著者
吉添 衛 服部 宏充 江間 有沙 大澤 博隆 神崎 宣次
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.120-133, 2018-12-10 (Released:2020-02-10)
参考文献数
8

社会は情報技術の発達とともに,グローバル化・複雑化が進んでおり,人の持つ価値観も多様化してきている.そして,それに伴い,多様で変化する価値に気づき,広い視野を持って物事を捉えることが社会的に必要とされるようになってきている.本研究では,多様な価値観への気づきを与えるには何が必要か検討しながら,その仕組みのシステム化(AIR-VAS)を目指している.今回,気づきを与えるアプローチの一つとして,議論の場で自分達とは異なるグループの考え方や価値観を可視化させ,示すことで,新たな発想や考えを促すような仕組みを検討した.議論における単語の頻出度や共起度などをもとにして,議論をネットワーク構造で表現し,可視化させるプロトタイプシステムの実装を行い,実際に,ワークショップの中でシステムを運用した.本稿では,その結果を踏まえながら,議論の特徴とシステムの提示する情報の関係性やシステム活用の有効性について考察する.
著者
江間 有沙
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.142-146, 2018-12-10 (Released:2020-02-10)

人工知能(AI)やロボットなどは,私たちの生活や職場に浸透しています. 人工知能やロボットで生活や働き方が良くなる,あるいは悪くなるという「技術決定論」的な捉え方ではなく,新しいものが入ってきたときにこそ,今までの生活,仕事の在り方や制度,人間関係などを見直す機会となるはずです. 現在,国内外で人工知能やロボット技術の開発原則や私たちの社会への影響や可能性の議論が行われています.しかし,私たちの生活や仕事に深く関係している技術だからこそ,専門家や有識者だけではなく,私たち一人一人が今後どのような社会を作っていきたいのか,あるいはどのような生活や仕事に価値を置いているかを共有する機会が必要です. 本イベントは簡単には答えの出ない,これからの人工知能/ロボットと人間・社会・環境について考え,発信するための対話型ワークショップです.
著者
江間 有沙 藤垣 裕子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.195-211, 2009-10-20 (Released:2021-08-01)
参考文献数
25

In Japan, kidnaps and murders of school children have become serious social concerns recently. A system was introduced using Radio Frequency Identification (RFID) chips putting on school bags to monitor school children. This study investigated why this surveillance system was accepted to Japanese schools despite the concern over human monitoring and privacy invasion. A questionnaire survey was conducted for 576 pairs of parents and children of a private school. They have been using the system for one and a half year. The results showed that they (1) do not take serious of children’s privacy rights, (2) accept the system regardless of technical knowledge of RFID, (3) understand the system does not work for children’s actual safety but does work to keep parents’ peace of mind, (4) are influenced by mass media’s kidnapping news rather than actual crime data, and (5) demand more powerful system such as GPS function and CCTV to assure children’s actual safety. The paper concluded that the RFID system was accepted because it assured parents’ “peace of mind”; however it may generate risk for endangering children’s safety by data eavesdropping. Based on these results, it is recommended to discuss putting RFID chips on children to monitor them.
著者
江間 有沙
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.1002-1008, 2018-10-15

現在,北海道の酪農業界では経営の大規模化と効率的な経営を目指す変化が起きている.特に,(1)牛の繁殖管理に使われる情報技術と,(2)牛の選抜を行うためのゲノム技術とデータベース化がすすめられている.獣医師かつ酪農コンサルタントへのインタビューをもとにした本稿では,酪農の現場で使われている技術の詳細を紹介し,今後の展開への期待を示す.さらには情報技術を用いて牛を効率的に管理する方法だけではなく,病気を減らす・予防するという観点からカウコンフォートを高める検討が進められている事例を紹介し,技術だけではなく現場のニーズとの相互作用が重要であることを示す.
著者
栗原 聡 鳥海 不二夫 平 博和 須川 賢洋 長倉 克枝 江間 有沙
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.7, pp.700-705, 2020-06-15

アルゴリズムやフェイクニュースが"兵器"として使われる事例が相次ぐ中,技術者は何に気をつけ,どうしていけばよいのか.情報系研究者,メディア研究者,法学者といったさまざまな立場の専門家に語っていただいた.
著者
江間 有沙 長倉 克枝 工藤 郁子
出版者
人工知能学会
雑誌
2018年度人工知能学会全国大会(第32回)
巻号頁・発行日
2018-04-12

技術の設計段階からその倫理的,法的,社会的な観点について考えていくためには,技術者にとっても倫理や価値の議論が自分事として考えられるような場や環境づくりが重要となる.そのため,技術に関する倫理や価値の「中身」の議論だけではなく,多様な人々を巻き込むという「プロセス」や,コミュニティ形成の方法についても実践と記録を残していくことが,重要である.筆者らは,これまでも「人工知能と社会について考える場作り」として,様々な分野・業種の専門家を対象とした企画を行ってきた.本稿では,IEEEが公開している報告書に関するワークショップを事例として,どのように異分野・異業種の専門家による企画を組織,運営しているかを紹介する.