著者
藤垣 裕子
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.73-83, 1996-09-01
被引用文献数
4

科学・技術と社会との接点において、各専門分野の個別知識に留まらず、複数の専門分野の個別の知識を統合して、実践的課題を解決する学際研究がのぞまれている。このような学際的研究の場面において、専門分野が異なると、相互の意志疎通が困難となり、学際研究遂行がうまくいかないことがよく見受けられる。これは、学問間の異文化摩擦であると考えられる。本稿では、このような摩擦の生じる理由として、並立共存する多くの専門分野における科学知識産出プロセスに注目し、その産出の際問題となる基準(その分野においてオリジナルな知識として承認される暗黙の前提)や妥当性要求の方向が、各分野の共同体ごとに異なっている点を挙げる。この視点のもとに、学際研究遂行時の障害の理由を分析し、知識の統合の方策についてのべる。まず学際研究をその出力の無いようにしたがって3つのタイプに分類した。次に、科学研究を妥当性要求の方向に従って分類する軸を示し、それを用いて学際研究遂行時の分野別コミュニケーション障害をのりこえ知識を統合する方策について考察する。そのさい、科学研究の妥当性の方向(分類軸)ごとにどのように知識が組み合わさるかを示し、そしてその組み合わせによる学問の発展の可能性についてのべる。
著者
藤垣 裕子
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.10, pp.25-41, 2004-11-30
被引用文献数
1

本稿の目的は,環境社会学に対して科学技術社会論がどのような貢献をすることができるか検討することである。科学技術社会論の論客の一人であるSteven Yearlyは,『STSハンドブック』の環境に関する章のなかで,「科学技術社会論は,環境に関する問題を明らかにしたり,論争を解決したりすることへの科学のあいまいな役割について説明する枠組みを提供する」(Yearly, 1995)と述べている。この科学のあいまいな役割について,本稿では,フレーミング,妥当性境界,状況依存性,変数結節,という概念を使って順に解説する。環境社会学と科学技術社会論の橋渡しは,現在の日本で別々の文脈で語られている市民運動論と社会構成主義,科学と民主主義の議論を,連動した形で再度編成することによって進み,かつ両者の間に豊かな交流をもたらすだろうと考えられる。
著者
藤垣 裕子
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.172-180, 2010-03-05
被引用文献数
1

本稿では,現代における科学者の社会的責任について考える.責任を呼応可能性,応答可能性という意味で捉え直して再整理すると,現代の科学者の社会的責任は,(1)科学者共同体内部を律する責任(Responsible Conduct of Research),(2)知的生産物に対する責任(Responsible Products),(3)市民からの問いへの呼応責任(Response-ability to Public Inquiries)の3つに大きく分けられることが示唆される.この3つの区分を,ジャーナル共同体(専門誌共同体)との関係を用いながら考察し,最後にカテゴリー間の葛藤について考える.
著者
小林 傳司 山脇 直司 木原 英逸 藤垣 裕子 平川 秀幸 横山 輝雄 副田 隆重 服部 裕幸 沢登 文治
出版者
南山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002 (Released:2002-04-01)

現代社会における科学技術が、知的、物質的威力としてのみではなく、権力や権威を伴う政治的威力として機能していることの分析を行い、科学者共同体において確保される知的「正当性」と、科学技術が関連する社会的意思決定において科学知識が果たす「正統性」提供機能の錯綜した関係を解明し、論文集を出版した。また、このような状況における科学技術のガバナンスのあり方として、科学技術の専門家や行政関係者のみならず、広く一般人を含む多様なステークホルダーの参加の元での合意形成や意思決定様式の可能性を探求した。特に、科学者共同体内部で作動する合意形成様式の社会学的分析に関する著作、幅広いステークホルダー参加の元手の合意形成の試みのひとつであるコンセンサス会議の分析に関する著作が、その成果である。さらに具体的な事例分析のために、参加型のテクノロジーアセスメントにおける多様な試みを集約するワークショップを開催し、現状の成果と今後の課題を明らかにした。課題としては、全国的なテーマと地域的なテーマで参加手法はどういう違いがあるべきか、参加型手法の成果を政策決定とどのように接続する課などである。同時に、「もんじゅ裁判」を事例に、科学技術的思考と法的思考、そして一般市民の視点のずれと相克を記述分析し、社会的紛争処理一般にかかわる問題点や課題を明らかにした。本研究の結果到達した結論は、人々の現在及び将来の生活に大きな影響を与える科学技術のあり方に関しては、政治的な捕捉と検討という意味での公共的討議が必要であり、そのための社会的仕組みを構想していく必要があるということである。こういった活動の成果は、最終年度にパリで開催された4S(Society for Social Studies of Science)国際大会でセッションを組んで報告された。
著者
藤垣 裕子
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.102-108, 2004-03-01 (Released:2017-05-25)

