著者
長田 太郎 石川 大 渡辺 純夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.1973-1981, 2015-11-05 (Released:2015-11-05)
参考文献数
32

近年,糞便移植療法(FMT)がClostridium difficile感染症(CDI)に対し高い有効性を示す論文が相次いで報告されている.古くから糞便が病気を治すという概念は存在したが,FMTは再発性・難治性CDIでは投与経路にかかわらず高率に治癒させることが可能になっており,さまざまな疾患で臨床応用が期待されている.炎症性腸疾患や機能性胃腸症に関するFMT治療報告例は少ないが,2015年に潰瘍性大腸炎に対し2編のランダム化比較試験(RCT)が報告された.現時点ではCDIに比べ有効性は必ずしも高くないが,今後ドナーの選定や方法を改良することにより有効性が上昇すれば安全,安価な治療法として期待される.
著者
東原 良恵 今 一義 長田 太郎 渡辺 純夫 北條 麻理子 永原 章仁 廣田 喬司 里村 恵美 赤澤 陽一 野村 収 上山 浩也 稲見 義宏
出版者
消化器心身医学研究会
雑誌
消化器心身医学 (ISSN:13408844)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.20-22, 2014

60歳台男性,1年前に会社を退職。3ヵ月前からの咽頭違和感と食欲不振,体重減少(10kg)を主訴に受診。各種検査で異常はなく,器質的疾患が否定され,機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia:FD)と診断。FDに対する治療を行うも症状改善せず,メンタルクリニックを受診。検査により身体的な異常がないにも関わらず,重篤な身体的疾患が存在することへの頑固なとらわれが強く,身体疾患や異常が存在しないことを頑なに拒否することから心気症が疑われた。その後,うつ病の中でも抑うつが目立たず身体性症状が前景に立つ仮面うつ病と診断された。抗うつ薬を中心とした薬物精神療法を行い,改善傾向がみられたが副作用のため治療の継続が困難であり,その後の治療に難渋した。体重減少が進行したため治療継続の必要性があると判断し,精神科病院へ転院となった。消化器症状を主訴に発症し,診断と治療に難渋した仮面うつ病を経験したので報告する。
著者
東原 良恵 北條 麻理子 永原 章仁 廣田 喬司 里村 恵美 赤澤 陽一 野村 収 上山 浩也 稲見 義宏 今 一義 長田 太郎 渡辺 純夫
出版者
消化器心身医学研究会
雑誌
消化器心身医学 (ISSN:13408844)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.20-22, 2014 (Released:2014-09-01)
参考文献数
12

60歳台男性,1年前に会社を退職。3ヵ月前からの咽頭違和感と食欲不振,体重減少(10kg)を主訴に受診。各種検査で異常はなく,器質的疾患が否定され,機能性ディスペプシア(Functional dyspepsia:FD)と診断。FDに対する治療を行うも症状改善せず,メンタルクリニックを受診。検査により身体的な異常がないにも関わらず,重篤な身体的疾患が存在することへの頑固なとらわれが強く,身体疾患や異常が存在しないことを頑なに拒否することから心気症が疑われた。その後,うつ病の中でも抑うつが目立たず身体性症状が前景に立つ仮面うつ病と診断された。抗うつ薬を中心とした薬物精神療法を行い,改善傾向がみられたが副作用のため治療の継続が困難であり,その後の治療に難渋した。体重減少が進行したため治療継続の必要性があると判断し,精神科病院へ転院となった。消化器症状を主訴に発症し,診断と治療に難渋した仮面うつ病を経験したので報告する。
著者
野村 収 澁谷 智義 長田 太郎 松本 健史 坂本 直人 北條 麻理子 永原 章仁 荻原 達雄 渡辺 純夫 増田 淳
出版者
消化器心身医学研究会
雑誌
消化器心身医学 (ISSN:13408844)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.23-25, 2014 (Released:2014-09-01)
参考文献数
7

