著者
水野 治久 石隈 利紀
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.530-539, 1999-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
49
被引用文献数
54 19

我が国においてカウンセリングが専門的サービスとして認められつつあるが, 援助を受ける側からの被援助志向性や被援助行動に関する研究はほとんど実施されていない。一方で, 米国ではこの領域に関する研究は20年ほど前から行われている。米国における被援助志向性および被援助行動の研究を分類した結果, 1) デモグラフィック要因との関連, 2) ネットワーク変数との関連, 3) パーソナリティ変数との関連, 4) 個人が抱えている問題の深刻さ, 症状との関連の4領域に集約された。研究の課題として, 1) 他の研究を踏まえた上での援助志向性, 被援助行動の定義の必要性, 2) 被援助志向性が低い人に対する介入や被援助志向性が低い人のための援助システムの構築へ結びつく研究の必要性があげられる。このような研究を通して, 我が国の専門・職業的心理学の構築の必要性が示唆された。
著者
水野 治久 石隈 利紀
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.47, no.4, pp.530-539, 1999-12-30

我が国においてカウンセリングが専門的サービスとして認められつつあるが,援助を受ける側からの被援助志向性や被援助行動に関する研究はほとんど実施されていない。一方で,米国ではこの領域に関する研究は20年ほど前から行われている。米国における被援助志向性および被援助行動の研究を分類した結果,1)デモグラフィック要因との関連,2)ネットワーク変数との関連,3)パーソナリティ変数との関連,4)個人が抱えている問題の深刻さ,症状との関連の4領域に集約された。研究の課題として,1)他の研究を踏まえた上での援助志向性,被援助行動の定義の必要性,2)被援助志向性が低い人に対する介入や被援助志向性が低い人のための援助システムの構築へ結びつく研究の必要性があげられる。このような研究を通して,我が国の専門・職業的心理学の構築の必要性が示唆された。
著者
四辻 伸吾 水野 治久
出版者
日本教育カウンセリング学会
雑誌
教育カウンセリング研究 (ISSN:21854467)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-10, 2020 (Released:2020-05-16)

本研究の目的は,小学生がいじめに対してどのような見方・考え方を持っているかを捉える尺度である 「小学生いじめ観尺度」を作成し,その因子構造,信頼性,妥当性を検討することであった。小学生のいじ めについての考え方に関する質問紙を用いて,小学校4~6年生599名を対象に回答を求めた。探索的因子 分析(最尤法,プロマックス回転)により,「いじめ一定理解」,「いじめ鋭敏感覚」,「いじめ解決可能」の3因 子11項目からなる「小学生いじめ観尺度」が作成された。また,「小学生いじめ観尺度」について信頼性と妥 当性を検証したところ,一定の信頼性と妥当性が確認された。
著者
木村 真人 梅垣 佑介 水野 治久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.173-186, 2014 (Released:2015-03-27)
参考文献数
29
被引用文献数
2 5

本研究では, 大学生の抑うつおよび自殺念慮の問題に関する学生相談機関への援助要請行動のプロセスに焦点をあて, その特徴を明らかにするとともに, 援助要請行動のプロセスにおける各段階の意思決定に関連する要因を検討した。大学生を対象に, 場面想定法を用いて抑うつおよび自殺念慮の問題を抱えた際の援助要請行動, 問題の深刻度の評価, 援助要請に対する態度, 自尊感情, 精神的健康度, ソーシャル・サポート, デモグラフィック変数について尋ねる質問紙調査を実施し, 758名からの有効回答を得た。ロジスティック回帰分析を実施した結果, 援助要請を検討する段階では性別(女性), ソーシャル・サポート, 問題の深刻度の評価が関連を示した。学生相談機関への援助要請行動の段階では, 問題の深刻度の評価, 援助要請に対する態度が関連を示し, さらに自殺念慮の問題では, 性別(男性)が関連を示した。得られた結果より, 援助要請行動のプロセスの観点からの, 大学生の精神的健康を目指した学生相談機関による介入方法について考察された。
著者
國清 恭子 水野 治久 渡辺 尚 常盤 洋子
出版者
北関東医学会
雑誌
北関東医学 (ISSN:13432826)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.303-312, 2006 (Released:2006-12-26)
参考文献数
23

