著者
尾野 嘉邦 石綿 はる美 三輪 洋文 横山 智哉 中村 航洋 松林 哲也 粕谷 祐子 木村 泰知 河村 和徳
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究の目的は、人々のジェンダーバイアスとその政治的影響を包括的に検証し、「指導的地位」に占める者の間に大きな男女格差が生じる要因と解決策を明らかにすることである。それにより、政治や社会において男女共同参画をさらに進めるだけでなく、男女それぞれが個人として、多様な選択やキャリアの実現を可能とするための方策を考える。そのために、①議事録などのテキストデータを機械学習によって分析するテキストマイニング、②サーベイ実験などの実験的手法により因果関係の解明を目指す行動実験、③世界各国の専門家を対象とした大規模なサーベイによる国際比較調査、という複数の手法を用いて、学際的かつ国際的に研究を行う。
著者
河村 和徳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.78-88,182, 2001-02-28 (Released:2009-01-22)
参考文献数
20

1999年に実施された愛媛県松山市長選挙は,相乗り候補に対して政党の支援を受けない候補者が当選したという点で注目に値する選挙であった。この松山市長選挙を分析した結果,相乗りに批判的な態度をとる有権者が必ずしも新人候補者を支援していたわけではなく,また政治不信も有権者が新人を志向することとは直接的な関連性はなかったことが,明らかとなった。一方,県議選挙直後における現職知事の新人支持発言とそれに伴う自民党愛媛県連の推薦見送りは,現職志向の有権者の態度変容を促す結果となっていた。その傾向は,政治的関心が高く地方の政治に不満を有していた有権者に顕著にみられた。本稿の分析結果は,相乗り候補者に対して草の根候補者が対抗するためには不信と投票方向を結びつける媒介変数が必要なことを示唆している。
著者
大西 裕 品田 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 高橋 百合子 稲継 裕昭 遠藤 貢 川中 豪 浅羽 祐樹 河村 和徳 仙石 学 福島 淑彦 玉井 亮子 建林 正彦 松本 俊太 湯淺 墾道
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、選挙ガバナンスが民主政治に与える影響を、比較政治学的に解明しようとするものである。本研究は、国際比較と日本国内の自治体間比較を通じて、選挙管理という研究上の大きな空白を埋める。調査結果、常識的見解と異なる二つのことが明らかになった。第1に、選挙の公平性、公正性は、国際的に推奨される選挙管理機関の独立性のみでは達成できず、より複雑な扱いが必要である。第2に、日本では選挙管理委員会の業務は画一的で公平、校正であると考えられてきたが、委員会や事務局の構成のあり方によって大きく左右される。それゆえ、市区町村によってバリエーションが発生している。
著者
品田 裕 大西 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 山田 真裕 河村 和徳 高安 健将 今井 亮佑 砂原 庸介 濱本 真輔 増山 幹高 堤 英敬 平野 淳一
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、国会議員を主とする政治家と有権者の関係、あるいは政治家同士の関係がどのように変容しつつあるのかを調査し、その変化の要因を実証的に解明することを目的として開始された。その結果、本研究では、選挙区レベルの詳細な観察・データを基に、実証的に現代日本の選挙政治の変容を明らかにすることができた。取り上げた研究対象は、集票活動・有権者と政治家の関係・政治家同士の関係・議員活動・政治家のキャリアパス・政党下部組織など、多岐にわたった。これらの分析から得られた成果を基礎に、さらに、国会のあり方や選挙制度にまで分析を進めることができ、現代日本の選挙政治理解に一定の貢献を果たすことができた。
著者
河村 和徳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.25-38, 2020 (Released:2023-11-16)
参考文献数
23

