著者
杉浦 伸一
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.585-590, 2010 (Released:2010-05-20)
被引用文献数
2

高カロリー輸液製剤のキット化は、細菌汚染や異物混入のリスクを軽減し、調製時間を短縮することで業務の効率化に寄与した。在宅医療においても、高カロリー輸液を利用できる環境が整備され、短腸症候群患者など、消化管から栄養を摂取できない患者らの生命予後を改善し、輸液療法の安全性向上に貢献してきた。しかし、画期的な高カロリー輸液製剤の組成が開発されたわけではなく、過去に開発された製剤の組み合わせ処方や、バッグなどの周辺デバイスを改良した製剤にすぎない。さらに、ビタミン剤や微量元素、あるいは脂肪乳剤までも一包化したための弊害も発生している。例えば、以前では考えられなかった過剰投与や、高窒素血症あるいはカテーテル関連血流感染症などの医原性副作用が増加した。したがって、高カロリー輸液キット製剤であっても、製剤の特性の違いをよく理解し、適正な使用に心がけることが重要である。