著者
上内 哲男 志村 圭太 濱中 康治 中島 啓介 長﨑 稔 塚越 ひろみ 室生 祥
出版者
身体教育医学研究編集委員会
雑誌
身体教育医学研究 (ISSN:13456962)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.9-14, 2012 (Released:2012-06-20)
参考文献数
11
被引用文献数
5

[Purpose] To clarify efficacy of the test for independent walking using our convalescent rehabilitation ward. [Subjects and methods] Subjects were 178 stroke patients who had hospitalized in our convalescent rehabilitation ward from December 2009 to May 2011. 64 patients (35 male, 29 female, average age 66.7±14.4) of those who were able to achieve independent walking by our original test protocol participated in this study. The test includes 8 specific items, which assume some situations of falls while walking. In order to obtain permission of walk alone in the ward, it is necessary to pass this test. Nurses perform assessment of each items for through 3 days, consecutively, then a Rehabilitation doctor allows the patients to walk alone. We used passing rate, days to pass the test and proportion of falls as index of efficacy. [Result] 56 patients (87.5%) achieved independent walking, 51.8% of these patients passed the test less than 4 days. Proportion of falls after independent walking was 19.6% (11 patients, 17 falls) including 1 patient (1.8%) who had femoral neck fracture. [Discussion] It is reported that falls in patients walk independently with cane or walker in convalescent rehabilitation ward was 15.6% by research among multi facilities, which is similar to our result. We concluded that our test for independent walking is efficient of its convenience and eliminates certain risk of falls in stroke patients after independent walking.
著者
濱中 康治 志村 圭太 梅村 悟 永井 洋 伊藤 博子 中島 啓介 長崎 稔 木村 鷹介 中村 拓成 田中 尚喜 柏口 新二 岡田 知佐子 紙谷 武 石崎 一穂 片野 裕司
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101523-48101523, 2013

【はじめに、目的】成長期における野球肘においては、発育途上にある骨端骨軟骨の障害が多いことに特徴がある。なかでも離断性骨軟骨炎とも呼ばれる、上腕骨小頭骨軟骨障害(以下OCD)は進行すると治療に難渋するため早期発見が望まれる。OCDの早期発見を目的として、1981年から徳島県で実施されている野球肘検診をはじめ、全国各地で野球肘検診活動の取り組みが行われ、その活動は広まり始めている。その多くは、各地の野球教室や野球大会と合同で開催され、野球教室や大会の現場での検診が実施されているが、大規模な検診になると、より多くの機材やマンパワーが必要となるため、都市部での野球肘検診の実施には高いハードルがある。当院では、都市部における野球肘検診活動として、2010年より医療機関内における野球肘検診を実施している。OCD発症予防のための啓発活動と野球肘検診活動の更なる拡大を目的として、その取り組みの紹介とこれまでの検診結果を報告する。【検診方法】当院では1ヵ月に1度、平日の午後6時から、スポーツ健康医学実践センター内で野球肘検診を実施している。野球肘検診については、その目的と機能から保険外診療とし、1件の受診料は2500円に設定している。対象はOCDの好発年齢・保存的加療の適応年齢を考慮し、原則として10~12歳の小学生としている。