著者
石井 研士
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.303-327, 2013-09-30

本論では、情報環境と宗教との関わりを、印刷技術の発展、電波メディアとしてのラジオとテレビ、テレビにおける新しい制度的基盤の構築、そして断片的であるが、コンピュータを中心としたネットワーク社会における宗教について論じている。我々を取り巻く技術の進歩は、かつてないほど急速である。とくにコンピュータを中心とする情報環境の変化は、我々の宗教性に大きな変容を迫っている。本論が問題とするのは、たんに情報環境の変化が宗教性に変化を及ぼしているということではない。現在のテクノロジーが、従来、宗教文化を支えてきた宗教者や宗教団体とは異なった制度的基盤を構築したことを明らかにしようとするものである。宗教文化を支える新しい制度の原理は、苦しむ人々の救済やこの世の安寧ではない。我々の心性に潜む民俗宗教的な世界であったり、憎悪や極端に偏る関心が、新たらしい制度を基盤にして増幅され誇張されて現出している。
著者
石井 研士 黒崎 浩行 川島 堅二 葛西 賢太
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、現在急速に進行しつつある高度情報化が、精神文化としての宗教にどのような影響を及ぼし、宗教団体がどのような対応をとったか、あるいは対応を迫られたかを調査研究することを目的としている。また、高度情報化社会と宗教との関係を考察する上で、その前史ともなるラジオ、テレビといった映像メディアと宗教との関係にも留意することとした。具体的な調査内容として、以下の項目を念頭に置いて研究調査を行った。1)音声メディア・映像メディアにおける資料収集と分析2)宗教団体のニューメディア利用の調査研究3)コンピュータ・ネットワーク上の宗教サイトおよび利用者情報の収集と主催者へのインタビュー4)コンピュータ・ネットワーク上の宗教的行為についてのインテンシヴな調査5)上記に関する面接調査6)インターネット利用の国際比較本研究が「基礎的研究」と謳っているように、この領域での研究成果の蓄積は、現象自体が新しいこともあってほとんどない。こうした中で、ラジオ放送における宗教番組の変化と現状を石井がとりまとめ、あわせて昭和28年から始まったテレビ放送における宗教番組の収集、川島による日本のウェブサイトの分析、とくにキリスト教関係のホームページの現状とその分析、および海外との比較、黒崎による宗教ウェブサイトの傾向の時系列的な分析、神社ウェブサイト主催者へのインタビュー等の調査結果は、今後の研究の基礎になるものと考えることができる。他方で、ほとんど研究蓄積のない領域だけに、研究すべき事柄が多く残ったことも確かである。とくに、テレビにおける宗教状況の把握が十分でなかったことは、現在においてもテレビの与える影響力の大きさを考えたときに、残念かことであった。今後こうした領域の研究調査を地道に継続し、成果を公開することで、現代社会と宗教に関する多くの問題点が明らかになるものと考えられる。
著者
田丸 徳善 石井 研士 後藤 光一郎 孝本 貢 井上 順孝 柳川 啓一 島薗 進 浜田 哲也 金井 新二 ヤン スインゲドー 西山 茂 藤井 健志 林 淳
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

昭和61年度と昭和62年度の二年間にわたり, 現代日本における教団の総合調査を行った. 対象教団は, 神社神道, 仏教教団(浄土真宗本願寺派, 日蓮宗, 臨済宗妙心寺派, 曹洞宗, 真言宗智山派), キリスト教(日本キリスト教団, カトリック)および新宗教教団(金光教, 天理教等)である. これらに関してはできる限り統計処理の可能な資料を収拾し統計分析を行った. これに関しては報告書に掲載されている. また, 地域における教団組織と教勢を把握するために, 銀座と大阪梅田を選び, 都市化の問題をも含めた総合調査を行った. 神社神道は, 既成教団として, 変動がないように考えられてきたが, 内容は大きく変化しているように思われる. とくに都市化が神社神道に及ぼした影響はとくに顕著である. 仏教教団に関しても, 都市と農村の寺院の格差は著しく, 根底から寺院の質を変えようとしている. 都市化が都市と農村の寺院の経済的基盤に変化を与えており, そのことが寺院の世襲化を生む土壌となっている. キリスト教団は, これらに対して比較的変動のない歴史を送っている. そのことは同時に大規模な発展のなかったことをも意味している. 新宗教教団は, 通常の認識では最も変化の激しく, 現代社会に適応した形態をとっていると考えられるが, 実質的にはかなりの程度既成化が進み, 社会的認識との間にはずれがある. この点に関しては, 新宗教教団の詳細な歴史年表を作成することによって, 新宗教教団の歴史的経緯も考察した. 地域研究では, 都市化の顕著な銀座と大阪梅田の比較調査を行うことによって, 各宗教教団の組織的問題を考察した. また, 各教団の製作しているビデオテープを収拾し, 映像に関する考察をも取り入れた.
著者
阿部 美哉 キサラ ロバート スワンソン ポール ハイジック ジェームズ 石井 研士 林 淳
出版者
国学院大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1997

