著者
渡辺 澄子 村田 温子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.193, 2003

【目的】中学・高校生の衣生活に対する意識や実態は、彼らのライフスタイルの中の一要因であり、服装単独で存在するものではない。本研究は、昨年報告した三重県下の中学・高校生の生活構造の結果をもとに、衣生活の実態が他の生活領域とどのように関連しているかを明らかにするものである。【方法】調査は第1報と同様である。調査内容は、制服に対する賛否とその理由、服装に対する興味関心(服装のセンス、ブランド服の好き嫌い、服の好み他)と他の生活領域項目(生活時間、生活空間、生活意識、人間関係、食生活、住生活、学校生活、経済状態、生活習慣・規範・態度)である。分析方法は、単純集計、クロス集計、重回帰分析、共分散構造分析による解析を行った。【結果】服装への興味関心は、中学生・高校生のライフスタイル全般からみたところ、その影響を強く受ける順に、友人関係、自分の将来への関心度、校則に対する態度、世界の動きや政治への関心度、お小遣いの額、生き方に対する態度、生活全般に対する満足度などとの関わりが強いことが明らかとなった。 一方、あまり影響がみられない項目として明らかになったものは、テレビ視聴時間の長さ、先生と会話をするかどうか、制服への賛否、勉強の目的、アルバイトの有無、タバコを吸っているか否か、ボランティア意識があるか否かなどであった。また衣生活の中でも、自分の衣服を洗濯するかどうかという基準では、お年よりのためのボランティア志向があるか否か等との関連がみられた。中高生の衣生活の有り様を考える場合は、個別のファッションを指摘することよりも、彼らのライフスタイルとの関わりで考える必要があることが明らかとなった。
著者
村田 温子 渡辺 澄子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.55, pp.192, 2003

【目的】急激な社会状況の変化の一方で、子どもたちを取り巻く環境は、多くの問題を含んだままであり、解決の方向すら定かでない。とくに学校教育における諸課題は、教育行政を進める上での非常に重要な意思決定を伴うものである。その中で学校制服の問題は以前から多くの課題を抱えたまま今世紀に入っていった。現在の中学生・高校生の制服に対する意識とさらにふだんの服装の対する興味や関心について調査し若干の知見を得たので報告する。 【方法】2001年11月~2002年1月、三重県下の中学、高校生を対象に、ランダムサンプリングにより、中学28校、高校27校にて、クラス単位の自記式集合調査を行った。有効回答数は中学生1,180名、高校生1,395名、計2,575名である。調査内容は、制服に対する賛否とその理由、服装に対する興味関心(服装のセンス、ブランド服の好き嫌い、服の好み他)である。分析方法は自由回答のKJ法分析、単純集計、クロス集計を行った。 【結果】調査校中、高校1校、中学1校のみ自由服であったが、三重県下のほとんどの学校で標準服と呼ばれる制服を指定していた。これらの制服のある学校においては、制服を支持するものが6~7割であり、一方制服のない学校においても、制服のないことを支持するものが、同じく6~7割程度いることが明らかとなった。さらに制服を支持する理由は、楽であり、悩まなくてよいがほとんどであった。次いで、何となくという回答であり、積極的な制服を支持する考えはみられない。非支持の意見には、ダサイ、格好悪いが圧倒的であり、次いで、自由がよい、温度調節できない、動きにくい、個性がない、束縛、厳しすぎ、面倒など多くの意見がみられた。また、服装に対する興味関心は、中学生では57%のものがあると答えており、高校生では74%とより高くなっていく傾向もみられた。
著者
蒲池 香津代 杉田 洋子 渡辺 澄子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, pp.193, 2004