レビュー誌とは,すでに出版された学術情報を再考し,批評し,回顧し,概説を与える(統合して評価する)雑誌を指す。レビュー誌にとりあげられることによって,もとの学術情報は再考され,全体における位置づけを得る。それでは,「もとの学術情報が再考され,全体における位置づけを得る」とは何を意味するのだろうか。この問いを考えるために,本稿では次の2つの考察を行った。まず,もとの学術情報とは何かという問いについて,知識生産論,ジャーナル共同体論の側面から考察した。続いて,もとの学術情報が再考され,全体における位置づけを変えることの意味について,引用論をもとに考察した。これらの2つの方向からの考察をもとに,レビューとは何を意味するかを再考した。
著者
藤垣 裕子
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.149-155, 2007-06-29
参考文献数
19

The article reviews scientometrics as a methodology for policy science. Science and technology policy necessitates measurement and evaluation of the current scientific activities in order to develop future steps. Scientometrics, which studies methods, objects and effectiveness of measuring scientific activities, should therefore be an important constituent of policy science. The term "scientometrics" was coined after "psychometrics" and "sociometrics", which share quantitative view of the subject of study. The present work first shows how scientometrics differs from bibliometrics or library and information science to indicate the need of a theory on what aspect of scientific activity is measured quantitatively. It then presents a historical overview of scientometrics in four phases: pre-history, establishment of the principle, development and institutionalization of indicators, and application to evaluation. The article further reviews practical methods including analysis of the number of reports, citation and co-citation analysis, term and co-term analysis, and forming and combination of indicators. Discussion on the possibility of and potential issues on quantification concludes the article.
著者
澤谷 由里子 藤垣 裕子 丹羽 清
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.281-291, 2014-02-26

「経済のサービス化」という社会の構造変化が進んでいる。しかしながら,サービス・イノベーションの実態調査では,サービスの雇用および経済規模に対してサービスにおける研究開発活動の貢献が過小評価されている。本研究では,これまで製造業においてイノベーションの原動力となってきた理工学,主に情報技術を基礎とした研究開発が貢献したサービス・イノベーション事例を分析した結果を報告する。製品開発を目的とする研究からサービス研究へ移行した研究開発者に対しアンケートおよびインタビュー調査を行い,製造業のサービス化によって研究開発者の行動がどのように変化するのか,顧客と研究開発者との価値共創による研究開発の成果について明らかにする事を目的とする。調査の結果,顧客とのコラボレーションによって研究開発者の行動が変化し,顧客の使用価値視点からのサービス・システムの創造を重視し,新しい研究領域を作り出す行動(使用価値を出発点とする新規研究開発)を示すようになることが示唆された。また,サービス研究において研究開発者によって創造された成果は,技術だけではなく,顧客の使用価値の具現化のために技術をサービス・システムに埋め込むための統合・デザイン手法や顧客やサービス組織の保持する知識から得られた現場知にまで至る事が示された。
著者
藤垣 裕子
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.102-108, 2004-03-01

レビュー誌とは,すでに出版された学術情報を再考し,批評し,回顧し,概説を与える(統合して評価する)雑誌を指す。レビュー誌にとりあげられることによって,もとの学術情報は再考され,全体における位置づけを得る。それでは,「もとの学術情報が再考され,全体における位置づけを得る」とは何を意味するのだろうか。この問いを考えるために,本稿では次の2つの考察を行った。まず,もとの学術情報とは何かという問いについて,知識生産論,ジャーナル共同体論の側面から考察した。続いて,もとの学術情報が再考され,全体における位置づけを変えることの意味について,引用論をもとに考察した。これらの2つの方向からの考察をもとに,レビューとは何を意味するかを再考した。
著者
藤垣 裕子
巻号頁・発行日
2006 (Released:2006-04-01)

