著者
粕谷 英一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.179-185, 2015-07-30 (Released:2017-05-23)
参考文献数
6
被引用文献数
6

生態学におけるモデル選択の方法として広く使われている赤池情報量規準(AIC)について、真のモデルを特定するために使うことは本来の目的から離れていることを指摘し、サンプルサイズが大きくてもAIC最小という基準で真のモデルが選ばれない確率が無視し得ないほど大きいことを単純な数値例で示した。また、AICの値に閾値を設けて、AICの値が他のモデルより小さくしかも差の絶対値が閾値を越えているときのみにモデルを選ぶとしても、真のモデルが選ばれない確率が高いという問題点は解決されないことを示した。
著者
粕谷 英一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.179-185, 2015-07-30

生態学におけるモデル選択の方法として広く使われている赤池情報量規準(AIC)について、真のモデルを特定するために使うことは本来の目的から離れていることを指摘し、サンプルサイズが大きくてもAIC最小という基準で真のモデルが選ばれない確率が無視し得ないほど大きいことを単純な数値例で示した。また、AICの値に閾値を設けて、AICの値が他のモデルより小さくしかも差の絶対値が閾値を越えているときのみにモデルを選ぶとしても、真のモデルが選ばれない確率が高いという問題点は解決されないことを示した。
著者
久保 拓弥 粕谷 英一
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.181-190, 2006-08-31 (Released:2016-09-06)
参考文献数
9
被引用文献数
12

生態学のデータ解析で一般化線形モデル(generalized linear model; GLM)が普及していくにつれ「GLMだけでは説明がむずかしい現象」にも注目が集まりつつある。たとえば「過分散」(overdispersion)はわれわれがあつかう観測データによくあらわれるパターンであり、これは「あり・なし」データやカウントデータのばらつきがGLMで解析できなくなるほど大きくなることだ。この過分散の原因のひとつは個体差・ブロック差といった「直接は観測されてないがばらつきを増大させる効果」(random effects)である。この解説記事ではこのrandom effectsも組みこんだ一般化線形混合モデル(generalized linear mixed model; GLMM)で架空データを解析しながら個体差・ブロック差を考慮したモデリングについて説明する。
著者
粕谷 英一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.585, 2004 (Released:2004-07-30)

変数そのものでなくその適当な関数を使ってデータを解析をすることはこれまで広く行われてきた。変数変換の中でも、角度変換(アークサイン平方根変換)などとならんでよく使われてきたのがべき乗変換や対数変換である。べき乗変換の例としては平方根変換などがあり、対数変換もべき乗変換の系列の中に位置付けられてきた。変数変換により、もとのデータの平均値を変換したものと変換後の平均値が異なる、交互作用項が実質的に変化する、変数単独の効果(例、偏回帰係数)が他の変数に依存する、などの不都合で不適切な影響が人為的に生じる。変数変換を用いた過去のデータ解析のかなりの部分は、重要な結論が導かれたのであれば見直す必要がある。変数変換という操作の持つ問題点を認識することは、変数間の決定論的な関係を分析に際して明確にすることの重要性や誤差構造の重要性を浮かび上がらせ、生態学におけるデータ解析の質の大幅な向上に役立つ。_
著者
粕谷 英一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第52回日本生態学会大会 大阪大会
巻号頁・発行日
pp.61, 2005 (Released:2005-03-17)

交尾の際のメスとオスのさまざまな性質では、ある性質が片方の性にとっては有利だがもう片方の性にとっては不利だということがある。性的対立(sexual conflict)と呼ばれる、このような考え方が、最近、交尾に関する性質の研究を刺激している。これまで、交尾の際に見られる特徴を片方の性(とくにメス)の性質だと見て、その性にとっての利益を考えることが多かった。たとえば、メスが複数のオスと交尾する理由の研究では、メスの利益を中心に据えて、複数回交尾によってメスが受ける利益はどんなものかと考えるのが普通だった。また、メスの交尾相手選好性の研究では、ある性質を持つオスとの交尾率が高いのはそのオスと交尾するのがメスにとって有利であるからだ、と考えるのも普通であった。だが、メスの利益をもたらすことは実証されていないことも多く、メスは1回だけ交尾するのが最適であるのに、オスは数多く交尾するのが有利で、オスの交尾試行に対してメスが拒否できずに複数回交尾となっている可能性がある。実際に、交尾自体がメスにとってはコストをもたらすことがある。よく知られた例では、キイロショウジョウバエでは精液に含まれる物質により交尾するとメスの死亡率が高まる。性的対立のアイデアはすでに交尾をめぐるメスとオスの性質の研究に適用されており、代表的なものとしてRiceらのchase-awayモデルがある。交尾行動の進化に関する研究に性的対立が与える影響を、メスの交尾相手選好性を中心に種分化なども含めて概観し、行動を観察した印象から利害を類推することの危険性や利害の実測の重要性などについて述べる。
著者
粕谷 英一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.277-288, 1995-12-20
被引用文献数
6

