著者
武藤 崇 境 泉洋 大野 裕史
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.89-97, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
34

本稿の目的は、1)福祉分野における心理学的支援を再考し、2)当該分野における心理学的支援の独自性を明確にし、さらに3)当該分野における認知・行動療法的な公認心理師に必要と考えられるアプローチを提案することである。当該のアプローチとは「行動福祉」(望月,1993)である。また、行動福祉に含意されている生態・行動的視点の具体例として、環境のエンリッチメント、非随伴強化、“動機づける”操作が挙げられた。
著者
高橋 雄介 山形 伸二 木島 伸彦 繁桝 算男 大野 裕 安藤 寿康
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.276-289, 2007 (Released:2007-07-07)
参考文献数
42
被引用文献数
53 60

本研究は,Grayの強化感受性理論 (Reinforcement Sensitivity Theory) に基づいた2つの気質次元,行動抑制系 (Behavioral Inhibition System) と行動賦活系 (Behavioral Activation System) について,日本語版尺度の信頼性・妥当性の検討(研究1),生物学的基盤との対応関係の検討(研究2)を行った。研究1では,大学生446名を対象に質問紙調査を行い,Carver & White (1994) が作成した尺度の日本語版の信頼性を確認した。また,因子的妥当性,構成概念妥当性の検討を行い,十分な結果を得た。研究2では,慶應義塾双生児プロジェクトによって集められた双生児を対象に質問紙調査を実施し,293組から有効な回答を得た。行動遺伝学的解析の結果,BISとBASは遺伝要因によって部分的に説明され,お互いに独立な遺伝因子から寄与を受けていることが分かった。
著者
大野 裕美
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.91-106, 2008-12-23

本研究では、日本におけるシュタイナー教育の動向を紹介し、普及を推進した力は何かを分析した。教育分野において数多くの理論や思想が生まれては消えていくなか、約90年もの実績があり世界58カ国に広がるシュタイナー教育は国内でも注目されている。シュタイナー学校の授業形態は、ユニークな特徴ある方法のため国の定める学習指導要領にそぐわない。それゆえ、公認は容易でなく先進諸国のなかで公認されないシュタイナー学校は我が国だけであったが、2005年に公的に認可されたシュタイナー学校が誕生した。このことは、世界のシュタイナー教育の動向のみならず、我が国の教育の歴史において公教育のあり方を問う点でも画期的なものである。本論文では、はじめにドイツに端を発したシュタイナー教育の思想を概観し国内への移入および展開を紹介し特徴を明らかにした。次に、近年隆盛になっている国内でのシュタイナー幼児教育の位置づけを行い、シュタイナー学校との接続を考察した。さらに、公認シュタイナー学校の設立経緯として「学校法人シュタイナー学園」の事例を紹介し、今後のシュタイナー教育と公教育との関係やあり方を含めて論じた。
著者
鷹野 敏明 山口 潤 阿部 英二 二葉 健一 横手 慎一 河村 洋平 高村 民雄 熊谷 博 大野 裕一 中西 裕治 中島 映至
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌) (ISSN:03854205)
巻号頁・発行日
vol.128, no.4, pp.257-262, 2008-04-01 (Released:2008-04-01)
参考文献数
7
被引用文献数
4 6

We developed a cloud profiling radar, named FALCON-I, transmitting frequency-modulated continuous wave (FM-CW) at 95 GHz for high sensitivity and high spatial resolution ground-based observations. Millimeter wave at 95 GHz is used to realize high sensitivity to small cloud particles. An FM-CW type radar realizes similar sensitivity with much smaller output power to a pulse type radar. Two 1m-diameter parabolic antennas separated by 1.4m each other are used for transmitting and receiving the wave. The direction of the antennas is fixed at the zenith at this moment. The radar can observe clouds up to 20 km in height with a resolution of 9 m. Beam size of the antenna is as small as 0.2 degree of arc, which corresponds to 15 m at the range of 5 km. Observation results showed that the sensitivity of -34 dBZ is realized at 5 km in range, and good spatial resolutions.
著者
大野 裕
出版者
公益財団法人 産業医学振興財団
雑誌
産業医学レビュー (ISSN:13436805)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.93-116, 2022 (Released:2021-09-08)

認知行動療法は、こころの情報処理プロセスである認知に焦点を当てた精神療法であり、その考え方に基づくアプローチは近年、医療場面以外でも広く使われるようになっている。そこで本稿では、認知行動療法の基本的な考え方を紹介した上で、職域におけるメンタルヘルスケアの4つのケアに生かす認知行動変容アプローチについて検討した。今後はこうしたアプローチを活用した職域での勤労者支援のプラットフォーム作りが重要になると考えられる。
著者
大野 裕司
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
北海道大学大学院文学研究科研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
no.6, pp.35-53, 2006