科学者の社会的責任の内実は時代とともに変容してきた。現代の責任論は、原爆を作った物理学者の責任論にとどまらず、生命科学、食品安全にかかわる諸科学、環境科学など範囲も多様化している。本研究では、まず専門主義の源泉について考え、次に現在科学と社会との間でおこっている公共的課題の特徴を整理した。さらに、責任概念と倫理との差を検討した。責任(responsibility)とは、他者と対峙したときのresponseとして生じ、応答(response)の能力・可能性(ability)に由来する。責任を「過去におこしてしまったものに対して生じるもの」ととらえる見方だけでなく、「応答可能性」「呼応可能性」といった形で解釈する必要がある。これに対応して、科学者の社会的責任論も、過去に科学技術が作ってしまったものに対して生じるものだけでなく、市民からの問いかけへの応答可能性として定義されうるものへの考察も必要である。これらをふまえた上で再整理すると、現代の科学者の社会的責任は、(1)科学者共同体内部を律する責任、(2)製造物責任、(3)市民からの問いへの呼応責任の3つに大きく分けられることが示唆された。
著者
藤垣 裕子
巻号頁・発行日
2010 (Released:2010-11-30)

本研究課題の目的は、科学者の社会的責任の現代的課題について、責任論と科学コミュニケーション論の接点にあたる課題を中心に、事例分析をもとに分析をすすめることである。科学者の社会的責任の現代的課題は、(1)科学者共同体内部を律する責任(ResponsibleConductofResearch)、(2)製造物責任(ResponsibleProducts)、(3)市民の問いかけへの呼応責任(ResponseAbility)の3つにわけることができるが、科学者の社会的責任と科学コミュニケーションの重なりあう領域においては、この〓組みの1つには留まらない問いが喚起される。本研究ではこのような領域における事例分析をすすめ、科学者の社会的責任の現代的課題を考察した。
著者
藤垣 裕子
巻号頁・発行日
1993 (Released:1993-04-01)

ソフトウェア開発に携わる10人の技術者のデータを、隔週で半年間に渡り採集した。ストレスの生化学的指標として、仕事時間中の尿、および正午の唾液を採集した。また、心理的(主観的)指標として、ZUNGのSDSを用いた抑欝症状、および不安、覚醒、だるさ、痛みなどの症状も評定尺度法で評価を得た。作業内容は、調査日については15分間隔で作業内容をコードで記入してもらった。また、調査日間の2週分(あるいは1週分)の仕事内容の概略も得た。その結果、ストレス指標は、作業密度、作業内容、仕事上のイベントに伴って変化することが示された。仕事上のイベントとの対応の検討結果は以下のとおりである。1.仕事上のイベントとアドレナリン値各個人ごと、各個人の平均値から週毎変動の標準偏差以上の変動を示した日は全181case中25caseであった。この25case中、22case(88.9%)に対応するjob-eventが存在した。eventのあるなしをevent1効果とし、個人差効果もふくめて2元配置分散分析を行った結果、アドレナリン値は、event1効果が有意(p<0.01)であることが示された。(後述のevent2効果は有意でない)2.仕事上のイベントとコルチゾール値各個人ごと、各個人の平均値から週毎変動の標準偏差以上の変動を示した日をpick-upすると、全181case中、24caseであった。この24case中、18case(75%)に対応するjob-eventが存在した。eventのあるなしをevent2効果とし、個人差効果もふくめて2元配置分散分析を行った結果、コルチゾール値は、event2効果が有意(p<0.01)であることが示された。(前述のevent1効果は有意でない)
著者
藤垣 裕子
巻号頁・発行日
1995 (Released:1995-04-01)

高速度マシン使用による作業密度の増加の精神的負荷への影響評価を行うために、今年度は以下の研究を行った。(1)実験室調査1 : 93年度の助成(奨励研究:課題番号05780314)を得て購入した、小型で携帯しやすく長時間にわたり作業者の負担の少ない形で心電図を記録できるホルターレコーダを用い、今年度の助成をもとに被験者数を増やして実験を行った。高速マシンによる作業密度の増加(純粋思考時間の割合の増加/一定時間内のコマンド数の増加)によって被験者の緊張度が増加し、それに対応して心拍R-R間隔の分散の低周波数成分の増加があらわれるか、について検討した。実験はA(作業密度大)、B(作業密度小)の2つのマシン環境を設定し、プログラミングタスクを課して行った。その結果、A条件のほうが心拍RR間隔の分散が小さく集中の見られる傾向が見出されたが、個人差が大きいことも示唆された。また自己回帰スペクトルでは、呼吸成分の分離が課題となった。(2)実験室調査2 :上記の実験設計において、作業密度条件の設定の他に、タスク設定による影響が示唆された。そのため、思考作業をタスクの特性から階層モデル化して分類し、performance曲線を求める作業を行った。これを上記の実験設計におけるタスク設計の指針とした。(3)現場調査:実際に勤務する現場のソフトウェア技術者における、マシン環境によるストレス増加を検討するために、仕事上のストレス要因(job-event)を7ヶ月に渡って調査し、それによるストレス反応を計測した。