著者
鈴木 彌生子
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

アジア太平洋地域における食品トレーサビリティシステムの構築を目的とした国際連合食糧農業機関(FAO)と国際原子力機関(IAEA)の技術協力プロジェクト(RAS5062およびRAS5081)の協力を得て、素性の明確な米試料を各国から収集し、安定同位体比および無機元素組成を明らかにすることで産地判別の可能性を検証した。軽元素(炭素・窒素・酸素および硫黄)・重元素(ストロンチウム)の安定同位体比および18元素の濃度を組み合わせることで、アジア各国の米の産地判別の可能性が示唆された。
著者
河合 崇行
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

認知時間に差がある2種の味を混和した際の味変化について調べた。ヒト用の実験装置は精度が維持できなかったので、マウス行動学を利用して解析することにした。甘味と甘味を混合した場合は、認知時間差の大きい組み合わせほど大きな甘味増強が起きる現象が見られた。塩味と甘味を混合した場合は、甘味増強が見られたものの、認知時間の早いイオン性の甘味との組み合わせで大きな増強が見られた。
著者
吉岡 太陽
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究の目的は、再生シルクタンパク質から天然シルクの力学物性に匹敵する強く丈夫な繊維を人工的に紡糸するための技術を確立することである。最初に、様々な天然シルクの階層構造を詳細に解析し、それらに共通するフィブリル階層構造の詳細を定量的に解明することで、人工紡糸で目指すべき階層構造の指針を明確にした。次いで、フィブリル階層構造の形成過程を調べ、絹糸腺内部でのナノフィブリル前駆体・自己組織化形成とその集合化を定量的に捉えることに成功した。これら天然シルクの構造形成に関する知見を紡糸技術に模倣・取り込むことで、天然繊維の力学物性に近付ける紡糸技術の改善を得た。
著者
若林 嘉浩
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2020-09-11

ヒツジやヤギなどの雄効果フェロモンは、雄から分泌されて雌の繁殖中枢を活性化させ、性腺刺激ホルモン放出ホルモン/黄体形成ホルモン分泌促進を介して卵巣活動を賦活化する作用をもつ。これまでにヤギ繁殖中枢の神経活動変化を指標としたフェロモン活性生物検定手法を用いて、このフェロモンの主要分子の同定と活性化される脳内の繁殖中枢が、弓状核キスペプチン神経系であることを明らかにした。本研究では、雄効果フェロモンをモデルとして、未だ詳細が不明であるフェロモンの受容部位、脳内での情報伝達経路、繁殖中枢における効果発現機構に焦点を当てて、反芻動物の繁殖機能亢進作用を持つフェロモンの作用機序の全貌を解明する。
著者
高畠 令王奈
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究では、既存のリアルタイムPCRをはじめとするDNA定量技術を評価するために、一桁台を含むごく少数の規定数N個のDNA分子を含む標準試料DNAの開発を試みた。そのために、標的DNAが直列にN個つながったDNA試料(標準DNA-N)を作製した。標準DNA-Nには、予め各PCR標的DNA配列間に制限酵素の認識配列を配置しておき、一定体積中に標準DNA-Nが1分子以下になるまで限界希釈し、さらに、制限酵素処理することによって、分子数が任意のN個からなる標準DNAの調製が可能となる。現在、PCRの標的配列を16個含む標準DNA-16までの開発に成功した。
著者
植原 健人 増田 税
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

1)国内のジャガイモシストセンチュウ抵抗性トマトはHeroA遺伝子を保持することが明らかとなった。2)ジャガイモシストセンチュウ抵抗性トマトはタバコシストセンチュウ抵抗性である。3)F1抵抗性品種の分離試験を行った。接種試験で抵抗性と感受性の分離比は3:1と考えられる。すなわち単一優勢遺伝子により支配される。4)マイクロアレイ解析を行った。抵抗性品種にタバコシストを接種して3日目と7日目のアレイ解析で、PR1が誘導されており、典型的なサリチル酸系の誘導抵抗性と考えられた。5)抵抗性品種による線虫密度低減試験を行った。抵抗性品種で土壌中のタバコシストの密度が減少した。
著者
清水 徳朗
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

カンキツ在来品種2,000点以上の網羅的遺伝子型解析から、ナツミカン系統の同一性を確認するとともに、新規な親子関係を見出した。国内自生タチバナの調査から、自生地内でクローンとして個体が維持されていることを確認し、また新規8系統を含む11系統のタチバナを見出した。これらタチバナ系統の遺伝的類似性や地理的分布から、タチバナは主に宮崎県で発生し、タチバナ-Bがヤマトタチバナであることを見出した。系譜情報の育種実装を図るためにゲノムワイド多型の抽出法を確立し、従来の育種の制約を回避する新規な手法「カンキツ2.0」を提唱するとともに、GRAS-Diを利用したゲノムワイド多型推定法の開発を開始した。
著者
片山 直樹
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

