著者
岡本 雅史 大庭 真人 榎本 美香 飯田 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.526-539, 2008-08-15
被引用文献数
5 3

本研究は,漫才対話が二者間での対話形式を取りながら第三者である観客への情報伝達を可能とする<オープンコミュニケーション>構造を持つことに着目し,発話・視線・姿勢などのマルチモーダルな要素間の相互作用の分析を行うことにより,二体の擬人化エージェントの対話を通じてユーザに効果的にインストラクションを行う対話型教示エージェントモデルを構築する上で有用な知見を得ることを目的とする.特にオープンコミュニケーションの大きな特徴の一つであるコミュニケーションの「外部指向性」に焦点を当て,非明示的な観客への情報伝達である「外部指向性」と直接的に観客への働きかけを行う「内部指向性」の両者が,どのように演者内のマルチモーダルな振る舞いと演者間のインタラクションによって実現されているかをプロの漫才帥の対話映像の分析から探った.結果として,オープンコミュニケーションにおける指向性の顕在化は,今回分析対象とした二組の漫才コンビ間で異なる形式を持つことが明らかとなり,オープンコミュニケーションの指向性を捉える上でマルチモーダルなチャネル間の相互関係が重要な役割を果たしていることがわかった.
著者
仲本 康一郎 岡本 雅史 加藤 祥
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、日常的な営為によって生み出される語りと、語りが生成する世界に一貫性を求める私たちの心の習慣をナラティブ・リアリティとしてとらえ、人が語ることでいかにしてリアリティを構築しているかを認知的観点から考察した。具体的には、(1)語りが物語標識によって構造化され、一貫性が生み出されていくこと、(2)単一の物語が複数の話者によって共話的に語られうること、(3)同一の物語が反復的に語られることで変容を受け、かつ同一性を保持することに着目し、語りの展開可能性と反復可能性、さらに複数の話者による共話可能性を架橋する潜在的な物語構造の多相的な分析を行った。
著者
飯田 仁 岡本 雅史 大庭 真人 石本 祐一 阪田 真己子 細馬 宏通 榎本 美香
出版者
東京工科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

計2回の漫才収録を通じ,漫才師および観客のデータを収集した.ツッコミ役が聞き手は,ツッコミ・同意のどちらを行うのかにより,ボケ役への顔を向ける潜時に違いがあることが分かった.また,モーションキャプチャによりツッコミを行う際に顔の向きとともに,近づくということが確認された.最後に,「身体ノリ」は観客の有無にかかわらず行われる一方で,観客のいる方が発生しやすく,また,同じネタでも観客の有無によってその表現は異なることがわかった.
著者
松村 真宏 河原 大輔 岡本 雅史 黒橋 禎夫 西田 豊明
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.93-102, 2007 (Released:2007-01-05)
参考文献数
18
被引用文献数
1 3

To overcome the limitation of conventional text-mining approaches in which frequent patterns of word occurrences are to be extracted to understand obvious user needs, this paper proposes an approach to extracting questions behind messages to understand potential user needs. We first extract characteristic case frames by comparing the case frames constructed from target messages with the ones from 25M sentences in the Web and 20M sentences in newspaper articles of 20 years. Then we extract questions behind messages by transforming the characteristic case frames into interrogative sentences based on new information and old information, i.e., replacing new information with WH-question words. The proposed approach is, in other words, a kind of classification of word occurrence pattern. Qualitative evaluations of our preliminary experiments suggest that extracted questions show problem consciousness and alternative solutions -- all of which help to understand potential user needs.
著者
大庭 真人 岡本 雅史 飯田 仁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.74, 2009 (Released:2009-12-18)

会話において,話し手の発話の分節に合わせ聞き手が動作を行う結果として話し手と聞き手との動作の間に同調が観られる事例が報告されている(Kendon, 1990).本研究では,コンテンツユーザとしての観客が漫才においてどのように笑いを享受するのかを分析するため,漫才師による公演を漫才師・観客ともに撮影収録した.漫才師2組に2本ずつの漫才を行ってもらい,230秒と298秒,357秒と262秒の映像音声データを収録した.このデータから,観客の同調現象に着目し,分析した.観客の漫才師に対する反応は「笑う」「拍手」をするといった非常に制限されたチャネルを通じて行われているようだが,実際には笑うという観客が同時に起こす反応に加え,漫才師が笑わせる合間の姿勢を変える動作においても,複数の観客間に同調現象が観察された.これは会場の離れた位置の観客間でも観察されており,漫才師に起因して生じることが分かった.
著者
岡本 雅史 大庭 真人 榎本 美香 飯田 仁
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.526-539, 2008-08-15 (Released:2008-11-10)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

本研究は,漫才対話が二者間での対話形式を取りながら第三者である観客への情報伝達を可能とする〈オープンコミュニケーション〉構造を持つことに着目し,発話・視線・姿勢などのマルチモーダルな要素間の相互作用の分析を行うことにより,二体の擬人化エージェントの対話を通じてユーザに効果的にインストラクションを行う対話型教示エージェントモデルを構築する上で有用な知見を得ることを目的とする.特にオープンコミュニケーションの大きな特徴の一つであるコミュニケーションの「外部指向性」に焦点を当て,非明示的な観客への情報伝達である「外部指向性」と直接的に観客への働きかけを行う「内部指向性」の両者が,どのように演者内のマルチモーダルな振る舞いと演者間のインタラクションによって実現されているかをプロの漫才師の対話映像の分析から探った.結果として,オープンコミュニケーションにおける指向性の顕在化は,今回分析対象とした二組の漫才コンビ間で異なる形式を持つことが明らかとなり,オープンコミュニケーションの指向性を捉える上でマルチモーダルなチャネル間の相互関係が重要な役割を果たしていることがわかった.
著者
中矢 明歩 岡本 雅史
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会研究会資料 言語・音声理解と対話処理研究会 94回 (2022/3) (ISSN:09185682)
巻号頁・発行日
pp.13, 2022-02-25 (Released:2022-02-25)

