著者
花崎 直太
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会研究発表会要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2012

地球温暖化による水資源への影響を地球規模で予測し、適切な適応策を立てることは重要である。これに関して、これまでに多くの報告書や論文が出版されてきた。しかし、先行研究には3つの課題がある。第1に、先行研究の多くが年単位で水資源の評価をしていることである。第2に、先行研究の多くが気候と人口以外の要素を現状で固定して評価を行っていることである。第3に、先行研究はNakicenovic and Swart (2000)による社会経済・排出シナリオ(以下SRES)およびそれに基づく気候シナリオCMIP3を利用していたことである。現在、SRESに代わる新しいシナリオRCPが整備されつつある。本報告では、これらの問題に対応した新しい全球水ストレス評価の検討結果を報告する。
著者
高薮 出 花崎 直太 塩竈 秀夫 石川 洋一 江守 正多 嶋田 知英 杉崎 宏哉 高橋 潔 仲江川 敏之 中北 英一 西森 基貴 橋爪 真弘 初鹿 宏壮 松井 哲哉 山野 博哉 横木 裕宗 渡部 雅浩
出版者
水文・水資源学会
雑誌
水文・水資源学会誌 (ISSN:09151389)
巻号頁・発行日
vol.34, no.6, pp.377-385, 2021-11-05 (Released:2021-11-20)
参考文献数
11
被引用文献数
3

過去20余年にわたり,気候変動とその社会への影響に関する膨大な予測情報や知見が創出されてきた.しかし,これらの予測情報や知見が国・地方公共団体や事業者などに広く利活用されるようになるまでにはまだ様々な課題が残っている.そこで,気候予測と影響評価に関する研究に長く携わってきた著者らが現在見られる各種の障害や,解決の糸口について議論した.その結果,気候予測・影響評価・利用者のコミュニティーにはそれぞれ業務の前提と他コミュニティーへの期待があり,それらの間にずれが生じていることが浮かび上がった.解決のためには,気候予測・影響評価・利用者のコミュニティー間の協働が重要である.具体的には,予測情報や知見が創出される前の段階での相互の情報交換やすり合わせによるギャップの解消や,その実現のための制度や設備の整備が必要であることが示された.
著者
國光 洋二 徳永 澄憲 江口 允崇 花崎 直太 櫻井 玄 齋藤 勝宏 横沢 正幸
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

①水文モデルの推定と渇水・灌漑率の予測:水文に関する実績の気候及び流況データと流域地形データをもとに、全球のグリッド(1度単位)ごとの流量を予測する水文モデルの作成に着手した。特に、流出係数等のパラメータの修正(チューニング)を行って、モデルの予測精度の向上を試みた。②作物モデルの推定と作物別の単収予測:気候及び主要作物の収量に関する実績データをもとに、全球のグリッドごとに、作物別の単収を予測する作物モデルを作成した。モデルのパラメータの推定は、ベイジアン推定法を適用し、概ね現況を再現する値を得た。③世界各国を対象とする一般均衡モデルの作成:世界経済データ(GTAPデータ)、FAOの世界農業データ及びIPCCの社会経済シナリオ(SSP)を用いて、世界各国の作物収量に関する変動状況を解明し、この影響が世界の穀物市場の需給動向、食料価格の動向に及ぼす影響を分析するための世界CGEモデルの作成に着手した。④日本を対象とする一般均衡モデルの作成:日本の経済データをもとに、動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルのパラメータをカリブレートし、モデルのプロトタイプを作成した。このモデルを用いて、2005年以降の日本経済の成長経路の再現性を検証し、モデルのパフォーマンスが高いことを確認した。特に、東日本大震災とその後の復興過程をモデルがよく再現することを明らかにした。また、日本の地域間産業連関表のデータをもとに多地域動学応用一般均衡モデルのプロトタイプを作成し、気候変動による日本の農産物に関する収量、価格への影響を試算した。