日本の陰陽道研究の成果として、近世以来、混亂のあった禹歩と反閇の關係について、禹歩は、反閇を構成する呪術の一つに過ぎず、反閇はその他の呪術をも含む一連の儀式であることが明らかになった。また、近年の若杉家文書『小反閇作法并護身法』(1154年) の發見と公開(村山修一編『陰陽道基礎史料集成』東京美術、1987年)によって、これまで江戸期の資料に據るほかなかった反閇の儀式次第について、平安期に実際に行われていたと考えられる陰陽道の反閇を知ることができるようになった(ただし、小反閇は、數多くある反閇儀式の一つに過ぎない)。 近年の陰陽道研究の成果として特に重要なことは、陰陽道における反閇は、中國における「玉女反閉局法」に由来するということを明らかにしたことであろう。しかしながら、これまでの陰陽道研究において、玉女反閉局法は、小坂眞二氏らによる『武備志』、酒井忠夫氏による『太上六壬明鑑符陰經』の紹介があるに過ぎず(玉女閉局法はこの二書意外にも、數多くの遁甲式占の書などに記載される)、またその紹介も、部分的なものである。筆者は先に、秦代の出土資料である睡虎地秦簡『日書』に見える、出行の凶日にどうしても出行しなくてはならない時に行う儀式(この儀式には禹歩を伴う)について檢討し、また、この儀式の明清時代に至るまでの變遷についても言及した(「『日書』における禹歩と五畫地の再検討」『東方宗教』第108號、2006年)。その際、玉女反閉局法の儀式次第が見える最も古い文獻『太白陰經』を紹介し、かつ該書に載せる玉女反閉局法には禹歩が見えないことを指摘した。筆者前稿では、紙數の都合により玉女反閉局法については十分な紹介と検討を行うことができなかった。そこで、本稿では、玉女反閉局法を考察するに當たって、最も古いものである『太白陰經』に見える玉女反閉局法について、これと内容的にほぼ同一の『武經總要』の玉女局法を用いて初歩的な校勘を試み、また後世の玉女反閉局法の基礎となったと考えられる『太上六壬明鑑符陰經』と『景祐遁甲符應經』の玉女反閉局法についても初歩的な校勘を試みる。
著者
大野 裕史
出版者
埼玉短期大学
雑誌
学校法人佐藤栄学園埼玉短期大学研究紀要 (ISSN:13416006)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.47-56, 1996-03-22

マスターベーションの頻発により、適切行動の形成が困難な症例に対して、感覚消去手続きを用いた。指導経過から、マスターベーションは刺激性制御を受けており、指導室という刺激下での制御が形成途中であった可能性を指摘した。また結果の妥当性を検討した結果、変化量は十分であり、マスターベーションの減少に伴い適切な反応が増大した。
著者
安藤 寿康 戸田 達史 河合 泰代 藤澤 啓子 大野 裕 平石 界
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2009

本研究は児童期と青年・成人期の2つの双生児コホートによる縦断調査により、社会性とメンタルヘルスの形成・変化の過程におよぼす遺伝と環境の影響の解明を目指した。認知能力の発達や問題行動の発現、メンタルヘルスの変化に遺伝要因のそのものの発現の変化、ならびに遺伝と成育環境や文化環境との間のさまざまな交互作用が関わっていることが見いだされた。また認知機能の個人差に関わる遺伝子とその発現、さらには脳の構造と機能との関係を明らかにするための研究基盤が確立された
著者
大野 裕司
出版者
北海道大学大学院文学研究科
雑誌
研究論集 (ISSN:13470132)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.35-53, 2006-12-20

日本の陰陽道研究の成果として、近世以来、混亂のあった禹歩と反閇の關係について、禹歩は、反閇を構成する呪術の一つに過ぎず、反閇はその他の呪術をも含む一連の儀式であることが明らかになった。また、近年の若杉家文書『小反閇作法并護身法』(1154年) の發見と公開(村山修一編『陰陽道基礎史料集成』東京美術、1987年)によって、これまで江戸期の資料に據るほかなかった反閇の儀式次第について、平安期に実際に行われていたと考えられる陰陽道の反閇を知ることができるようになった(ただし、小反閇は、數多くある反閇儀式の一つに過ぎない)。 近年の陰陽道研究の成果として特に重要なことは、陰陽道における反閇は、中國における「玉女反閉局法」に由来するということを明らかにしたことであろう。しかしながら、これまでの陰陽道研究において、玉女反閉局法は、小坂眞二氏らによる『武備志』、酒井忠夫氏による『太上六壬明鑑符陰經』の紹介があるに過ぎず(玉女閉局法はこの二書意外にも、數多くの遁甲式占の書などに記載される)、またその紹介も、部分的なものである。 筆者は先に、秦代の出土資料である睡虎地秦簡『日書』に見える、出行の凶日にどうしても出行しなくてはならない時に行う儀式(この儀式には禹歩を伴う)について檢討し、また、この儀式の明清時代に至るまでの變遷についても言及した(「『日書』における禹歩と五畫地の再検討」『東方宗教』第108號、2006年)。その際、玉女反閉局法の儀式次第が見える最も古い文獻『太白陰經』を紹介し、かつ該書に載せる玉女反閉局法には禹歩が見えないことを指摘した。 筆者前稿では、紙數の都合により玉女反閉局法については十分な紹介と検討を行うことができなかった。そこで、本稿では、玉女反閉局法を考察するに當たって、最も古いものである『太白陰經』に見える玉女反閉局法について、これと内容的にほぼ同一の『武經總要』の玉女局法を用いて初歩的な校勘を試み、また後世の玉女反閉局法の基礎となったと考えられる『太上六壬明鑑符陰經』と『景祐遁甲符應經』の玉女反閉局法についても初歩的な校勘を試みる。
著者
秋山 剛 萱間 真美 大野 裕 川上 憲人
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.19, no.11, pp.11_75-11_78, 2014-11-01 (Released:2015-03-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1
著者
藤原 直子 大野 裕史 日上 耕司 佐田久 真貴
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.383-392, 2012 (Released:2013-09-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1

