著者
諸 和樹 皆川 昌広 高野 可赴 滝沢 一泰 三浦 宏平 永橋 昌幸 坂田 純 小林 隆 小杉 伸一 若井 俊文
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = 新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.129, no.7, pp.401-407, 2015-07

症例は35歳男性. 検診腹部エコーで脾門部に2cm大の腫瘤を指摘された. 2年後検診で腫瘤の増大傾向を認め, 腹部造影CT検査で膵尾部に44mm大の多房性分葉状腫瘤を認めた. 血算・生化学・凝固系, 腫瘍マーカー, 各種ホルモン値は正常範囲内であった. SPIO造影MRIを施行したが, 腫瘍より尾側におけるT2強調画像信号低下を確認したのみで, 確定診断を下すことができなかった. 腹腔鏡下膵尾部切除を施行し, 術後病理診断で膵内副脾に生じた類上皮嚢胞と診断された. 診断に苦渋した1例を報告する.
著者
若井 俊文 坂田 純 三浦 宏平 堅田 朋大 廣瀬 雄己 滝沢 一泰
出版者
一般社団法人 日本胆道学会
雑誌
胆道 (ISSN:09140077)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.54-59, 2019-03-25 (Released:2019-04-08)
参考文献数
30
被引用文献数
1

十二指腸乳頭部癌は膵頭十二指腸切除術が標準的治療であり,胆道癌の中で最もR0切除率が高く,治療成績は比較的良好である.粘膜内に留まりOddi筋に達しない癌はリンパ節転移をきたす可能性が非常に低く,理論的には局所的乳頭部切除術が適応可能である.しかし,術前画像診断では癌がOddi筋に達するか否かを正確に診断することは困難であり,基本的には十二指腸乳頭部癌に対しては縮小手術を適応するべきではない.生検で腺腫と診断された場合も局所的乳頭部切除術が適応可能だが,深部に癌を認める可能性もあり,術後の病理学的検索が必須である.膵浸潤は十二指腸乳頭部癌の重要な予後因子であり,癌が膵実質におよぶと神経(周囲)浸潤を高率に認め,浸潤性膵管癌と同様の生物学的悪性度を有するようになる.リンパ節転移も強力な予後因子であり,リンパ節転移個数(0個,1~3個,≥ 4個)は本疾患の予後を良好に層別化する.
著者
滝沢 一泰 亀山 仁史 若井 俊文 土田 正則 木下 義晶
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 = Niigata medical journal (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.134, no.4, pp.113-117, 2020-04

2017年度の医学部定員は過去最多となったが,新潟県は都道府県別にみた医療施設に従事する人口10万対外科専門性資格保持医師数はワースト2位であり,将来必要とされる外科医師数を達成するためには年間40人の外科医を育成しなければならない.この度,日本専門医機構により新専門医制度が確立され,2018年度から外科新専門医制度は開始されたが,専攻医の募集定員は全国204プログラムで計2,061人でありそのうち採用されたのは805人であった.新潟県では2プログラムで計8名を採用した.新潟大学外科専門医プログラムでは2018年4月から6名の専攻医が,2019年4月から8名の専攻医が研修を開始した.卒後臨床研修2年間と専攻医としての3年間(1~3年次)規定の手術数を経験する必要があるが,すでに1年次の段階で各分野別の必須手術経験数のほとんどを経験することができた.手術総数350例および術者数120例以外は,すべて新潟大学外科専門医プログラム1年次で経験できる見込みであり,2年次および3年次は大学病院以外の関連病院で術者として手術を経験することになる.サブスペシャルティ領域がすでに決まっているのであれば,2年次3年次の研修はサブスペシャルティ領域を意識してその領域を専門的に研修できる.我々のプログラムにおける連携施設は新潟県でのhigh volume centerが中心となったが,これはプログラムの整備基準により手術症例数や指導医数に応じて,募集できる専攻医数が決まってしまうことによる.これにより集約化がさらに進んでいくものと考えられるが,新潟県は広い医療圏を持つため集約できない地域も存在するので,そういった地域での医療をどのように行っていくかが喫緊の課題である.また,いわゆる「地域枠」あるいは新潟県の修学賓金を受けていた卒後医師は,地域での指定勤務が義務付けられるのであるが,そのために専門医取得が不利にならないように留意して制度づくりを行った.これまで新潟大学外科学教室は「3科1つ屋根の下に」という理念の下,教育指導を行ってきた.今後とも3科で協力体制をとりながら,教育指導にあたっていきたい.
著者
横山 直行 白井 良夫 宗岡 克樹 若井 俊文 畠山 勝義
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.486-491, 2006-04-01
被引用文献数
3

症例は74歳の女性.十二指腸乳頭部癌切除後,最大径8cmまでの多発肝転移巣が出現.TS-1を150mg/日(15時に50mg, 22時に100mg内服)隔日で投与した.TS-1投与日の血清5-FU濃度は夜間高く,午前3時に最高値(539ng/ml)を示し,本療法が時間治療であることを確認した.治療開始後転移巣は徐々に縮小・減少し,4か月後には肝前区域に径2.5cm大の単個を残すのみとなった.骨髄抑制や消化器系の副作用はなく,外来での加療が可能であった.治療開始151日目に多量の吐血を来たし,出血性ショックで同日死亡した.病理解剖の結果,死因は肝前区域の残存腫瘍の退縮により,同腫瘍内を貫通する肝動脈が破綻したための胆道出血と診断された.本症例の経験から,TS-1を用いた時間療法が十二指腸乳頭部癌に対し有効である可能性が示唆された.一方,化学療法著効例では腫瘍壊死に伴う動脈性出血にも留意すべきである.