著者
畠山 史郎 片平 菊野 高見 昭憲 菅田 誠治 劉 発華 北 和之
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.158-170, 2004-05-10
被引用文献数
10

近年関東周辺山岳域で見られる森林衰退の原因・として大気汚染物質の影響が重要ではないかといわれている。しかし,この地域でのこれまでの観測は電源の都合により,長期的な観測が出来ず,そのため観潮時の天候に大きく影響されて,大気汚染の影響が十分把握されていない。本研究では電源に太陽電池を用いることにより,実際に森林被害の激しい前白根山山頂付近で,大気汚染物質であるオゾン(O_3)を,約3ヵ月にわたって長期的に観測することで,この地域でのO_3濃度変化を明らかにした。更に高濃度O_3が現れる頻度やその起源,それらが出現する気象条件を考察した。その結果,今回の観測では,期間中の最高濃度は1時間平均値で70ppb弱であり,過去に観測された100ppbを超えるような高濃度は観測されなかった。また,長期間の統計的なO_3濃度変化を調べることにより,この地点でO_3が高濃度になるのは夏季の卓越した南風に加えて,日射強度が大きい時であることが分かった。これは強い日射により,都市域で発生した一次汚染物質が光化学反応を起こしながら,広域な海陸風循環によって輸送されてきた為であると考えられた。また,9月以降の秋季には03の平均濃度が上がると共に日食化か小さくなった。これは山頂付近では自由対流圏大気の影響が大きくなり,アジアのバックグラウンドオゾンが輸送されていて,関東平野部からの汚染空気の寄与が小さくなるためと考えられた。
著者
池田 有光 村野 健太郎 畠山 史郎
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.102-108, 1994-06-20 (Released:2010-08-27)
参考文献数
8
著者
佐藤 圭 田中 友里愛 李 紅 小川 志保 畠山 史郎
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
地球化学 (ISSN:03864073)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.145-153, 2007
参考文献数
26
被引用文献数
2

To study long-range transport of organic aerosols from East Asian countries to the East China Sea, 3- to 7-ring parental polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in aerosols collected at Cape Hedo, Okinawa, Japan (128.3°E, 26.9°N) during 2005-2006 were analyzed by high performance liquid chromatography. The total PAH concentrations were 0.00-16.0 (av. 1.22) ng m<sup>-3</sup> during the entire period. The seasonal average of total PAH concentration increased between winter and spring and decreased in summer. It is interpreted that the pollutants are transported to Cape Hedo by the monsoons from the Asian Continent between winter and spring, whereas oceanic air mass is transported by the monsoons from the Pacific in summer. The benzo[a]pyrene to benzo[e]pyrene ratios were 0.23-0.98 (av. 0.48) in winter and were lower than that measured in East Asian cities, showing that PAHs observed at Cape Hedo are aged by the photochemical reactions proceeding during long-range transport. The average total PAH level measured at Cape Hedo was only 1/10-1/20 of those measured in Japanese cities, but a total PAH level comparable with the average levels in Japanese cities was recorded during a long-range transport event in March, 2006.
著者
鹿角 孝男 薩摩林 光 佐々木 一敏 鹿野 正明 太田 宗康 畠山 史郎 村野 健太郎
出版者
Japan Society for Atmospheric Environment
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.282-291, 1996 (Released:2011-11-08)
参考文献数
34
被引用文献数
6

山岳地域における環境大気中の浮遊粒子状物質 (SPM) と大気降下物の特徴を把握するため, 唐松岳入方尾根および長野市においてSPMを1ヵ月毎に採取し, 化学成分濃度を測定し, 各種発生源寄与率の推定を行った。また, 大気降下物を1ヵ月毎に測定し, 酸性物質降下量を調査して, 渓流水への影響について検討した。八方尾根におけるSPM中のSO42-濃度は春季~ 夏季に高くなる変化を示した。春季 (3~4月) には黄砂の影響が見られ, 黄砂粒子の濃度は約4μg/m3と推定された。調査地点近傍の土壌粒子の寄与は少なかった。大気降下物のpHは平均5.1であり, 長野市 (平均5.3) よりもわずかに低く, 春季に高くなる傾向があった。nss-SO42-の降下量は長野市の約2倍あり, またNO3-の降下量も多く, 清浄地域と考えられる山岳地域にも多量の酸性物質の降下が認められた。八方尾根付近の渓流である平川の水質は, pH7.6, アルカリ度0.48meq/lと十分な中和能があったが, 梅雨期には希釈効果により一時的にアルカリ度の低下が認められた。NO3-濃度は融雪期 (3~4月) に上昇したが, pHの低下は見られなかった。
著者
鹿角 孝男 薩摩林 光 佐々木 一敏 鹿野 正明 太田 宗康 畠山 史郎 村野 健太郎
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.31, no.6, pp.282-291, 1996