本調査の研究目的は、宗教現象を研究対象とする研究者によって、日本人の宗教行動と宗教意識に関する全国規模の世論調査を行うことであった。また調査に際しては、海外で行われる同様の調査との比較が可能となるように留意する必要があった。こうした条件のもとで調査を実施したが、完全な国際比較調査とはならなかった。その主たる理由は、海外の調査の問題数の多さにあった。海外での調査は政治、経済、社会生活全般の問題を含んで宗教の問題が設定されており、こうした大規模な調査は費用の点で困難であった。宗教に関する質問だけを取り出すことは有意味ではない、そこで海外の調査で意識されている宗教団体に主眼を置くこととした。日本においても新聞社をはじめ一般的な宗教意識に関する世論調査はあっても、宗教団体を主とした調査は行われていない。また、オウム真理教事件の後、宗教団体に関する世論調査の重要性は増していると判断した。質問には当然ながら、一般的な日本人の宗教意識と宗教行動に関するものも含めた。さらには調査期間中に収集してきた、戦後に実施された宗教に関する世論調査の結果と比較、もしくは総合的に読み解くことによって、従来指摘されてきたこととは異なった事実を明らかにすることが可能となった。こうした分析の結果、近年日本人は宗教団体に対する批判的な態度を強めているにも関わらず、実際にはほとんど接触の機会を持っていないことが明らかになった。神社や寺院に初詣やお盆の時に行く機会はあっても、それらは濃密な接触として意識されてはいない。人生における重大な問題に関しても、神職、僧侶、神父や牧師、新しい宗教の教祖や信者に相談している日本人は数パーセントに過ぎない。宗教団体としての活動には、伝統宗教だけでなく、キリスト教や新しい宗教にも関与している形跡は見られなかった。それにもかかわらず、新しい宗教団体に対するイメージは極めて悪く、日常生活における具体的な接触の欠如とは裏腹に、メディアによるオウム真理教や法の華三法行をはじめとした事件報道が、日本人の宗教団体に対する評価に大きな役割を果たしていることが分かった。

1 0 0 0 若者と宗教

著者
石井 研士
出版者
国学院大学出版部
雑誌
国学院雑誌 (ISSN:02882051)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.p45-63, 1995-09
被引用文献数
1
著者
中牧 弘允 近藤 雅樹 片倉 もとこ 鵜飼 正樹 岩田 龍子 石井 研士
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本年度は、昨年度に引き続き企業博物館や会社を個人ないし数名で訪問し、聞き取り調査をおこなった。地域別の主な訪問先は次のとおりである(詳細は報告書参照)。北海道:小樽オルゴール堂アンティークミュージアム、小樽ヴェネチア美術館、旧日本郵船株式会社小樽支店、小樽運河工芸館、雪印乳業史料館、サッポロビール博物館、竹鶴資料館、コニカプラザ・サッポロ、らいらっく、ぎゃらりい(北海道銀行)、石炭の歴史村、男山酒作り史料館、優佳良織工芸館、ふらのワイン工場、池田町ワイン城、馬の資料館、太平洋炭礦炭鉱展示館 関東:資生堂企業資料館、日本銀行貨幣博物館 中部:東海銀行資料館、窯のある広場・資料館(INAX)、日本モンキーセンター(名古屋鉄道) 諏訪北澤美術館、SUWAガラスの里 近畿:ホンダコレクションホール、パルケエスパーニャ、真珠博物館、竹中大工道具館、島津創業記念資料館 九州:西部ガス、ハウステンボス、べっ甲文化資料館このほか住原は原子力発電所PR館のうち昨年度の訪問先以外のすべてを調査するとともに、関電、北電、九電の本社でインタビューをおこない、PR館が原発のしくみや安全性を説明する施設から、リクリエーションや地元文化を紹介する文化観光施設に変わってきたことを明らかにし、記号論者の言う「詩的機能」が付与されヘゲモニ-形成に寄与していることを実証した。会社の求心性や遠心性については、日置が「組織ユニットにおける副の職務」に関して、企業の組織改革の中で自分の役割を主張する機会のないまま、整理対象となっている副の役割について研究をおこなった。会社の記念行事や宗教儀礼にみられるように、経営に宗教的要素が動員されることについては、ダスキンと日立製作所、伏見稲荷神社で調査を実施した。2年度にわたる調査研究の結果、会社文化の研究には「経営人類学」とでも称すべき研究分野が存在することがしだいに明確となり、企業博物館や宗教儀礼の分析を通して、会社の精神的の文化的・経営的側面こそが経済よりもむしろ歴史的に意味をもつ場面のあることを明らかにした。
著者
中牧 弘允 村上 興匡 石井 研士 安達 義弘 山田 慎也
出版者
国立民族学博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

