著者
鯉田 祐佳里 岡崎 葉子 菊間 知恵 山下 智江 湊 由理 野原 圭一郎 仲井 里枝 三枝 淳
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.657-666, 2022-10-25 (Released:2022-10-25)
参考文献数
15

近年,自動血球分析装置において,処理能力や性能,ユーザビリティの向上が図られた装置が開発されている。今回,我々はシスメックス社より新たに開発された多項目自動血球分析装置XRシリーズを評価する機会を得たため,基礎的性能評価に加え,XRシリーズより測定項目となった幼若顆粒球(IG),幼若血小板比率(IPF)の性能評価,ならびに異常細胞検出能の評価を行った。CBC(complete blood count)の併行精度(同時再現性),従来機であるXN-9000(シスメックス社)との相関性,およびDIFF項目における目視鏡検値との相関性はいずれも良好であった。IGについては,目視鏡検値ならびに血液像自動分析装置DI-60(シスメックス社)の幼若顆粒球比率との相関性,目視鏡検結果との一致率共に良好な結果を示した。IPFについても,併行精度,XN-9000との相関性はいずれも良好であり,溶血性尿毒症症候群症例においてはPLT増加に先んじたIPF上昇がみられ,IPFの血小板造血マーカーとしての有用性が示唆された。また,XRシリーズより出力される異常フラグと芽球,異常リンパ球,異型リンパ球の目視鏡検結果との一致率も良好であった。さらに,XRシリーズで新たに表示可能となった3次元スキャッタグラムにより細胞集団の出現位置の視認性の向上が確認できた。以上より,XRシリーズは臨床に有用な情報の迅速報告が可能であり,業務効率化においても有用性が高いと考えられた。
著者
兼保 直樹 高見 昭憲 佐藤 圭 畠山 史郎 林 政彦 原 圭一郎 Chang Lim-Serok Ahn Joon-Young
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.227-234, 2010-08-30 (Released:2011-06-05)
参考文献数
16
被引用文献数
8

アジア大陸起源の汚染物質がわが国のPM2.5汚染状況に与える影響を明らかにするため、五島列島福江島と、その東方約190 kmに位置する福岡市において2009年春よりPM2.5濃度の通年観測を開始し、さらに4月に集中的に大気中エアロゾルの観測を行った。この結果、春季の福岡でのPM2.5濃度は福江島より半日程度遅れて変動していること、また濃度レベルも同程度または福江島の方がやや高く、日平均の環境基準値を超過する高濃度が度々出現した。組成分析の結果、高濃度時のエアロゾルの主成分は、硫酸塩と粒子状有機物が支配的であり、硫酸塩や総硝酸濃度は福江島の方が福岡より高かった。韓国済州島でのPM2.5測定データでは、福江島よりさらに早い時間に濃度増加を開始しており、長距離輸送による九州北部への汚染物質の到達を示している。このときの気圧配置より、4月上旬の2回の顕著な高濃度出現は、典型的な2つの長距離輸送パターン、すなわち前線後面型と移動性高気圧周回流型による輸送であると考えられる。月平均濃度でみても、4月の福江島のPM2.5濃度は福岡市よりやや高く、2009年春季の九州北部地域では、福岡のような大都市域においても、PM2.5濃度は域外からの長距離輸送による広域的な汚染状況に支配されていたと考えられる。
著者
山内 恭 和田 誠 塩原 匡貴 平沢 尚彦 森本 真司 原 圭一郎 橋田 元 山形 定
出版者
国立極地研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2004

両極におけるエアロゾルの航空機集中観測を通じ、極域のエアロゾルにとって、南極・北極ともに,大気の長距離輸送過程が支配的であることが明らかになり、気候影響の大きい黒色炭素の問題等も興味ある発展が期待される。1.16年度5〜6月に、ドイツ、アルフレッド・ウェーゲナー極地海洋研究所(AWI)と共同で、同航空機2機を使った「北極対流圏エアロゾル雲放射総合観測(ASTAR 2004)」を実施した。航空機による散乱係数,吸収係数とも汚染の度合いの高かった北極ヘイズの活発な時期であったASTAR 2000の3〜4月の結果に比べいずれも低めの値が示されたほか、黒色炭素粒子が硫酸液滴に取り込まれた内部混合粒子が卓越することが明らかにされた。また、地上では降水に伴うエアロゾルの除去過程が観測され、エアロゾルと雲の相互作用が類推された。2.18年12月から19年1月にかけて、引き続きAWIの航空機による南極域での「日独共同航空機大気観測(ANTSYO-II)」を実施した。大西洋セクターではノイマイヤー基地を中心に内陸のコーネン基地まで、合計22フライトを実施し、インド洋セクターの昭和基地側では大陸上S17拠点をベースに内陸、海洋上水平分布と鉛直分布を取得する観測飛行を合計15フライト実施した。エアロゾルの物理、光学、化学特性の3次元分布を得たと共に、温室効果気体の鉛直分布を得るための大気試料採取も行った。南極大陸沿岸域でも、西経側に位置するノイマイヤー基地周辺では、大気が南極半島側から輸送されることが多く、一方東経側に位置する昭和基地では、南大洋を越え南米大陸からの輸送が多いことが、エアロゾルの性質を特徴づけていること、さらに昭和基地近傍で内陸からの大気の中にも黒色炭素の多いエアロゾルが見られることが明らかになった。そのほか、昭和基地観測、海鷹丸観測と併せ、海洋起源物質の寄与の解明も期待される。
著者
原 圭一郎 林 政彦 塩原 匡貴 橋田 元 森本 真司
出版者
福岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

南極で出現するヘイズの物理的・化学的特性、空間分布、出現頻度に関する知見を得るために、昭和基地において、エアロゾル・ガスの同時観測を実施した。得られた観測データと過去のデータの再解析から、強風下で起きる海氷域からの海塩粒子放出がヘイズ現象の主要因であることが示された。ヘイズの出現頻度は7-9月に増加しており、海氷面積の季節変化との対応が確認された。ヘイズ層は主に地上近傍~2kmの高度で観測されることが多かったが、4kmまでエアロゾル層が広がった例も確認された。極夜明け時期(8-10月)のヘイズ現象時にオゾン濃度も確認されたことから、ヘイズ現象は大気化学過程と密接に関連していることが示唆された。