- 著者
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福島 淑彦
- 出版者
- 北ヨーロッパ学会
- 雑誌
- 北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, pp.25-34, 2019 (Released:2020-07-01)
本論文の目的は、高い水準での障害者の労働参加がスウェーデンで実現している要因を探ることである。スウェーデンの障害者の労働参加率と就業率は世界で最も高い水準にある。多くのOECD 諸国では、ある一定数の障害者の雇用を各企業や組織に義務付ける「障害者割当雇用制度」を採用して、障害者の雇用促進が図られてきた。これに対して、スウェーデンでは障害者の雇用が法律で義務付けられておらず、障害者を雇用する際に障害者を差別してはいけないという「差別禁止法」が存在するのみである。それにもかかわらず、スウェーデンではOECD 諸国の中で最も高い水準で障害者が雇用されている。スウェーデンにおいて障害者の高い水準での労働参加の実現に寄与している要因として、スウェーデン社会の差別禁止に対する姿勢、所謂インクルージョン(Inclusion)という理念が社会に浸透していることが障害者の活発な労働参加が実現している大きな要因であることを本論文で示す。