目的 東京都内に通学する男子高校生の被服行動が、ライフスタイルや勉学、アルバイト、友人関係などとどのような関連性があるかを明らかにする。方法 東京都内男女高校生1093名のうち、男子高校生251名について一般的ライフスタイル項目26項目の5段階評定尺度値を因子分析した。得られた因子得点をもとにクラスター分析し、男子高校生を6グループに類型化した。次に各グループの特徴を把握したうえで、彼らの衣生活スタイル上の意識や行動との関わりをクロス集計で検討した。結果 ライフスタイル項目を因子分析した結果、「独自・新規性」、「友人関係」、「安易・快楽性」、「風潮同調性」、「男女平等意識」、「マニアック性」、「健全志向」の7因子が抽出された。因子得点をもとにしたタイプ分けでは、1「友人重視・流行追随・低モラルタイプ」(10.7%)、2「男女平等・堅実タイプ」(15.9%)、3「楽して一流願望タイプ」(22.7%)、4「人間関係協調タイプ」(34.3%)、5「ゴーイングマイウェイタイプ」(9.0%)、6「出世願望リーダー志向タイプ」(7.3%)の6つに分類された。被服行動との関連性をみると、ファションに興味や自信を持っている1のタイプは、友人関係には満足だが、校則を厳しいと感じ、勉強は卒業するため、小遣いの額には不満、アルバイトをしている。ファション行動が控えめな2のタイプは、モラルに厳しく、小遣いの額もまあ満足している。ファッションに興味関心が無い5のタイプは、学校生活や友人関係に不満を持ち、校則をゆるいとし、アルバイトの経験は少ない。ファッションへの関心はややあり、髪を染めたことも多い6のタイプは、勉学の目的は知識を増やすためとし、アルバイト経験も多かった。
著者
片瀬 眞由美 平林 由果 渡辺 澄子 栗林 薫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.94, 2003 (Released:2004-05-25)

【目 的】ここ数年、靴の踵を踏みつぶしてスリッパのように引きずって歩く高校生の姿が目につくようになった。どのような意識が隠されているのか、その背景を明らかにするために、女子高校生の靴や足に対する意識と実態を調査することにした。今回は通学靴に焦点をあて、靴選びや履き方に関してのアンケート調査を実施した。【方 法】愛知県下の高等学校に在籍する女子高校生に対し、通学靴の履き方の実態や靴選びに関して調査を実施した(自記式集合調査法)。調査時期は2002年12月、有効回答数は1257(通学靴を指定している高等学校759、指定していない高等学校498)であった。【結果および考察】通学靴としてローファーを毎日履いているものは48%、スニーカーは38%でローファー派の方が多かった。足で気になっていることについては、「靴ずれ」が最も多く、ローファー派では9割が訴えたが、スニーカー派では5割に過ぎなかった。その他、足部の痛みや巻き爪、外反母趾、肩こり、足の疲れなどの訴えもあり、女子高校生の多くは足の悩みを抱えていることがわかった。一方、自分の足のサイズに関しては、「測定はしていないが大体知っている」が77%、「知らない」が19%であり、正確な足のサイズへの認識度は低かった。「正確に足のサイズを測ってみたいか」では「思う」と「思わない」が半々で、足のサイズへの関心はそれほど高くないことが窺えた。通学靴の踵を「踏んでいる」のは16%で、その理由は「脱ぎ履きが簡単だから」であった。本調査の結果から、女子高校生は見た目を優先して通学靴を選び、脱ぎ履きの楽な靴を求めてサイズを選んでいることが足の悩みにつながっている可能性があることが示唆された。
著者
渡辺 澄子 片瀬 眞由美 平林 由果
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.87, 2005 (Released:2005-12-08)