本研究は、発達障害児の親に対するペアレント・トレーニングにスタッフとして参加した大学院生のうち、親面接を担当した5名を対象に、参加後の変容について検討した。親面接担当スタッフは、事前にペアレント・トレーニングに関する学習や演習を行い、実際のペアレント・トレーニングでは親への講義やグループワークにおける面接を担当した。ペアレント・トレーニング参加後、子育て支援に対する効力感に関して、託児担当スタッフには変化がみられなかったが、親面接担当スタッフは5名中3名で有意に向上し、「育児不安に対する支援」と「支援環境の整備」は5名全員に向上が認められた。また、面接の進め方に対する親からの評価が高くなり、スタッフの面接技術や話し方が変化したと推察された。これらの結果から、ペアレント・トレーニングにスタッフとして参加し、親への講義や面接を行うことが、発達障害児の親および子育てに対する支援者を養成する一助となる可能性が示唆された。
著者
大野 裕 白波瀬 丈一郎 神庭 重信 安藤 寿康 吉村 公雄
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

15〜27歳までの双生児262組を対象に「パーソナリティ形成における遺伝的影響と養育環境との相互作用に関する心理、社会的、遺伝的研究」の研究を行った。気質の4次元(新奇性追求、損害回避、報酬依存、固執)は、いずれも遺伝由来であり、とくに新奇性追求、損害回避、報酬依存は遺伝的に独立であることが明らかになった。また、新奇性追求と損害回避に見られる表現型相関は環境によって引き起こされたものであり、一方固執は新奇性追求と損害回避の遺伝成分から派生したものとする仮説が指示された。人格の3次元(自己志向、協調、自己超越)のうち、自己超越は共有環境と非共有環境に由来していて遺伝成分はないが、自己志向と協調には遺伝要因が無視できないとする仮説が指示された。さらに、自己志向と協調の遺伝要因は、部分的には気質次元の新奇性追求および報酬依存の遺伝成分と重複することが明らかになった。一方、big fiveと呼ばれる神経質、外向性、開拓性、愛想の良さ、誠実さの5つの性格特性に関しては、遺伝率は40-50%と欧米での報告と同じように高かったが、個々の性格特性は遺伝的に共通であることが明らかになった。このことは、(1)表現型の均一性が必ずしも遺伝の均一性を意味していない、(2)共有環境が性格の個人差形成にほとんど全く寄与しない、(3)家族どおしの類似性はほとんどすべて遺伝要因によって形成される、ということを意味しており、発達心理学的に見て大変重要な知見が得られた。母親の養育態度を温かく庇護的であると子どもが見るかどうかは、共有環境ではなく遺伝要因の高い寄与が認められた一方、母親の過保護傾向については共有環境要因が関与しているという欧米と同様の知見が得られた。また、遺伝子解析からはドーパミン受容体(DRD4)およびセロトニントランスポーター(5HTT)が気質と関連していることが明らかになったが、双生児という特性を考慮してさらに解析する必要性が示唆された。
著者
大野 裕
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.239-244, 2014-07-15 (Released:2017-08-29)
参考文献数
4
被引用文献数
1

認知行動療法は認知,つまりものの受け取り方や考え方に注目して,気持ちや行動をコントロールできるように手助けする精神療法(心理療法)である。私たちは,ストレスを体験すると抑うつや不安などの気分の変調を体験する。そうしたときに,私たちはその気分に直接働きかけることができないが,考えや行動に働きかけて気分を改善することはできる。そうした視点を活用した治療法が認知行動療法であり,うつ病をはじめとする精神疾患の治療法として効果を実証し,世界的に広く使われるようになっている。本稿では,行動活性化や認知再構成法などの認知行動療法の技法について紹介し,薬物療法を補完して治療効果を高める認知行動療法的アプローチ,さらには,認知行動療法活用サイト『うつ・不安ねっと』(http://cbtjp/)などのIT 技術を活用したアプローチについて概説した。