全国各地の野鳥の会から公表されている支部報を用いて、探鳥会記録の電子データ化を進めた。観察された種のリストおよび調査努力量としての観察人数のデータを可能な限り記録した。入力作業は、8割ほど完成したものの、いまだ継続中である。来年度には解析に着手したい。一方、モニタリングサイトサイト1000の鳥類データを用いた解析は、着実に進行した。森林草原サイトと里地サイトの両方のデータをもとに、調査手法が統一されている2009-2020年の個体数データを用いて、個体数トレンドを推定した。推定にはTRIM(Trends and Indice for Monitoring data)を用いて、合計300個体以上が観察された47種を対象として、トレンドを推定した。そして、推定された種ごとの年変化率を目的変数し、各種の生活史形質を説明変数としたPGLS(phylogenetic generalized least squares)を行うことで、種ごとの増減の違いを説明する要因を調べた、その結果、種ごとの年変化率を最もよく説明したのは「生息地グループ」であった。具体的には、森林性グループ(21種)では個体数トレンドが安定していた一方で、里山性グループ(19種)と開放地性グループ(7種)では、平均して年1%以上のペースで個体数が減少していることが示唆された。さらに、調査地選択のバイアスが与える影響も調べた。特に里地サイトでは、何らかの里山保全活動が行われているサイトが多い。そこで保全活動を行っているサイト・行っていないサイトで里山性グループの個体数トレンドを比較した。その結果、保全活動を行うサイトでは個体数トレンドが安定している一方、行っていないサイトでは平均して年2%以上のペースで個体数が減少していることが示唆された。現在、論文執筆中である。
著者
岩崎 亘典 林 和則 田中 聡久 鹿取 みゆき 小口 高
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

我が国の農業における農業従事者の高齢化や減少、耕作放棄地の増加等の問題を解決するためには、効率的な農地の維持、管理が求められている。特に、果樹や野菜等の集約型農業においては、適地適作にもとづく新たな農地の活用方法が必要とされている。そこで本提案では、今後、新規参入者の増加や産地形成が想定されるブドウのワイン専用品種の栽培地域を対象として、ほ場一筆単位のワイン専用品種栽培適地図を作成する技術を開発する。そしてこれらの情報を公開・可視化するシステムを開発し、適地適作に配慮した新しい営農形態である「スマート風土産業」の構築を試みる。
著者
三浦 一芸
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

タイリクヒメハナカメムシ (以下タイリク)は日本でアザミウマの防除に広く販売されている。販売しているタイリクはCIWolbachiaに感染している。そのため、野外で感染雌の分布が拡大すると考えられる。そこで、分子生物学的手法を用いてWolbachiaの感染の有無やDNA解析をおこない、タイリクの感染系統の非感染系統への影響を検討した。放飼地域には天敵製剤由来と考えられる個体が多く採集される地域が存在した。放飼タイリクのWolbachia感染率は無放飼地域より高かった。しかし、放飼地域のmtDNAおよび核DNAの多様性は無放飼地域と変わらないことより天敵製剤は生態系への影響は低いと考えられた。
著者
冨田 秀一郎 畠山 正統
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

カイコを材料にして、これまでabd-Aの発現が腹脚の発生に必要であることを示した。本研究でカイコ胚でのDllの発現を調べたところ、腹脚原基の先端部で発現していることを確認した。これはabd-Aによる抑制は受けないものの、Dllが発現することにより腹脚の発生が誘導される、というこれまでの説をおおむね裏付けているように思われた。そこで、腹脚形成へのDllの関与を検討するために、Dllのノックダウンを行ったところ、正常な腹脚が発生し、先端構造が欠損することはなかった。これらの結果より腹脚の形成おいても胸部体節同様の位置情報分子メカニズムを利用していると考えられ、腹脚は付属肢であることが示唆された。
著者
大西 千絵 森嶋 輝也
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

カウフマンのNKモデルと本研究で策定するモデルの違いは、NKモデルのパラメーターが任意に決定されているのに対し、本モデルのパラメーターは現実の経済活動に基づいて決定される点にある。農業の連携相手/部門について、業種、商品名、単価とその単位、販売数量、期間売上、その商品を作るのに関わった連携相手/部門からプレミアムPiを求めると(論文投稿中につきPiの計算式は非公開)、連携相手の数がnの時,Pi×(n-1)が6次産業化の相乗効果であることを明らかにした。さらに、連携関係がxの時のすべての連携相手のPiから求めた総合利得Gxは、連携関係がxの時の売上額Sxとべき乗の関係であることを明らかにした。
著者
小沢 憲二郎 三橋 渡
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2017-04-01