平成11年度は、入社式、新入社員研修と社葬に焦点を置いて調査をおこなった。入社式と新入社員研修については大阪のダスキンで、一燈園とのつながりを明らかにした。社葬については、ソニーの社葬を調査し、国際色豊かな演出の中にソニーの企業としての特色と盛田会長のカリスマ的創業者としての性格を明らかにした。また、大成祭典、一柳葬具総本店といった葬儀社においても調査をおこない、社葬と社員特約の歴史的変遷を跡づけた。平成12年度は、前年度に引き続いて入社式、新入社員研修、社葬を追跡調査したほか、社内結婚についての調査もおこない、公と私の場が入り交じった日本独特の会社文化を明かにした。社葬と会社特約については、大阪の大手葬儀社である公益社を新たに調査した。平成11・12年度を通じて、九州の酒造関係の地場産業における儀礼調査、京都の伏見稲荷神社における会社儀礼の調査をおこない、伝統産業と宗教の関わり、会社ならびにサラリーマンの強化儀礼について研究をおこなった。それぞれの調査を総合して、報告書として「サラリーマンの通過儀礼に関する宗教学的研究」を作成した。
著者
石井 研士
出版者
国学院大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

俗信や民間信仰は、表現形態は変わっても、日本人の基層信仰に深く関わる領域として認識されてきた。しかしながら、一部の民俗学研究の成果や、日本人の宗教意識・宗教行動の変化に関する研究から、基層的な信仰形態に大きな変化が生じていることが指摘されている。こうした俗信・民間信仰の変化に関する資料は、ごく一部を除いて存在しない。日本人の宗教性は、欧米のような教会帰属型の、自覚的意識的な宗教ではなく、日常生活の中で発揮される。こうした日常生活における宗教性の総体の変化を知ることが重要であると考えられる。本研究目的は以下の二点である。第一は、過去に行われた比較可能な俗信・民間信仰に関する調査結果の収集を行う。第二は、収集した資料を基にして、数量的な変化を把握することを目的として設定したときに有効な調査項目(質問文と回答のための選択肢)を考察する。俗信や民間信仰の現状に関する研究を概観すると、そうした現象があたかも「現代日本社会」において「誰でもが関与」しているかのように分析されていることに気づく。友引の葬儀、仏滅の結婚式、葬儀の際の清め塩、北まくら等、こうした現象に言及することで、あたかも現在も広く日本人の間に見られるかのようである。しかしながら世論調査の結果によると現在は少数派である。他方で、口割け女、ピアスの女、走り女、学校の二宮金次郎など、メディアに景況されながら、新しい都市伝説、民間信仰が生まれているのも確かである。世論調査によって明らかになる日本人の基層信仰はきわめてわずかであって、時系列上で比較なデータはさらに僅少である。日本人の宗教性のもっとも日常的で基層となる宗教性に関するデータの蓄積は研究の基本である。定時的で計測可能な世論調査によるデータ収集の実現が望まれる。