著者
田中 求
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.13-24, 2014-07-01 (Released:2017-08-28)
被引用文献数
2

コウゾやミツマタなどの国産和紙原料が激減する中で,それを用いた本来の「和紙」そのものも消えつつある。本稿では和紙原料の主要産地であった山村の動態から,和紙原料生産の現状と問題点を明らかにする。対象地域は高知県いの町柳野地区である。柳野地区の和紙原料生産は,生業と作業形態,買い取り価格が変化する中で衰退していた。ミツマタは焼畑で栽培されてきたが,植林によりほぼ消滅した。コウゾも家屋の周囲などでのみ栽培されているに過ぎない。雇用労働への収入源の転換で栽培者が減る中で,作業は労働交換ではなく雇用労働に変わり,コウゾの収入源としての魅力は薄れていった。さらには,台風による被害で輸入コウゾが増加する一方,高齢化で十分な管理が行えないコウゾが増え,買い取り価格は下がり,イノシシのコウゾ食害は農家の栽培意欲を削いだ。そして,土佐コウゾが売りさばけずに余る,という状況に至っていたのである。柳野での和紙原料生産は消滅の危機にあるといえよう。
著者
田中 求
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.13-24, 2014

コウゾやミツマタなどの国産和紙原料が激減する中で,それを用いた本来の「和紙」そのものも消えつつある。本稿では和紙原料の主要産地であった山村の動態から,和紙原料生産の現状と問題点を明らかにする。対象地域は高知県いの町柳野地区である。柳野地区の和紙原料生産は,生業と作業形態,買い取り価格が変化する中で衰退していた。ミツマタは焼畑で栽培されてきたが,植林によりほぼ消滅した。コウゾも家屋の周囲などでのみ栽培されているに過ぎない。雇用労働への収入源の転換で栽培者が減る中で,作業は労働交換ではなく雇用労働に変わり,コウゾの収入源としての魅力は薄れていった。さらには,台風による被害で輸入コウゾが増加する一方,高齢化で十分な管理が行えないコウゾが増え,買い取り価格は下がり,イノシシのコウゾ食害は農家の栽培意欲を削いだ。そして,土佐コウゾが売りさばけずに余る,という状況に至っていたのである。柳野での和紙原料生産は消滅の危機にあるといえよう。
著者
田中 求 大久保 実香
出版者
高知大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

国内の和紙原料生産は激減しつつある。本研究は山村の変容と問題点を明らかにするとともに、和紙原料栽培の多面的機能の活用策を検討することが目的である。和紙原料栽培は、生業と買い取り価格の変化により衰退していた。焼畑でのミツマタ栽培も植林により激減した。雇用労働が収入源となり栽培者が減る中で、栽培作業も雇用労働化した。輸入コウゾが増加し、高齢化で管理が不十分な畑が増え、買い取り価格の買い取り価格は下がり、獣害で農家の栽培意欲が削がれていることがわかった。その一方で、和紙原料栽培が景観形成・獣害回避・蜜源・庇陰植物機能を有していることも明らかになり、今後はその具体的な活用策の普及が重要である。
著者
奥田 裕規 井上 真 斎藤 暖生 土屋 俊幸 藤掛 一郎 三俣 学 八巻 一成 奥 敬一 垂水 亜紀 深町 加津枝 田中 求 大地 俊介 大久保 実香 横田 康裕
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

脆弱化した社会組織を活性化させるためには、地域社会に新しいアイ デンティティを形成する社会変化を促す必要がある。このような社会変化を促すためには、「内 発的発展」が重要な役割を果たす。「内発的発展」は、地域住民を結ぶネットワーク上に存在し、 ネットワークは、地域住民共通の「大切なもの」を守ろうとする「思い(紐帯)」で結ばれてい る。そして、地域の「大切なもの」を守ろうとする「思い」が強ければ強いほど、そのための 取組が活発化し、「地域資源(コモンズ)」に対する要求が高まる。
著者
田中 求平
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.3-7, 1973-01

Comparison was made between the series and the parallel connection of dialyzers in simultaneous hemodialysis of two patients with the dialysate supplier for single patient. 1) In the series connection, the top dialyzer showed the greater dialysis effect than the lower one, but the water deprivation effect was reverse. In the parallel connection, both dialyzers showed the equivalent work and the greater dialysis and water deprivation effect than either of the series dialyzers. 2) In the series connection, the patient of the lower dialyzer often complained chill due to lowering of the dialysate temperature. The parallel connection gave solution to this problem as well as to the psychological problem involved in the series connection. 3) In case of accident in the parallel connection, the dialyzer can be easily separated and the other dialyzer can continue dialysis without being disturbed.
著者
田中 求
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.8, pp.120-135, 2002-10-31

本稿は,1996年に商業伐採を導入したガトカエ高ビチェ村を対象とし,村人が商業伐採を導入した要因をローカル・コモンズの視点から検討し,さらに商業伐採を経て形成された村人の開発観を明らかにするものである。ソロモン諸島では,親族集団による土地所有が法的に認められている。ビチェ村における商業伐採は,慣習的な土地所有代表者を通して伐採契約が結ばれたが,その過程に実際の森林利用者である村人の参加はなされなかった。村人は新たな焼畑用地と収入源の必要性から伐採開始を事後承諾したに過ぎなかったのである。商業伐採の雇用労働には多くの村人が参加した。出来高制の伐採労働は過伐の原因となり,また月曜から金曜日までの終日雇用は,安息日を中心とする生活サイクルを混乱させるものであった。村人はロイヤルティとして1世帯平均4100ソロモン・ドルを得たが,金額の不満と分配の不平等は村人相互に不信感を植え付けた。村人は,商業伐採を経て,「森林資源の共同利用制度,サブシステンスによる食糧自給,平等な利益分配による村の人間関係を維持しつつ,行うべきもの」という開発観を形成し,村人主体の製材販売を試行している。