、先行の呪術系の書物に類似するものが見られる。専門書の中のまじないの情報が、手品本の中に流入していったものと思う。手品本に記されたまじないには、呪歌を伴うものや、書記行為を伴うものがある。近世日本では、十七世紀から民衆の識字率が向上したが、そうした社会的背景が、手品本の存在や字を書くまじないのあり方と関係している。行為者の能力や資質にあわせて、様々なまじないができるようになっているところに、江戸時代のまじない文化の大衆性を感じる。一部非公開情報あり
著者
小松 和彦 徳田 和夫 ADAM Kabat 佐々木 高弘 横山 泰子 安井 眞奈美 常光 徹 山田 奨治
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

四年計画の研究は、以下のテーマにしたがって展開され、成果がまとめられた。1.「怪異・妖怪伝承データベース」を活用した怪異関係記録の数量的分析手法の開発:すでに公開されている民俗学雑誌記事をもとにしたデータベースを利用し、信仰や心意現象に関するデータの計量分析手法の開発と研究をおこなった。四年間の調査・研究実績は、研究代表者・研究分担者がそれぞれ論文を執筆し、報告書(冊子体)にまとめた。2.怪異関係記録の収集および分類・整理:『日本伝説体系』全17巻(みずうみ書房1982-90)、および日本全国の都道府県史(民俗編に該当するもの)などを対象に、各地域に根付いた持続性のある「伝説」を中心とした怪異・妖怪伝承についてのデータを集積した。集積方法については、すでに公開されている「怪異・妖怪伝承データベース」作成時のマニュアルを参考にして都道府県史専用マニュアルを作成、それに従って作業を進めた。なお、都道府県史(民俗編)については合計6625件の事例を収集し、カードを作成した。3.妖怪・怪異関係典籍の収集:各地域・各時代の妖怪・怪異関係典籍を中心に発掘及び収集を行った。絵画資料については、二次資料(妖怪展などの図録資料)、一次資料(絵巻物・浮世絵・黄表紙などの現物)を対象として収集を行った。4.絵画資料データベースの試作版作成:日文研所蔵の妖怪・怪異に関する絵画資料をデジタルデータとして保存し、その画像についての書誌情報のデータベース構築をめざし、研究・開発を行った。
著者
田中 優子 小林 ふみ子 横山 泰子 小秋元 段 大木 康 王 敏
出版者
法政大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、次のことが明らかになった。第一に、江戸庶民が日本の領域を意識してきた、その経過と変遷である。第二に、歴史上の日本意識の高揚の理由や、国家と地域の齟齬という問題に気付くことになった。第三に東アジアにおける華夷意識が、日本においても国家と地域の関係に大きな影響を与えていることが認識できた。総じて、近世では近代とは異なる日本意識が様々な形で表現されていたことがわかった。また大学院博士課程の学生たちが、自らの研究の中で日本意識を考え、研究に取り入れるようになった。