著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第48回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.64, 2014 (Released:2014-05-11)

いわゆる「工場畜産」と呼ばれる環境下で、飼育される家畜たちは、エージェンシーなき客体、あるいは肉を生み出す単なる機械なのだろうか。この問いを出発点に、本発表では、産業化の進んだ沖縄の養豚場の事例から、人とブタの個別具体的なかかわりを明らかにすることで、産業家畜と人間の関係について別の見方を提示することを目指す。
著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.044-063, 2022-06-30 (Released:2022-12-08)
参考文献数
39

本論は、沖縄県名護市辺野古の基地建設の進行に伴って、熾烈化する抗議行動の最前線で、心身に傷を負い、抗議に行けなくなった人びとが、新たに勝負できる領域を模索するなかで見出した、〈生き方としての基地反対運動〉とでも呼びうる動きを積極的に掬いあげる。現在生まれつつあるのは、狭義の政治運動におさまるものではなく、むしろ、政治の限界(代表政治と直接政治の双方の限界)を踏み越えて、〈生き方〉そのものとして展開される基地反対運動である。日本政府の暴力により、従来の運動の限界に立たされた人びとは、これまでの闘い方とは異なる形で、自らの生き方を通して変革の方途を切り出していく。それは、生活を丸ごと抱き込んだ運動の全面化であり、自らの生き方の社会運動化、とでも呼びうるものである。本論では、従来の「政治運動」で傷ついた人びとが、口にするようになった「これは、政治じゃない」という言葉に耳を傾け、基地反対運動を「非政治化」し、より広い領域を巻き込みながら、自らの〈生き方〉として展開する新たな基地反対運動を理解することを目指す。さらに本論では、ここでの生き方を、人間のみに限定せず、他の動物たちの生き方をも含み込むものとして、より広く捉える。そこから、基地建設によるかつてない規模の破壊によって、改めて交差する人間と動物たちの生を捉える視座を築いていく。
著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集 日本文化人類学会第55回研究大会 (ISSN:21897964)
巻号頁・発行日
pp.C18, 2021 (Released:2021-10-01)

本発表では、沖縄県名護市辺野古の基地建設の進行にともなって、熾烈化する抗議行動の最前線で、機動隊や海上保安庁の暴力により心身に傷を負い、抗議に行けなくなった人びとが、新たに勝負できる領域を模索するなかで見出した、<生き方としての基地反対運動>でも呼びうる動きを積極的に掬いあげる。現在生まれつつあるのは、狭義の政治運動におさまるものではなく、むしろ、政治の限界を踏み越えて、<生き方>と接続される基地反対運動である。本発表では、従来の「政治運動」で傷ついた人びとが、口にするようになった「これは、政治じゃない」という言葉に耳を傾け、基地反対運動を「非政治化」し、より広い領域を巻き込みながら、自らの<生き方>として展開する新たな基地反対-環境運動を理解することを目指す。
著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
文化人類学 (ISSN:13490648)
巻号頁・発行日
vol.79, no.4, pp.357-377, 2015-03-31 (Released:2017-04-03)
被引用文献数
1

本論の目的は、沖縄の豚肉専門店が林立する市場の一角において、いかに人びとが自らの感覚を総動員して(あるいは、そうするよう促され)商品を弁別し、豚肉の品質や特徴を把握し、売買を成立させるかを記述することである。そのために、市場研究と「感覚の人類学(anthropology of the senses)」の議論を接続し、身体・感覚を用いた売買のプロセスを理解する枠組みを設定した。感覚の人類学は、人間の知覚や感覚が単に生理的なメカニズムに規定されるものではなく、社会的・文化的に形成されることを主張した。しかし、感覚の人類学は、感覚の重要性を理論的に示したのみで、詳細な民族誌的事例を提示したわけではない。とくに、においの研究は理論的な言及や断片的な記述にとどまり、詳細な民族誌的記述は他の感覚と比べて一層少ない。本論は市場の文脈で、感覚記述の人類学へ迫る実践例として、嗅覚をはじめとする感覚の民族誌的事例を提示し、この批判を乗り越えることを目指す。また感覚の人類学がもつ別の問題点として、感覚を静態的に捉え、同一社会内の成員間の感覚を等質的に捉える傾向がある。それに対して本論では、感覚を歴史的に変化する動態的なものと捉え同一社会の成員間にみられる差異に目を向ける。具体的には、市場を訪れる高齢の買い手に特徴的な感覚が、若年の買い手とは共有されておらず、感覚の使い方において世代差があることに注目する。感覚の次元にみられる世代差は、商品の選択や売り手との関係構築において差異を生み出している。このように、人びとの感覚を一枚岩に捉える傾向への批判は、非歴史的アプローチへの批判と重なる、本論では、沖縄における養豚の産業化の歴史を辿り、現在の市場で観察できる感覚をめぐる事象を歴史的な変化に位置づけて理解する。
著者
比嘉 理麻
出版者
日本文化人類学会
雑誌
日本文化人類学会研究大会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2014, 2014

いわゆる「工場畜産」と呼ばれる環境下で、飼育される家畜たちは、エージェンシーなき客体、あるいは肉を生み出す単なる機械なのだろうか。この問いを出発点に、本発表では、産業化の進んだ沖縄の養豚場の事例から、人とブタの個別具体的なかかわりを明らかにすることで、産業家畜と人間の関係について別の見方を提示することを目指す。
著者
三原 芳秋 松嶋 健 花田 里欧子 岡本 雅史 高田 明 太田 貴大 鵜戸 聡 比嘉 理麻 高梨 克也 中川 奈津子 中谷 和人 アンドレア デアントーニ 赤嶺 宏介 川上 夏林
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

「(人間)主体」の諸機能=学科を軸に制度化されてきた人文学を「生きている存在」一般の学として再編成する(=「生態学的転回」)ために、多様な専門の若手研究者が集い、「共同フィールドワーク」や芸術制作・コミュニティ運動の〈現場〉とのダイアロジカルな共同作業を通して従来型ではない「共同研究」の〈かたち〉を案出することが実践的に試みられ、その〈プロセス〉は確固たる端緒を開くに至った。また、環境・社会・精神のエコロジーを美的に統合する「エコゾフィー」的思考を共有する基盤となるべき「新たな〈一般教養〉」構築を文学理論の「生態学的転回」を軸に試みる企図も、国際的・学際的に一定の承認を得ることができた。
著者
比嘉 理麻
巻号頁・発行日
2013

筑波大学博士 (国際政治経済学) 学位論文・平成25年3月25日授与 (乙第2639号)