著者
大西 裕 品田 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 高橋 百合子 稲継 裕昭 遠藤 貢 川中 豪 浅羽 祐樹 河村 和徳 仙石 学 福島 淑彦 玉井 亮子 建林 正彦 松本 俊太 湯淺 墾道
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、選挙ガバナンスが民主政治に与える影響を、比較政治学的に解明しようとするものである。本研究は、国際比較と日本国内の自治体間比較を通じて、選挙管理という研究上の大きな空白を埋める。調査結果、常識的見解と異なる二つのことが明らかになった。第1に、選挙の公平性、公正性は、国際的に推奨される選挙管理機関の独立性のみでは達成できず、より複雑な扱いが必要である。第2に、日本では選挙管理委員会の業務は画一的で公平、校正であると考えられてきたが、委員会や事務局の構成のあり方によって大きく左右される。それゆえ、市区町村によってバリエーションが発生している。
著者
福島 淑彦
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.25-34, 2019 (Released:2020-07-01)

本論文の目的は、高い水準での障害者の労働参加がスウェーデンで実現している要因を探ることである。スウェーデンの障害者の労働参加率と就業率は世界で最も高い水準にある。多くのOECD 諸国では、ある一定数の障害者の雇用を各企業や組織に義務付ける「障害者割当雇用制度」を採用して、障害者の雇用促進が図られてきた。これに対して、スウェーデンでは障害者の雇用が法律で義務付けられておらず、障害者を雇用する際に障害者を差別してはいけないという「差別禁止法」が存在するのみである。それにもかかわらず、スウェーデンではOECD 諸国の中で最も高い水準で障害者が雇用されている。スウェーデンにおいて障害者の高い水準での労働参加の実現に寄与している要因として、スウェーデン社会の差別禁止に対する姿勢、所謂インクルージョン(Inclusion)という理念が社会に浸透していることが障害者の活発な労働参加が実現している大きな要因であることを本論文で示す。
著者
福島 淑彦
出版者
名古屋商科大学
雑誌
NUCB journal of economics and information science (ISSN:13466097)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.165-182, 2006-03

本論文は完全雇用を達成してきたノルウェー労働市場を概観し、完全雇用を実現させたノルウェーの賃金決定システム及び労働市場政策について検証している。ノルウェーにおける賃金決定は、第2時世界大戦以後一貫して全国レベルでの労使間賃金交渉によって特徴付けられてきたが、近年は地域レベル或いは産業レベルの交渉へと移行している。その結果、労働者間の賃金格差が拡大している。また1980年代後半の景気後退移行、ノルウェーでは雇用政策の重点を受動的労働市場政策(passive labour market programmes) から積極的労働市場政策(active labour market programmes) へと移しており、これが雇用の増大、失業の減少、延いては「完全雇用の維持」に大きく貢献してきた。さらに、ノルウェーの基幹産業である石油や天然ガスから得られる巨額の収益がノルウェーの完全雇用の実現に大きく寄与してきたことについても本論文は考察を加えている。