目的 わが国では、足の症状で悩む人が非常に多くなってきた。それらの症状は急に現れるのではなく、幼少期からの靴の選び方や履き方に原因があるのではないかと考えられる。我々は既にわが国の幼児を対象に実態調査を行い多くの問題点を明らかにした。ここではさらに、靴文化の長い歴史をもつドイツにおける子供靴の実態を、ドイツの小学校の保護者へのアンケート調査をもとに分析し、いくつかの知見を得たので報告する。方法 調査対象者はドイツ3地域(ベルリン、フランクフルト、フライブルク各1校)計小学校3校の保護者338名である。調査時期は2004年5月_から_6月、配票留置法による自記式調査を行った。調査内容は、普段履く靴のタイプ、靴購入時の重視点、購入店、足のサイズ測定、価格、子供靴に対する不満、子供および保護者の足の健康状態、足の症状に対する対処法、子供が最初に履いた靴に対する記憶や保存等である。結果 普段履く靴のタイプは紐靴がほとんどである。留め具のない靴はほとんど履かれていない。靴購入時の重視点はフィット性と子供の足の健康であり、シューフィッターなどのいる靴専門店で足のサイズを測って購入している。普段の靴一足の平均購入価格は6570円(円換算)であり、わが国の平均価格よりかなり高い。靴購入時の不満では価格の高さを不満と答えているものが多いが、しかしながら中古靴に対して経済的だから履かせるというものはほとんどいない。子供の足の健康には非常に関心があると答えており、足のトラブル症状に対しては、専門家のいる靴店で靴を選ぶ、病院で受診していると答えていた。子供が最初に履いた靴を6割近くのものが大事に残しているのも靴文化の違いであろう。
著者
平林 由果 渡辺 澄子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.59, pp.37, 2007

【目 的】ファッションはその人のライフスタイルを反映し、個性を表現する。おしゃれをすることは、着る人の高揚感を高め、ストレスを軽減させ、免疫力を亢進させるのではないかと考えられる。そこで、気に入った服装とそうでない服装をした時にストレス負荷を行い、おしゃれの心理的効果とストレスホルモンへの影響を検討した。【方 法】ストレスの指標として、唾液中のアミラーゼ、コルチゾール、分泌型IgAを測定した。並行して服装時に生起する多面的感情状態尺度を肯定的・否定的な35項目について尋ねた。実験は女子大学生9名を被験者とし、5分間のクレペリン検査実施後、唾液を採取し、学内の人通りの多いロビーを通って売店で買い物をするというプロトコールで行った。服装条件(条件1: 気に入った服・化粧あり、条件2: Tシャツと短パン・化粧なし)を替えて同実験を実施し、その結果を比較した。【結果および考察】感情状態尺度において、実験後に条件1では肯定的感情状態の値が高くなり、条件2では否定的感情状態の値が高くなった。唾液中のアミラーゼ分泌量、IgA分泌量においては、服装条件の違いによる一定の傾向は認められなかった。コルチゾールの分泌量は9例中7例において、条件1の方が条件2よりも実験後の減少が大きく、有意差(P<0.05)が認められた。コルチゾール分泌量はストレス負荷により増加することが明らかにされている。この実験では、クレペリン検査によるストレスを買い物をすることで解消したが、気に入った服装時(条件1)の方がその効果が大きかったと推測される。これらの結果は、おしゃれを楽しむことがストレスを緩和し、心も体も元気にする可能性を示唆していると考えられる。
著者
渡辺 澄子 川本 栄子 黒田 喜久枝 中川 早苗
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.131-139, 1993

