- 著者
-
松本 公一
加藤 剛二
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本小児血液・がん学会
- 雑誌
- 日本小児血液学会雑誌 (ISSN:09138706)
- 巻号頁・発行日
- vol.19, no.2, pp.90-95, 2005-04-30 (Released:2011-03-09)
- 参考文献数
- 18
血栓性微小血管障害 (thrombotic microangiopathy;TMA) は細小動脈を主体とする微小血管内皮障害に基づく虚血性, 出血性の臓器障害である.造血幹細胞移植の現場において, しばしば急性GVHDとTMAは混同され, 鑑別が困難な場合も少なくない.とくに近年, 消化管TMAという概念が導入されて以来, いっそう両者の境界は混沌としている.これは急性GVHDの診断基準が, TMAの存在を抜きにして設定されていることと, TMAの診断基準が明確でないことが影響しているものと考えられる. TMAの危険因子として, FK 506などの免疫抑制剤, 非血縁者間移植, HLA不適合血縁者間移植, ABO不適合移植, VODがあげられる.完成されたTMAの治療は困難であるので, 大腸生検などにより早期にTMAの存在を認識し, 過度の免疫抑制を控えることが移植成績の向上につながると考えられる.