著者
茂木 正人 真壁 竜介 高尾 信太郎
出版者
低温科学第76巻編集委員会
雑誌
低温科学 (ISSN:18807593)
巻号頁・発行日
vol.76, pp.71-93, 2018-03-31

本稿では,南大洋における生態系研究の現状と課題を整理した.南大洋の生態系を論じるうえで最も重要な種はナンキョクオキアミであるが,近年ハダカイワシ科魚類が注目されている.日本の生態系研究チームはハダカイワシ科の中でも季節海氷域に分布するElectrona antarctica(ナンキョクダルマハダカ)をターゲットのひとつとして研究しているが,その繁殖生態や初期生活史については未解明の部分が大きい.季節海氷域では海氷に含まれるアイスアルジーや海氷融解時におこる植物プランクトンの大増殖を起点に始まる食物網が存在する.海氷と海氷下の生態系は密接な関係があり,温暖化による海氷変動は生態系変動をもたらすことになる.
著者
岩見 哲夫 谷村 篤 茂木 正人 小達 恒夫
巻号頁・発行日
2013-11-12

第4回極域科学シンポジウム個別セッション:[OB] 生物圏11月12日(火) 国立国語研究所 2階講堂
著者
酒井 洋一 茂木 正人 河野 博 サカイ ヨウイチ モテキ マサト コウノ ヒロシ
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 (ISSN:18800912)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-50, 2007-03

東京湾の湾奥部(東京湾に面している城南島と運河内の係船場、ともに垂直護岸)で、1993年5月~1994年9月に灯下に蝟集する魚類の採集を行った。城南島と係船場では、それぞれ32種2,048個体および17種2,392個体が採集された。城南島ではハゼ科魚類が12種出現し、個体数で86%を占めた。係船場では、マハゼ(全個体数の78%)、カタクチイワシ(12%)およびドロメ(3%)が優先した。両地点において、個体数、種数ともに3月から6月にかけて多かったが、8月から12月まで(城南島では1月まで)魚類はほとんど採集されなかった。城南島では多くの種(23種、77%)が短期間(1年間のうち2か月以内)のみ出現し、係船場では短期間出現した種は7種(50%)であった。垂直護岸や運河周辺では、特に8~10月頃には、貧酸素により魚類の生息は困難と考えられるが、ハゼ科魚類を始めとする底生性魚類にとって、城南島と係船場はそれぞれ短期および長期的な生育場となっている。
著者
石丸 隆 山口 征矢 小池 義夫 栗田 嘉宥 吉田 次郎 神田 穣太 田中 祐志 土屋 光太郎 北出 裕二郎 茂木 正人 堀本 奈穂 平譯 享 笠松 伸江
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

海鷹丸による,2回の南大洋インド洋海区における学際的な研究航海を実施した。生物関係では,陸棚から外洋における魚類の分布組成,中・深層における魚類や動物プランクトンの分布,動物プランクトンの分布変動と南極周極流周辺に形成されるフロントの位置との関係等を明らかにした。物理学分野ではケープダンレー沖において新たな南極底層水形成海域を発見し,深層水の分布とその変動,形成機構等に関する知見を得た。
著者
石丸 隆 山口 征矢 長島 秀樹 神田 譲太 茂木 正人 平譯 享 北出 裕次郎
出版者
東京海洋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

練習船「海鷹丸」による,南大洋インド洋セクターの調査・研究をH14,16,17年度の3次にわたって実施した.調査海域は,H14年度はケルゲレン海台付近およびウイルクスランド沖,H16年度は,リュツォ・ホルム湾沖及びウイルクスランド沖,H17年度は,リュツォ・ホルム湾沖である.主調査海域のケルゲレン海台周辺,リュツォ・ホルム湾沖およびウイルクスランド沖では深層水の形成機構や挙動,表層生態系と海洋環境との関係,中深層生態系の解明を主テーマとして,ADCP, CTD等による海洋観測と,水中光学的測定,表層性動植物プランクトン,仔稚魚の分布,基礎生産力測定,多段式開閉ネットによる各層生物採集等を行った.また,リュツォ・ホルム湾沖では,昭和基地と呼応したエアロゾルの観測を行った.観測海域に至る各航路上では,連続プランクトン採集器の曳航を行い(H16年度はGraham Hosie氏が乗船して担当),オーストラリア南極局の「オーロラオーストラリス」や「しらせ」による採集試料と合わせて,プランクトン群集の変動と海洋環境の長期変動との関係解明のための解析を行なう.H17年度は当初,南大洋航海の計画は無かったが,海洋構造や生態系の中長期変動を捉えるためには可能な限り継続的な調査を行うことが求められるため,国立極地研究所との協同によりリュツォ・ホルム湾沖の観測を行うこととなった.現在までに,インド洋セクターにおける深層循環の経路や流量,海氷の広がりと,氷縁における植物プランクトンのブルームとの関係等について論文を発表した.また,採集したオキアミを用いた研究により計量魚探によるオキアミ資源量の高精度な推定のための基礎的研究の成果を発表した.また,プランクトン群集組成に大きな経年変動を認め,これが南極発散線の発達や南極周極流の経路と密接な関係を持つことなどが明らかとなり,学会発表を行い投稿準備中である.