近年,地方議員のなり手不足は深刻化しており,2019年統一地方選は,それが重要な政治争点であることを明らかにした。本稿では,総務省が立ち上げた研究会の議論の動向やNHKが実施した地方議員に対する悉皆調査の結果を踏まえ,この問題を議論する。総務省の研究会は,地方議員のなり手不足に多様な要因があることを指摘するが,それらの中で最も重要なものは,「地方議員の待遇の悪さ」と「個人の選挙資源に依存する選挙環境」である。町村レベルでは,過去の経緯などから議員報酬の基準が低く抑えられており,自前主義の選挙環境や近年の政治情勢の影響を受け,候補者の発掘は困難な状況にある。これを克服する上で有効なのは「政党中心の選挙への転換」であるが,これに対して警戒感を持つ地方議員は少なくなく,地方議員のなり手不足の解決は一筋縄ではいかないことが指摘できる。
著者
河村 和徳 三船 毅 篠澤 和久 堤 英敬 小川 芳樹 窪 俊一 善教 将大 湯淺 墾道 菊地 朗 和田 裕一 坂田 邦子 長野 明子 岡田 陽介 小林 哲郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東日本大震災では多くの被災者が生じ、彼らの多くは政治弱者となった。本研究は、彼らの視点から電子民主主義の可能性について検討を行った。とりわけ、彼らの投票参加を容易にする電子投票・インターネット投票について注目した。福島県民意識調査の結果から、回答者の多くは電子投票・インターネット投票に肯定的であることが明らかとなった。しかし、選管事務局職員は、こうしたICTを活用した取り組みに難色を示す傾向が見られた。ICTを利用した投票参加システムを整備するにあたっては、彼らが持つ懸念を払拭する必要があることが肝要であり、財源の担保に加えシステムの信頼を高める努力が必要であることが明らかになった。
著者
河村 和徳
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.2_33-2_51, 2011 (Released:2016-02-24)
参考文献数
15

In the 2009 Lower House election, the Liberal Democratic Party (LDP) fell to the opposition party and the Democratic Party of Japan (DPJ) became the ruling party. In Japan, the LDP and many interest groups built the strong collaborative relationship for a long time. By the change of government, however, many interest groups which had built the good relation with the LDP was forced to the review of political connection. The transition 2009 was the turning point to review of the relations of the political party and the interest group.   In this paper, I pay attention to the change of the political attitude of the Japanese farmer and analyze their voting behavior in the 2010 Upper house election. And I clarify new cleavages in the agricultural organization of the monolith and expect the new relations of the political party and the interest group in the future.   After 2009, the farmer's political opinion is changing. The farming families who support the Liberal Democratic Party decreased, and most of farmers hope that the JA Central will keep neutral for politics and continue pressuring the government. In other words farmhouses comparing the opinion of two major political parties increase.   Until 2009 the House of Representatives election, the farming family voting for the DPJ tended to increase, and the agricultural organized votes tends to be divided. In 2010 House of Councilors election, the tendency was promoted. Some farmers voted for the conservative small party such as the Yours Party (Minna no To) or the Sunrise Party of Japan (Tachiagare Nippon). These results suggest that cracks in the agriculture group are surfacing.   By change of government, the Japanese interest group politics greets a turning point. However, there are not any studies about the change in the interest group. It is necessary to analyze how the relations of the political party and the interest group are rebuilt.
著者
河村 和徳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.43-56, 2013

未曾有の大災害である東日本大震災によって,被災地自治体は深刻なマンパワー不足に陥った。選挙管理も例外ではなく,2011年4月に被災地で予定されていた統一地方選挙は延期を余儀なくされ,福島県知事選・県議選は2011年9月に,宮城県及び福島県の県議選は同年11月に延期された。本稿では,これまであまり関心を向けられなかった選挙管理者に着目し,2011年秋の地方選挙及び2012年の年末に行われた衆議院選挙を,「マンパワー不足」をキーワードに論じていく。そして,被災地における2011秋の地方選挙は多くの被災地外からの応援によって乗り切れたこと,2012年の年末に行われた衆議院選挙では被災だけではなく労働者派遣法の改正もマンパワー不足の要因となったこと等を指摘する。なお,本稿は,被災地で起こっている状況について幅広く情報を共有することを目的としており,仮説検証型のスタイルは採らない。
著者
河村 和徳
出版者
日本選挙学会
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.73-83, 2011 (Released:2017-06-12)
参考文献数
12

