著者
大西 裕 品田 裕 曽我 謙悟 浅羽 祐樹 磯崎 典世 川中 豪
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本における選挙管理に関する政治学的・行政学的研究の嚆矢である。選挙管理は途上国に限らず政治的に中立性を保ちにくく、それだけ政治権力からの独立性が必要とされている。しかし、韓国のように独立性が強い国ではそれゆえに選挙管理機関自体が政治化しやすい。制度と選挙管理のパフォーマンスの間にも先行研究が指摘するような対応関係は確認できず、全国一律で実施されている日本でもバリエーションが発生する。
著者
大西 裕 品田 裕 曽我 謙悟 藤村 直史 高橋 百合子 稲継 裕昭 遠藤 貢 川中 豪 浅羽 祐樹 河村 和徳 仙石 学 福島 淑彦 玉井 亮子 建林 正彦 松本 俊太 湯淺 墾道
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2011-04-01

本研究は、選挙ガバナンスが民主政治に与える影響を、比較政治学的に解明しようとするものである。本研究は、国際比較と日本国内の自治体間比較を通じて、選挙管理という研究上の大きな空白を埋める。調査結果、常識的見解と異なる二つのことが明らかになった。第1に、選挙の公平性、公正性は、国際的に推奨される選挙管理機関の独立性のみでは達成できず、より複雑な扱いが必要である。第2に、日本では選挙管理委員会の業務は画一的で公平、校正であると考えられてきたが、委員会や事務局の構成のあり方によって大きく左右される。それゆえ、市区町村によってバリエーションが発生している。
著者
川中 豪
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.2_152-2_176, 2018 (Released:2021-12-26)
参考文献数
34

本稿はシンガポールの一党優位支配を支える選挙システムに対する人々の評価に影響を与える社会経済的な属性を探るものである。検証には, シンガポール国立大学リー・クアンユー公共政策大学院の政策研究所が2011年と2015年に実施した選挙直後の世論調査を使用する。選挙システムに対する見方に関し, 世代間亀裂, 所得格差, 教育レベルの相違, エスニシティといった四つの社会的な亀裂が影響を与えているとの仮説に基づき, 年齢, 所得, 教育レベル, エスニシティの四つの変数を独立変数とし, 選挙システムの公平性評価および選挙システムの維持に対する選好を従属変数として回帰分析を行った。結果として, 世代間の亀裂, 教育レベルの違いが統計的に有意なレベルで選挙システムの公平性, 維持に対する選好に影響を与えていることが分かった。一方, 所得格差の影響は頑強ではなく, エスニシティの影響も限定的だった。
著者
川中 豪
出版者
日本貿易振興会アジア経済研究所
雑誌
アジア経済 (ISSN:00022942)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.55-75, 2009-12

民主主義の安定をめぐる議論は,民主化の議論と民主主義制度の生み出す政策帰結の議論という2つの民主主義研究の流れの双方の上に立つものである。経済発展と政治体制,社会構造と政治変動,政治的主体の戦略的行動といった民主化をめぐるこれまでの議論に対し,ゲーム理論の導入はこれらを統合した議論を生み出そうとしており,さらにそれは実証主義的な民主主義研究との接合を進め,より一般的な政治体制の理論を生み出す可能性を見せている。