理学療法士(以下PT)による理学所見評価、臨床検査技師による超音波画像検査(以下エコー検査)、医師による総合評価を実施する。 理学所見評価については、肘関節屈曲・伸展の他動運動時の疼痛と可動域制限の有無、内側上顆・腕橈関節・肘頭の圧痛、外反ストレステストでの疼痛、手関節屈筋群(上腕骨内側上顆に起始するもの)の筋委縮、橈骨頭の肥大、尺骨神経溝部での尺骨神経亜脱臼の有無を評価し、その他、肘関節以外にも利用者が疼痛を訴えた箇所に必要な所見を評価している。エコー検査では前方・後方から上腕骨小頭の不整像の有無とその程度を評価し、それらの結果から、医師による総合評価で二次検診の必要性を判断し、二次検診の必要ありと判断された利用者には、医師が紹介状を作成し、医療機関での精査を勧めている。【倫理的配慮、説明と同意】今回の報告におけるすべての調査は電子カルテを用いて後方視的に行っており、対象者に有害事象は生じなかった。また匿名性の保持と個人情報流出には十分留意した。【検診結果】2010年6月から2012年11月までに、延べ119名の利用があった。年齢は10.5±1.1才だった。理学所見評価での異常所見は肘関節の他動運動時痛3名(2.3%)、可動域制限39名(32.8%)、内側上顆の圧痛10名(8.4%)、肘頭の圧痛1名(0.8%)、腕橈関節部の圧痛0名(0%)、外反ストレステストでの内側部痛20名(16.8%)、手関節屈筋群の筋委縮2名(1.7%)、橈骨頭の肥大4名(3.4%)、尺骨神経溝部での尺骨神経亜脱臼3名(2.5%)に認められた。エコー検査での異常所見を認めたものが6名(5.0%)であった。医師の総合評価によって二次検診の必要ありと判断されたのは27名(22.7%)で、肘内側部障害の疑い18名、OCD疑い6名、上腕骨近位骨端線障害1名、体幹・下肢の骨軟骨障害疑い4名だった。二次検診の必要ありと判断された利用者27名のうち、当院でのフォローアップを実施したものは18名(66.7%)であった。【考察】OCD疑いと判断された6名のうち、3名が肘内側部に圧痛・外反ストレス痛を認めた。1名は肘関節の伸展制限のみを認めたが、2名についてはエコー所見以外、全ての所見で異常は認められなかった。一般的にOCDは投球時の肘外反ストレスによる肘外側部への圧迫・剪断力によって生じ、外側部に疼痛が出現するとされているが、当院の野球肘検診でOCDが発見された6名はいずれも肘外側部の理学所見は認めなかった。このことは早期のOCDは理学所見に乏しく、OCDの早期発見にはエコー検査が有用であることを示すものである。また、当院でフォローアップを実施したOCD疑い5名の中で、定期的な野球肘検診の必要性を示唆する1例を紹介する。初回の検診時(10歳10ヶ月時)にはエコー検査を含めた全ての所見で異常を認めなかったが、その7ヶ月後(11歳5ヶ月時)の検診で外反ストレステストでの内側部痛があり、エコー検査で初期のOCDが発見された。その後、投球動作を禁止することで約7ヶ月後に良好な骨化が確認され、競技復帰が可能となった。この経験から、当院では10歳前後のOCD好発年代には定期的な検診の必要性を啓発し、6ヶ月に1度の検診を勧めている。【理学療法学研究としての意義】医療機関における野球肘検診を紹介することで、野球肘検診を実施できていない地域にも野球肘検診を広め、PTがその活動に参加することにより、より多くの野球プレーヤーを障害から守ることが可能になる。
著者
森田 秋子 小林 修二 濱中 康治 三吉 佐和子 飯島 節
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.708-711, 2005-11-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
6

脳血管障害発症後早期に半側空間無視 (unilateral spatial neglect 以下USN) を呈し, その後机上検査および行動観察において所見が認められなくなった患者の長期経過を追った. 症例1は61歳男性, 3年前の右被殻出血後に左USNが出現したが, その後机上検査および行動観察にてUSNは出現しなくなり自宅へ退院した. しかし, 百人一首遊びあるいは電動車椅子操作などのストレスのかかる場面で, 左USNが再び出現した. 症例2は62歳男性, 初回の右被殻出血後に左USNが出現したが, 退院時には机上検査, 行動所見ともに所見は認められなかった. 6年後あらたに右片麻痺をきたし, 大脳左半球の脳梗塞が疑われた. 再発作直後は両方向への注意低下を認めたが, 徐々に左USNが明らかに認められるようになった. 症例3は70歳男性, 64歳時に右被殻梗塞発症後早期に左USNが出現したが, その後机上検査でも行動所見でも認められなくなり自宅退院した. 6年後ADLと知的レベルの全般的な低下を来たし, 検査の結果左USNが再び検出された.3例では, 発症早期に机上検査と行動所見において明らかな左USNが認められたが, その後所見は出現しなくなった. しかし, 新規課題あるいは難易度の高い課題, 疲労時, 反対側に出現した脳梗塞などによりUSNが再び出現した.USNは, USNそのものの重症度, 患者の課題遂行能力および環境要因, の3つの要素の相対的な関係において出現様式が規定されるものと考えられた. 一度は検出できなくなったUSNが, 全般的注意機能の低下や環境変化などにともなって再び出現する場合があることは, 高齢者においてとくに注意すべきである.