2009年総選挙では,多くの稲作農家が民主党に投票した。本稿では,サーヴェイ・データを用い,彼らの政治意識と投票行動について分析を試みる。分析の結果,彼らの投票行動の背景には,自民党・農林水産省・農協という,これまでの自民党農政の担い手に対する負の評価と,戸別所得補償を掲げる民主党への期待があった。また減反政策の是非はもはや争点ですらなく,個別所得補償への期待の程度が自民党に投票するのか,それとも民主党に投票するのかを分かつ重要な要因であった。更に,2009年の時点で,零細兼業農家と大規模化を進めてきた専業農家の間で,民主党や自民党農政の担い手に対する感情の違いが生じており,また政治との関わり方についても意見の違いがみられた。政権交代の影響もあり,政党に対し中立の立場をとりたいという農家が多く存在し,これまでの「農家が一枚岩で自民党を支える」という見方が成り立たなくなっていることが,本稿で明らかとなった。
著者
河村 和徳
出版者
Japanese Association of Electoral Studies
雑誌
選挙研究 (ISSN:09123512)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.57-65,213, 2008

2007年の統一地方選挙において, 民主党は, これまでの地方選挙の選挙戦略を大きく変更した。自民党との対決姿勢を地方選挙に持ち込んだのである。本稿は, 地方選挙における政党の選挙戦略に注目し, 2007年統一地方選挙までの地方選挙の構図について検討を行う。政党の選挙戦略に関する先行研究としては,既にSchlesingerのものがあり, 本稿では彼の議論を日本の二元代表制にあうように応用し使っている。2007年統一地方選挙における民主党の選挙戦略は, 一般の有権者から広く集票しようとする第四戦略と位置づけられ, また選挙戦術としてのローカル・マニフェストのあり方にも影響を与えるものになったといえる。ただし, 2007年統一地方選挙の結果については, 直近の参議院議員選挙を見据える必要があり, 「平成の大合併」による地方政界の再編にも留意し吟味する必要がある。
著者
小林 良彰 名取 良太 河村 和徳 金 宗郁 中谷 美穂 羅 一慶
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

平成23年度、(1)選挙公約内容分析ユニットでは、日本の地方選挙における都道府県知事選拳・都道府県議会議員選挙・政令指定都市長選挙・政令指定都市議会議員選挙、韓国の地方選挙における道知事選挙・道議会議員選挙・広域市長選挙・広域市議会議員選挙の公約を収集して、16の政策領域について内容分析した。次に、(2)政治的選好/政策分析ユニットでは、平成22年度に行った日本の都道府県知事・全ての市長宛の意識調査と比較するために、日本の都道府県議会議長・全ての市議会議長、韓国の道知事・基礎自治体長・道議会議長・基礎自治体議会議長宛の意識調査を行った。また日本の都道府県・全ての市の企画部局、韓国の道・広域市を含む全ての基礎自治体の企画部局宛の意識調査を行った。さらに(3)データアーカイブユニットでは、日本の都道府県、政令市を含む全ての市町村、韓国の道・広域市を含む全ての基礎自治体の財政データを収集してデータアーカイブを構築した。上記の各ユニットで得られたデータを接合して分析した結果、地方分権の効果は、(ア)韓国においてより肯定的に評価されていること、(イ)韓国においてより地域活性化への意識が強いこと、(ウ)日本においてより財政再建志向が強いこと、(エ)韓国において、より「代理型」の代表スタイルが施行されていること、(オ)韓国では、政治的・財政的に中央との結びつきが強く意識されていること、(カ)日韓両国とも、首長と議会の間の認識ギャップが存在するが、そのギャップは日本において、より顕著に見られること、(キ)韓国の地方選挙において公約の地域差のみが表れるのに対して、日本の地方選挙においては公約の地域差と政党差をみることができ、有権者に政策上の選択肢が提示されていることが明らかになった。これらの分析を通して、日本と韓国における自治体が有する共通点と相違点が統計的に明らかにされた意義は大きいと考える。