植物発現用ベクターを、以下の外来遺伝子とプロモーターを使用して構築した。外来遺伝子は、フゾリン遺伝子(ドウガネブイブイ寄生の昆虫ポックスウイルス由来)及びBt毒素(CryA1c)遺伝子の単独、あるいは両方、プロモーターは、35Sプロモーター、またはより高発現を目指したRubisCOプロモーターを35Sプロモーターに連結したものである。次に構築したべクターをアグロバクテリウム法により、ブロッコリー(緑嶺)、タバコ(SR-1)に導入した。選抜マーカーは、ハイグロマイシン耐性遺伝子(HPT)とした。ハイグロマイシン耐性を示す再分化個体について、PCRによってフゾリン遺伝子またはBt毒素遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子の確認を行った。発現系統の一部では交配によりF1個体を得た。次に、Bt毒素遺伝子、あるいはフゾリン遺伝子を導入したタバコ葉を粉末にし、単独、または両者を腐葉土に混ぜ、その腐葉土中でドウガネブイブイ1齢、2齢幼虫を飼育し、前者は4日後、後者は7日後の死亡率を腐葉土のみで飼育した場合と比較することにより、粉末の殺虫性を評価した。その結果、1齢幼虫で、Bt毒素遺伝子単独発現葉の粉末を加えた場合に2系統で殺虫活性が認められた。一方、両者粉末を加えた場合は、Bt毒素遺伝子単独発現葉の粉末を加えた場合と比較して死亡率の上昇は認められず、フゾリン発現葉の活性(Bt毒素の殺虫活性の増進)は特に認められなかった。この理由として、フゾリン発現量が増進活性を示す閾値以下である可能性、葉の乾燥時の高温によるフゾリンの不活化の可能性が考えられたので、次年度以降の実験方法の変更によりこの点を明らかにする必要が生じた。
著者
國光 洋二 徳永 澄憲 江口 允崇 花崎 直太 櫻井 玄 齋藤 勝宏 横沢 正幸
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

①水文モデルの推定と渇水・灌漑率の予測:水文に関する実績の気候及び流況データと流域地形データをもとに、全球のグリッド(1度単位)ごとの流量を予測する水文モデルの作成に着手した。特に、流出係数等のパラメータの修正(チューニング)を行って、モデルの予測精度の向上を試みた。②作物モデルの推定と作物別の単収予測:気候及び主要作物の収量に関する実績データをもとに、全球のグリッドごとに、作物別の単収を予測する作物モデルを作成した。モデルのパラメータの推定は、ベイジアン推定法を適用し、概ね現況を再現する値を得た。③世界各国を対象とする一般均衡モデルの作成:世界経済データ(GTAPデータ)、FAOの世界農業データ及びIPCCの社会経済シナリオ(SSP)を用いて、世界各国の作物収量に関する変動状況を解明し、この影響が世界の穀物市場の需給動向、食料価格の動向に及ぼす影響を分析するための世界CGEモデルの作成に着手した。④日本を対象とする一般均衡モデルの作成:日本の経済データをもとに、動学的確率的一般均衡(DSGE)モデルのパラメータをカリブレートし、モデルのプロトタイプを作成した。このモデルを用いて、2005年以降の日本経済の成長経路の再現性を検証し、モデルのパフォーマンスが高いことを確認した。特に、東日本大震災とその後の復興過程をモデルがよく再現することを明らかにした。また、日本の地域間産業連関表のデータをもとに多地域動学応用一般均衡モデルのプロトタイプを作成し、気候変動による日本の農産物に関する収量、価格への影響を試算した。
著者
棚瀬 幸司 小野崎 隆 稲本 文野 上垣 弘子
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

カーネーションは通常の品種では品質保持剤を処理しない場合、花持ち日数が約7日である。我々は花持ち性に優れる品種と系統を作出している。花持ち形質に関与する遺伝子の網羅的な情報を得るためこれらを材料に用いてトランスクリプトーム解析を行った。マイクロアレイ解析により、対照品種と日持ち性の優れる品種の老化時に発現が異なる遺伝子1253個を抽出した。その中で花の老化に伴って発現が上昇する遺伝子群の中にいくつかの興味深い遺伝子が含まれていた。さらに、リアルタイムPCRにより解析したところ、日持ち性の優れる品種と通常品種で発現の差が見られた遺伝子を複数獲得した。