著者
畑井 喜司雄
出版者
日本菌学会
雑誌
日本菌学会大会講演要旨集 日本菌学会第53回大会
巻号頁・発行日
pp.1, 2009 (Released:2009-10-30)

水生動物(特に魚介類)の真菌病を専門に研究する研究者は,私が昭和50年にこの研究に着手するまで日本には存在しなかった.特に,下等菌類に起因する魚介類の病気に関しては,どのような手法で菌の分離・培養・同定・保存および病原性の確認を行えばよいのかが分からず,過去の文献を読むことから着手し,その結果,昭和51年に「魚病研究」に総説「魚類寄生ミズカビ」を掲載することができ,それから手探りで魚介類の真菌病の研究を開始したのが始まりである.水生動物の真菌病は,一旦発生すると有効な治療法がないために,甚大な被害を被ることが少なくない.従って,その防除法が重要な目標となるが,その前に次から次に見つかる真菌病の原因菌を特定することに最初は忙殺された.魚介類の真菌病は,鞭毛菌類の卵菌類に分類される菌であることが多く,海生生物の病原菌は,卵菌類のクサリフクロカビ目の菌類,また淡水生物の病原菌は,同じ卵菌類のミズカビ目の菌類であることをまず明らかにした(なお,現在,卵菌類は菌類から,除外されてストラメノパイル生物に位置付けられている).しかし,魚病学の分野では依然として卵菌類に起因する病気を真菌病として取り扱っている.これは病気を解説する際に安易であることにも因っている.すなわち,クサリフクロカビ目の菌は全実性の組織内寄生菌で,後者は分実性の体外寄生菌である.これらの症例を記載した論文中で,何種類かの菌を新種として報告した.また,多くの経験を積むことで,上述の菌の分離培養法・同定法・感染試験法(網もみ法)・薬剤感受性試験法の手法もほぼ確立した.
著者
畑井 喜司雄 江草 周三 高橋 誓 大江 孝二
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.129-133, 1977-09-30 (Released:2009-10-26)
参考文献数
5
被引用文献数
14 32

1. 真菌性肉芽腫症罹病アユからFME寒天培地を用いることである種の真菌の培養に成功した。培養真菌の形状は筋肉内のそれと酷似した。2. 培養真菌をアユおよびキンギョに接種したところ,自然発症魚と同一の症状が再現された。3. 病理組織学的に感染魚の患部を検査したところ,肉芽腫の形成を認めた。また患部から接種真菌が再分離された。4. 本症は上皮の傷害ヶ所に菌糸片が付着し,そこから筋肉内に菌糸を伸長させ,そこで増殖することによって惹起される疾病であろうと推定した。5. 本真菌を仮りにMG-fungusと呼ぶことを提案した。
著者
和田 新平 ウィーラクン ソンポ 倉田 修 畑井 喜司雄 松崎 章平 柳澤 牧央 内田 詮三 大城 真理子
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.39-43, 2008-03
被引用文献数
1

2004年に沖縄美ら海水族館で飼育中の希少魚種であるリュウキュウアユ(Plecoglossus altivelis ryukyuensis)に死亡するものが認められた。病魚は回転しながら遊泳,あるいは力なく遊泳し,体表に微細な出血点が散在していた。病魚の肝臓には様々な大きさの白色結節が認められ,数尾の魚では腎臓の顕著な腫大も観察された。最も顕著な病理組織学的所見は,体腎,脾臓,肝臓,心臓,鰓および脳膜にみられた肉芽腫性病変であった。これら肉芽腫性病変はマクロファージ様細胞が敷石状に配列する構造を呈していた。肉芽腫内には抗酸性を示す長桿菌が多数観察され,病魚から分離された菌株はMycobacterium marinumと同定された。
著者
三浦 正之 大野 平祐 土田 奈々 畑井 喜司雄 桐生 透
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.81-86, 2005-06-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
21
被引用文献数
7 9

ニジマス卵のミズカビ病防除手段として, 銅ファイバー有効性を検討した。試験はタテ型孵化槽の上流部に銅ファイバーを浸漬し, その下流部にニジマス卵を収容する手法を用いた。その結果, 銅ファイバーを浸漬した区では, 銅濃度0.006~0.020ppmで4回の試験すべてでミズカビ病の発生は有意に低下し, 発眼率や清水に戻した後の孵化率は影響されず, 奇形率も増加しなかった。また, 硝酸銅で調整した銅溶液は0.006ppm, 24時間でSaprolegnia diclinaの遊走子の発芽を阻止した。
著者
Munchan Chutharat 倉田 修 畑井 喜司雄 羽柴 典子 中岡 典義 川上 秀昌
出版者
日本魚病学会
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.179-182, 2006-12-15
参考文献数
13
被引用文献数
4 13

2004年4月に養殖シマアジ幼魚に真菌病が発生し, 多数の魚が死亡した。瀕死魚は腹部膨満を呈し, 腎臓や脾臓は腫大し, 結節形成が見られた。病魚の腎臓から菌の分離を試みた結果, 純培養状に単一の集落が出現した。分離菌の集落は淡褐色で, 分生子は1端が丸い長円形で2細胞性であった。菌は<i>O. humicola</i> に同定された。本菌は通常, 海産魚の稚魚の皮膚に発生する真菌病であるが, 幼魚の内蔵に発生したのは初めての例である。
著者
畑井 喜司雄 江草 周三
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.45-56, 1976-06-30 (Released:2010-02-10)
参考文献数
91

1 0 0 0 OA 魚の真菌症

著者
畑井 喜司雄
出版者
日本マイコトキシン学会
雑誌
マイコトキシン (ISSN:02851466)
巻号頁・発行日
vol.1986, no.24, pp.5-8, 1986-12-30 (Released:2009-08-04)

我が国の真菌症に関する研究はまだ歴史が浅く,しかも研究者が少ないために遅々として進展していない現状にある.一方,近年その理由は明らかではないが,新しい真菌症が次から次へと見出されている.魚の真菌症起因菌は分類学的に変形菌類および担子菌類を除く全ての菌類に属しているが,重要な疾病の原因菌が分類学的に明確にされていないものもある. 本題は「魚の真菌症」であるが,魚という場合には通常魚介類,すなわちエビ類,カニ類,貝類,またときには,は虫類のスッポンなど食用上重要とされる水族動物のことを意味することが多い.ここではその概念に従い,我が国で発生が確認された養殖および天然魚介類の真菌症を中心に紹介する. なお,これまで魚介類の真菌症原因菌として報告された主たる菌類は表1に示した通りである.

1 0 0 0 魚病学

著者
畑井喜司雄 宗宮弘明 渡邉翼共著
出版者
学窓社
巻号頁・発行日
1998