著者
濱中 康治 丸山 仁司 室生 祥
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B3O2101, 2010

【目的】<BR> 脳血管障害(以下、脳卒中)患者に対して急性期から効果的・効率的なリハを実施するためには、その症例の予後を正確に予測したうえで介入することが求められる。また、転帰先・転帰時期を決定するためにも発症後早期から予後を予測する必要がある。<BR> 脳卒中の予後予測に関して、Koyamaらによる対数モデルを用いた予後予測方法が報告されている。この方法は脳卒中の機能回復が自然対数曲線に類似していることに着目し、機能的自立尺度(Functional Independence Measure:以下、FIM)を複数回測定してその変化分を対数変換することで予測式を算出し、将来のFIM得点を予測するというもので、FIMの得点変化のみを用いるため臨床的に簡便で優れた方法である。ただし、この研究は発症後30日以上経過して回復期リハ病院に入院した症例を対象としており、急性期患者への適応の可能性は検証されていない。<BR> そこで今回の研究では、この対数モデルを用いた予後予測式の急性期への適応の可否を検討する。<BR><BR>【方法】<BR> 対象は、2008年4月から2009年4月までに当院脳神経外科および内科に入院した脳卒中片麻痺患者で、その後回復期リハビリテーション病棟に転科、リハを継続して3ヶ月以上実施した29名(脳卒中再発・くも膜下出血を除く)。年齢は64.6±10.9歳、男性21名、女性8名、脳出血例20名、脳梗塞例9名であった。<BR> Koyamaらの対数モデルを用いた予測式とは、発症A日目のFIM総得点はFIM(days A)=βln(days A)+定数 に近似することを利用するもので、FIM得点変化ΔFIM=βln(Day B)-βln(Day A)=βln(Day B/Day A) β=ΔFIM[ln(Day B/Day A)]<SUP>-1</SUP> 発症X日におけるFIM予測値=FIM(Day A)+βln(Day X/Day A) (lnは自然対数)の計算式で算出する。<BR> FIMの採点はリハ介入開始時(発症から5.2±1.3日)、介入から2週時、1ヶ月時、2ヶ月時、3ヶ月時に実施した。リハ介入開始時と2週時のFIM実測値から2ヶ月時、3ヶ月時のFIM予測値を、2週時と1ヶ月経過時のFIM実測値から2ヶ月時、3ヶ月時のFIM予測値を算出し、病型別に各時期の予測値と実測値を比較した。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 対象者には、本研究の主旨と方法について説明し、非侵襲性の評価であり治療上の効果判定の一環として実施する旨を伝え、同意を得た。<BR><BR>【結果】<BR> 脳出血例において、リハ介入開始時と2週時のFIM得点から得られた予測値と実測値は、2ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.666、3ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.660、2週時と1ヶ月時のFIM得点から得られた予測値と実測値は、2ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.886、3ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.734となった。脳梗塞例においては、リハ介入開始時と2週時のFIM得点から得られた予測値と実測値は、2ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.910、3ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.837、2週時と1ヶ月時のFIM得点から得られた予測値と実測値は、2ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.921、3ヶ月時でR<SUP>2</SUP>=0.872と高い相関を示した。<BR><BR>【考察】<BR> 今回の結果から、対数モデルを用いた脳卒中患者の予後予測方法は、脳出血・脳梗塞、どちらの病型においても、急性期からの予後予測が一定水準以上の精度で可能であると言える。しかし、脳出血例ではリハ介入開始時のFIM得点を用いた場合は予測精度がやや低下した。これはリハ介入開始時に意識障害を伴う症例も多く、2回のFIM採点の間に認知FIM項目が大きく改善したために予測精度が低下したものと考えられる。また、急性期は医学的管理のために症例の活動が制約されていることも予測精度の低下につながっていると思われる。ただし、おおよそ医学的管理上の活動制限が解かれたと思われる2週時と1ヶ月時のFIM得点を用いた場合は予測値と実測値が高い一致率を示しており、予後予測の精度は概ね保障されたと言える。今後は医学的管理上の制限が無くなった時点で初回のFIMを採点し予測に用いることで、更なる予測精度の向上が望めるのではないか。また、この予測方法を脳卒中急性期に導入した場合、多くの症例で実測値が予測値を上回る傾向があったため、臨床的には有益で導入しやすい方法であると考えられる。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 急性期脳卒中患者に対しての適応が証明されることで、簡便な方法で正確な予測が可能となり、早期から予後を見据えた介入が可能となるため、臨床的に有意義な研究であると考えられる。