本研究では、複数の会話参加者が同時に話す発話の重なり箇所を「発話重複」と定義し、オンライン会話における先行発話への「阻害」に着目して発話重複の機能を解明することを目的とする。また対面会話との違いを考察し、それぞれの発話重複の回避の仕方についても明らかにする。日常的な会話場面の1つである4人組の「飲み会場面」を取り上げ、対面会話2組、オンライン会話2組の映像を観察した。発話重複の回数や生起箇所、言い止めの生起頻度などを定量的に分析し、その後発話重複による先行発話への阻害の有無を、発話内容や発話重複が生起するタイミングに即して定性的に考察した。その結果、オンライン会話は対面会話よりも先行発話への阻害の機能をもちやすく、発話重複の中でも「自己選択競争による同時発話」、「割り込み・意図的介入」、「TRPの誤認」、「ターンを要求しない発話」による重複は阻害のある発話重複になりやすいことが示唆された。
著者
大庭 真人 岡本 雅史 飯田 仁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.74-74, 2009

会話において,話し手の発話の分節に合わせ聞き手が動作を行う結果として話し手と聞き手との動作の間に同調が観られる事例が報告されている(Kendon, 1990).本研究では,コンテンツユーザとしての観客が漫才においてどのように笑いを享受するのかを分析するため,漫才師による公演を漫才師・観客ともに撮影収録した.漫才師2組に2本ずつの漫才を行ってもらい,230秒と298秒,357秒と262秒の映像音声データを収録した.このデータから,観客の同調現象に着目し,分析した.観客の漫才師に対する反応は「笑う」「拍手」をするといった非常に制限されたチャネルを通じて行われているようだが,実際には笑うという観客が同時に起こす反応に加え,漫才師が笑わせる合間の姿勢を変える動作においても,複数の観客間に同調現象が観察された.これは会場の離れた位置の観客間でも観察されており,漫才師に起因して生じることが分かった.
著者
岡本 雅史 阪田 真己子 細馬 宏通
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-07-18

まず、代表者岡本は、一人の話者の語りが中心となる演芸である落語と漫談に着目し、前者においてマクラから本題へと語りのモードが転換する場面において言語的な境界を示しつつも、非言語的・パラ言語的モダリティの層においてはその境界と時間的に一致しないことを明らかにし、語りの受け手に対する二重の境界設定がプロの噺家の語りの特徴であることを示唆した。一方、後者については、一人語りの中にも仮想的な対話場面の再現が万段において頻出することを示し、仮想的な語り手を導入する際の引用標識の戦略的な脱落が受け手の物語認知にとって有効な手段であることを明らかにした。いずれも社会言語科学会第41回大会で報告された。次に、分担者阪田は、観客も漫才対話を支えるコミュニケーションの参与者であると仮定し、観客の存在が、漫才師のパフォーマンスにいかなる影響を与えているかを検討した。プロの漫才師による実証実験を実施し、ボケ、ツッコミという役割によって観客による影響の受け方が異なること、オープンコミュニケーションの参与者として、漫才師と観客が相互参照的な関係にあることを明らかにした。研究成果は、電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎研究会、および国際会議International Conference on Culture and Computingにて報告された。一方、分担者細馬は、漫才におけるボケとツッコミの身体動作と発話との時間関係に注目し、ボケによる笑いの認知点以外に、ツッコミとボケのマルチモーダルな行為関係が笑いに寄与している可能性について調査している。特に、センターマイクによって身体動作が制約を受けていた時代の漫才と、コンタクトマイクなどを用いて身体動作の自由度が増した時代の漫才を比較することで、近年の漫才が必ずしもマイクという資源の取り合いを前提としない動作を取り入れていることを分析している。
著者
三原 芳秋 松嶋 健 花田 里欧子 岡本 雅史 高田 明 太田 貴大 鵜戸 聡 比嘉 理麻 高梨 克也 中川 奈津子 中谷 和人 アンドレア デアントーニ 赤嶺 宏介 川上 夏林
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

「(人間)主体」の諸機能=学科を軸に制度化されてきた人文学を「生きている存在」一般の学として再編成する(=「生態学的転回」)ために、多様な専門の若手研究者が集い、「共同フィールドワーク」や芸術制作・コミュニティ運動の〈現場〉とのダイアロジカルな共同作業を通して従来型ではない「共同研究」の〈かたち〉を案出することが実践的に試みられ、その〈プロセス〉は確固たる端緒を開くに至った。また、環境・社会・精神のエコロジーを美的に統合する「エコゾフィー」的思考を共有する基盤となるべき「新たな〈一般教養〉」構築を文学理論の「生態学的転回」を軸に試みる企図も、国際的・学際的に一定の承認を得ることができた。
著者
榎本 美香 岡本 雅史 串田 秀也 山川 百合子 松嶋 健 高梨 克也 松岡 恵子 小谷 泉
出版者
東京工科大学
雑誌
新学術領域研究(研究課題提案型)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、統合失調症や高次脳機能障害という病名が与えられた人々(the Communication Handicapped; CH)が個々に持つ社会的・個人的属性や会話の個々の構成物(発話や身振り)の相互作用が作り出すコミュニケーションシステムにおいて、コミュニケーションギャップが検出され、排除/吸収されていく過程のメカニズムを解明した。