著者
太田 有子
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.16-31, 2014 (Released:2015-07-04)
参考文献数
37

本稿は, 工業化の政治社会的背景を明らかにするため, 陶磁器の生産・流通に関わる資源をめぐる制度形成の過程に関して地域間の比較分析を通じて検証するものである. 「資源ガバナンス」という概念を導入し, 資源のあり方が制度化される過程を明らかにすることを試みた. 陶磁器の生産流通制度成立の経緯や内容に関して分析を行った結果, 陶磁器業に関わる諸資源のあり方は, 各地域の行政権力と様々な社会集団との関係によって規定されていたことが示された. 行政権力による資源への厳戒な統制のもとで諸制度が実施された事例がある一方で, 行政権力と同業者組合の協調による制度形成や, 生産・流通に関わる資源を獲得した卸売業者による制度構築の事例など, 地域間の相違が見られた. 資源ガバナンスの多様な様態の背景として地域の行政権力による支配のあり方が, 陶磁器業をめぐる諸資源のあり方, 陶磁器業従事者の活動や関係に作用し, 陶磁器業の生産・流通に影響していた. 行政権力と社会集団の関係によって, 陶磁器業の発展のあり方は異なっており, 行政権力による保護管理の下で発展した地域がある一方で, 行政機構と商工業者の連携や, 商工業者による民間資本を中心に発展した地域もあり, 工業化の多様な経路とその政治社会的背景が明らかになった.
著者
太田 有子
出版者
慶應義塾大学
雑誌
史学 (ISSN:03869334)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.421-434, 1980-03

論文一 序二 考古資料三 文献史料四 結び
著者
玉木 有子 伊藤 直子 佐藤 恵美子 立山 千草 太田 有子 伊藤 知子 松田 トミ子 山田 チヨ 長谷川 千賀子 山口 智子 小谷 スミ子 渡邊 智子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.27, 2015

【目的】平成24~25年度日本調理科学会特別研究『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』の一環として新潟県村上市の食と行事の結びつきについて調査を行った。郷土料理や伝統的な食の文化が親から子へ伝承されにくい傾向がある状況の中で、年中行事や慣わしが現代に受け継がれてきた村上市の現状を報告する。<br> 【方法】村上市在住の75~88歳の高齢者(平均80.5歳)から平成25年11月~平成26年3月に聞き書き調査を行い、村上市の史料館や歳時記を参考に現代に伝え継がれている年中行事、慣わしに関する食と行事の結びつきを調査した。<br> 【結果】昭和34年頃までは旧暦が用いられ、現在も名残が残る。季節毎の年中行事や慣わしが多く受け継がれており、主に祭事に関する料理が残っている。神社の信仰により伝承されてきた村上大祭(7月7日)(村上地区) 、瀬波大祭(9月4日)(瀬波地区)、岩船大祭(10月19日)(岩船地区)の3大祭りの他、稲荷神社の初午(2月の第1の午の日)、七夕祭り(8月16日)、地蔵堂の地蔵祭り(11月3日)などは今日まで受け継がれており、市民生活の潤いとなっている。初午では、粳米に小豆を入れて炊いた小豆飯、糠鰯、三角油揚げ、煮しめなどを食べる。古くは米俵のサンバイシにのせて地域のお稲荷様に供えた。節分では、まいた豆を保存し厄除け代わりに一年中食べる慣習がある。この他にも鮭を特別な魚(魚の中の魚)として大切に食しており、村上市の食と行事の結びつきには精神性の高い食の文化が伝え継がれている。
著者
太田 有子
出版者
東京大学
雑誌
社會科學研究 (ISSN:03873307)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.19-36, 2006-03-28
被引用文献数
1

歴史社会学は,社会学における一般理論への偏重に対する自省から,分析対象地域の歴史経験や固有の事情をふまえつつ理論構築を志向する試みとして発達したが,同分野の定義をはじめ,さらには分析方法から理論の射程範囲に至るまで,現在もなお議論が続いている.なかでも比較分析は,歴史社会学分野において主要な分析方法として用いられ,また近年は広く社会科学分野においても,その意義が注目されているが,そのあり方をめぐっては諸論が展開している.本稿では,「歴史社会学」の軌跡を辿りつつ,比較分析の方法論ならびに研究例を通じ,その内容を検証すると同時に今後の課題を考察する.