著者
村山 健二 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.45.3, pp.403-408, 2010-10-25 (Released:2017-01-01)
参考文献数
40
被引用文献数
2

本論文は、海苔養殖で栄えた大森の地先海面利用を歴史的に分析することを通じ、地先海面の地域的な共同利用がどのように成立していたのかを「空間」・「人(組織)」・「法」の観点から明らかにする。その方法として、大森の地先海面の歴史を概観した後、さらに詳細に、漁家分布、漁場の位置、河岸の分布と使われ方、地先海面を共同利用するための組織、の分析を行った。結論として、大森の海苔養殖における地先海面利用では、利権の私的な独占に対し、共同性と持続性を目的とした利用システムの調整が、1.堀・河岸などのインターフェース空間の創出、2.漁業組合における公平性を旨とする分配の仕組みの導入、3.有限な資源を管理する法の運用等により、持続的に行われてきたことを明らかにした。
著者
鹿内 京子 石川 幹子
出版者
日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.715-718, 2009
被引用文献数
3 1

近代化の過程のなかで、かつて存在した都市近郊の用水路は、都市化の進展に伴いその役割を失い、消失の一途を辿ってきた。しかしながら、21世紀を迎えた今日、用水路は親水空間を求める動きのなかで再び着目されるようになった。これらの用水路によって形成される親水空間は、その形状のネットワーク性や連続性から、防災・景観・環境面で重要な役割を担う可能性がある。東京の東端、葛飾では、江戸期に農業用水路が灌漑を目的として開鑿され、近郊農業により都市を支えてきたが、今日では周囲の土地利用も大きく変化し、灌漑用水としての意味を失い、多くの用水路は埋設されている。現在、北部地域に水元公園が、南部地域には親水緑地が所々に見られるが、用水路はこれらの場所をつなぎ、北部地域から南部地域へと水を供給していた。本稿では、現在、一部を大規模な都市計画公園とともに残しつつも、その大半は暗渠・埋没している上下之割用水区域を対象とし、残存箇所や歴史的変遷を分析することで、江戸期より270年の歴史をもつ用水路を、社会資本として維持・活用するための、新たな手立てに関する知見を得ることを目的とする。
著者
吉田 葵 片桐 由希子 石川 幹子
出版者
The City Planning Institute of Japan
雑誌
都市計画論文集 = Papers on city planning (ISSN:1348284X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.637-642, 2011-10-25

本研究の目的は、都市内の崖線上に存在する緑地について、その歴史的背景、保全に至る経緯とその考え方を踏まえた上で、現況における緑地の生態的な質を明らかにし、その持続的な質、つまり生態系機能の向上に対する保全・管理に繋がる基礎的な知見を得ることである。対象地は落合崖線とその崖線上に存在する緑地である新宿区おとめ山公園である。その結果、以下の2点が明らかになった。1)崖線緑地の多くは明治期における邸宅の存在が緑の継承に大きな役割を担っていることがわかった。またおとめ山公園は、江戸期から現在に至るまで、所有者や利用目的がさまざまに変わりながらも、守られてきた貴重な緑地であった。2)崖線上の緑地の質は、種構成において常緑樹の割合が高く、遷移が進行しているという一様な状態であった。また、おとめ山公園の緑地の質を明らかにするために、落葉樹二次林から生態遷移が進行し常緑樹が優占している状態までの植生遷移の段階に着目したビオトープタイプ区分を行った。上層木における常緑樹の割合が高くなるほど裸地化しており、その裸地化した区域の7割が急斜面地であった。また、上層木に落葉樹の割合が高いと更新が起きていた。
著者
板川 暢 片桐 由希子 一ノ瀬 友博 大澤 啓志 石川 幹子
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.431-436, 2010 (Released:2011-07-22)
参考文献数
24
被引用文献数
3 3

A study was conducted on Orthoptera (Acrididae, Tettigoniidae, Gryllidae) in 56 sites of reclaimed land of Kanazawa District, Yokohama City, Kanagawa Prefecture through May to October of 2008. 28 species and 1941 individuals were recorded during this study. By using TWINSPAN and partitioning, classifications of the Orthoptera and study sites were made based on the results of this study. Also we investigated concerning vegetation, soil, distance from original land,and area coverd with vagetation around field as environmental factors. The study sites were sorted into 5 groups and the Orthoptera were sorted into 4 groups by using TWINSPAN. Based on 5 study site groups, partitioning analysis was conducted.Results suggest vegetation height, coverings of evergreens and deciduous trees of middle to high height, and distance from original land are related to Orthoptera inhabitation. However, it has not been clearly understood the distance from original land was selected as explanatory variable. A further verification is necessary because of the possibility that area coverd with vegetation around the field is related was suggested.