山岳地域における環境大気中の浮遊粒子状物質 (SPM) と大気降下物の特徴を把握するため, 唐松岳入方尾根および長野市においてSPMを1ヵ月毎に採取し, 化学成分濃度を測定し, 各種発生源寄与率の推定を行った。また, 大気降下物を1ヵ月毎に測定し, 酸性物質降下量を調査して, 渓流水への影響について検討した。<BR>八方尾根におけるSPM中のSO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>濃度は春季~ 夏季に高くなる変化を示した。春季 (3~4月) には黄砂の影響が見られ, 黄砂粒子の濃度は約4μg/m3と推定された。調査地点近傍の土壌粒子の寄与は少なかった。大気降下物のpHは平均5.1であり, 長野市 (平均5.3) よりもわずかに低く, 春季に高くなる傾向があった。nss-SO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>の降下量は長野市の約2倍あり, またNO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>の降下量も多く, 清浄地域と考えられる山岳地域にも多量の酸性物質の降下が認められた。<BR>八方尾根付近の渓流である平川の水質は, pH7.6, アルカリ度0.48meq/<I>l</I>と十分な中和能があったが, 梅雨期には希釈効果により一時的にアルカリ度の低下が認められた。NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>濃度は融雪期 (3~4月) に上昇したが, pHの低下は見られなかった。
著者
河村 公隆 渡辺 智美 持田 陸宏 畠山 史郎 高見 昭憲 ワン ウエイ
出版者
日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.53, pp.166-166, 2006

2002-2004年の冬、夏、春において航空機をもちいて中国上空(沿岸域、内陸域)でエアロゾルを採取した。本研究では、水溶性ジカルボン酸の高度分布を示し、その季節的特徴を報告する。特に、夏に行われた観測では、ジカルボン酸濃度は高度とともに増加し、対流圏下部(境界層)において、光化学的に生成していることが強く示唆された。しかし、高度2.5km以上では、それらの濃度は急激に減少した。有機炭素や硫酸で規格化したジカルボン酸の濃度は、同様な高度分布の特徴を示した。
著者
スタワリー ジーラナット 加藤 俊吾 高見 昭憲 畠山 史郎 嘉手納 恒 渡具知 美希子 友寄 喜貴 与儀 和夫 ジャッフェ ダニエル シュバルツェンデゥルバー フィル プレストボ エリック 梶井 克純
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.350-361, 2007-11-10
被引用文献数
2

大気中のオゾン(O_3),一酸化炭素(CO),揮発性有機化合物(VOC)を沖縄本島の辺戸岬において2004年の春に観測を行なった。後方流跡線による解析により,C(中国方面),K(韓国方面),J(日本方面),O(太平洋方面)という分類で観測地点まで空気塊が到達する経路ごとに分けた。CおよびK方面からの空気塊でこれらの濃度は高くなり,O_3はそれぞれ56.4,62.2ppbvでCOは240,209ppbvであった。O_3が高濃度だがCOが高くない輸送イベントがあり,それがK方面の方がC方面より月平均O_3濃度を高くしていた。最も低濃度はO方面であった。J方面の空気塊は中間の濃度となった。VOCは炭素数が増えると大気中濃度が減少する傾向が見られ,これは時間が経過した空気塊を測定していることを示している。飽和炭化水素についてこのような傾向が見られるのは,清浄な大気を観測しており近傍の影響を受けないことを示している。VOCの主な除去過程はOH反応や希釈である。観測されたさまざまなVOCの比の変化は,アジアでの国での測定結果と一致している。C方面およびK方面からのイソペンタン/ノルマルペンタンの比はこれらの発生源での組成の変化を示唆している。
著者
兼保 直樹 高見 昭憲 佐藤 圭 畠山 史郎 林 政彦 原 圭一郎 Chang Lim-Serok Ahn Joon-Young
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.227-234, 2010-08-30 (Released:2011-06-05)
参考文献数
16
被引用文献数
8

アジア大陸起源の汚染物質がわが国のPM2.5汚染状況に与える影響を明らかにするため、五島列島福江島と、その東方約190 kmに位置する福岡市において2009年春よりPM2.5濃度の通年観測を開始し、さらに4月に集中的に大気中エアロゾルの観測を行った。この結果、春季の福岡でのPM2.5濃度は福江島より半日程度遅れて変動していること、また濃度レベルも同程度または福江島の方がやや高く、日平均の環境基準値を超過する高濃度が度々出現した。組成分析の結果、高濃度時のエアロゾルの主成分は、硫酸塩と粒子状有機物が支配的であり、硫酸塩や総硝酸濃度は福江島の方が福岡より高かった。韓国済州島でのPM2.5測定データでは、福江島よりさらに早い時間に濃度増加を開始しており、長距離輸送による九州北部への汚染物質の到達を示している。このときの気圧配置より、4月上旬の2回の顕著な高濃度出現は、典型的な2つの長距離輸送パターン、すなわち前線後面型と移動性高気圧周回流型による輸送であると考えられる。月平均濃度でみても、4月の福江島のPM2.5濃度は福岡市よりやや高く、2009年春季の九州北部地域では、福岡のような大都市域においても、PM2.5濃度は域外からの長距離輸送による広域的な汚染状況に支配されていたと考えられる。