著者
地神 裕史 濱中 康治 三富 陽輔 中村 拓成 加藤 知生
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】近年,中高齢者の健康増進に対する意識の高まりにより水泳愛好者の数は増加している。一般社団法人日本マスターズ水泳協会の2012年度の統計では協会に登録している選手数は年々増加しており,登録者数が最も多い区分は60-64歳であったと報告している。また,水泳は日本整形外科学会が提唱するロコモティブシンドローム予防のための運動としても推奨されており,今後も愛好者の増加が予想される。一方で水泳,特に競泳は肩関節や腰部の障害が多いスポーツであることも過去の先行研究により明らかになっている。健康増進のために始めた水泳により運動器の障害を引き起こし,ADLやQOLを低下させぬよう,理学療法士として適切な知識をもってこれらの愛好者をサポートすることは非常に意義深いと考える。我々が所属している日本水泳トレーナー会議は創設22年を経過しており,約100名の理学療法士が所属している。22年の間に水泳選手に対する様々なサポート活動を展開してきた。今回,当会に所属する理学療法士を中心にマスターズの水泳大会をサポートし,マスターズスイマーの障害に関する調査を実施すると同時に,コンディショニングを行う機会を得た。よって本研究の目的は,マスターズスイマーの障害の実態を調査すると同時に,理学療法士に求められるコンディショニングの手技や対応部位を明らかにすることで,水泳愛好者に対して適切な医学サポートを実施するための情報を蓄積することである。【方法】対象は日本マスターズ長距離大会に参加した水泳愛好者839名(女性265名,男性374名)のうち,我々が開設したオープンブースを利用した83名(女性58名,男性25名)とした。対象者に対して水泳歴や主訴など一般的な情報を聴取し,症状に対する運動療法やマッサージ,ストレッチなどを行い,その実施内容や実施部位を解析した。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は日本水泳トレーナー会議の倫理委員会の承認(承認番号13-002)を受けて実施した。対象者に対しては書面にてインフォームドコンセントを実施し,本研究の趣旨を理解し,賛同した対象者には署名にて同意をもらった。【結果】本研究の対象者の年齢は52.9±13.0歳(21-77歳),水泳歴は19.3±12.6年(1-55年)であった。主訴部位は重複ありで計161部位,そのうち「肩関節」が最も多く全体の28.6%であった。次いで「腰部・骨盤帯」が18.0%,「股関節」が14.3%であった。また,実施した手技の数は,重複ありで計208,内訳は「マッサージ」が全体の59.1%,「ストレッチ」が30.8%,「エクササイズ」が9.6%であった。【考察】上述したように,健康増進のために水泳を始める中高年者は今後も増加することが予想される。一方で水泳は肩関節や腰部の障害を引き起こす可能性もあるが,荷重関節に負荷が少なく,適切なサポートを行うことで長く継続できるアクティビティになると考える。今回の結果から,マスターズスイマーの抱えている痛みの部位は肩関節が最も多く,次いで腰部・骨盤帯という結果であった。これは半谷らが行った競技力の高いトップ選手に対して行った先行研究と同様の結果であり,障害部位は競技力に依存するものではなく,競技特性により生じている問題点であることが明らかとなった。また,コンディショニングに対するニーズや実際に対応した手技を集計した結果,マッサージやストレッチが多くなった。その要因として,水泳はノンコンタクトスポーツであり,障害の発生機序の多くはオーバーユースによるものであることが挙げられる。筋や腱の炎症に由来する痛みであれば,適切な疲労回復を促すような手技を講じることが結果的には障害予防に直結することが示唆された。しかし,セルフコンディショニングの意識が高いトップ選手に対して行った同様の調査では,マッサージを希望する割合は全体で50%以下であったことを考えると,マスターズスイマーはまだまだ自身で行えることを適切に行えておらず,トレーナーなどの第3者に依存的である姿勢が明らかとなった。今後,会としても教育啓発活動を継続的に実施し,セルフコンディショニングの意識を高めることで末永く水泳を続けられる中高年者が増えるようなサポート活動を展開していくことの必要性を感じた。【理学療法学研究としての意義】理学療法士はスポーツ領域において障害予防のサポートをリードするスペシャリストとなる必要がある。今回のような研究を通じて障害の実態や現場でのニーズを調査し,その結果から具体的な取り組みを実施することは大変意義があると考える。