【症例】24歳男性。元来内気で真面目な性格であったがこれまで社会生活に問題はなかった。2年前より家族との会話も徐々になくなり,また外出もしなくなり1日中自室に籠もるようになった。今回,腹痛と頻回の排便に家族が気付き当院受診となった。受診時に38℃台の発熱,腹部に高度な圧痛と反跳痛,下痢,著明な貧血と高度栄養不良があり緊急入院となった。下部消化管内視鏡検査ではS状結腸から横行結腸にかけて縦走潰瘍を認め,生検組織検査にて非特異的肉芽腫が検出されクローン病と診断した。中心静脈栄養,プレドニゾロン50mg/dayによる治療を開始した。治療開始後,解熱,腹痛の改善,下痢回数も減少した。入院時は全く会話がない状態であったが,病態改善と伴に医療スタッフおよび家族と会話をするようになり現在では,外来にも1人で通院している。ひきこもりの原因がクローン病であった症例と考えられた。
著者
上山 浩也 松本 健史 永原 章仁 八尾 隆史 渡辺 純夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.6, pp.1169-1177, 2016 (Released:2016-06-20)
参考文献数
28

筆者らが提唱した胃癌の組織亜型・胃底腺型胃癌,Gastric adenocarcinoma of fundic gland type(chief cell predominant type),GA-FG-CCPは非常に稀な腫瘍であるが,近年,日本全国の施設で発見され,海外からも報告されるようになった.しかし,胃底腺型胃癌の診断や治療の経験が無い場合,一般的には内視鏡診断,病理診断は比較的困難と考えられ,最終的には消化管専門病理医に病理学的に確定診断されるのが現状である.したがって,内視鏡医においては胃底腺型胃癌の臨床病理学的特徴を理解することに加え,通常内視鏡で胃底腺型胃癌を疑う所見を見落とさないことが重要であり,胃底腺型胃癌を疑う病変を生検した場合には的確な情報を病理医へ伝える必要がある.本稿では,胃底腺型胃癌の臨床病理学的特徴と現状での内視鏡的特徴を説明した後,胃底腺型胃癌のNBI併用拡大内視鏡を含む内視鏡診断のポイントについて言及する.
著者
赤澤 陽一 上山 浩也 永原 章仁 中川 裕太 松本 紘平 稲見 義宏 松本 健史 今 一義 八尾 隆史 渡辺 純夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.10, pp.1968-1975, 2014-10-05 (Released:2014-10-05)
参考文献数
22

66歳女性.上部消化管内視鏡で体上部後壁に17 mm大の胃粘膜下腫瘍(SMT)を認め,PET-CTで体下部大弯に別病変として30 mm大のFDGの集積を認めた.CT gastrography(CTG)では上記検査で指摘し得なかった8 mm大のSMTをさらに診断できた.病理組織診断ではGIST,神経鞘腫,壊死組織とそれぞれ異なる組織像であった.CTGが胃SMT診断に有用であった貴重な症例であったため報告する.
著者
太田 一樹 三好 由里子 横須賀 路子 平井 三鈴 橋本 周太郎 小島 拓人 宮本 彰俊 林 康博 小林 修 黒田 博之 渡辺 純夫
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.66-67, 2014-06-14 (Released:2014-06-21)
参考文献数
3

A 37-year-old male visited a nearby medical clinic with a history of recurrent vomiting after taking a commercial calcium supplement (calcium tablets) and drinking water. Since fiberoptic laryngoscopy revealed no abnormalities, the patient was referred to our hospital for further examination. Emergency endoscopy revealed a supplement-like white substance incarcerated in the upper esophagus. We crushed it with forceps, followed by washing. A proton pump inhibitor (PPI) and alginic acid were prescribed. At the second endoscopy performed on June, 2013, transnasal endoscopy was needed and insertion of the endoscope was found to be difficult due to ulceration and stenosis of the upper esophagus. When we performed the third endoscopy on June, there was no improvement in the stenosis and the ulceration was cicatrized, and minor bleeding was caused by the transnasal endoscope insertion. The patient was prescribed oral PPI therapy for the following month. The subjective symptoms disappeared and food intake became possible. Recently, a large number of subjects have begun to take a variety of supplements available in the market, and various types of complications related to the use of these supplements have been reported. We report this rare case of esophageal ulceration/cicatricial stenosis caused by oral administration of a commercial calcium supplement, with a discussion of the relevant literature.