【目 的】 中絶を受ける女性の援助不安の実態を明らかにし, 中絶を受ける女性の心のケアのあり方を検討する資料を得ることを目的として調査を行った. 【対象と方法】 調査期間は平成15年9月~平成16年1月. 15施設において中絶を受ける女性に無記名式自記式質問紙調査を実施し, 中絶前後で同一対象者によって回答が得られた100例を分析対象とした. 調査内容は, 援助不安, 被援助志向性, もらったソーシャルサポート, 自尊感情であった. 【結 果】 医師, 看護師への呼応性, 汚名への心配が強い場合, もらったソーシャルサポートの量が少ないことが明らかになった. また, 「呼応性への心配」, 「汚名への心配」, 「被援助志向性」がもらったソーシャルサポートを規定する要因として抽出された. 【結 論】 中絶を受ける女性が医師や看護師からのサポートを受け易い状況を作り出すためには, 呼応性および汚名への心配の軽減を図るとともに, 被援助志向性を高めることが必要である.
著者
佐々木 悠人 水野 治久 永井 智
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第IV部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.259-270, 2017-02-28

本研究は,研究Iとして,大学生の専門的心理的援助要請態度にどのような変数が関連するかを明らかにするために質問紙調査が実施された。大学生193名を対象に調査を行い,社会的スティグマが自己スティグマに正の影響を,自己スティグマが専門的心理的援助要請態度に負の影響を与えていた。研究IIとして,自己スティグマの軽減と専門的心理的援助要請態度の改善を目的とした介入プログラムを作成,実施した。大学生及び大学院生11名を実験群,25名の大学生と大学院生を統制群とし,60分間×2コマの介入を行った。分析の結果,専門的心理的援助要請態度のみ改善を示した。Factors that affect college students' professional help seeking preferences were explored and an intervention was conducted to change their attitudes about help seeking. First, a questionnaire study was designed to examine how college students viewed psychiatric patients (perceived social distance), their self-stigma about receiving professional help, and their willingness to seek professional help. Undergraduate and graduate students (N=193) responded to questionnaires consisting of the Self-Stigma Scale, Social Distance Scale-Revised version (SDS-R) and Attitudes Towards Seeking Professional Psychological Help Scale (ATSPPH-SF). Results were analyzed by Structural Equation Modeling, which indicated that social distance positively affected self-stigma and self-stigma negatively affected help seeking preferences. Next, an intervention program was conducted for attitudes toward professional help seeking in 11 college and graduated students, which consisted of two sessions. In the first session (sixty minutes), the researcher gave basic information about mental illnesses and introduced the college counseling center as a helping resource. In the second session, researches helped each participant focus their coping strategies. Results indicated that the intervention did not reduce self-stigma regarding mental illnesses. However, the mean score of the participants in the Help Seeking Scale improved. Limitations and implications of this research are discussed.
著者
木村真人 梅垣佑介 河合輝久 前田由貴子 伊藤直樹 水野治久
出版者
日本教育心理学会
雑誌
日本教育心理学会第56回総会
巻号頁・発行日
2014-10-09

