著者
古金 遼也 藤野 明浩 内田 佳子 狩野 元宏 野坂 俊介 金森 豊 笠原 群生 梅澤 明弘 義岡 孝子 要 匡
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.838-845, 2022-08-20 (Released:2022-08-20)
参考文献数
20

症例は13歳男児.突然の上腹部痛と嘔吐を主訴に近医を受診した.血液検査では異常はなかったが,腹痛が強く当院に紹介となった.独歩で来院したが,診察中にショック状態となった.超音波検査にて上腸間膜動脈起始部から広がる後腹膜の広範な血腫を認めた.血圧維持が困難となり,救急外来でバルーンカテーテルによる大動脈遮断を行い,緊急手術に移った.腹部血管は脆弱で剥離操作にて次々と動脈が断裂し止血は困難であった.下半身血流遮断3時間が経過し,腹部臓器への虚血による損傷が非可逆的となり救命困難と判断し閉腹した.術後3時間で死亡した.剖検時に摘出した動脈の組織像で,壁内の弾性線維の著しい断片化を認め,また血液検体のゲノム解析にてCOL3A1遺伝子に新規病的バリアントを認め,血管型Ehlers-Danlos症候群と確定診断された.急性発症で原因不明の後腹膜血腫の場合,稀だが本疾患も鑑別に加えて診療する必要がある.
著者
米道 宏子 伊藤 麻衣 阿部 啓子 高橋 有希 中里 弥生 上遠野 雅美 平野 加奈子 阪本 靖介 福田 晃也 笠原 群生
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Supplement, pp.s75, 2021 (Released:2022-05-12)

チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下CLS)とは、医療現場において心理社会的サポートを提供する専門職である。アメリカ小児学会はChild Life Programの必要性を明確に提言している。今回、急性肝不全症例の患者サポートに関して必要性・重要性をCLSの視点から報告する。当院へ紹介される小児急性肝不全の患児は転院後にICU管理となる重症症例がほとんどである。通常の移植患者と異なり小児劇症肝炎症例は鎮静管理下・人工呼吸・血漿交換治療を継続し、治療によって自己肝が回復しない場合は緊急肝移植手術が必要となる。そのため移植術前に患児への十分な説明が行えず、患児の理解や受容が欠けた状況の中で患児は術後に覚醒するため、医療的トラウマのリスクが高まる。これらの要因が、長期管理における患児の病識の欠落、内服コンプライアンスの低下の原因となると考えられる。当院の急性肝不全患者に対し、CLSは主に①ティーチング、②プリパレーション/ディストラクション、③治癒的遊び、④復学支援を行う役割を担い、病状や手術への理解促進・医療環境への適応・治療に対する患児の協力・ご両親の治療への理解・積極的介入を引き出すことに成功している。小児急性肝不全以外にも緊急で移植を行わなければならない状況は多い。しかし日本ではCLSの数や認知度が不十分な為、今後、患児と家族へのサービスの影響や効果を識別する研究を行いCLSの重要性を啓発してゆく必要がある。
著者
笠原 群生 内田 孟 佐々木 健吾 平田 義弘 武田 昌寛 上遠野 雅美 久保田 智美 中里 弥生 福田 晃也 阪本 靖介
出版者
一般社団法人 日本移植学会
雑誌
移植 (ISSN:05787947)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2-3, pp.197-208, 2018 (Released:2018-11-07)
参考文献数
33

【Purpose】 We reviewed our experience of liver transplantation in the National Center for Child Health and Development and report the results herein.【Subjects and methods】 We have handled 500 cases of liver transplantation from November 2005 through March 2018 in the National Center for Child Health and Development. Variables including indication of liver transplantation and immunological outcome were reviewed.【Results】 There were 469 living donor, 27 deceased and 4 domino liver transplantations in the study period. The indication for liver transplantation was cholestatic liver disease in 48.0%, followed by metabolic liver disease in 22.0% and acute liver failure in 12.6%. The mean age of recipients was 4.0±5.5 years and body weight was 14.9±13.3 kg. Immunosuppression consisted of tacrolimus and low-dose steroids. The incidence of acute cellular rejection was 42.0%. The 10-year patient survival was 90.2%.【Conclusion】 Satisfactory results can be achieved in the liver transplantation program in the National Center for Child Health and Development. Deceased donor liver transplantation, patients with acute liver failure and re-transplantation shows significantly lower patient survival. We conclude that liver transplantation is a safe and effective treatment modality together with proper indication and excellent management strategy. The significant factors affecting survival may be overcome by the technical and immunological refinements that have occurred in recent years.