- 著者
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荒木 智子
斉藤 幸義
鳥居 俊
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2004, pp.C0953, 2005
【はじめに】マラソン大会に出場する市民ランナーの数は増加している.それに従い障害発生数も増加している.しかし十分に選手をケアしているものは少ない.多くは同意書の対応がほとんどである.我々は複数の職種でランナーのサポートを行っている.今回2004年9月18日~23日の日程でマウイマラソンにトレーナーとして帯同した.中には医学的問題を生じたケースもあり,医学的なサポートの必要性について検討したので報告する.<BR>【概要】参加者は2004年9月19日,第34回マウイマラソンに出場した.これは制限時間が8時間,コースも平坦であり,初心者も気軽に参加できる.参加者20名であった.参加者はフィットネスクラブに所属し,月間約数十km~700kmという距離を走っている.帯同スタッフはコーチ1名(米国RRCA公認指導者),トレーナー2名(以下TR.PT,鍼灸師)であった.<BR>【事前の対策】ランニングセミナーを数店舗で,多くは夜間に実施している.また日曜日に合同練習会を実施している.帯同したTRもセミナー・練習会に参加し,コーチ・TR(帯同以外にNATA-ATC1名)とともに参加者の相談や評価・リコンディショニングを行った.必要に応じ,医療施設での検査結果を相談に役立てた.出発前日まで特にケアを必要とした参加者は3名で,肉離れ1名,貧血1名,オーバートレーニング症候群疑い(以下OTS疑い)1名であった.<BR>【現地での対応】到着初日に相談デスクを設置し,参加者に対応した.また19日未明より19名にテーピングを実施した.全員が完走し,ゴールテントにおいてアイシング,ストレッチ,マッサージを実施した.全日程を通じて相談,マッサージ,ストレッチを毎日実施した.また全員が翌日よりランニング・ウォーキングに参加した.筋肉痛が出現した例もあったが,ごく軽症であった.<BR>【トレーナーの役割】我々に求められたのは「いかなる状況でも完走(完歩)を目指す」ということであった.トップランナーと異なる点として帰国後の生活に支障が及ばないこと,無理をすることで二次的な問題を起こさないことが求められた.それに次いで安全に完走できることを方針とした.具体的には貧血の参加者にはHRを用いて調節をすることを説明,OTS疑いの参加者には歩いても十分に完走は可能と説明した.その方針決定にはTRと参加者だけでなくコーチも関与した.<BR>【まとめ】国内外の大会は増加しているがレース前後のケアをしているものは少ない.今回の特色は1)事前より参加者と接点をもち状況を把握した,2)コーチ,PT,鍼灸師,NATA-ATCから多彩な考えが出された,3)完走で充実感を得た,4)リコンディショニングの徹底により疲労を最小限に抑えた,5)それを実現できる日程であった5点が挙げられる.今回の経験よりレース前後のケアやその必要性を感じた.PTの知識や経験が医療現場ではない場所でも生かされることの可能性を感じた.