前報において, 若い女性向けの服装雑誌より選んだ服装サンプルをもとに服装イメージを構成している因子の抽出を行った. 本報では前報で得られた主要な因子の因子得点をもとにクラスター分析を行い, イメージによる服装の類型化を行った. さらに類型化された服装タイプのデザインの特徴を把握するために, クロス集計および数量化II類による分析を行い検討した. その結果, 次のような知見を得た.<BR>1) 服装タイプは, (1) キャリアエレガンス, (2) エレガンスフェミニン, (3) ベーシックカジュアル, (4) トレンディカジュアルの四つに類型化された.<BR>2) 服装タイプとデザイン要素の関連性をクロス集計で分析した結果, 43項目中27項目において有意な関連がみられた.<BR>3) 四つの服装タイプを判別するのにより有効な意味は, エレガンスかカジュアルかの違いであり, そのデザイン要素は服種の違いによるものが大きいことが分かった.<BR>4) 服装タイプを一組ずつ対比させ, その違いをより有効に判別するデザイン要素を検討するとつぎのようになった. キャリアエレガンスとトレンディカジュアルは服種, ディティール, 色柄の順に三つのデザイン要素のみで容易に判別できる. 次いで, キャリアエレガンスとベーシックカジュアルもそれらのデザイン要素に襟・袖の形まで含めると明確に判別できる. また, キャリアエレガンスとエレガンスフェミニンのどちらもエレガンスタイプのものどうし, および, ベーシックカジュアルとトレンディカジュアルのカジュアルタイプのものどうしの判別はやや困難であるが, それらは服種やディティールよりも色柄によつてかなり判別できることが明らかになった
著者
平林 由果 片瀬 眞由美 渡辺 澄子 栗林 薫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.93, 2003 (Released:2004-05-25)

【目 的】制服にローファーを履いて通学する女子高校生の姿をよく目にする。ローファーは歩行に適した靴とは言えない。それにも拘わらず、ローファーを履いている高校生が多いのはなぜだろうか。そこで、高等学校における通学靴の現状を把握するため、生徒指導教諭と女子高校生を対象にアンケート調査を実施した。【方 法】調査1:愛知県下の全高等学校(男子校を除く)218校に調査用紙を送付し(郵送調査法)、通学靴に関する規定の有無とそれに関連する着衣や持ち物などに関しての規定について調査した。調査は2002年7月に実施し、127校(58.3%)から回答を得た。調査2:調査1の結果から、通学靴を指定している高等学校に対し、指定されていることに対する女子高校生の意識を尋ねる調査を実施した(自記式集合調査法)。調査時期は2002年12月、有効回答数は759であった。【結果および考察】調査1:通学靴を「指定している」高校は13%であり、すべてがローファーを指定していた。「規定を設けている」は61%であった。指定や規定を設けている理由としては、「制服との調和」、「高校生らしさ」などが多く挙げられていた。調査2:回答した高校生の67%が指定されているローファーを気に入っていた。指定靴に関して「制服との調和」、「色」は、ほぼ80%が満足していると回答したが、「価格」、「個性の表現」では、50~60%が不満足と回答した。指定靴がない場合でもローファーを履きたいというものは64%を占めており、靴を選ぶ第1の基準が「色・デザイン」であるという高校生の実態と関連していると思われる。
著者
上島 雅子 渡辺 澄子 川本 栄子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.12, pp.973-983, 1985

松阪市における高齢者の生活意識を調査した結果, 次のようなことが明らかになった.<BR>1) ほとんどの高齢者は, 生活満足度, 自由時間満足度, 経済満足度において満足しており, 家族も円満であり, 家族からも気づかってもらっている傾向にあった.また, 高齢者の側でも「ふだんの心がけ」や「日々の心縫え」にみられるように, 対人関係, とくに家族関係に気を配っていた.性別による差がみられたのは, 「ふだんの心がけ」と「大切なもの」であり, 主義主張をもつことを心がけている者は, 男性に多く, 女性は少なかった.健康が大切と意識している者は, 男性よりも女性に多くみられた.<BR>2) 高齢者個々人の生活意識を構成する要因は, (1) 満足・不満足要因, (2) 経済的不安要因, (3) 家族依存要因, (4) 自己中心的要因が主であった.<BR>3) 4生活意識要因をもとに高齢者を分類した結果, 「生活全般満足タイプ」, 「自立タイプ」, 「家族依存タイプ」が, それぞれ20%あり, これら3タイプを合わせると62%を占めている.その他「生活に不満のあるタイプ」, 「生活に不満のないタイプ」, 「仕事中心タイプ」が26%, いずれのタイプにも入らない者が12%あった.これらのタイプの違いは, 性別, 配偶者の有無職業の有無や経済状態, 地域社会生活とのかかわり方によって左右されていることが明らかになった.