企画趣旨悩みを抱えながら相談に来ない学生への支援は多くの大学に共通する学生相談・学生支援の課題である(日本学生支援機構,2012)。このような課題の解消に向けて,企画者は悩みを抱えながら相談に来ない学生への支援について,大学生本人の援助要請行動に焦点をあてたワークショップを企画した(木村・梅垣・榎本・佐藤,2012)。ワークショップでの議論を通して,悩みを抱えながら相談に来ない学生に対しては,学生の自主来室を待つだけの姿勢や,学生相談機関のみでの対応・支援には限界があることが明らかとなった。そこで本シンポジウムでは,学内外の多様な資源を活用した支援に着目する。この課題に対して問題意識を持ちながら現場で学生支援に関わっている先生方に,学内外の多様な資源を生かした支援の可能性と課題について,研究知見および実践活動に基づく話題提供をしていただく。学内外の資源として,具体的には学内の友人や学生コミュニティ,およびインターネットを活用した支援に焦点をあてる。話題提供および指定討論者からのコメントを受け,悩みを抱えながら相談に来ない学生への学内外の多様な資源を生かした支援の可能性や課題についてフロアーの方々とともに議論を深めたい。話題提供1:大学生の学生相談機関への援助要請過程における学内の友人の活用可能性―大学生のうつ病・抑うつに着目して―河合輝久(東京大学大学院)悩みを抱えていながら相談に来ない大学生に対する学生支援のうち,うつ病を発症していながら専門的治療・援助を利用しない大学生に対する学生支援の構築は喫緊の課題といえる。なぜならば,うつ病は修学を含む学生生活に支障を来すだけでなく,自殺の危険因子ともされているためである。従来の研究では,大学生の年代を含む若者は,自らの抑うつ症状について専門家ではなく友人に相談すること,友人から専門家に相談するよう促されることで専門家に相談しに行くことが明らかにされている。従って,学内の友人は専門家へのつなぎ役として活用できる可能性が示唆されているといえる。一方で,うつ病・抑うつ罹患者に対して,大学生は不適切な認識や対応をとるとされている他,罹患者に闇雲に関わることで情緒的に巻き込まれてしまう恐れも考えられる。従って,うつ病・抑うつを発症しながら相談に来ない大学生への支援における学内の友人の活用可能性について,うつ病・抑うつを発症した大学生とその身近な学内の友人の双方の視点から,学内の友人を活用するメリットおよび限界を把握しておくことが重要といえる。本発表では,うつ病を発症しながら相談に来ない大学生の学生支援における学内の友人を活用するメリットおよび留意点を概観した上で,学内の友人をインフォーマルな援助資源として有効に機能させる可能性について検討したい。話題提供2:学内資源を活かした支援を要する学生のコミュニティ参加を促す支援の実践―ピア・サポートの活用―前田由貴子・木村真人(大阪国際大学)大学に進学する発達障害学生の増加に伴い,発達障害学生支援の重要性が指摘されている。この発達障害学生支援体制構築に際しては,相談支援窓口となる部署の設置や,教職員間の連携などが必要要素であり(石井,2011),各大学における急務の課題となっている。従来から発達障害を含む何らかの障害を抱える学生や,悩みや問題を抱える学生に対しては,学生相談室が中心となり対応してきたが,特に発達障害学生支援においては,学生相談室での個別対応のみでは不十分であり,学内の様々な部署との連携による支援が求められる。発達障害学生支援においては,当該学生の友人関係構築の困難による孤立化を防ぎ,不登校・休学・退学に繋げない取り組みが重要である。彼らが孤立化する要因として,対人関係上の問題解決スキル不足があり,このスキル教授が支援の中でも大きな位置を占める。しかし,この問題解決スキル行使が可能になる環境が無い場合は,単なる問題解決スキルの知識獲得のみに留まり,その実践からのフィードバックを得ることが難しい。そのため,当該学生の問題解決スキル実践の場への参加促進及び,そのコミュニティ作りが肝要である。本発表では,このコミュニティ作りにおけるピア・サポート活用について言及することにより,「コミュニティの中での学生支援」について検討し,従来の学生相談体制の課題解決に向けた,新たな学生支援の可能性と課題について考察したい。話題提供3:学生相談機関のウェブサイトを通じた情報発信から学生の利用促進を考える伊藤直樹(明治大学) インターネット環境の整備やモバイル端末の急速な普及により,大学のウェブサイトが教育や研究に果たす役割は非常に大きくなった。大学は情報発信のためにウェブサイトを積極的に活用しており,学生も大学の様々な情報にアクセスしている。各大学の学生相談機関もウェブサイトを通じた情報発信を行っており,『学生相談機関ガイドライン』(日本学生相談学会,2013)の中でもその重要性が指摘されている。支援を必要とする学生はもちろんこと,家族,あるいは教職員も学生相談機関のウェブサイトを閲覧し,情報を入手しているものと思われる。