著者
金丸 彰寿 片岡 美華
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.323-332, 2016 (Released:2019-02-05)
参考文献数
48
被引用文献数
1

本稿では、「交流教育」「共同教育」および「障害理解教育」の歴史的変遷を整理した上で、三者の関係性について教育目標の視点で論じた。三者の歴史的変遷においては、まず「交流教育」が先に文部省によって提唱され、その後、交流教育を批判しつつ、障害のある子どもと障害のない子どもとの平等な関係を築く「共同教育」が発展する。そして、これらの実践の蓄積から障害や障害者問題を取り立てて学習する必要性が生じ、その結果として「障害理解教育」は誕生した。さらに三者の関係は以下のように位置付けられた。つまり、1)「共同教育」は障害のある子どもと障害のない子どもとの対等かつ平等な関係形成を図る教育目標をもつこと、2)「共同教育」は子どもたちの発達に応じて、集団対集団での共同学習を保障する教育目標があること、3)「共同教育」ならびに「障害理解教育」は子どもたちの「障害や障害者問題に関する科学的な認識」を深めることを指摘した。
著者
玉村 公二彦 片岡 美華 小山 ありさ 宮地 里味
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.81-90, 2009-03-31

漢字書字に特異的障害をもつ学習障害児について、教育相談と支援を提供しつつ、そのプロセスの中でおこなってきたアセスメントと教育的支援の内容を報告した。本事例は、小学校4年生2学期から相談に入り、 5年生になって各過程度の支援をおこない、その認知や対人関係の特徴を把握したものである。漢字の書字障害は、特に字形の想起障害を特徴とする記憶に関連する問題と考えられたが、あわせて、本児は、不注意傾向、興味や対人関係の偏りなども指摘され、 LD、 ADHD、広汎性発達障害などのそれぞれの特徴をあわせもつと考えられた。発達障害の原因や特性から検討することを課題としつつも、教育相談・教育支援のプロセスの中で支援のあり方と手がかりを見いだすことの重要性を指摘した。
著者
片岡 美華
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要. 教育科学編 (ISSN:09136606)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.21-32, 2014

This is a research paper that will discuss relations between universal design (UD) education and special needs education in the Japanese context. First, the definitions and terminology of UD are explained. In addition, UD education, UD for learning (UDL) and UD for instructions (UDI) are explained. Second, how UD was introduced into Japanese education is discussed. Third, the relationship between UD education and special needs education is approached. Japanese teachers may apply UD as to practice special needs education. However, UD means" universal" and UD practice usually targets all children, while special needs education focuses more deeply upon an individual child. To ensure an understanding of these relations, survey results of teachers' perceptions of UD education was included. The survey revealed that teachers were confused and unsure what UD was, or what the difference between UD education and special needs education was. Therefore, it is necessary to figure out the concept of UD education. Although UD education and special needs education are not equal, the notion of UD may have much potential to improve special needs education. For examples, UD might provide better practices for students with high functioning developmental disabilities and it may also cover a gap between regular education and special needs education. To conclude, UD education may be useful as first intervention and special needs education may take the role of being effective additional support.
著者
片岡 美華 玉村 公二彦 森下 勇 FADDEN Steve BRANDON Alicia
出版者
鹿児島大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2007

短期大学生・大学生が抱えている、講義内容の理解やレポート課題への取り組み、一人暮らしや対人関係などにおける困難さ、及びそれに対する支援ニーズを調査によって明らかにした。この結果と米国等の先進的な取組例を検討した上で、導入・初年次教育の充実、添削等の学習支援や学習方法への助言を行うコーチング、障害の自己認知やセルフ・アドボカシー・スキル形成に関する支援を含めた継続的かつ系統的な支援モデルを提案した。
著者
片岡 美華
出版者
全国障害者問題研究会
雑誌
障害者問題研究 (ISSN:03884155)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.294-302, 2008-02

OECDの調査結果によると、23ヵ国中、ほとんどの国で読み書き障害を一つの障害カテゴリーととらえて支援の対象としていた。支援を提供している場は各国によってばらつきがあり、ベルギーやフランスでは特別学校を中心に、カナダやスペインでは通常学級を中心に支援が行われていた。読み書き障害に関する用語の使われ方と定義は国により異なる。イギリスではディスレキシアが、アメリカでは学習障害が、オーストラリアでは学習困難が日常的に用いられている。スカンジナビア半島では読み障害など厳密に区分された語が用いられている。教育制度においては、イギリスでは特別なニーズ教育のもと支援が提供され、ディスレキシアフレンドリースクールが提唱されている。アメリカではIDEAに基づき、無償の適切な教育が提供され個別教育計画に従って支援が行われている。オーストラリアでは「3つの波」モデルによって、予防的観点、早期介入、そして継続的支援が提供されている。