著者
石川 博康 熊野 高行 鈴木 昌幸 熊谷 裕昭
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.17-21, 2003-01-01

62歳,男性.食用のベニナギナタタケと間違ってカエンタケを誤食したところ,嘔吐,腹痛,水様下痢などの消化器症状に引き続き,翌日には全身の潮紅とともにショック症状が出現した.大量補液と人工透析の併用により,ようやく循環動態の改善をみたが,1週後には骨髄抑制による白血球および血小板の減少を認めた.経過中,顔面の発赤腫脹や難治性口内炎,回復期での掌蹠の膜様落屑と脱毛などきわめて特異的な皮膚粘膜症状を呈した.カエンタケの毒素成分は長年不詳であったが,mycotoxinとして有名なtrichothecene類であることが昨年解明された.カエンタケ中毒は本邦で6件発症し,患者10例中2例が死亡している.救命にはキノコの十分な鑑別と初期医療での大量補液が重要である.
著者
石川 博康 糟谷 昌志
出版者
日本臨床倫理学会
雑誌
臨床倫理 (ISSN:21876134)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.38-44, 2017 (Released:2021-07-12)
参考文献数
9

本邦の健康保険制度は,第三者行為により生じた傷病に対して代替的給付を行う仕組みを有している.患者がこの給付を受けるには第三者行為の届出が必要条件となるが,この届出は後に補償問題を惹起するため,患者と医師の意見が一致せず,倫理的ジレンマが生じる可能性がある.しかし,本邦ではこれまで,第三者行為の届出やこの代替的給付の仕組みと関連して医師の倫理的問題は研究されていなかった. 我々は,第三者行為の届出と関連して倫理的ジレンマを生じた2症例を経験した.2症例とも,療養の給付事由に対する第三者行為の関与が絶対的なものではなかった.1例では医師の説得により届出が行われ,もう1例では届出が行われなかった.症例の経験を通して,この代替的給付の仕組みに関する幾つかの問題を指摘した.今後,第三者行為が部分的に関与した傷病の医療費請求のあり方について,さらなる議論を通じ,将来何らかの指針などが示されるべきであろう.
著者
石川 博康 玉井 克人 見坊 公子 角田 孝彦 澤村 大輔 梅木 薫 菅原 隆光 矢島 晴美 佐々木 千秋 熊野 高行 三上 英樹 三上 幸子 高木 順之 門馬 節子 菊池 朋子
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.113, no.8, pp.1229-1239, 2003-07-20 (Released:2014-12-13)

帯状疱疹の現状把握を目的とし,2000年4月から2001年3月までの1年間に東日本地区の総合病院と診療所の計11施設を受診した帯状疱疹患者1,065例を対象に統計的解析を行った.結果として,1)8月が最多であったが季節差は認めなかった.2)男女比では女性が多く(M:F=1:1.4),年齢別では60代を中心とした大きな峰と10~20代の小さい峰との2峰性を示した.3)発症部位は上肢~胸背部が最多で31.2%を占め,胸髄部発症例は全体の50.8%であったが,部位別分節別で比較すると頭顔部が最多であった.4)汎発化は2.3%にみられ,70代を中心に頭顔部症例が多かった.5)PHN(postherpetic neuralgia:帯状疱疹後神経痛)は5.3%に残存し,70代を中心に腹背部に多かった.6)抗ウイルス薬は全体の79.0%に投与されていた.7)頭顔部症例の13.4%に眼病変が,1.1%にRamsay-Hunt症候群がそれぞれ合併していた.8)全体の8.8%に基礎疾患を認めた.9)2回以上の再罹患率は全体の3.6%であった.10)医療機関別の比較では患者の年齢層が有意に異なっており,総合病院は60代以上の高齢者主体で診療所は50代以下が多かった.
著者
田島 美幸 佐渡 充洋 藤澤 大介 堀越 勝 大野 裕 横井 優磨 吉原 美沙紀 原 祐子 藤里 紘子 岩元 健一郎 石川 博康 岡田 佳詠
出版者
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、認知行動療法を活用した認知症の家族介護者向けの2つのプログラム(①集団CBT、②訪問看護師による個人CBT)を開発し有効性を検討した。【集団CBT】集団CBTプログラム(月1回90分、計5回)を実施したところ、75歳以下の介護者では、介護負担感、介護に対する否定的な感情において主効果が認められた(p<0.05)。【訪問看護師によるCBT】 訪問看護時に訪問看護師が実施できる個人CBTプログラム(1回30分、計11回)を開発した。また、介入の質を担保するために訪問看護師に対するCBTの教育体制(集団研修およびスーパービジョン)を整備した。現在、症例登録を継続中である。
著者
石川博康
雑誌
皮膚臨床
巻号頁・発行日
vol.44, pp.1136-1137, 2002
被引用文献数
2
著者
石川 博康 神林 崇 清水 徹男
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.807-814, 2014-09-15

抄録 親権とは子の身分上および財産上の広い権能を含むことから,法理上能力者でなければ行うことができないとされる。制限行為能力者は,未成年者と成年後見制度の審判を受けた者に大別され,後者には成年被後見人などが含まれる。前者では民法の成年擬制か親権代行の規定により家庭裁判所の関与がなくとも基本的に子の権利は保護されるが,対照的に後者では成年後見制度の適用が申請主義であるため状況が異なり,能力を欠く不適格者が親権者と誤認される事態も起こり得る。 事実上親権を行う者がいない場合,必ずしも親への成年後見制度適用がなくとも未成年後見の申立てが可能である。児童虐待の対応においても,親の親権能力に注意を向ける意義がある。