しかし,学生相談機関としてウェブサイト上にどのような情報を掲載すべきなのか,また,利用促進につなげるにはどのような情報を掲載したらよいのか,あるいは,そもそも利用促進にどの程度効果があるのかといった問題についてはほとんどわかっていない。今回の自主シンポでは,2004年,2005年及び2013年に学生相談機関のウェブサイトを対象に行った調査の結果をもとに,ウェブサイトを利用した情報発信について話題提供を行いたい。まず,日本及びアメリカの学生相談機関における最近約10年間の情報発信の変化について取り上げ,次に,日本,アメリカ,イギリス,台湾の大学の学生相談機関の情報発信の現状について比較検討する。これらの知見に基づき,学生相談機関のウェブサイトを通じた情報発信の可能性について考えたい。話題提供4:学生支援におけるインターネット自助プログラムの可能性と課題梅垣佑介(奈良女子大学) 厳密なデザインの効果研究により有効性が示された臨床心理学的援助の技法を,インターネット上でできる自助プログラムの形で提供しようとする試みが欧米を中心に近年広がりつつある。特に認知行動療法(CBT)を用いたそういったインターネット自助プログラムはComputerized CBT(cCBT)やInternet-based CBT(iCBT)などと称され,複数のランダム化比較試験により若者や成人のうつ・不安に対する一定の効果が示されている一方,いくつかの課題も示されている。本発表では,イギリスにおいて大学生を対象としてInternet-based CBTを実践した研究プロジェクトの取り組みを,実際の事例を交えて紹介する。イギリスでの展開事例に基づき,非来談学生や留学生への支援可能性といった我が国の学生支援におけるインターネット自助プログラム活用の可能性を述べたうえで,従来指摘されていた高ドロップアウト率といった課題への対処,および大学生への実践から見えてきた新たな課題を検討する。我が国の学生支援の現場で今後インターネット自助プログラムを有効に展開するための議論の端緒を開きたい。(キーワード:学生相談,学生コミュニティ,インターネット)
著者
古角 好美 水野 治久
出版者
大阪教育大学
雑誌
大阪教育大学紀要 第4部門 教育科学 (ISSN:03893472)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.157-169, 2009-02

本研究の目的は,小学校5年生を対象にストレスマネジメントプログラムを実施しその効果を検討することであった。プログラムは主に「心理的ストレスのメカニズムに関する理解」と「コーピングとストレス反応の関連を調査し得た結果を参考にした。介入効果の比較検討のために実験群22名と統制群(待機群)22名に分け,20時間のストレスマネジメントプログラムを実施し,6回の調査(介入前・介入中1・介入中2・介入後・追跡1・追跡2)を行った。その結果,コーピングにおいては肯定的認知対処得点の一部で上昇はみられたが,ストレス反応軽減効果は認められなかった。This study investigated the effects of a stress management program on elemental school children. First, questionnaire research was conducted with 99 elementary school children to clarify the relationship between various coping strategies and stress responses. The results indicated that emotional avoidance coping and support seeking coping were positively related to stress responses. Second,20-hour stress management programs were conducted with two groups of students: intervention group (22 students) and waiting list control group (22 students). Participants responded to a coping style scale and a stress response scale for six waves: pre, midpoint 1, mid-point 2, post, follow-up 1, and follow-up 2. The results showed significant favorable intervention effects for the positive cognition coping style, but there were no other significant effects.