Recent developments in methods of comparative analysis were reviewed. The difference in correlation between traits of extant (tip) species and that between changes in traits along branches of a phylogenetic tree was critical. Techniques of comparative methods for considering the effects of phylogeny were reviewed. They included comparison of higher taxon means, comparison within higher taxa, division of variation using a matrix of phylogenetic similarity, independent comparison method and cladistic methods. The nature of statistical inference in comparative methods, and the connection between comparative ecology and phylogenetics were discussed.
著者
緒方 一夫 粕谷 英一 紙谷 聡志 津田 みどり
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

アリ類を生物多様性のバイオインディケーターとして利用することを上位の目的に,分類学的情報の整備とフィールドデータの解析を行った.分類学的研究から新種の記載やシノニムを整理し一部タクサについては検索表を提示し,ウェッブ上に公開した.群集生態学的研究から西南日本,ベトナム,タイの農林生態系で定量・定性的なサンプリングを実施し,群集の特性を比較し,対応分析による序列化を行い,そのパターンについて考察を加え,インディケーター種を抽出した.
著者
久保 拓弥 粕谷 英一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.181-190, 2006-08-31

生態学のデータ解析で一般化線形モデル(generalized linear model; GLM)が普及していくにつれ「GLMだけでは説明がむずかしい現象」にも注目が集まりつつある。たとえば「過分散」(overdispersion)はわれわれがあつかう観測データによくあらわれるパターンであり、これは「あり・なし」データやカウントデータのばらつきがGLMで解析できなくなるほど大きくなることだ。この過分散の原因のひとつは個体差・ブロック差といった「直接は観測されてないがばらつきを増大させる効果」(random effects)である。この解説記事ではこのrandom effectsも組みこんだ一般化線形混合モデル(generalized linear mixed model; GLMM)で架空データを解析しながら個体差・ブロック差を考慮したモデリングについて説明する。
著者
緒方 一夫 多田内 修 粕谷 英一 矢田 脩
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究では、アリ類を生物多様性のバイオインディケーターとして用いることを上位の目的に、(1)調査方法の比較検討、(2)分類学的基盤、(3)分析評価方法などの諸問題を研究課題とした。(1)については様々な調査方法について比較し、採集種数、サンプリング特性、地域アリ群集特性の検出力等について検討した。その結果、単位時間調査法が限られた時間の中で比較的多くの種を収集できることが明らかとなった。ただし採集者の経験の違いによる調査結果の質に問題があり、その弱点は適切なインストラクションである程度補完できることが実証された。(2)については、日本産アリ類276種について、分布調査の取りまとめ等に活用できるようにエクセル形式でのダウンロード版チェックリストを公開した。このリストおよび世界のアリの学名についてとりまとめたものを携帯版の印刷物として準備した。この他、いくつかの分類群について整理しその成果を公表している。(3)については森林生態系や農業生態系のアリ群集を対象に、種数、種類組成、頻度、類似度などについて検討し、多変量解析による多様性の研究を実施した。その結果、連続林では森林の成長にかかわらずアリ群集の組成は変化が小さいこと、孤立林ではその成因や攪乱の程度によりアリ群集の組成は大きく異なることが示されてた。農業生態系では土壌の理化学的性質と種数について調査したが、有為な関係は示され得なかった。サトウキビ畑のような永年性作物圃場では、緯度傾斜と植え付け後徐々に種数が増加するパターンが見られた。また、アリ類の多様性と他の生物群との多様性の関連について、とくに知見が蓄積されているチョウ類との関連を検討した。その結果、局所的にアリの種数とチョウの種数が一致するような地域もあるけれども、この現象は必ずしも普遍的ではないことが示唆された。これらより、アリ群集のバイオインディケーターとしての価値は生態系指標にあること、すなわち攪乱や孤立性の程度を表す生物群としての利用可能性が示唆された。